捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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第2章 流浪

王都にて

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 王都に到着した僕は、グラハム院長に連れられ、王宮魔導院の広大な施設に案内された。
 そこは、僕が育ったアルバス家の工房より巨大で、最新の設備が整っていた。

(こんな場所で研究できるなんて……夢みたいだ…)

 グラハム院長は、僕の魔力に依存しない技術を高く評価してくれた。
 彼は僕を「稀代きだいの魔道具師」と呼び、僕が自由に研究できる環境を整えてくれる。

 僕に与えられた部所は、納屋とは比べ物にならないほど広く、さまざまな素材や道具が惜しみなく与えられた。
 僕の心は、研究への尽きることない情熱で満たされていく。

 王都には、村とは比べ物にならないほど多くの人々が暮らしている。
 彼らの生活をより豊かにするため、僕は新たな魔道具の開発に没頭した。
 大量生産をするときは、正確に模様が描ける絵師も動員された。

 僕がまず発表したのは、「魔力消費ゼロの簡易照明具シャイン・エッジ」。
 これまでの照明具は魔力石を燃料とし、高価で一般には普及していなかった。
 だが、僕の作った照明具は、大気中の微細な魔力を吸収・変換するだけで、半永久的に光を放つ。

(これがあれば、夜の街も明るくなる。夜間の防犯にも役立つはずだ)

 発表会の日、僕の魔道具は、王都の人々に衝撃を与える。

「なんてことだ! 魔力石を使わず、こんなに明るいのか!?」
「これなら、貧しい者でも夜の闇を恐れずに済む!」

 人々は僕の照明具を手に取り、その輝きに歓声を上げた。
 彼らの喜びの声を聞くたびに、僕の胸は温かいもので満たされた。

(僕の魔道具が、こんなにも多くの人を笑顔にできるなんて……!)

 次に僕が開発したのは、「自動清掃型魔導具クリーン・ゴースト」。
 これは、微弱な魔力流を発生させ、空気中のほこりちりを自動で吸い取る。
 貴族の屋敷だけでなく、一般家庭でも手軽に使えるよう、小型化と低コスト化を追求した。


「こんなに楽になるなんて‼ 毎日掃除に追われていたのが嘘みたいだわ!」

 裕福な商家の奥様が、涙を浮かべながら僕に感謝を伝えてくれた。
 感謝の言葉にまだまだ慣れない僕は、
「お役に立てて光栄です」
 と、控えめに答えるのがやっと。

(エレンがいたら笑われてるな…)

 感謝を伝えられるたび、僕の頭には村の人々が思い浮かぶ。


 僕の生み出す魔道具は、これまで魔力を持つ貴族や一部の者しか扱えなかった常識を覆し、平民にもその恩恵をもたらした。
 瞬く間に、僕の魔道具は王都中で話題となり、王家からの信頼も寄せられるようになる。

 ある日、グラハム院長が、壮年の男性を僕のもとに案内してきた。

「リヒト殿、国王陛下だ…」
「あ、え?…え…?」

 グラハム院長の紹介に、僕は大慌て。
 が、国王陛下の微笑みに我に返り、たどたどしいが臣下の礼をとる。

「よいよい。リヒトであったか?」
「はい」
「そなたの魔導具は、この王国に多大な恩恵をもたらしている。
 魔力に頼らない技術は、まさに時代の夜明けだ」

 国王陛下直々にそう褒めれて、僕の心臓は激しく高鳴った。


 国王陛下も認めた僕を、民衆も「稀代の魔道具師」と呼び、称えた。

 その実績は、『アルバス家の名を汚した出来損ない』という、僕にまとわりついた過去の汚名をそそぐ。
 かつて「お前は家の恥だ」と罵られた僕が、今、王都で最も輝く魔道具師として脚光を浴びていた。

 しかし、僕の心には常に、あの村のあたたかな光景とアルバス家の冷たい視線があった。

(この名声は、僕を信じてくれた村の人々のために、そして、僕を否定したアルバス家への……)

 そこまで考えて、僕は首を横に振った。復讐のためではない。
 ただ、僕の魔道具が、誰かの役に立ち、人々を笑顔にできるのが、今の僕にとっての最高の喜びだ。

 いつしか巨万の富と名声が、僕の元に押し寄せるようになった。
 豪華な屋敷を与えられ、専属の使用人もついた。
 だが、僕は以前と変わらず、質素な生活をしている。
 唯一の贅沢は、研究に使える素材や資料が無限に手に入れることだった。

 僕は、古い魔道具書を買いあさり、片っ端から読んだ。
 国王陛下の許可で、王宮の図書室にも出入りできるようになり、研究に没頭していった。


「リヒト殿、こんなに素晴らしい魔道具を次々と生み出すとは、貴殿は本当に人間なのでしょうか?」
 
 グラハム院長が冗談めかして言う。
 僕は少し照れながら答えた。

「いえ、僕はただ、魔力がないからこそ、道具の本質を見極めようとしただけです。
 それに、僕の魔道具は、まだ完璧ではありません。
 もっと改良しなければならない点がたくさんあります」

 僕の謙遜の言葉に、グラハム院長は目を細め、深く頷いた。

「なるほど。その飽くなき探求心こそが、貴殿の真の才能なのだな」
「…ありがとう…ございます…」

 彼の言葉は、アルバス家の誰よりも、僕の心を温かく包み込んだ。
 僕のいる場所は、もうあの冷たい家ではない。
 ここにも、僕の技術を理解し、応援してくれる人々がいる。
 僕は、新たな居場所で、彼らの思いを裏切らないよう最高の魔道具師として生きていくのだ。
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