捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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第2章 流浪

戦い

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 村はずれから見る森は、不気味なほど静まり返っていた。
その薄明かりの中で、握りしめたタガーアポクリフォスの刀身が、微かに琥珀色の光を強めていくのが分かった。魔物の気配が近い。


ガサッ

 静寂を破るように、森の奥から唸り声と共に二体のゴブリンが現れた。
体長は僕と同じくらいだろうか。
醜い顔を歪ませ、鋭い牙を剥き出しにしている。
彼らは僕の姿を捉えると、獲物を見つけたかのように獰猛どうもうな眼差しで、僕を目掛けて突進してきた。

「「グルルルアアア!」」

 その咆哮ほうこうに、僕の体は本能的に後ずさろうとした。
だが、僕は必死に足を踏ん張り、タガーアポクリフォスを構える。
いや、ゴブリンに向かってタガーを向けるのがやっとだ。

 アルバス家の魔道具師ならば、強力な魔力を流しで瞬時に一掃するだろう。
だが、僕にはそれがない。
僕にあるのは、この短剣の力と、僕自身の研究だけだ。

(頼む!アポクリフォス!)

「「ぐが?」」

 ゴブリンから現れた黒いもやを短剣が吸い取ってゆく。
ゴブリンの動きが鈍くなると同時に、短剣タガーは琥珀色に強く輝きだした。

(確か…)

 僕は頭の中で、記憶するほどに覚えた禁断の書のページをめくる。

(相手に切っ先を向けて剣を振りおろす)

 僕は、短剣に吸い込まれた魔力を感じ、ゴブリンの一体に向かって空中を切った。
それは派手な魔法ではない。
短剣アポクリフォスが発したのは、空間そのものが歪むような、目に見えない衝撃波。

「グギャアアアッ!?」

ゴブリンは、突然、不可視の力に叩きつけられたように宙を舞い、森の木々に飛んで行った。
鈍い音と共に、木の幹が大きくきしみ、ゴブリンは、ぴくりとも動かなくなった。

 もう一体が、仲間が倒されたことに驚き、警戒しながら僕に飛びかかってくる。
僕は間髪入れずに、続く衝撃波を放った。

 ゴブリンは悲鳴を上げる間もなく、地面に叩き伏せられ、二度と立ち上がることはなかった。

 2体を倒したが、タガーアポクリフォスは、また琥珀色に輝き始めている。

(家畜を襲ったやつを仕留めなければ…)

 僕は、森の中へ進んでいった。

 ほどなく、低い唸り声が森の奥から響いてくる。
それは、地面を這うような、重く湿った音だった。

 ヒュー、ヒューと荒い息遣いと共に、巨大な影がゆっくりと姿を現す。
その姿は本で学ばされた、どの魔物とも違う、異様な迫力があった。

 全身を覆う煤けた黒色の体毛が、月の光を吸い込んで鈍く光る。
大きな口からは、僕の胴体ほどもある巨大な牙が、まるで歪んだ三日月のように突き出していた。
目は赤く充血し、獲物を探すように爛々こうこうと輝いている。

「…グリムボア?…うそだろ…」

 人喰いイノシシ。

 魔物の本の図に書かれていた注釈が頭をよぎる。
心臓が早鐘のように打ち、喉はカラカラに乾いてきた。

(これが、本当に人を殺す魔物)

 まだ離れているのにあまりにも強大で、あまりにも異質だ。
恐怖で足が竦む。
アポクリフォスは、僕の震える手に確かな熱を帯びていたが、僕の体は、まだこの恐ろしい現実を受け入れられずにいた。

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