捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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第2章 流浪

アポクリフォスの光

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 木陰に潜む僕に気づいたのか、グリムボアは地響きのする咆哮ほうこうを上げ、地面を蹴って突進してきた。
その巨体からは想像もできないほど速い。

 僕は木の密集したところをを選んで逃げた。
 
 アポクリフォスの刀身は、琥珀色に輝き、黒い文様がうごめき始めている。
周囲の魔力を次々と吸い込んでいるのだ。
僕の恐れとは関係なく、ただひたすらに。

 短剣アポクリフォスからは、不気味さや恐ろしさは感じられない。
これほど頼りになる相棒がいるだろうか。

 グリムボアの突進スピードが、わずかに緩んだ。
同時に、僕はほんの少しだが、体が楽になったような気がした。

 それらが、アポクリフォスの力だと直感する。
僕の心臓の鼓動はまだ速いが、張り詰めていた全身の筋肉が、わずかに緩んだ。

 かすかに震える手で、アポクリフォスを再びグリムボアの方向に向ける。
すると、短剣の魔力吸収は一層激しくなった。

 琥珀色の輝きがまぶしいほどに強くなり、刀身に浮かぶ黒い文様がまるで生き物のように激しく脈動する。

 魔力を吸い取られながらも、グリムボアは僕の方へ向かってくる。
体をよじり、低い唸り声を上げ、その目がさらに血走っていた。

 しかし、その動きは見る見るうちに鈍くなっていく。

 (あと少しだ)

 グリムボアが、最後の力を振り絞るように、もう一度大きく牙を突き出し、僕に迫ってきた。

 僕はタガーアポクリフォスを両手で構え、グリムボアへ向かって空中を切った。

 次の瞬間、グリムボアを中心に、目に見えないほど強大な衝撃波が四方へと広がった。
木や地面が大きく震え、まるで魔物が内側から爆発したかのような衝撃が起こる。
 僕自身も倒れそうになり、咄嗟に身を屈め、歯を食いしばった。

 やがて、衝撃が収まり、静寂が訪れる。

 グリムボアは、その場にぐたりと倒れ伏し、完全に動きを止めている。
その巨大な体には、外傷らしいものは見当たらない。

(……お、…おわった……)

 僕は、膝をつき、荒い息を繰り返す。
全身が汗で濡れ、アポクリフォスを握った手は、まだ震えている。



「何があった!」
「リヒト!大丈夫か!」

 近づく声に振り返ると、ガンツをはじめ、数人の村の男が走って来る。
僕を見つけた瞬間に、皆の顔には、驚愕と微かな希望の色が浮かんだ。

「……信じられん。本当に、魔物を……」

 ガンツが呟いた。
その声は震え、グリムボアを見つめる彼の瞳は、まるで奇跡でも見たかのように大きく見開かれていた。

「リヒト、どうやって… おぬし、本当に魔力がないというのか……?」

「……はい。僕に魔力はありません。
ただ、このタガーが、周囲の魔力を吸い込んで、それを力に変えているだけです」

 僕の言葉に、村人たちはざわめいた。
彼らにとって、魔力のない者が魔物を退けるなど、聞いたこともなかっただろう。

「なんかわかんねぇけど、ありがてぇ!」
「そうだ!ありがてぇ!」

 男たちが満面の笑みを向けてくれた。
握手やハイタッチを求めてくる。
僕の胸は喜びと、確かな達成感に満ちていた。

 僕は一人の肩を借り、みんなと一緒に村へと歩き始めた。
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