平成25年、あれから2年目の恋

みなわなみ

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美咲の過去

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 ​健太がこの町に来てから、半月が経とうとしていた。
 美咲は、これまで誰にも見せなかった笑顔を、健太の前では少しずつ見せるようになっている。
 ある日、健太がふと口にした言葉が、美咲の心を揺さぶった。

 ​「この町、海はきれいけど、ちょっと静かやな」

 ​その言葉に、美咲は顔を曇らせる。
 健太は、慌てて「ごめん、悪いこと言うた」と謝ったが、美咲は首を横に振った。

 そして、健太のほかに誰もいない夕暮れのカフェで、震える声で話し始めた。

 ​「…私、この町が大好きだったんです。家族と、この町で…幸せだった」

 ​美咲は、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
 健太は何も言わず、ただ静かに耳を傾けた。
 美咲は、戸惑いながらも、ずっと心に秘めていた思いを話し始める。

「あの日…津波が来るって、母から電話があったんです。父は、私に『走れ。振り返るな』って、メールを送ってきて…」

 ​美咲の声が震え、言葉が詰まる。
 健太は、ただ黙っていた。
 美咲は、無理に聞き出そうとしない温かさに、さらに涙がこぼれ落ちそうになる。

 ​「…私は、走りました。振り返らなかった。でも、そのせいで…家族は、私を探していたかもしれないのに…、おじいちゃんはここにいたら助かったはずなのに…私は…一人で…逃げた……私が…連絡してれば…」

 ​美咲は、自分を責めるように、何度も「私のせいだ」と繰り返す。
 健太は、美咲の言葉をさえぎることなく、ただ黙っていた。

 美咲が少し落ち着くと、健太は静かに口を開く。

「ちゃうよ、美咲さん。ちゃう。お父さんは、美咲さんに生きてほしかったんや。美咲さんが生き残ってくれたから、お父さんはきっと、喜んでる。
お父さんだけやない。ご家族みんな」

 ​美咲は、涙の溜まった瞳で健太を凝視する。

「美咲さんは、たった一人でこのカフェを守って、おじいさんの思いを継いでるんやろ?
 それは、家族の思い出を守ることや。すごいことや」

 ​健太の言葉は、美咲がずっと背負っていた罪悪感を、少しだけ軽くしてくれた。
 美咲は、初めて、誰かに自分の悲しみを打ち明け、そして、受け止めてもらえた気がした。
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