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皇太子殿下、話しすぎです

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「皆、そうかしこまるな。顔を上げよ。このような祝いの席で弟が騒ぎを起こしてすまぬ」

 さすが皇太子さまですわ。まず周りの者を気になさるなど。
 皇帝陛下のご名代の出席というのを差し引いても、素晴らしいですわ。

「クプスリスト」

「はっ」

「ロランダの申しておることに嘘はないぞ」

「はっ?」

われが頼んだからな」

「は?」

「我は皇太子として国を背負い婚姻を結ばねばならぬ。皇太子とはそういうものだと思っている。しかし、弟や妹たちは互いに求め合う者がおれば、結ばれてほしいと思っている。できる限りな」

「……」

「しかし、第二皇子のそなたは、我に何かあったときには我の代わりを務めてもらわねばならぬ。それはわかっておろう?」

「……はい」

「ならば、そなたの妻は皇太子妃の代わりを務めねばならぬこともある。そのようなとき、付け焼き刃では肩身が狭かろうと思ってな。ロランダに頼んだのだ。彼女は幼い頃からお妃教育を受けていたからな」

 そう。私は物心ついた頃からクプスリスト殿下の許嫁いいなづけとして暮らしてきた。
 幼い頃から言葉遣い、気配り、立ち振舞いはもちろん、ダンスや音楽、我が国の歴史、経済、産業、などなど…。

 お勉強は主に立ったまま。
 儀式の時に、笑顔を浮かべながら姿勢を正して立つ訓練を兼ねるのですわ。
 クラウディア様は半時間で逃げ出しましたけど、私は6時間は平気ですわ。
 それ以上続けようとすると、侍女に止められましたの。


「兄上は、この賭けをご存じだったのですか?」

 クプスリスト殿下の声がかすかに震えているのは怒りのせいかしら?

「ん? もちろん存じておったぞ。我が仕掛けたからな」

 のんびりしたオトフリート 皇太子殿下の声に、クプスリスト殿下が固まったような気がします。

「それはそうであろう? そなたのクラウディア嬢への愛情、クラウディア嬢のそなたへの愛情、その深さを見極めねばなるまい?」

「そのように試すようなこと……」

「ロランダとの婚約を推したのは皇帝陛下と皇妃殿下だぞ。その2人を説得せねばなるまい?」

「それは…そう…ですが…」

「クプスリスト、我は『婚約破棄はせぬ』に賭けた。大損だ…」

 オトフリート殿下がガックリと肩を落とします。

「あ、兄上?」

「なんとかクラウディア嬢を引き剥がそうとしたんだがな……」

「ここのところ兄上が社交界に熱心だったのは……」

「ハハッ、今ごろ気づいたか。そなたと踊っている女性の手を横取りできるのは我ぐらいであろう?」

 ニヤッと笑うオトフリート殿下。黒い、黒いですわ。でも、その黒い笑顔さえまばゆい。
 クプスリスト様は、もう言葉を発することも出来ないようですわね。
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