2 / 96
運命の出会い?
しおりを挟む
街はずれに小高い丘がある。
その麓には子供の背丈ほどの低木が広がり、薬草もちらほら生えている。
街から遠く離れた森に行くほど訪れる人も少ないので当然薬草がたくさん残っているが、その道中、不届きな輩や魔物と遭遇する確率も高くなる。
ゲームのヒロインだったら、危ないところをヒーローという名の攻略対象者が助けに来てくれてーとかになるんだろうけど、そうは問屋が卸さない。
こちとらアンチ攻略対象者。
そんなフラグが立つっぽいことは、当然回避の一択。
なので、近場の安全な低木の茂みで薬草狩りだ。
だがしかし、なかなかどうして薬草は見つからない。
同じこと考える人間はたくさんいるんだなー。
しゃがんで低木の根元を隈なく探すが、薬草の刈り取られた跡ばかり。
うーん、作戦を変更するべきか。
早くも壁にぶち当たっているよ、ふぅ。
地面に体育座りをして今後の方針を思案していると、後ろの方でカサカサ何かが擦れる音がした。
動物でもいるのかと振り返って驚いた。
真っ黒な蝙蝠みたいな翼と、鳥にしては少し長い首を持った金眼の生き物がこちらを見ていた。
うーん、これはもしやのドラゴンか?
ドラゴンものの物語は大好きだ。
だが、目の前の生き物は黒くツヤツヤとしていて、何だか犬の濡れた鼻の頭のようで触り心地に不安を感じる。
背に乗って青空を滑空する・・・には、その身体は小型犬並みと心許ない。
潰してしまいそうだ。
しかし、漆黒の身体にクリクリの金眼にぽてぽてした白いお腹はかなり愛くるしい。
白い部分は何だかマシュマロを彷彿とさせるなあ。
あのポテ腹を触ってみたい・・・。
互いに言葉も無くじーっと凝視していると、諦めたのかドラゴンが目を逸らした。
そしてこちらに背を向けようとしたが、フラフラしてバランスが取れていない。
よく見ると右の翼が破けている。
血こそ出ていないが、穴の空いた翼じゃ飛べないだろうに。
「ちょっと待って」
私の言葉に少し驚いたようだが、振り返ったドラゴンの金眼は半眼だった。
悲しいかな、胡散臭い奴に思われていそう・・・。
「痛むの?」
尋ねるとドラゴンは首を振った。
おや、素直。
言葉を理解できるのね。
ここは翼を治して恩を売っておけば、今後何か役に立ってくれるかも。
例えば攻略対象者に刺されそうになったら、大きくなって建物の天井を破壊しながら助けに来てくれるとか。
やっぱり、ドラゴンは大きくなってなんぼよね!
「あなた大きくなれるの?」
つい好奇心で聞いてみたが、首を傾げるだけで答えになっていない。
うーん、言葉が通じなければ助けに来てもらえないじゃない。
まあ、ドラゴンさんとの相互愛が叶えば例え小さくても、きっと助けに来てくれる。
それに、あのポテ腹に触らせてくれるかも。
「翼に触っても良いかしら?」
いきなり触って火でも吹かれたらたまらん。
小さくても猛獣には違いない。
ちゃんと許可を得てから触りましょう。
ちびドラゴン、略してちびドラは訝しげにじっと私を見据えた後、身体のわりに長い首をこくんと動かした。
右の翼の付け根近く、丸に近い形の穴が3箇所もあった。
石でも投げられたのか?
因みに翼の触り心地はやはり湿っぽい・・・泣。
「治しても良い?」
私の言葉にちびドラの瞳孔が拡がった。
私はにっこり笑うと、目を閉じ両の掌で翼を挟むようにして仄暗い温かい光を募らせる。
これ、光魔法ではない。
実は闇魔法なのだ。
世の中には回復魔法は光魔法が一般的、というか光魔法でないと回復出来ないと考えられている。
がしかし、私の持つ光魔法はなんと爆撃魔法、つまりは攻撃魔法だけなのだ。
光魔法で回復して下さい、と言われたら、あなた爆発しますよ、としか言えない・・・とほほ。
そして私の持つもう一つの属性、闇魔法は何と治癒魔法なのだ。
治癒ですよ、治癒。
闇魔法が、ですよ。
闇で治るなんて思いつきもしないでしょ。
光魔法使いもレアだけど闇魔法使いは激レアというか、自分で言うのも何ですが、伝説級なのですよ。
見つかったら最後、死ぬまで王宮から出して貰えない。
このVIP級のスペックとチートさが、ヒロインたる所以だと思うのよね。
まあ、今目の前にいるのはイケメンとは程遠いちびドラ。
攻略対象者でなければヒロイン感出してもフラグは立たんでしょ。
掌にあったピリピリとした感触が次第に滑らかに変わっていき、翼が再生されていくのを実感する。
掌の仄暗い光が消え、目を開ける。
穴の開いていた右の翼は左側と同じように美しく艶めき、穴の開いた箇所は全て再生されていた。
ドヤァー!と言わんばかりに満面の笑みを浮かべてちびドラを見る。
ちびドラはまん丸金眼を限界まで見開き、恐る恐る動かして翼を確かめている。
その場で左右の翼を強く羽ばたかせ、両足を蹴って浮き上がった。
おおー、こりゃ飛べそうだね。
良か良か。
地面に座っている私の頭くらいの高さまで浮かぶと、頭の上をクルクル旋回し始めた。
そのまま飛び去るかと思ったが、私の膝の上に降りてきた。
うん?
礼でも言うのか?
「・・・驚いたな、闇の治癒魔法なんて初めて見たぞ」
おっ、喋ったぞ。
さすがはドラゴンさん、知能も高くていらっしゃる。
だが、何だか嫌な予感がする。
喋れるドラゴンって、物語とかでは鍵となる存在なのでは?
このままこの子と仲良くなることで、何かのフラグが立ちそうな気がするのだ。
これ以上、余計な行動をせずにひとまずずらかろう。
「それではドラゴンさん、ご機嫌よう」
私は顔に笑顔を張り付けながら立ち上がり、後退った。
ちびドラは怪訝な顔をして、私の頭の上に着地した。
爪が頭皮に食い込んで地味に痛いです・・・泣。
「おい、そう慌てて去ることもなかろう?」
「いや、早くお家に帰りたいんです。用事がありまして」
「まだ自己紹介もしていない、俺は・・」
「あ、そういうのはいいんで」
「俺に興味は無いのか?」
「はい、まったく」
「俺はお前に興味があるが」
「そういうのも要らないんで」
「お前、可愛くないな」
「それはお礼ということですね」
では、と立ち去ろうとする私に根負けしたとばかりに、頭の上からちびドラの首が垂れ下がってきた。
「失言だった。助けてもらっておきながら無礼な事を言った。謝罪する」
「私が勝手にしたことです。お礼も要りません。とにかく私のことは忘れてください」
「・・・闇魔法使いだと知れるのを恐れているのか?」
「そうです。だからここで会った事は忘れてください」
「簡単に忘れることは出来んが、誰にも話さないことは約束しよう」
「ありがとうございます。それでは今度こそご機嫌よう」
「いや、俺はもう少しお前と話がしたいのだが?」
やけに食い下がるドラゴンね。
はっ!
まさかフラグか?
攻略対象者の誰かと繋がっているのか?
背中に嫌な汗が流れる。
「・・・何を話したいんですか?」
「そう警戒するな」
今日は全く薬草が採れなかった。
国外脱出に向け準備を進めなければならないのに、収穫ゼロ。
早く帰って計画の見直しをしたいが、ちびのくせにやたら上から目線のドラゴンに捕まっている。
「お前の名は何という?」
「好きに呼んでください」
「お前、それは・・・」
「明日以降二度と会わないので、名前は互いに必要ありません」
「勝手に決めるな」
「明日以降も私に纏わりつく気ですか?」
「お前が名乗らなければそうしよう」
ほう?
こいつ私にストーカー行為を働くつもりだと?
このちびドラ、大きくなれないのよね?
なら、私の爆撃魔法でトカゲの黒焼きをつくってみせようか。
いつまで私の頭で休憩しているわけ?
頭の上で寛ぐちびドラを右手で鷲掴みにし、左手に握り拳を作った。
前世のオバサン人生でも、空手やってましたからね。
瓦割りもやった事ありますよ。
「もう一度、翼に穴を開けてやろう・・・」
ドスを効かせた低い声で唸るように言い放った。
「おい、落ち着け」
「悪いドラゴンはここで成敗する」
「はあ、いいだろう。付け回しはしない。名前も嫌なら必要ない」
私は拳の力を抜いてドラゴンを解放した。
「で、何が聞きたいんです?」
「・・・ここで何をしていた?」
「薬草を探していたんです」
「ここは町に近いから、目欲しいものは残っていないぞ」
「分かってます。でも、遠く離れた森に行くには時間もかかるし、何より護衛が必要です。そんなお金、うちにはありません。だから、数が少なくても安全な近場で採取するしかないんです」
少し間があって、ちびドラが口を開いた。
「ならば、俺が連れて行ってやろう」
?
その身体でどうやって?
もしかして、この子、こんなに小さいけれど私を咥えて飛ぶくらいの力持ちなの?
ちびドラは地面に降り立ち両翼を広げ、私を見上げた。
「おい、俺の額に手を当てろ」
小さいくせに上から目線なちびドラだ。
偉そうな物言いだが、ぷっくり出たお腹が子供らしくて思わず笑みが零れる。
ここは大人の余裕で言うとおりにしてやろう。
屈んでちびドラの目線に合わせようとしたが、彼は地面から飛び上がった。
「目を閉じろ」
立ったまま、左掌をちびドラの額に翳して目を閉じる。
すると、左掌に温かい魔力が湧き起こってきた。
暗闇の中、ちびドラから光を感じる。
と、自分たちは光の渦の中にいるようで、目を瞑っているのに眩しくてお思わず右手で目を覆ってしまった。
!!
一瞬、左眼の奥にジリっと焼けるような痛みを感じた。
あまりにも強い光だったから、網膜が焼けちゃうほどだったのかな?
危ない危ない、失明しちゃう。
この光って、もしかして転移魔法か何か?
なんか、それ、楽しそう。
光が落ち着く気配がして目を開けると、そこには大人の2倍くらいのちびドラがいた。
あ、もうチビじゃないから、ただのドラゴンか。
うーん、あれだけ盛大に光ったら、ここは時空移動、転移魔法でしょう。
でも景色は変わらず、変わったのはドラゴンのサイズだけだった。
わくわくして損した気分だ。
「なんだあ、大きくなれるんだ。てっきり転移魔法が発動したのかと思ったのに」
「・・・どこまでも失礼な奴だな」
大人サイズドラゴンは顔もそれなりの大きさになったからか、何だか人が中に入っているみたいで変な感じだ。
「ほら、この大きさならお前も背中に乗れるだろう?」
「え?ここに乗るんですか?なんかゴツゴツしていて乗り心地悪そうですけど?」
「お前、遠慮って言葉を知らないのか?」
「遠慮したせいで落下でもしたら、どうしてくれるんです?」
「そんなヘマはしない」
「過去に人を乗せて飛んだこと、あるんですか?」
「・・・」
眼を逸らすドラゴンをジト目でみる。
「落ちて死んだら、化けて付き纏いますからね」
仕方なく背中に跨り腰を下ろす。
翼の外側は産毛のような柔らかい毛で覆われており、モフモフとまではいかないが感触は良い。
ちびドラの時と違い、背中は鱗だけでなく少し長い鬣が生えている。
落ちそうになったら、引っこ抜けるほど強く鷲掴みにしてやる。
ふふふ、そうしたらハゲドラの出来上がりだ。
小さい時はちびドラ、大人サイズになったらハゲドラと呼ぼう。
「・・・何を考えてるか分からんが、お前不気味だぞ」
ひとり忍び笑いをする私に、ハゲドラ(仮)は呆れた口調で言った。
そう言うあなたも、乙女に対してかなり失礼ですけど?
その麓には子供の背丈ほどの低木が広がり、薬草もちらほら生えている。
街から遠く離れた森に行くほど訪れる人も少ないので当然薬草がたくさん残っているが、その道中、不届きな輩や魔物と遭遇する確率も高くなる。
ゲームのヒロインだったら、危ないところをヒーローという名の攻略対象者が助けに来てくれてーとかになるんだろうけど、そうは問屋が卸さない。
こちとらアンチ攻略対象者。
そんなフラグが立つっぽいことは、当然回避の一択。
なので、近場の安全な低木の茂みで薬草狩りだ。
だがしかし、なかなかどうして薬草は見つからない。
同じこと考える人間はたくさんいるんだなー。
しゃがんで低木の根元を隈なく探すが、薬草の刈り取られた跡ばかり。
うーん、作戦を変更するべきか。
早くも壁にぶち当たっているよ、ふぅ。
地面に体育座りをして今後の方針を思案していると、後ろの方でカサカサ何かが擦れる音がした。
動物でもいるのかと振り返って驚いた。
真っ黒な蝙蝠みたいな翼と、鳥にしては少し長い首を持った金眼の生き物がこちらを見ていた。
うーん、これはもしやのドラゴンか?
ドラゴンものの物語は大好きだ。
だが、目の前の生き物は黒くツヤツヤとしていて、何だか犬の濡れた鼻の頭のようで触り心地に不安を感じる。
背に乗って青空を滑空する・・・には、その身体は小型犬並みと心許ない。
潰してしまいそうだ。
しかし、漆黒の身体にクリクリの金眼にぽてぽてした白いお腹はかなり愛くるしい。
白い部分は何だかマシュマロを彷彿とさせるなあ。
あのポテ腹を触ってみたい・・・。
互いに言葉も無くじーっと凝視していると、諦めたのかドラゴンが目を逸らした。
そしてこちらに背を向けようとしたが、フラフラしてバランスが取れていない。
よく見ると右の翼が破けている。
血こそ出ていないが、穴の空いた翼じゃ飛べないだろうに。
「ちょっと待って」
私の言葉に少し驚いたようだが、振り返ったドラゴンの金眼は半眼だった。
悲しいかな、胡散臭い奴に思われていそう・・・。
「痛むの?」
尋ねるとドラゴンは首を振った。
おや、素直。
言葉を理解できるのね。
ここは翼を治して恩を売っておけば、今後何か役に立ってくれるかも。
例えば攻略対象者に刺されそうになったら、大きくなって建物の天井を破壊しながら助けに来てくれるとか。
やっぱり、ドラゴンは大きくなってなんぼよね!
「あなた大きくなれるの?」
つい好奇心で聞いてみたが、首を傾げるだけで答えになっていない。
うーん、言葉が通じなければ助けに来てもらえないじゃない。
まあ、ドラゴンさんとの相互愛が叶えば例え小さくても、きっと助けに来てくれる。
それに、あのポテ腹に触らせてくれるかも。
「翼に触っても良いかしら?」
いきなり触って火でも吹かれたらたまらん。
小さくても猛獣には違いない。
ちゃんと許可を得てから触りましょう。
ちびドラゴン、略してちびドラは訝しげにじっと私を見据えた後、身体のわりに長い首をこくんと動かした。
右の翼の付け根近く、丸に近い形の穴が3箇所もあった。
石でも投げられたのか?
因みに翼の触り心地はやはり湿っぽい・・・泣。
「治しても良い?」
私の言葉にちびドラの瞳孔が拡がった。
私はにっこり笑うと、目を閉じ両の掌で翼を挟むようにして仄暗い温かい光を募らせる。
これ、光魔法ではない。
実は闇魔法なのだ。
世の中には回復魔法は光魔法が一般的、というか光魔法でないと回復出来ないと考えられている。
がしかし、私の持つ光魔法はなんと爆撃魔法、つまりは攻撃魔法だけなのだ。
光魔法で回復して下さい、と言われたら、あなた爆発しますよ、としか言えない・・・とほほ。
そして私の持つもう一つの属性、闇魔法は何と治癒魔法なのだ。
治癒ですよ、治癒。
闇魔法が、ですよ。
闇で治るなんて思いつきもしないでしょ。
光魔法使いもレアだけど闇魔法使いは激レアというか、自分で言うのも何ですが、伝説級なのですよ。
見つかったら最後、死ぬまで王宮から出して貰えない。
このVIP級のスペックとチートさが、ヒロインたる所以だと思うのよね。
まあ、今目の前にいるのはイケメンとは程遠いちびドラ。
攻略対象者でなければヒロイン感出してもフラグは立たんでしょ。
掌にあったピリピリとした感触が次第に滑らかに変わっていき、翼が再生されていくのを実感する。
掌の仄暗い光が消え、目を開ける。
穴の開いていた右の翼は左側と同じように美しく艶めき、穴の開いた箇所は全て再生されていた。
ドヤァー!と言わんばかりに満面の笑みを浮かべてちびドラを見る。
ちびドラはまん丸金眼を限界まで見開き、恐る恐る動かして翼を確かめている。
その場で左右の翼を強く羽ばたかせ、両足を蹴って浮き上がった。
おおー、こりゃ飛べそうだね。
良か良か。
地面に座っている私の頭くらいの高さまで浮かぶと、頭の上をクルクル旋回し始めた。
そのまま飛び去るかと思ったが、私の膝の上に降りてきた。
うん?
礼でも言うのか?
「・・・驚いたな、闇の治癒魔法なんて初めて見たぞ」
おっ、喋ったぞ。
さすがはドラゴンさん、知能も高くていらっしゃる。
だが、何だか嫌な予感がする。
喋れるドラゴンって、物語とかでは鍵となる存在なのでは?
このままこの子と仲良くなることで、何かのフラグが立ちそうな気がするのだ。
これ以上、余計な行動をせずにひとまずずらかろう。
「それではドラゴンさん、ご機嫌よう」
私は顔に笑顔を張り付けながら立ち上がり、後退った。
ちびドラは怪訝な顔をして、私の頭の上に着地した。
爪が頭皮に食い込んで地味に痛いです・・・泣。
「おい、そう慌てて去ることもなかろう?」
「いや、早くお家に帰りたいんです。用事がありまして」
「まだ自己紹介もしていない、俺は・・」
「あ、そういうのはいいんで」
「俺に興味は無いのか?」
「はい、まったく」
「俺はお前に興味があるが」
「そういうのも要らないんで」
「お前、可愛くないな」
「それはお礼ということですね」
では、と立ち去ろうとする私に根負けしたとばかりに、頭の上からちびドラの首が垂れ下がってきた。
「失言だった。助けてもらっておきながら無礼な事を言った。謝罪する」
「私が勝手にしたことです。お礼も要りません。とにかく私のことは忘れてください」
「・・・闇魔法使いだと知れるのを恐れているのか?」
「そうです。だからここで会った事は忘れてください」
「簡単に忘れることは出来んが、誰にも話さないことは約束しよう」
「ありがとうございます。それでは今度こそご機嫌よう」
「いや、俺はもう少しお前と話がしたいのだが?」
やけに食い下がるドラゴンね。
はっ!
まさかフラグか?
攻略対象者の誰かと繋がっているのか?
背中に嫌な汗が流れる。
「・・・何を話したいんですか?」
「そう警戒するな」
今日は全く薬草が採れなかった。
国外脱出に向け準備を進めなければならないのに、収穫ゼロ。
早く帰って計画の見直しをしたいが、ちびのくせにやたら上から目線のドラゴンに捕まっている。
「お前の名は何という?」
「好きに呼んでください」
「お前、それは・・・」
「明日以降二度と会わないので、名前は互いに必要ありません」
「勝手に決めるな」
「明日以降も私に纏わりつく気ですか?」
「お前が名乗らなければそうしよう」
ほう?
こいつ私にストーカー行為を働くつもりだと?
このちびドラ、大きくなれないのよね?
なら、私の爆撃魔法でトカゲの黒焼きをつくってみせようか。
いつまで私の頭で休憩しているわけ?
頭の上で寛ぐちびドラを右手で鷲掴みにし、左手に握り拳を作った。
前世のオバサン人生でも、空手やってましたからね。
瓦割りもやった事ありますよ。
「もう一度、翼に穴を開けてやろう・・・」
ドスを効かせた低い声で唸るように言い放った。
「おい、落ち着け」
「悪いドラゴンはここで成敗する」
「はあ、いいだろう。付け回しはしない。名前も嫌なら必要ない」
私は拳の力を抜いてドラゴンを解放した。
「で、何が聞きたいんです?」
「・・・ここで何をしていた?」
「薬草を探していたんです」
「ここは町に近いから、目欲しいものは残っていないぞ」
「分かってます。でも、遠く離れた森に行くには時間もかかるし、何より護衛が必要です。そんなお金、うちにはありません。だから、数が少なくても安全な近場で採取するしかないんです」
少し間があって、ちびドラが口を開いた。
「ならば、俺が連れて行ってやろう」
?
その身体でどうやって?
もしかして、この子、こんなに小さいけれど私を咥えて飛ぶくらいの力持ちなの?
ちびドラは地面に降り立ち両翼を広げ、私を見上げた。
「おい、俺の額に手を当てろ」
小さいくせに上から目線なちびドラだ。
偉そうな物言いだが、ぷっくり出たお腹が子供らしくて思わず笑みが零れる。
ここは大人の余裕で言うとおりにしてやろう。
屈んでちびドラの目線に合わせようとしたが、彼は地面から飛び上がった。
「目を閉じろ」
立ったまま、左掌をちびドラの額に翳して目を閉じる。
すると、左掌に温かい魔力が湧き起こってきた。
暗闇の中、ちびドラから光を感じる。
と、自分たちは光の渦の中にいるようで、目を瞑っているのに眩しくてお思わず右手で目を覆ってしまった。
!!
一瞬、左眼の奥にジリっと焼けるような痛みを感じた。
あまりにも強い光だったから、網膜が焼けちゃうほどだったのかな?
危ない危ない、失明しちゃう。
この光って、もしかして転移魔法か何か?
なんか、それ、楽しそう。
光が落ち着く気配がして目を開けると、そこには大人の2倍くらいのちびドラがいた。
あ、もうチビじゃないから、ただのドラゴンか。
うーん、あれだけ盛大に光ったら、ここは時空移動、転移魔法でしょう。
でも景色は変わらず、変わったのはドラゴンのサイズだけだった。
わくわくして損した気分だ。
「なんだあ、大きくなれるんだ。てっきり転移魔法が発動したのかと思ったのに」
「・・・どこまでも失礼な奴だな」
大人サイズドラゴンは顔もそれなりの大きさになったからか、何だか人が中に入っているみたいで変な感じだ。
「ほら、この大きさならお前も背中に乗れるだろう?」
「え?ここに乗るんですか?なんかゴツゴツしていて乗り心地悪そうですけど?」
「お前、遠慮って言葉を知らないのか?」
「遠慮したせいで落下でもしたら、どうしてくれるんです?」
「そんなヘマはしない」
「過去に人を乗せて飛んだこと、あるんですか?」
「・・・」
眼を逸らすドラゴンをジト目でみる。
「落ちて死んだら、化けて付き纏いますからね」
仕方なく背中に跨り腰を下ろす。
翼の外側は産毛のような柔らかい毛で覆われており、モフモフとまではいかないが感触は良い。
ちびドラの時と違い、背中は鱗だけでなく少し長い鬣が生えている。
落ちそうになったら、引っこ抜けるほど強く鷲掴みにしてやる。
ふふふ、そうしたらハゲドラの出来上がりだ。
小さい時はちびドラ、大人サイズになったらハゲドラと呼ぼう。
「・・・何を考えてるか分からんが、お前不気味だぞ」
ひとり忍び笑いをする私に、ハゲドラ(仮)は呆れた口調で言った。
そう言うあなたも、乙女に対してかなり失礼ですけど?
1
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!
nineyu
ファンタジー
男は絶望していた。
使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。
しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!
リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、
そんな不幸な男の転機はそこから20年。
累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる