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収監?されました
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結局、あの後ジークさんは黙り込んでしまい、ドラゴンさんをネタにお友達になることは叶わなかった。
そして、とうとう着いてしまったのだ、皇城に。
馬車が着いた先は、城壁内の中心と思しき建物からはかなり距離がある離宮のような建物だった。
やたら高い尖塔もあり、このてっぺんが私の放り込まれる監獄なのかと溜息が出る。
いや、逆にこの高さの方が、ドラゴンさんが助けに来やすいんじゃないか?
彼は言っていた、私を命の恩人と。
これは期待できるのでは!
何たって私、ヒロインですから。
あれ?
ヒロインぶった切るって言ってたの誰だ?
ヒロイン降りても助けに来てくれるよね、ドラゴンさん・・・涙。
「おい、また阿保なこと考えているんじゃなかろうな?」
尖塔を見上げて考え込んでいた私に、ジークさんは手を差し出しながら言った。
おっ、馬車から降りるのを手伝ってくれるのか。
口は悪いが紳士な美人さんだ。
遠慮なく、ジークさんの手を借りる。
と、そのまま手を握り込まれ引っ張られると、何と再び肩に担がれてしまった。
おいっ、乱暴だな!
紳士な美人はどこ行った?
馬車から引っ張り出されて周りをよく見ると、何人もの宮仕えと思われる執務服を着た男性やお仕着せの女性が頭を下げて出迎えてくれていた。
あれ?
警察官のお出迎えって、警察官さんたちじゃないの?
「お前の住まいはこっちだ」
うっへーっ。
このまま尖塔に放り込まれるのかー。
しかし、彼が歩いて行った先は建物の中だった。
おや?
尖塔では無いの、私の住まいは?
むっ?
もしや地下牢?
うーん、地下ならちびドラさんが忍び込みやすいかな?
あら、何処に放り込まれても助けに来てくれそうじゃないの、笑。
「お前、本当にその薄ら笑い怖いぞ」
後ろ向きに担がれた私の顔はジークさんからは見えない筈なのに、何で分かるのかな?
やっぱりこの人、目が8個あるんだな。
彼とは逆を向いているので進んでいる先が見えないけれど、何だか宮殿のような豪奢な内装の回廊だった。
こんな所に牢屋は無いだろうから、まずは取調室に連行ということか?
暫く進むと彼は一旦止まり、やや重そうな扉の開く音がした。
部屋に入ると開いた扉がまた閉まる。
よく見ると、警備の人が頭を下げながら扉を閉めていた。
後ろへと流れる景色を見る限り、もう廊下を歩いているのではなく室内だと思うのだけれど、ジークさんの歩みは止まらない。
前世で言う体育館並みの部屋か?
すると、ガンっと凄い音がした。
どうやらジークさんが蹴飛ばしたようで、また扉をくぐって別の部屋に入る。
暴力反対。
下ろしてくれたら、私が扉くらい開けてやるのに。
やっと止まったと思ったら、ベッドの上に放り出された。
おお、ふかふかだ!
ってか、ここは何処だ?
「今日からここがお前の住処だ」
へえ?
こんな立派なお部屋に住まわせて頂けるので?
部屋は体育館ほどではないが、ホテルのスイートルームよりは大きいのではと思う広さだ。
天井も高く、壁に取り付けられた窓もかなりの高さだ。
外に続くテラスは宴会が出来そうなほど広い。
備え付けの椅子や文机、箪笥にソファーなどの調度品も見るからに豪華だ。
自分が放り出されたこのベッドも、ふかふかで天蓋付きだ。
「どうだ、気に入ったか?」
「あの、帝国の牢屋って凄く居心地良さそうなんですね。犯罪者が増えちゃいませんか?」
「・・・どうしてこう、お前と話していると疲れるのか・・・」
ジークさんは額に手を当てながら、私の横にボスンと音を立てて座った。
「どのくらい服役すれば釈放して貰えるんですか?」
「釈放は無いと思え」
「え!!終身刑?!」
「あんなモノ作ったんだ、国外に出たらそれこそブラックリスト入りだぞ」
「そんなぁー」
「他国に渡って一生暗殺者に追われるか、ここに一生留まるか、ふたつにひとつだ」
「第三の選択肢は無いんですか?」
「言ってみろ」
「実はクセポは欠陥品で、数日後には元通りになっちゃいますー」
「死ぬ選択肢が増えただけだろ」
善良な市民だったのに、どうしてこんな事に・・・。
乙女ゲーのストーリーから外れて色々やらかしたから、やっぱりバッドエンドって事なの?
こんなに頑張ったのに、ハッピーになれないの?
ううっ・・・。
「だから、死にたくなければここに居ろ」
「で、でも、自由が無いなんてっ」
こうも早くバッドエンドが確定してしまった私は、悔しくてボロボロに泣き出した。
それを見たジークさんは、金眼をまん丸にしてほんの少しだけ焦った様子だった。
「ほとぼりが冷めたら出してやる。だから、それまではここに居るんだ、良いな?」
「ほっ、ほんとっですか?!」
睨みつけながらも涙が止まらない私に、遂には頭を撫でて宥めてくれた。
「ぜ、ぜ、絶対っ、です、っよ?!」
「ああ、分かったから、もう泣きやめ」
「無理です!ジークさんが酷いことばかり、言うから、暫く泣き止みませんっ!」
「はあぁ・・・」
呆れながらも、私がしゃくり上げるのが止まるまでジークさんは頭を撫で続けてくれた。
そして、とうとう着いてしまったのだ、皇城に。
馬車が着いた先は、城壁内の中心と思しき建物からはかなり距離がある離宮のような建物だった。
やたら高い尖塔もあり、このてっぺんが私の放り込まれる監獄なのかと溜息が出る。
いや、逆にこの高さの方が、ドラゴンさんが助けに来やすいんじゃないか?
彼は言っていた、私を命の恩人と。
これは期待できるのでは!
何たって私、ヒロインですから。
あれ?
ヒロインぶった切るって言ってたの誰だ?
ヒロイン降りても助けに来てくれるよね、ドラゴンさん・・・涙。
「おい、また阿保なこと考えているんじゃなかろうな?」
尖塔を見上げて考え込んでいた私に、ジークさんは手を差し出しながら言った。
おっ、馬車から降りるのを手伝ってくれるのか。
口は悪いが紳士な美人さんだ。
遠慮なく、ジークさんの手を借りる。
と、そのまま手を握り込まれ引っ張られると、何と再び肩に担がれてしまった。
おいっ、乱暴だな!
紳士な美人はどこ行った?
馬車から引っ張り出されて周りをよく見ると、何人もの宮仕えと思われる執務服を着た男性やお仕着せの女性が頭を下げて出迎えてくれていた。
あれ?
警察官のお出迎えって、警察官さんたちじゃないの?
「お前の住まいはこっちだ」
うっへーっ。
このまま尖塔に放り込まれるのかー。
しかし、彼が歩いて行った先は建物の中だった。
おや?
尖塔では無いの、私の住まいは?
むっ?
もしや地下牢?
うーん、地下ならちびドラさんが忍び込みやすいかな?
あら、何処に放り込まれても助けに来てくれそうじゃないの、笑。
「お前、本当にその薄ら笑い怖いぞ」
後ろ向きに担がれた私の顔はジークさんからは見えない筈なのに、何で分かるのかな?
やっぱりこの人、目が8個あるんだな。
彼とは逆を向いているので進んでいる先が見えないけれど、何だか宮殿のような豪奢な内装の回廊だった。
こんな所に牢屋は無いだろうから、まずは取調室に連行ということか?
暫く進むと彼は一旦止まり、やや重そうな扉の開く音がした。
部屋に入ると開いた扉がまた閉まる。
よく見ると、警備の人が頭を下げながら扉を閉めていた。
後ろへと流れる景色を見る限り、もう廊下を歩いているのではなく室内だと思うのだけれど、ジークさんの歩みは止まらない。
前世で言う体育館並みの部屋か?
すると、ガンっと凄い音がした。
どうやらジークさんが蹴飛ばしたようで、また扉をくぐって別の部屋に入る。
暴力反対。
下ろしてくれたら、私が扉くらい開けてやるのに。
やっと止まったと思ったら、ベッドの上に放り出された。
おお、ふかふかだ!
ってか、ここは何処だ?
「今日からここがお前の住処だ」
へえ?
こんな立派なお部屋に住まわせて頂けるので?
部屋は体育館ほどではないが、ホテルのスイートルームよりは大きいのではと思う広さだ。
天井も高く、壁に取り付けられた窓もかなりの高さだ。
外に続くテラスは宴会が出来そうなほど広い。
備え付けの椅子や文机、箪笥にソファーなどの調度品も見るからに豪華だ。
自分が放り出されたこのベッドも、ふかふかで天蓋付きだ。
「どうだ、気に入ったか?」
「あの、帝国の牢屋って凄く居心地良さそうなんですね。犯罪者が増えちゃいませんか?」
「・・・どうしてこう、お前と話していると疲れるのか・・・」
ジークさんは額に手を当てながら、私の横にボスンと音を立てて座った。
「どのくらい服役すれば釈放して貰えるんですか?」
「釈放は無いと思え」
「え!!終身刑?!」
「あんなモノ作ったんだ、国外に出たらそれこそブラックリスト入りだぞ」
「そんなぁー」
「他国に渡って一生暗殺者に追われるか、ここに一生留まるか、ふたつにひとつだ」
「第三の選択肢は無いんですか?」
「言ってみろ」
「実はクセポは欠陥品で、数日後には元通りになっちゃいますー」
「死ぬ選択肢が増えただけだろ」
善良な市民だったのに、どうしてこんな事に・・・。
乙女ゲーのストーリーから外れて色々やらかしたから、やっぱりバッドエンドって事なの?
こんなに頑張ったのに、ハッピーになれないの?
ううっ・・・。
「だから、死にたくなければここに居ろ」
「で、でも、自由が無いなんてっ」
こうも早くバッドエンドが確定してしまった私は、悔しくてボロボロに泣き出した。
それを見たジークさんは、金眼をまん丸にしてほんの少しだけ焦った様子だった。
「ほとぼりが冷めたら出してやる。だから、それまではここに居るんだ、良いな?」
「ほっ、ほんとっですか?!」
睨みつけながらも涙が止まらない私に、遂には頭を撫でて宥めてくれた。
「ぜ、ぜ、絶対っ、です、っよ?!」
「ああ、分かったから、もう泣きやめ」
「無理です!ジークさんが酷いことばかり、言うから、暫く泣き止みませんっ!」
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呆れながらも、私がしゃくり上げるのが止まるまでジークさんは頭を撫で続けてくれた。
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