乙女ゲームは始まらない〜闇魔法使いの私はヒロインを降ります〜

えんな

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帝都にドナドナされました

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ジークさんの用意した馬車で連行されること1週間。

当然、このまま大人しく収監されるのを待つような私ではなかった。

脱走を図ること10回。

全て再捕獲されたけれど・・・涙。

この人、なんでここまで素早いの?

連行初日、護衛の警備隊の方々も寝静まった深夜、立ち寄った宿の一室に詰め込まれた私は窓からシーツを垂らして外に出たまでは良かったが、着地した目の前にいつの間にやらジークさんが立っていた。

それはそれは人の好さそうなお顔で一言、「戻れ」。

垂れ下がったシーツで簀巻きにされ、丸太よろしく担がれた私は元の部屋に投げ込まれた。

翌日の朝、前日の逃走劇が知れ渡ったのか、既に部屋の前に警備の方が立っていた。

強行突破は困難と考え、次に思いついたのは身代わり策だ。

朝食を持ってきてくれた宿のお嬢さんに頼み込み、服を取り換えてもらい給仕さんのふりをして部屋から脱出したのだ。

そのまま食材の買い出し宜しく裏口から出ようとしたところ、またしてもジークさんに捕まってしまった。

何故?!

捕まるたびに、恐怖が湧き起こる。

この人、ほんとに人間なの?

蜘蛛みたいに目が8個あるとか?

犬並みに嗅覚が鋭いとか?

蝙蝠みたいに超音波を感知するとか??

それに、不思議なことに左眼がチラチラするとジークさんがそこに居るのだ。

やっぱり、彼は何か電波をだせる生き物か何かか?



脱走の努力は全て水泡と化し、ジークさんと同じ馬車に乗せられ、今まさに帝都の外門をくぐってしまった。

こうなったら、牢屋で脱獄の機会を伺うしかない。

こっそり何か武器になりそうなものを下着の中にでも入れておかねば・・・。

うーん、いざとなったら爆撃魔法で牢屋を木っ端微塵にするという方法もある。

・・・だが、最終手段だ。

これ以上、罪を重ねてはいけない。

ん?

罪ってなんだ?

私、何もしてないんですけど?



「おい、相変わらずひとの話を聞かないな」



前に座るジークさんは、また溜息を吐いた。

もう何度見た光景だろう。

溜息ばかり吐いていたら老け込みそうなものだが、相変わらず若くて美しい。



「俺の話をよく聞いておけ」



聞いたところで逃がしてくれないだろうに。

だったら話半分だ。

取り敢えず、話を合わせる程度に聞いておいてやろう。



「皇城は魑魅魍魎の住処だ。できる限りお前を助けるが、お前の側にいつも居てやることは出来ない。ここでは誰も信用するな。余計なことは答えるな。いいな?」

「え?私を助けてくれるんですか?」

「はあーっ。お前、ほんとーに何も聞いていないのだな・・・」



そんな大事な事ならば、紙に書いてくれた方が何度も見返せて良いのだけれど。





帝都アーデンはひと際賑やかな街だった。

道路や街灯は整備され、歩道との境には緑が植えられている。

多くのお店はガラス張りで、人々が商品を買い求める姿が外からでも見える。

ラグーの週末市で感じたアットホームな空気と違い、洗礼された都会的な雰囲気だ。

街中では馬や馬車は見かけず、代わりに、前世で見た乗り合いバスのような箱車があちらこちらで動いている。



「魔導カートルだ。魔鉱石の魔力を使って、決まった経路を運行している」

「かなりの量の魔鉱石使うことになりますよね?」

「カートルだけではない。街灯や庶民の家庭で使われる水や火も、生活に必要なあらゆるものに魔鉱石の魔力で動く魔導機が使われている。ルシュカン国土には他国に輸出するほどの魔鉱石が埋蔵されているからな」



ジークさんはどこか誇らしげだ。

なるほど、帝都の暮らしが豊かなのは、魔鉱石による利便性を追求した結果なのか。



「その代わりに魔導機の技術を輸入しているんですか?」



馬車の外を見ながら問いかけたのだが、ジークさんからの返事が無い。

不審に思い窓から視線を移しジークさんを見ると、金眼を大きく広げ私を見ながら固まっていた。



私の顔に何か付いているのか?



「・・・驚いたな。お前がそのような考え方が出来るとは」 



むっ!

失礼だな、常識だろうに。





帝都の外門を通過した時から見えていたのに、1時間経ってもまだ皇城に着かなかった。

どんだけ遠いんだ?

どんだけデカいんだ?



「いつになったらお城に着くんですか?」

「1日もあれば着く」



え?

目的地が見えているのに、また途中で宿泊するの?



「ドラゴンさんならあっと言う間なのに」



何となく呟いてしまう。

そう言えば、ジークさんは何処でドラゴンさんと知り合ったのだろう?



「ジークさんとドラゴンさんの馴れ初めを教えてください」



私の質問に、ジークさんは分かりやすく半眼になった。



「・・・聞いてどうする?」

「可愛かったですか?」

「はあ?」

「偉そうな物言いをするくせに、お腹はぽてぽてしていて可愛いですよね?あっ、もしかして大きいサイズのドラゴンさんしか知りませんか?」

「・・・」



ジークさんはいつもの溜息も吐かず、顔を背けてしまった。

なんだあ、ドラゴンさん繋がりでジークさんとの親交を深めようと思ったのに。

上手くいけば、牢に入れられるのも勘弁して貰えたかもしれない。

がっかりして溜息を吐くと、ぼそぼそと何やらジークさんが話しかけてきた。



「・・・そんなに腹が出ていたか?・・・」



少し赤い顔をして俯いている。

ふふふ、さてはあの愛くるしい姿を思い出しているのだな。



「はい!!」



ふんぞり返るほどに、ぽてぽてのお腹がさらに強調されて可愛いのなんのって。

私が勢いよく頷くと、ジークさんはますます俯いてしまった。
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