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戦場のど真ん中で大喧嘩
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辺りは軍靴と蹄の音、そして悲鳴と怒号が入り乱れ混沌としていた。
そろそろ夜が明ける頃の筈が、空は朝焼けどころかまるで黄昏のように赤く禍々しい。
先程まで目の前にジークさんが居たけれど、直ぐ近くには誰もいない。
音のする方へ視線を向ければ、随分離れた森の中でジークさんが数名の甲冑を身に付けた男たちと剣を交えていた。
?
仲間ではないの?
戦っている相手は人間で、見た目に魔族ではなさそうだが?
何か言い争っている。
私が居た場所からはかなり離れていた筈なのに、気が付くと私はジークさんの頭の上で漂っていた。
!?
私、浮いてるっ?!
先程の戦闘で、私はとうとう幽霊になっちゃったのか、泣?!
『バケモノめ!この世に仇成す前に死ね!』
剣撃の鈍い音が響き、叫んだ敵の剣をジークさんの剣が弾き飛ばした。
だが、敵はジークさんひとりを複数人で取り囲んで余裕の表情だ。
『助けは来ないぞ?お前ひとりでいつまで保つかな?』
『竜の魔力を持つとは言え、力を使いこなせなければただの人間』
男たちは下卑た笑いを浮かべている。
そのうちのフードを目深に被った男がひとり前に出た。
手にランタンを少し小さくしたガラスの様な四角い容器を紐でぶら下げている。
男が容器を高く掲げたのを合図に、剣を持った周りの男たちが一斉にジークさんに襲いかかった。
『ジークさん!!』
私の声が聞こえたのか、一瞬だけ片眉がピクリと動いたジークさんは、視線を男たちに向けたまま剣を構え足元から竜巻を起こした。
暴風は怯んだ男たちを襲うかに見えたが、彼らの目の前で立ち消えてしまった。
容器を持ったフードの男が声を上げて笑う。
『はっ、無駄な事だ。コイツがある限り、お前の魔力は全て封じられる』
『さあ、観念してあの世へ行け!』
別の男が剣を上段に構えて突進して来た。
それに続き、他の男たちも次々とジークさんに襲いかかる。
『卑怯者っ!!』
私は叫ぶと、光の爆撃弾を男たち目掛けて投げつけた。
彼らに直撃する瞬間爆風が起こり、容器を持った男のフードが捲れ顔が露わになった。
!
あれは?!
少し長い茶色の髪に整った顔の若い男、口元に黒子がある。
それは以前、白昼夢?で見た老人を襲った男の顔だった。
水面の光を求めて浮上する様に、喘ぎながら目を開けた。
そこには、私の顔を覗き込むクロの心配そうな顔があった。
辺りに視線を移すと何処かのテントの中らしく、私は地面に厚手の毛布を敷いた上に寝かされていた。
今のは夢?
夢と現実が入り乱れているのか、身体にも精神にもどっと疲れが押し寄せてきた。
『ルナ!気が付いて良かった!何処か痛む?』
クロが念話でそう言いながら、私の頬に頭を擦り付けてきた。
うーん、あちこち痛いです。
痛む左掌で額を摩る。
斧が掠めた額と妖術師に切られた左掌、どちらにも包帯が巻かれていた。
それ以上にズキズキと背中が痛む。
その原因を作った張本人の声がした。
「なぜ此処に来た?俺は屋敷で大人しくしていろと言った筈だ」
地を這うような低い声のする方へ顔を向けると、予想通り、いや、予想以上に鬼の形相のジークさんが私から少し距離を取って地面に胡座をかいていた。
おや、怖い。
全身の痛みと睡眠不足のせいか、ジークさんへの恐怖心もなんだかいつもより鈍い感じだ。
頭がよく回っていない。
はっ!
それよりも、さっき見た夢?は予知夢では?
これが竜眼持ちの力なのか?!
「それより、ジークさん!私、見たんです!ジークさんが味方の兵士さんたちに襲われる夢?を!」
ジークさんが期待していた竜眼持ちの力を伝える事が出来たとホクホクな私に対し、ジークさんの視線は酷く冷たかった。
「ジークさんは大将なのに、何故かひとりで味方の格好をした兵士に取り囲まれてしまっているんです!」
痛む身体を無理矢理起こしてジークさんに身体を向ける。
ジークさんはゆっくり立ち上がり、私の側まで来ると立ったまま冷たい視線で私を見下ろした。
「誰がお前に助けを呼んだ?」
え?
助けろって言ってたじゃないか?
今更何言ってるの?
それより、私の見た予知夢?をちゃんと聞いてよ。
「ジークさん、ちゃんと聞いて下さい!」
「お前こそ聞け!誰が此処に来いと言ったんだ!!」
とうとうジークさんは恐ろしい剣幕で怒鳴りだした。
初めて聞くジークさんの怒声に、私は恐怖で一瞬固まってしまった。
「遊びじゃないんだぞ!!子供はとっとと帰るんだ!」
子供だとっ?!
恐怖心も何処へやら、カッチーンと来た私はその言葉にぶっつりキレた。
「はあ?!誰が子供?貴方じゃないの?お前って誰の事を言ってんのよ?!協力しろって助けを求めたのは貴方でしょっ?!私じゃないわ!」
「何だと?!」
「自分の要求ばかりで、こちらの話はひとつも聞こうとしない!そんな人間にどうやって協力出来るって言うのよっ!」
私の怒声に、ジークさんは般若の面をして歯を食いしばっている。
「私が何でも言う事を聞くとでも?甘ったれてるんじゃないわ、どっちが子供よっ!」
私も歯を食いしばって立ち上がった。
「何処へ行くつもりだ?」
少しフラつきながらテントの出口に向かう私の腕を乱暴に掴むと、ジークさんは私に凄んで問いかけた。
「婚約は解消します。こんな人非人に協力なんか出来ません。もう勝手にして下さい。私も勝手にします!」
心配してやって来たら、この言い草!
馬鹿馬鹿しいったらありゃしない!
もうやってられっか、こんな茶番!
掴まれた手を振り解こうとすると、ジークさんは無理矢理私の身体を引き寄せた。
ほら、言葉でねじ伏せられないと、次は力でねじ伏せようとする。
甘やかされた男の典型じゃないか!
私はジークさんを思いっきり睨みつけようと顔を上げた。
けれども、互いの視線が合った時、私は動けなくなってしまった。
眉を顰めたジークさんの金眼が揺れ、酷く苦しそうな表情をしていたからだ。
そして、次に気が付いた時、私の唇に柔らかいものが当たっていた。
?!
ゆっくりとジークさんの唇が離れ、また、彼と視線が絡み合う。
その切なそうな黄金の瞳に見つめられ、瞬きが出来ない。
そうして、もう一度、ジークさんの唇が私の唇に重なった。
近くで見るジークさんの眉根を寄せて閉じられた瞼や伏せられた長い睫毛。
その造りの繊細さに魅入っていると、開いた唇の隙間からジークさんの温かい舌が口の中に入ってきた。
驚いて身を引こうとすると背中にあったジークさんの手が私の後頭部を押さえ、私は動きを封じられてしまった。
彼の舌が私のそれに絡まった瞬間、ジークさんから私の身体に激流の如く魔力が流れ込んできた。
自分のもの以外に触れたことの無い、荒々しい闇の魔力だった。
これが竜の魔力?
初めて触れる強い魔力。
それなのに、どこか懐かしく温かい。
この魔力をどうすれば良いか昔から知っていたかのように、私の闇の魔力は竜の魔力に応えていた。
ジークさんから溢れ出た竜の魔力は、私の中で漲る生命力へと変わり、またジークさんの元に戻っていく。
『ほう、これは美味いな』
ジークさんの中で竜毒さんが満足そうな声を上げた。
その声が聞こえたのかジークさんも驚き、ふたり示し合わせたかのようにバッと距離をとった。
暫し無言でジークさんと見つめ合う。
先程の憂いを秘めた金眼の瞳は、今は驚きで見開かれている。
あれ?
いや、私は一体何をしているんだ?
この腹黒に怒髪天だったのではなかったのか?
ジークさんより先に我に帰った私は、力尽くで唇を奪われた事実に血が昇り、頭で考えるよりも早く拳をジークさんの頬に叩き込んでいた。
「何すんのよっ!最っ低っ!!」
殴りつけたジークさんの顔も確認できずに、私はテントから勢いよく飛び出した。
そろそろ夜が明ける頃の筈が、空は朝焼けどころかまるで黄昏のように赤く禍々しい。
先程まで目の前にジークさんが居たけれど、直ぐ近くには誰もいない。
音のする方へ視線を向ければ、随分離れた森の中でジークさんが数名の甲冑を身に付けた男たちと剣を交えていた。
?
仲間ではないの?
戦っている相手は人間で、見た目に魔族ではなさそうだが?
何か言い争っている。
私が居た場所からはかなり離れていた筈なのに、気が付くと私はジークさんの頭の上で漂っていた。
!?
私、浮いてるっ?!
先程の戦闘で、私はとうとう幽霊になっちゃったのか、泣?!
『バケモノめ!この世に仇成す前に死ね!』
剣撃の鈍い音が響き、叫んだ敵の剣をジークさんの剣が弾き飛ばした。
だが、敵はジークさんひとりを複数人で取り囲んで余裕の表情だ。
『助けは来ないぞ?お前ひとりでいつまで保つかな?』
『竜の魔力を持つとは言え、力を使いこなせなければただの人間』
男たちは下卑た笑いを浮かべている。
そのうちのフードを目深に被った男がひとり前に出た。
手にランタンを少し小さくしたガラスの様な四角い容器を紐でぶら下げている。
男が容器を高く掲げたのを合図に、剣を持った周りの男たちが一斉にジークさんに襲いかかった。
『ジークさん!!』
私の声が聞こえたのか、一瞬だけ片眉がピクリと動いたジークさんは、視線を男たちに向けたまま剣を構え足元から竜巻を起こした。
暴風は怯んだ男たちを襲うかに見えたが、彼らの目の前で立ち消えてしまった。
容器を持ったフードの男が声を上げて笑う。
『はっ、無駄な事だ。コイツがある限り、お前の魔力は全て封じられる』
『さあ、観念してあの世へ行け!』
別の男が剣を上段に構えて突進して来た。
それに続き、他の男たちも次々とジークさんに襲いかかる。
『卑怯者っ!!』
私は叫ぶと、光の爆撃弾を男たち目掛けて投げつけた。
彼らに直撃する瞬間爆風が起こり、容器を持った男のフードが捲れ顔が露わになった。
!
あれは?!
少し長い茶色の髪に整った顔の若い男、口元に黒子がある。
それは以前、白昼夢?で見た老人を襲った男の顔だった。
水面の光を求めて浮上する様に、喘ぎながら目を開けた。
そこには、私の顔を覗き込むクロの心配そうな顔があった。
辺りに視線を移すと何処かのテントの中らしく、私は地面に厚手の毛布を敷いた上に寝かされていた。
今のは夢?
夢と現実が入り乱れているのか、身体にも精神にもどっと疲れが押し寄せてきた。
『ルナ!気が付いて良かった!何処か痛む?』
クロが念話でそう言いながら、私の頬に頭を擦り付けてきた。
うーん、あちこち痛いです。
痛む左掌で額を摩る。
斧が掠めた額と妖術師に切られた左掌、どちらにも包帯が巻かれていた。
それ以上にズキズキと背中が痛む。
その原因を作った張本人の声がした。
「なぜ此処に来た?俺は屋敷で大人しくしていろと言った筈だ」
地を這うような低い声のする方へ顔を向けると、予想通り、いや、予想以上に鬼の形相のジークさんが私から少し距離を取って地面に胡座をかいていた。
おや、怖い。
全身の痛みと睡眠不足のせいか、ジークさんへの恐怖心もなんだかいつもより鈍い感じだ。
頭がよく回っていない。
はっ!
それよりも、さっき見た夢?は予知夢では?
これが竜眼持ちの力なのか?!
「それより、ジークさん!私、見たんです!ジークさんが味方の兵士さんたちに襲われる夢?を!」
ジークさんが期待していた竜眼持ちの力を伝える事が出来たとホクホクな私に対し、ジークさんの視線は酷く冷たかった。
「ジークさんは大将なのに、何故かひとりで味方の格好をした兵士に取り囲まれてしまっているんです!」
痛む身体を無理矢理起こしてジークさんに身体を向ける。
ジークさんはゆっくり立ち上がり、私の側まで来ると立ったまま冷たい視線で私を見下ろした。
「誰がお前に助けを呼んだ?」
え?
助けろって言ってたじゃないか?
今更何言ってるの?
それより、私の見た予知夢?をちゃんと聞いてよ。
「ジークさん、ちゃんと聞いて下さい!」
「お前こそ聞け!誰が此処に来いと言ったんだ!!」
とうとうジークさんは恐ろしい剣幕で怒鳴りだした。
初めて聞くジークさんの怒声に、私は恐怖で一瞬固まってしまった。
「遊びじゃないんだぞ!!子供はとっとと帰るんだ!」
子供だとっ?!
恐怖心も何処へやら、カッチーンと来た私はその言葉にぶっつりキレた。
「はあ?!誰が子供?貴方じゃないの?お前って誰の事を言ってんのよ?!協力しろって助けを求めたのは貴方でしょっ?!私じゃないわ!」
「何だと?!」
「自分の要求ばかりで、こちらの話はひとつも聞こうとしない!そんな人間にどうやって協力出来るって言うのよっ!」
私の怒声に、ジークさんは般若の面をして歯を食いしばっている。
「私が何でも言う事を聞くとでも?甘ったれてるんじゃないわ、どっちが子供よっ!」
私も歯を食いしばって立ち上がった。
「何処へ行くつもりだ?」
少しフラつきながらテントの出口に向かう私の腕を乱暴に掴むと、ジークさんは私に凄んで問いかけた。
「婚約は解消します。こんな人非人に協力なんか出来ません。もう勝手にして下さい。私も勝手にします!」
心配してやって来たら、この言い草!
馬鹿馬鹿しいったらありゃしない!
もうやってられっか、こんな茶番!
掴まれた手を振り解こうとすると、ジークさんは無理矢理私の身体を引き寄せた。
ほら、言葉でねじ伏せられないと、次は力でねじ伏せようとする。
甘やかされた男の典型じゃないか!
私はジークさんを思いっきり睨みつけようと顔を上げた。
けれども、互いの視線が合った時、私は動けなくなってしまった。
眉を顰めたジークさんの金眼が揺れ、酷く苦しそうな表情をしていたからだ。
そして、次に気が付いた時、私の唇に柔らかいものが当たっていた。
?!
ゆっくりとジークさんの唇が離れ、また、彼と視線が絡み合う。
その切なそうな黄金の瞳に見つめられ、瞬きが出来ない。
そうして、もう一度、ジークさんの唇が私の唇に重なった。
近くで見るジークさんの眉根を寄せて閉じられた瞼や伏せられた長い睫毛。
その造りの繊細さに魅入っていると、開いた唇の隙間からジークさんの温かい舌が口の中に入ってきた。
驚いて身を引こうとすると背中にあったジークさんの手が私の後頭部を押さえ、私は動きを封じられてしまった。
彼の舌が私のそれに絡まった瞬間、ジークさんから私の身体に激流の如く魔力が流れ込んできた。
自分のもの以外に触れたことの無い、荒々しい闇の魔力だった。
これが竜の魔力?
初めて触れる強い魔力。
それなのに、どこか懐かしく温かい。
この魔力をどうすれば良いか昔から知っていたかのように、私の闇の魔力は竜の魔力に応えていた。
ジークさんから溢れ出た竜の魔力は、私の中で漲る生命力へと変わり、またジークさんの元に戻っていく。
『ほう、これは美味いな』
ジークさんの中で竜毒さんが満足そうな声を上げた。
その声が聞こえたのかジークさんも驚き、ふたり示し合わせたかのようにバッと距離をとった。
暫し無言でジークさんと見つめ合う。
先程の憂いを秘めた金眼の瞳は、今は驚きで見開かれている。
あれ?
いや、私は一体何をしているんだ?
この腹黒に怒髪天だったのではなかったのか?
ジークさんより先に我に帰った私は、力尽くで唇を奪われた事実に血が昇り、頭で考えるよりも早く拳をジークさんの頬に叩き込んでいた。
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