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妖魔術師 vs 私 (1)
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「主も詰まらなぬ物を造ったものだ」
妖魔術師が背後から嗾けてきた。
地面に座り冷たくなっていく銀狼を抱きしめる。
この子はこんな下衆に貶められていい存在じゃない。
歯軋りしながらゆっくり立ち上がると、全身から立ち昇らせた闇の力で、私は振り向きもせずに妖魔術師に闇の爆炎を叩きつけた。
「なっ?!」
妖魔術師の焦る声が聞こえた。
始祖竜さんにお願いした後から、闇の力が強まっている。
炎を操ったことなど無いが、私の怒りに呼応して闇の炎が現れる。
これが竜の力なのか?
何でもいい。
この子を貶めた連中に制裁を加えられる力が欲しい。
私の背後から飛び退り距離を置いた妖魔術師は、それでも楽し気に口を開いた。
「いつの世も闇魔法使いは興味深い。お前のその力、初めて見るものだ。実に興味深い」
そう言って、妖魔術師はその場から掌を私に向け糸のような蔓を無数に伸ばしてきた。
焼き切ってやる!
もう一度全身に魔力を呼び起こし、闇の炎を創り出した。
矢のように飛んでくる蔓は、炎に触れると瞬時に焼かれて消えていった。
それを見ても妖魔術師は笑っている。
「ふははっ!これ程の使い手は見た事がない!実に愉快だ!」
頭のおかしい妖魔術師は長い鉤爪を伸ばすと、一気に私との間合いを詰めてきた。
十分引きつけてから奴の脚を引っ掛けようと、身体を低くして自分の脚を伸ばす。
しかし見破られ、妖魔術師は地を蹴り、私の顔に向かって鋭い鉤爪を振り抜いた。
咄嗟に仰け反り、背中から地面を擦るように逃れるも、額を爪の先で切られてしまった。
くっそーっ!
得物を持ってるってズルくない?!
あちこち傷だらけで、多少の怪我に最早痛みも感じない。
直ぐに上体を起こし振り向こうとした瞬間、妖魔術師の鉤爪がまたもや顔に迫っていた。
歯を食いしばり、光魔法を全開にして防御を張る。
光の障壁は鈍い音を立てて鉤爪を弾いてくれた。
両の腕ごと光障壁を奴の鉤爪に叩き付け、奴の頭を狙って回し蹴りを放った。
だがこれも躱され、妖魔術師は再び飛んで私から距離をとった。
「組み手も中々楽しめるじゃあないか」
余裕綽々の妖魔術師にイラッとする。
「組み手?そっちは武器を使っているじゃない。公平にやんなさいよ」
「残念だったな。こいつは俺の自前の爪だ。お前も爪を伸ばせばいい」
出したり引っ込めたりなんて簡単に出来るか!
それなら爪を引っこ抜いてやる!
『ルナ、奴の首を切れ』
『武器も無いのにどうやって?』
『ルナの手足を使えば良かろう』
おいおい、幼気な乙女の手足が刃物で出来てる訳なかろうに。
『光魔法で吹っ飛ばすのは?』
『此奴の首は魔法で切る事は出来ない。物理的に切断しなければ、何度でも起き上がる』
え?
マジですか、汗?
ああ、だから以前、妖術師に光魔法をぶつけても死ななかったのか。
あの時はクロに奴の頭を食べてもらったのだっけ。
でも、素手でどうやって切り落とせと言うのだ、泣。
だが毒ちゃんの言う通り、奴の首を落とさなければ、ずっとこのまま長期戦だ。
体力・魔力が尽きる前にこいつを仕留めなければ。
妖魔術師は不敵に笑いながら、私に向かって飛ぶように駆けて来た。
再び私の顔目掛けて鉤爪を伸ばしてくる。
そっちが爪なら、こっちは飛び道具だ!
私は腰のリボンを解くと端を両の手でそれぞれ握り、腰を落として身構えた。
向かってきた鉤爪をすんでの所で躱し、奴の手首に巻きつけると同時に地面を蹴った。
リボンで捉えた妖魔術師の腕を支点に、脚を振り上げ側転して奴の腕をあらぬ方向へ自分の体重をかけて捻った。
腕が折れる鈍い音がして、妖魔術師が悲鳴を上げた。
『うがあぁぁーーっ!』
奴の背後に着地すると同時に、呻き声を上げてよろける奴の背中に蹴りをお見舞いする。
どやっ!
チャンスとばかりに、私は地面に突っ伏して顔から倒れた妖魔術師の背中に飛び乗った。
片方の腕を奴の首に巻き付けて固定し、もう片方の手で頭を捻りながら全体重をかけてやった。
ゴキっという音と共に妖魔術師の身体が一瞬震え、身体の緊張が無くなった。
両腕を離すと、奴はそのままうつ伏せに倒れていった。
うっしゃーっ!!
フードを被っていては首がどうなっているのか分からない。
私は奴のフードの裾を掴むと、思いっきり引っ張った。
そして露わになったその姿に愕然とする。
うげっ!
何だこれ?!
妖魔術師の首は千切れてはいないものの、顔が正面とは真反対に向いていた。
その顔は、なんと継ぎ接ぎだらけだったのだ。
一人だけでなく、何人もの人間の顔の一部を継ぎ接ぎしている。
それだけでなく、何かの動物の皮膚まで縫い込まれているようだ。
然も、両眼がある筈の場所にはど真ん中に真っ黒な窪みがあるだけで、グロテスクこの上ない。
絵に描いたような赤い口は顔の端まで裂けていて、鼻に及んでは形は愚か穴すら無い。
まるで魂を吹き込まれた人形みたいだ。
こんなモノが生命力を持っていたのか?
こいつ、一体どうやって作られたんだ?
間近で眺めていたら、顔の真ん中の窪みに突然赤い光が灯った。
げっ!
生きてる?!
飛び退ろうとしたが、倒れていた妖魔術師の足が伸びて私を蹴り倒した。
受け身も取れず背中を地面に打ち付けた私は、呼吸が出来ず必死で口を開けて空気を吸おうと喘いだ。
妖魔術師はスーッと身体を立たせると、背中に向いていた顔をいきなりグルッと正面に戻した。
こいつ、不死者なのか?
表情の読めないまだらの顔は、自身の鉤爪の付いた腕が折られてぶら下がっているのを見て口元だけニヤッと歪めた。
もう片方の手で折れた腕を掴むと、奴は勢いよくその腕を引き千切った。
折れただけで悲鳴を上げていたのに、もう痛みすら感じないのか?
『中々面白かったぞ。だが、余興はこれまでだ。そろそろ終焉と行こうではないか』
声が二重になった。
この声は・・・。
喘ぎながら身体を起こすと、急にあの金属音の嫌な音が耳に響き出した。
『ルナ、耳と目を塞げ!』
毒ちゃんが叫ぶも、頭が痛み出し目を瞑ろうとしたが視線が固定されてしまった。
皇帝と会食した時と同じだ。
身体が縛られたように動かせず、耳も塞げず立ち上がることも叶わない。
膝をつき全身から冷や汗をかく私の前に、音も無く妖魔術師が立っていた。
『準備が整った。其方には最後の仕上げを飾って貰おう』
妖魔術師の声に皇帝の声が重なる。
妖魔術師の手が伸びて来て私の首を鷲掴みにすると、そのまま私を宙吊りにした。
苦し・・・っ。
何とか身体を動かして逃れようとするが、見えざる力に縛られて指先すら動かせない。
瞼を閉じることが出来ない瞳に、妖魔術師の赤い眼が覗き込んで来る。
ガンガンと音を立てて痛む頭に妖魔術師の声が響いた。
「そろそろ、その眼を喰らってやる!」
皇帝の魔眼で動きを封じられ、妖魔術師の力で眼をこじ開けられている。
この妖魔術師に皇帝が憑依でもしているのか?
見たくも無い赤い光を帯びた妖魔術師の瞳に、青白い魔法陣が浮かび上がって来た。
そこから糸のようなものが真っ直ぐ伸びて、私の左眼に突き刺さった。
痛いーーーっ!!
何これ?!
釘が刺さったのかと思う程の強烈な痛みに、左眼から温かな血が流れ出した。
くっ!!
こんな所で、こんなヤツに私の大事な瞳をくれてやるもんか!!
身体さえ動けば・・・!
「ほお、丁度良いタイミングだったようだな?」
顔も視線も動かすことが出来ないけれど、最初にこの広場で見たテラス席に皇帝が居るのが気配で分かった。
「か弱い女の身で竜魔獣相手によく奮闘してくれた。礼を言うぞ」
皇帝は楽しそうに笑った。
「お陰で、素晴らしいこの舞台に客を招く事が出来た」
眼を必死で凝らし、焦点を正面に居る皇帝に合わせる。
「きっと其方も満足するだろう、なあ、ジークバルトよ」
皇帝は傍らに移動し、その背後から侍従に車椅子で運ばれて来る人影があった。
血で滲む視界に、椅子に座って動かず驚愕の瞳でこちら見るジークさんが映った。
妖魔術師が背後から嗾けてきた。
地面に座り冷たくなっていく銀狼を抱きしめる。
この子はこんな下衆に貶められていい存在じゃない。
歯軋りしながらゆっくり立ち上がると、全身から立ち昇らせた闇の力で、私は振り向きもせずに妖魔術師に闇の爆炎を叩きつけた。
「なっ?!」
妖魔術師の焦る声が聞こえた。
始祖竜さんにお願いした後から、闇の力が強まっている。
炎を操ったことなど無いが、私の怒りに呼応して闇の炎が現れる。
これが竜の力なのか?
何でもいい。
この子を貶めた連中に制裁を加えられる力が欲しい。
私の背後から飛び退り距離を置いた妖魔術師は、それでも楽し気に口を開いた。
「いつの世も闇魔法使いは興味深い。お前のその力、初めて見るものだ。実に興味深い」
そう言って、妖魔術師はその場から掌を私に向け糸のような蔓を無数に伸ばしてきた。
焼き切ってやる!
もう一度全身に魔力を呼び起こし、闇の炎を創り出した。
矢のように飛んでくる蔓は、炎に触れると瞬時に焼かれて消えていった。
それを見ても妖魔術師は笑っている。
「ふははっ!これ程の使い手は見た事がない!実に愉快だ!」
頭のおかしい妖魔術師は長い鉤爪を伸ばすと、一気に私との間合いを詰めてきた。
十分引きつけてから奴の脚を引っ掛けようと、身体を低くして自分の脚を伸ばす。
しかし見破られ、妖魔術師は地を蹴り、私の顔に向かって鋭い鉤爪を振り抜いた。
咄嗟に仰け反り、背中から地面を擦るように逃れるも、額を爪の先で切られてしまった。
くっそーっ!
得物を持ってるってズルくない?!
あちこち傷だらけで、多少の怪我に最早痛みも感じない。
直ぐに上体を起こし振り向こうとした瞬間、妖魔術師の鉤爪がまたもや顔に迫っていた。
歯を食いしばり、光魔法を全開にして防御を張る。
光の障壁は鈍い音を立てて鉤爪を弾いてくれた。
両の腕ごと光障壁を奴の鉤爪に叩き付け、奴の頭を狙って回し蹴りを放った。
だがこれも躱され、妖魔術師は再び飛んで私から距離をとった。
「組み手も中々楽しめるじゃあないか」
余裕綽々の妖魔術師にイラッとする。
「組み手?そっちは武器を使っているじゃない。公平にやんなさいよ」
「残念だったな。こいつは俺の自前の爪だ。お前も爪を伸ばせばいい」
出したり引っ込めたりなんて簡単に出来るか!
それなら爪を引っこ抜いてやる!
『ルナ、奴の首を切れ』
『武器も無いのにどうやって?』
『ルナの手足を使えば良かろう』
おいおい、幼気な乙女の手足が刃物で出来てる訳なかろうに。
『光魔法で吹っ飛ばすのは?』
『此奴の首は魔法で切る事は出来ない。物理的に切断しなければ、何度でも起き上がる』
え?
マジですか、汗?
ああ、だから以前、妖術師に光魔法をぶつけても死ななかったのか。
あの時はクロに奴の頭を食べてもらったのだっけ。
でも、素手でどうやって切り落とせと言うのだ、泣。
だが毒ちゃんの言う通り、奴の首を落とさなければ、ずっとこのまま長期戦だ。
体力・魔力が尽きる前にこいつを仕留めなければ。
妖魔術師は不敵に笑いながら、私に向かって飛ぶように駆けて来た。
再び私の顔目掛けて鉤爪を伸ばしてくる。
そっちが爪なら、こっちは飛び道具だ!
私は腰のリボンを解くと端を両の手でそれぞれ握り、腰を落として身構えた。
向かってきた鉤爪をすんでの所で躱し、奴の手首に巻きつけると同時に地面を蹴った。
リボンで捉えた妖魔術師の腕を支点に、脚を振り上げ側転して奴の腕をあらぬ方向へ自分の体重をかけて捻った。
腕が折れる鈍い音がして、妖魔術師が悲鳴を上げた。
『うがあぁぁーーっ!』
奴の背後に着地すると同時に、呻き声を上げてよろける奴の背中に蹴りをお見舞いする。
どやっ!
チャンスとばかりに、私は地面に突っ伏して顔から倒れた妖魔術師の背中に飛び乗った。
片方の腕を奴の首に巻き付けて固定し、もう片方の手で頭を捻りながら全体重をかけてやった。
ゴキっという音と共に妖魔術師の身体が一瞬震え、身体の緊張が無くなった。
両腕を離すと、奴はそのままうつ伏せに倒れていった。
うっしゃーっ!!
フードを被っていては首がどうなっているのか分からない。
私は奴のフードの裾を掴むと、思いっきり引っ張った。
そして露わになったその姿に愕然とする。
うげっ!
何だこれ?!
妖魔術師の首は千切れてはいないものの、顔が正面とは真反対に向いていた。
その顔は、なんと継ぎ接ぎだらけだったのだ。
一人だけでなく、何人もの人間の顔の一部を継ぎ接ぎしている。
それだけでなく、何かの動物の皮膚まで縫い込まれているようだ。
然も、両眼がある筈の場所にはど真ん中に真っ黒な窪みがあるだけで、グロテスクこの上ない。
絵に描いたような赤い口は顔の端まで裂けていて、鼻に及んでは形は愚か穴すら無い。
まるで魂を吹き込まれた人形みたいだ。
こんなモノが生命力を持っていたのか?
こいつ、一体どうやって作られたんだ?
間近で眺めていたら、顔の真ん中の窪みに突然赤い光が灯った。
げっ!
生きてる?!
飛び退ろうとしたが、倒れていた妖魔術師の足が伸びて私を蹴り倒した。
受け身も取れず背中を地面に打ち付けた私は、呼吸が出来ず必死で口を開けて空気を吸おうと喘いだ。
妖魔術師はスーッと身体を立たせると、背中に向いていた顔をいきなりグルッと正面に戻した。
こいつ、不死者なのか?
表情の読めないまだらの顔は、自身の鉤爪の付いた腕が折られてぶら下がっているのを見て口元だけニヤッと歪めた。
もう片方の手で折れた腕を掴むと、奴は勢いよくその腕を引き千切った。
折れただけで悲鳴を上げていたのに、もう痛みすら感じないのか?
『中々面白かったぞ。だが、余興はこれまでだ。そろそろ終焉と行こうではないか』
声が二重になった。
この声は・・・。
喘ぎながら身体を起こすと、急にあの金属音の嫌な音が耳に響き出した。
『ルナ、耳と目を塞げ!』
毒ちゃんが叫ぶも、頭が痛み出し目を瞑ろうとしたが視線が固定されてしまった。
皇帝と会食した時と同じだ。
身体が縛られたように動かせず、耳も塞げず立ち上がることも叶わない。
膝をつき全身から冷や汗をかく私の前に、音も無く妖魔術師が立っていた。
『準備が整った。其方には最後の仕上げを飾って貰おう』
妖魔術師の声に皇帝の声が重なる。
妖魔術師の手が伸びて来て私の首を鷲掴みにすると、そのまま私を宙吊りにした。
苦し・・・っ。
何とか身体を動かして逃れようとするが、見えざる力に縛られて指先すら動かせない。
瞼を閉じることが出来ない瞳に、妖魔術師の赤い眼が覗き込んで来る。
ガンガンと音を立てて痛む頭に妖魔術師の声が響いた。
「そろそろ、その眼を喰らってやる!」
皇帝の魔眼で動きを封じられ、妖魔術師の力で眼をこじ開けられている。
この妖魔術師に皇帝が憑依でもしているのか?
見たくも無い赤い光を帯びた妖魔術師の瞳に、青白い魔法陣が浮かび上がって来た。
そこから糸のようなものが真っ直ぐ伸びて、私の左眼に突き刺さった。
痛いーーーっ!!
何これ?!
釘が刺さったのかと思う程の強烈な痛みに、左眼から温かな血が流れ出した。
くっ!!
こんな所で、こんなヤツに私の大事な瞳をくれてやるもんか!!
身体さえ動けば・・・!
「ほお、丁度良いタイミングだったようだな?」
顔も視線も動かすことが出来ないけれど、最初にこの広場で見たテラス席に皇帝が居るのが気配で分かった。
「か弱い女の身で竜魔獣相手によく奮闘してくれた。礼を言うぞ」
皇帝は楽しそうに笑った。
「お陰で、素晴らしいこの舞台に客を招く事が出来た」
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