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Ⅴ.背徳の墓標
事実にかかる制限
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「…皮肉が通じない相手とはな」
レアンが軽く息をつく。
「挙げ句、お前はそれ自体をステータスとしている節もあるようだ」
「ご明察だ、【魔公】レアン。
嫉妬された“アベル”は、さぞかし“カイン”に対して、平行から負の感情を抱いたことだろう…
ならば、その当の“アベル”自身が取る…或いは取れる言動とは、やはり極端に制限されるものだとは思わないか?」
「気狂いが何を戯言を」
ユイがぴしゃりと吐き捨てた。
「確かにお前の弟・カイン=サイケデリックは、兄であるお前を強く気にかけていた…が、あれは嫉妬というより、誇りと羨望そのものではなかったか?
兄であるお前が、その弟の気持ちに気付かない道理はないだろう」
ユイがその声に不快と怒りを露わにする。
対してアベルは、それ自体が何でもないことのように笑みを落とした。
「過剰な期待は不愉快なだけだ。
羨む前に、同じ位置まで来ればいいだけのこと…
それも出来ずに、ただ羨むだけは不快であり、その本人自身が、無能以外の何物でもないだろう?」
「…貴様…」
アベルの言い種に苛立ちを覚えたユイは、徐々に魔力を高め始めた。
「闇の魔術を使うのか?」
アベルがストレートに挑発する。
「あの狂犬コンビとのやり取りで、ユイ…
お前が副総統だと言うのは分かっている。
副総統は、総統の光の魔術と対ともなる、強力な闇の魔術を使うと聞く…
だとすれば、やはりお前は…“闇の魔術を使うのか?”」
あえて同じ問いを繰り返すことで、アベルはユイの真の力を引きだそうと画策していた。
からかうような不敵な笑みを、その端正な顔に浮かべ、事の全てを楽しむ様は、ユイの怒りを更に増幅させるには充分だった。
「だったら、何だ…?」
「だが、お前はそれを使えるかな?」
唐突に真逆なことを言われた気がして、ユイは自然、その眉を顰めた。
「…何が言いたい?」
アベルは冷たい笑みをその表情に同化させる。
「あの女の前で、お前は闇の魔術を使えるのかと。
そう訊いているんだ」
「……」
これを聞いたレアンの瞳が、静かにざわめいた。
…あの女、というのは、言うまでもなくセレンのことだろう。
そして、かのBreak Gunsの総統が光、副総統が闇の魔術を操る事実は、組織の名を知る者であれば、大抵が理解し、熟知している。
つまり、ユイが故意にでも何でも、“闇の魔術”そのものを使ってしまったら、その時点でユイ自身が、自ら副総統である事実を証明してしまうということだ。
…組織において、闇の魔術を使える者は、副総統以外にはない──
その事実が、今は酷く忌々しい。
ユイは自らの有力な武器のひとつが、意図的に封じられたことを悟って、自然、臍を噛んだ。
「…俺の腹の内を理解したようだな」
アベルが、わざと足音を立ててユイとレアンに近付く。
「そう、あの女…
ヴィルザーク侯爵令嬢に、自分が副総統であると知られたくないなら──」
…言いながら、アベルはゆっくりと右の手のひらを上へと向けた。
「──ここで俺に殺されろ、ユイ!」
「…っ!」
ユイはすぐさま動きを見せ、アベルが魔術を発動させる前に、その右手を同威力の魔術によって、抑え込もうと試みた。
同時にレアンが地を蹴り、ユイの戦いの邪魔にならないよう、背後の壁ぎりぎりの場所まで下がる。
──瞬間、部屋の中央で二人が激突した。
レアンの目に映ったのは、それこそ目を切り裂かれるような、攻撃的なまでの眩しい光。
鼓膜を強く震わせたのは、雷鳴のそれにも近い、轟音。
レアンが軽く息をつく。
「挙げ句、お前はそれ自体をステータスとしている節もあるようだ」
「ご明察だ、【魔公】レアン。
嫉妬された“アベル”は、さぞかし“カイン”に対して、平行から負の感情を抱いたことだろう…
ならば、その当の“アベル”自身が取る…或いは取れる言動とは、やはり極端に制限されるものだとは思わないか?」
「気狂いが何を戯言を」
ユイがぴしゃりと吐き捨てた。
「確かにお前の弟・カイン=サイケデリックは、兄であるお前を強く気にかけていた…が、あれは嫉妬というより、誇りと羨望そのものではなかったか?
兄であるお前が、その弟の気持ちに気付かない道理はないだろう」
ユイがその声に不快と怒りを露わにする。
対してアベルは、それ自体が何でもないことのように笑みを落とした。
「過剰な期待は不愉快なだけだ。
羨む前に、同じ位置まで来ればいいだけのこと…
それも出来ずに、ただ羨むだけは不快であり、その本人自身が、無能以外の何物でもないだろう?」
「…貴様…」
アベルの言い種に苛立ちを覚えたユイは、徐々に魔力を高め始めた。
「闇の魔術を使うのか?」
アベルがストレートに挑発する。
「あの狂犬コンビとのやり取りで、ユイ…
お前が副総統だと言うのは分かっている。
副総統は、総統の光の魔術と対ともなる、強力な闇の魔術を使うと聞く…
だとすれば、やはりお前は…“闇の魔術を使うのか?”」
あえて同じ問いを繰り返すことで、アベルはユイの真の力を引きだそうと画策していた。
からかうような不敵な笑みを、その端正な顔に浮かべ、事の全てを楽しむ様は、ユイの怒りを更に増幅させるには充分だった。
「だったら、何だ…?」
「だが、お前はそれを使えるかな?」
唐突に真逆なことを言われた気がして、ユイは自然、その眉を顰めた。
「…何が言いたい?」
アベルは冷たい笑みをその表情に同化させる。
「あの女の前で、お前は闇の魔術を使えるのかと。
そう訊いているんだ」
「……」
これを聞いたレアンの瞳が、静かにざわめいた。
…あの女、というのは、言うまでもなくセレンのことだろう。
そして、かのBreak Gunsの総統が光、副総統が闇の魔術を操る事実は、組織の名を知る者であれば、大抵が理解し、熟知している。
つまり、ユイが故意にでも何でも、“闇の魔術”そのものを使ってしまったら、その時点でユイ自身が、自ら副総統である事実を証明してしまうということだ。
…組織において、闇の魔術を使える者は、副総統以外にはない──
その事実が、今は酷く忌々しい。
ユイは自らの有力な武器のひとつが、意図的に封じられたことを悟って、自然、臍を噛んだ。
「…俺の腹の内を理解したようだな」
アベルが、わざと足音を立ててユイとレアンに近付く。
「そう、あの女…
ヴィルザーク侯爵令嬢に、自分が副総統であると知られたくないなら──」
…言いながら、アベルはゆっくりと右の手のひらを上へと向けた。
「──ここで俺に殺されろ、ユイ!」
「…っ!」
ユイはすぐさま動きを見せ、アベルが魔術を発動させる前に、その右手を同威力の魔術によって、抑え込もうと試みた。
同時にレアンが地を蹴り、ユイの戦いの邪魔にならないよう、背後の壁ぎりぎりの場所まで下がる。
──瞬間、部屋の中央で二人が激突した。
レアンの目に映ったのは、それこそ目を切り裂かれるような、攻撃的なまでの眩しい光。
鼓膜を強く震わせたのは、雷鳴のそれにも近い、轟音。
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