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Ⅵ.因縁の魔窟
話し合いの前に
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「それでこそ、だよね? ユイ」
ヴァルスが、こちらも満足気に笑う。
すると傍らにいたレアンが、そんな2人に向けて口を開いた。
「聞いての通りだ。…本来なら、あの暗殺組織に狙われる身。この館で匿うのが最善と思われるが…
何より大事なのは、セレンの意志だ」
「……」
ユイが、ぷっつりと笑みを潜めて、本来の冷めた双眸で、ゆるりとレアンを見やる。
しかし、レアンはあえてそれを享受し、先を続けた。
「…友・アーサーの忘れ形見を頼んだぞ、ユイ」
「ああ」
意外にもユイは即答した。
それに、ヴァルスとセレンは驚いてユイを見つめる。
ユイは再び口火を切った。
「セレンの覚悟は、確かに俺自身が見聞きした。
何があろうと本懐は遂げさせる。そう… 以降、何があろうともだ」
「…その心意気や良し。ならばお前には、アーサーが生前、俺に託した、本当の書類を見る権利がある」
「本当の…書類だと?」
よもや、そんな物が存在するとは知らなかったユイは、ほぼ反射的に眉をひそめた。
組織の者を引っ掛けた、一見、ダミーとも思われた、あの書類…
レアンはその他に、セレンの父・アーサーが己に託した、真実の書類があるという。
「まずは、上へ移動しよう。質問を挟めば長くなる話だからな…
落ち着いた所で話がしたい」
「…、いいだろう」
まるで先の様子とは一転したかのように、ユイが冷淡さをその身に纏わせる。
無論、セレンもそれに気付いてはいた…が、それを鋭く見定めて、緩和させたのがヴァルスだった。
「じゃあ、レアン公爵…紅茶はあるか?」
「ああ」
「菓子は? すげぇ甘くて美味いやつ!」
「…あるが」
これが計画的なのか素なのかは分からない…が、恐らく後者なのだろうと判断したレアンは、それでもこの状態から、まるで暗殺組織の幹部クラスとは思えない程の、軽い…
否、明るさに、どことなく押され気味でいた。
果ては終いには、
「紅茶はアールグレイ、菓子はブランデー入りのチョコと… あとはセレン向けに、ミニケーキがいいな」
…と、リクエストまでする始末だ。
これにはさすがにセレンは唖然とし、レアンとユイは、2人が2人とも、頭を深々と抱え込んだ。
「セレンよりも先に、もう少し深く決意を聞かなければならなかった奴が、ここに居たようだ…」
と、ユイのこめかみが戦慄けば、
「…同感だ」
と、レアンの頭痛が、それを敏感に受け取っていた。
ヴァルスが、こちらも満足気に笑う。
すると傍らにいたレアンが、そんな2人に向けて口を開いた。
「聞いての通りだ。…本来なら、あの暗殺組織に狙われる身。この館で匿うのが最善と思われるが…
何より大事なのは、セレンの意志だ」
「……」
ユイが、ぷっつりと笑みを潜めて、本来の冷めた双眸で、ゆるりとレアンを見やる。
しかし、レアンはあえてそれを享受し、先を続けた。
「…友・アーサーの忘れ形見を頼んだぞ、ユイ」
「ああ」
意外にもユイは即答した。
それに、ヴァルスとセレンは驚いてユイを見つめる。
ユイは再び口火を切った。
「セレンの覚悟は、確かに俺自身が見聞きした。
何があろうと本懐は遂げさせる。そう… 以降、何があろうともだ」
「…その心意気や良し。ならばお前には、アーサーが生前、俺に託した、本当の書類を見る権利がある」
「本当の…書類だと?」
よもや、そんな物が存在するとは知らなかったユイは、ほぼ反射的に眉をひそめた。
組織の者を引っ掛けた、一見、ダミーとも思われた、あの書類…
レアンはその他に、セレンの父・アーサーが己に託した、真実の書類があるという。
「まずは、上へ移動しよう。質問を挟めば長くなる話だからな…
落ち着いた所で話がしたい」
「…、いいだろう」
まるで先の様子とは一転したかのように、ユイが冷淡さをその身に纏わせる。
無論、セレンもそれに気付いてはいた…が、それを鋭く見定めて、緩和させたのがヴァルスだった。
「じゃあ、レアン公爵…紅茶はあるか?」
「ああ」
「菓子は? すげぇ甘くて美味いやつ!」
「…あるが」
これが計画的なのか素なのかは分からない…が、恐らく後者なのだろうと判断したレアンは、それでもこの状態から、まるで暗殺組織の幹部クラスとは思えない程の、軽い…
否、明るさに、どことなく押され気味でいた。
果ては終いには、
「紅茶はアールグレイ、菓子はブランデー入りのチョコと… あとはセレン向けに、ミニケーキがいいな」
…と、リクエストまでする始末だ。
これにはさすがにセレンは唖然とし、レアンとユイは、2人が2人とも、頭を深々と抱え込んだ。
「セレンよりも先に、もう少し深く決意を聞かなければならなかった奴が、ここに居たようだ…」
と、ユイのこめかみが戦慄けば、
「…同感だ」
と、レアンの頭痛が、それを敏感に受け取っていた。
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