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第一部【蠢く敵】
気付かぬうちに巻き添えに
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「頼まれてもいらねえっ!」
ハンターたちは、やけに苛々と少女に突っかかる。
…これはもしかすると、その作った料理とやらに問題があるのでは…
などと青年が邪推していると、ハンターたちはその期待を裏切らず、きっちりと答えた。
「…代わりのものは代わりのものでもなぁ…
てめえが使った材料は、毒キノコとかカブト虫の幼虫だとか、ミミズだとかのゲテモノばかりじゃねぇかっ!」
…成る程。つまりは、ごった煮のようなものを作ったのだろうが…
それにしても、人が口にするものの域を超え過ぎている。
その、青年の端正なはずの顔は、少女が作ったらしい料理を想定して、これ以上なく引きつっていた。
「毒キノコ…と、カブト虫の幼虫…
それだけでも充分に人が殺せるというのに、ミミズまで…」
「だって近くにあった材料っていったら、それしかなかったんですものっ!
これでも苦労したのよ!? あれだけのミミズを探すのに、どれだけ地面をつついたことか!」
傍から聞けば正論に聞こえないこともない少女の言い種を、傍らで唖然として聞いていたハンターたちは、不意に我に返ると、自ら堪忍袋の緒をぶっ千切った。
「そんならそもそも食わなきゃいいだろーがっ!」
この言い分に、少女の方も負けてはいない。
「それを言ったらおしまいでしょおっ!?」
「!なっ…、馬鹿なのかいあんたはぁぁっ!」
こめかみを引きつらせ、手足すらも戦慄かせてハンターのひとりが喚く。
すると、残った2人のうちの片方が、何かに気付いて、後の2人を制止した。
「──ん!? ちょっと待て、トラント、カナル」
すると、トラントと呼ばれた方の男は、苛立ちも露わに、仲間に問い返した。
「何だよテオラ。言っとくがなぁ、今は激しく取り込み中なんだぞ」
トラントの責めるような言葉は、まるで意に介さず、テオラと呼ばれた男は、ある一点にその視線を向ける。
その口元が、何かをほくそ笑むように、狡猾に弛んだ。
「そんな事はもういい。…見てみろ、あの男の肩にいる奴」
促されて、カナルとトラントは青年の肩を見た。
…当然ながらそこには、クレアがいる。
それを見たハンターたちの目の色が変わった。
「!あ、あれはっ…!?」
「ドラゴン! ──それも、見たこともない“新種”だ!」
瞬間、その3人が、誰ともなく視線を合わせ、示し合わせたように頷く。
「これは…」
「言うまでもないよテオラ。力ずくでも頂くしかないだろ?」
「って事で決まりだな。おい、そこの青年!」
呼びかけられて、しかしそれでも、その反応をある程度は予測していたのか、青年は溜め息混じりに、親指でこめかみの辺りを掻いた。
「全く関係のない俺が巻き添え…か。ついてないな。何だ?」
「そのガキんちょと、お前の肩にいる、そのドラゴンをだな…引き替えってことで! どうだ?」
「嫌だね。俺にはそんな義理はない」
「!ったく、よりによって即答しやがって…」
ハンターたちは舌打ちをしたが、それを合図にするかのように、少女が青年に詰め寄った。
「ちょっとちょっとあんたっ!?」
「何だよ。そんなに血相を変えて、三白眼になって詰め寄るな」
「あんたってば血も涙もないわねっ! 少しくらいは考えて返答するって芸当をしなさいよ!」
「…あいつらの食事を食べ尽くした挙げ句に追いかけられてた張本人が、何を偉そうに。大体、どうせ結論は同じなんだから、少しでも先に言っておいた方が、何かと都合がいいだろう?」
「どんな都合よ!? それにさぁ、か弱い女の子がこうして頭まで下げて頼んでるっていうのに…全く…」
「いつ下げた! 大体、面倒を持ち込んだのは、そっちだろう。それに自分のツケくらい、自分で何とかしたらどうなんだ?」
「うっわー非人道的! それって、まともな性格の人間が言うことじゃないわ! さては貴方ってば、そーゆーあらゆる意味で、どこか変なのね!?」
「おい…、だったらさっき言ってたことは何なんだ?」
…噛みつく少女に対し、半眼の青年。
この見事なまでの内輪もめ(?)に、ハンターたちは明らかに苛立った怒声をあげた。
「ちょっと待てぇっ!」
「あたしたちを無視して、勝手に痴話喧嘩を進めるなっ!」
これに青年は、その時になってようやく気付いたかのように、少女からそちらに目を向ける。
「あ! あぁ──お前らの存在忘れてた」
「!てめぇも一緒に吊されてぇってのか!?」
ボケとツッコミという表現が、最も的確なこの状況下で、まだまだいきり立つハンター連中を相手に、青年は呆れ疲れたように溜め息をついた。
「…いや。それに、痴話喧嘩ってのは余計だ。
まぁもっともそれ以上に余計なのが、こいつとお前らだけどな」
悪びれも、ましてや容赦すらもなく、しれっとして言い放った青年に、ハンター連中は揃いも揃ってこめかみを引きつらせた。
「…ほぉ~お…、これは吊し上げプラス、サンドバッグで決まりだな!」
このテオラのとんでもない一言に、瞬時にムンクの叫びと化したのは、言わずと知れた(とりあえず被害者側の)少女だった。
「ちょっとぉぉっ! あんたがそれこそ余計なことを言うからっ!
う"ぅ…この人だけならいざ知らず、何で、か弱くて聡明なあたしまでが、こんな最悪な目に遭わなきゃいけないの!?」
「だからその元凶が何を言っている。…俺の平穏無事なひとときを、第一声でぶち壊しにしたのは、お前だろうが」
いよいよ半眼になって、青年が少女を見る。
それに、ハンターの内のひとり・カナルは、挑戦と苛立ち混じりに青年を睨んだ。
「痴話喧嘩も、そこまでにしときなよ。…丸腰の女をひとり抱えて、あんたがどこまで応戦できるか見物だけどね」
このカナルの口調に、青年はぴくりと反応した。
ハンターたちは、やけに苛々と少女に突っかかる。
…これはもしかすると、その作った料理とやらに問題があるのでは…
などと青年が邪推していると、ハンターたちはその期待を裏切らず、きっちりと答えた。
「…代わりのものは代わりのものでもなぁ…
てめえが使った材料は、毒キノコとかカブト虫の幼虫だとか、ミミズだとかのゲテモノばかりじゃねぇかっ!」
…成る程。つまりは、ごった煮のようなものを作ったのだろうが…
それにしても、人が口にするものの域を超え過ぎている。
その、青年の端正なはずの顔は、少女が作ったらしい料理を想定して、これ以上なく引きつっていた。
「毒キノコ…と、カブト虫の幼虫…
それだけでも充分に人が殺せるというのに、ミミズまで…」
「だって近くにあった材料っていったら、それしかなかったんですものっ!
これでも苦労したのよ!? あれだけのミミズを探すのに、どれだけ地面をつついたことか!」
傍から聞けば正論に聞こえないこともない少女の言い種を、傍らで唖然として聞いていたハンターたちは、不意に我に返ると、自ら堪忍袋の緒をぶっ千切った。
「そんならそもそも食わなきゃいいだろーがっ!」
この言い分に、少女の方も負けてはいない。
「それを言ったらおしまいでしょおっ!?」
「!なっ…、馬鹿なのかいあんたはぁぁっ!」
こめかみを引きつらせ、手足すらも戦慄かせてハンターのひとりが喚く。
すると、残った2人のうちの片方が、何かに気付いて、後の2人を制止した。
「──ん!? ちょっと待て、トラント、カナル」
すると、トラントと呼ばれた方の男は、苛立ちも露わに、仲間に問い返した。
「何だよテオラ。言っとくがなぁ、今は激しく取り込み中なんだぞ」
トラントの責めるような言葉は、まるで意に介さず、テオラと呼ばれた男は、ある一点にその視線を向ける。
その口元が、何かをほくそ笑むように、狡猾に弛んだ。
「そんな事はもういい。…見てみろ、あの男の肩にいる奴」
促されて、カナルとトラントは青年の肩を見た。
…当然ながらそこには、クレアがいる。
それを見たハンターたちの目の色が変わった。
「!あ、あれはっ…!?」
「ドラゴン! ──それも、見たこともない“新種”だ!」
瞬間、その3人が、誰ともなく視線を合わせ、示し合わせたように頷く。
「これは…」
「言うまでもないよテオラ。力ずくでも頂くしかないだろ?」
「って事で決まりだな。おい、そこの青年!」
呼びかけられて、しかしそれでも、その反応をある程度は予測していたのか、青年は溜め息混じりに、親指でこめかみの辺りを掻いた。
「全く関係のない俺が巻き添え…か。ついてないな。何だ?」
「そのガキんちょと、お前の肩にいる、そのドラゴンをだな…引き替えってことで! どうだ?」
「嫌だね。俺にはそんな義理はない」
「!ったく、よりによって即答しやがって…」
ハンターたちは舌打ちをしたが、それを合図にするかのように、少女が青年に詰め寄った。
「ちょっとちょっとあんたっ!?」
「何だよ。そんなに血相を変えて、三白眼になって詰め寄るな」
「あんたってば血も涙もないわねっ! 少しくらいは考えて返答するって芸当をしなさいよ!」
「…あいつらの食事を食べ尽くした挙げ句に追いかけられてた張本人が、何を偉そうに。大体、どうせ結論は同じなんだから、少しでも先に言っておいた方が、何かと都合がいいだろう?」
「どんな都合よ!? それにさぁ、か弱い女の子がこうして頭まで下げて頼んでるっていうのに…全く…」
「いつ下げた! 大体、面倒を持ち込んだのは、そっちだろう。それに自分のツケくらい、自分で何とかしたらどうなんだ?」
「うっわー非人道的! それって、まともな性格の人間が言うことじゃないわ! さては貴方ってば、そーゆーあらゆる意味で、どこか変なのね!?」
「おい…、だったらさっき言ってたことは何なんだ?」
…噛みつく少女に対し、半眼の青年。
この見事なまでの内輪もめ(?)に、ハンターたちは明らかに苛立った怒声をあげた。
「ちょっと待てぇっ!」
「あたしたちを無視して、勝手に痴話喧嘩を進めるなっ!」
これに青年は、その時になってようやく気付いたかのように、少女からそちらに目を向ける。
「あ! あぁ──お前らの存在忘れてた」
「!てめぇも一緒に吊されてぇってのか!?」
ボケとツッコミという表現が、最も的確なこの状況下で、まだまだいきり立つハンター連中を相手に、青年は呆れ疲れたように溜め息をついた。
「…いや。それに、痴話喧嘩ってのは余計だ。
まぁもっともそれ以上に余計なのが、こいつとお前らだけどな」
悪びれも、ましてや容赦すらもなく、しれっとして言い放った青年に、ハンター連中は揃いも揃ってこめかみを引きつらせた。
「…ほぉ~お…、これは吊し上げプラス、サンドバッグで決まりだな!」
このテオラのとんでもない一言に、瞬時にムンクの叫びと化したのは、言わずと知れた(とりあえず被害者側の)少女だった。
「ちょっとぉぉっ! あんたがそれこそ余計なことを言うからっ!
う"ぅ…この人だけならいざ知らず、何で、か弱くて聡明なあたしまでが、こんな最悪な目に遭わなきゃいけないの!?」
「だからその元凶が何を言っている。…俺の平穏無事なひとときを、第一声でぶち壊しにしたのは、お前だろうが」
いよいよ半眼になって、青年が少女を見る。
それに、ハンターの内のひとり・カナルは、挑戦と苛立ち混じりに青年を睨んだ。
「痴話喧嘩も、そこまでにしときなよ。…丸腰の女をひとり抱えて、あんたがどこまで応戦できるか見物だけどね」
このカナルの口調に、青年はぴくりと反応した。
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