俺TUEEEEしたかった悪役令嬢

morimiyaco

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終幕 それから

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 結局絆されてしまった私はラルフ殿下と共に王城に戻れば、待ち構えていたのは王家の人たちと、無事を知らされて飛んできた実家の両親と義弟。
 こんなにも心配してくれていたのね。
 みんなのいる前で、急かされるままに婚約届にサインをしたのだけれど、気づけば婚約届ではなくて、婚姻届だったという罠。

 「だ、騙された」

 訂正する間もなく、にっこり笑顔の国王陛下に玉璽を押されてその日のうちに受理されてしまいました。

 「婚約発表はこの後すぐ、結婚式は、4ヶ月後の卒業式が済んだ直後にする事にする。既に婚姻しているとはいえ、くれぐれも結婚式までは自重してくれよ」
 「ドレスはゆったり目に作っておきましょうね」
 「ちょ」
 「なっ…」

 澄まし顔の国王夫妻。

 「どちらでも嬉しいわ」

 嬉しそうな母。
 何を、とは言われない。でも分かってしまう、だって中身アラフィフだもの。居た堪れないわ。



 「ふふ、最後はラルフの粘り勝ちか。それとも泣き落としかな?」
 「どちらでもいいんだよ、アーシャさえ手に入れば」

 学園長に揶揄われてもドヤ顔で私を抱きしめたままのラルフ殿下。
 それでいいんですか、ラルフ殿下。



 その時、謁見の間に声が響き渡る。

 「約束の相手には会えたのかい?」

 みんながキョロキョロ見回す中、突然光とともに現れてきたのは、先程別れたばかりの妖精王様でした。

 「妖精王様!」
 「「「妖精王様!?」」」

 妖精王様はラルフ殿下に抱かれたままの私を見るとニヤニヤしだした。ちょっと…美形のニヤニヤとか…やめて。

 「おやおや、いつの間に。これはこれは、出歯亀だったかな?んふふ」

 なんでそんなに嬉しそうなんですか、妖精王様…。

 「妖精王様!不躾なお願いですが、もう二度とアーシャを連れていかないでください。彼女は俺の唯一なんです。お願いします」

 ラルフが、妖精王様に頭を下げる。

 「ああ、君が愛し子の伴侶なんだね。君も随分と真っ直ぐで綺麗な光をしているね、妖精が好みそうだ。
 今回は小さい妖精達が迷惑をかけて相すまなかったね。今後は彼女を今後妖精界に連れていかないと誓おう。しかし、私が彼女と話に来るのは許してくれないかな、茶飲み友達になるとの約束をしているのでね」
 「茶飲み友達ですか?」
 「そうさ、茶飲み友達さ。本当は妖精界でもっと話をしていたかったのだけれど、彼女はとても大事な約束があるから帰りたい、と言っていたのでね。代わりに私が訪ねて茶飲み友達になる約束をしたんだよ」
 「大事な約束…」
 「君との約束のようだったみたいだね」

 妖精王様は少し真面目な顔になって、ラルフ殿下を見つめた。

 「次期王よ、彼女は我ら妖精達の愛し子だ。誰よりも大事にしてくれよ」
 「当たり前です。アーシャは俺の唯一です、命に変えても守り抜きます」

 ラルフ殿下の答えに満足したかのように頷くと、妖精王は羽を広げて宙に浮かんだ。

 「それではそんな君達に私から祝福と、この国の平穏を授けよう」

 妖精王様が手を振ると私ごとラルフ殿下も光に包まれた。

 「この国は愛し子のいる限り天変地異に脅かされる事はないだろう。君達二人には、無病息災とほんの、寿命を延ばした。君達の子供達がこの国を継いだ後でも、愛し子の望む冒険が出来るようにね」

 そう言うと、妖精王はパチッとウインクをして、来た時と同じように消えた。

 王家も私達家族も、護衛の騎士たちも、全員が全員今起きたことが夢のような気がしていた。

 「妖精王様が降臨されるなんて…」
 「茶飲み友達って…」

 わかる、分かりますよその気持ち。私だって妖精王様が日本の前世持ちじゃなければこんなフレンドリーだなんて信じられませんって。
 それに、って言ったけれども、一万歳以上の妖精王様からしたらどのくらいなのかも想像するだけで怖い。あれだけ欲していた日本の話ができる相手を50年やそこらで諦める気がしない…。

 でも…まあいいか。






 「全てを諦めなくていい。冒険がしたいのなら、俺がずっと付き合うから。だからずっと一緒にいよう」

 横抱きのまま、私の頭の上をちゅっちゅと口付けて来るラルフ殿下の蕩けそうな笑顔を見て、何も文句がいえなくなる。

 仕方ない、王太子妃にはなろう。でもだからといって冒険も諦めた訳じゃないからね。






 その後、冒頭の乙女ゲームに繋がるのでした。
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