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それぞれに差し出された道
学院最終評価の日は、驚くほど静かだった。
試験の喧騒も、ざわめきもない。
ただ、結果を“受け取る”だけの日。
大講堂に、学年ごとに並ばされる。
名前が呼ばれ、評価が告げられ、進路が提示される。
淡々としているのに、重い。
俺の番が来た。
「レオン・クラウス」
一歩、前へ。
「総合評価――特級相当」
ざわ、と空気が揺れる。
「特記事項」
学院長が、紙から目を上げる。
「魔法構築における独自性と安定性」
「他者との連携能力」
「判断力」
短く、でもはっきり。
「――王都魔法庁、研究部門から正式招請」
完全な、予想通り。
でも。
「ただし」
学院長が続ける。
「強制ではない」
「受けるも、断るも、自由だ」
視線が、俺を見る。
俺は、一礼した。
「検討します」
それで、いい。
席に戻ると、アルトがじっと見てくる。
「……すごい」
「でも」
「れおん、行く?」
その声に、不安が滲む。
「まだ、決めてない」
正直に言う。
「アルトは?」
アルトの番も、すぐだった。
「アルト・グレン」
辺境伯家の名。
「前衛・統率評価――上位」
「卒業後、辺境伯領への帰還要請」
戦場に近い道。
アルトの耳が、少し伏せる。
評価が終わり、解散。
中庭の隅で、二人並ぶ。
言葉が、すぐに出てこない。
「……離れる?」
アルトが、ぽつり。
俺は、首を振る。
「選択肢が出ただけ」
「答えは、まだ」
しばらく沈黙。
風が、木々を揺らす。
「獣人はさ」
アルトが、ゆっくり言う。
「進路、家でほぼ決まる」
「役目があるから」
「でも」
拳を、ぎゅっと握る。
「ぼくは」
「れおんと並べる道がいい」
胸の奥が、きゅっと締まる。
「俺も」
「アルトと、並びたい」
だから――
「一度、外に出よう」
「え?」
「学院の外を、二人で見て」
「それから、決めたい」
アルトの目が、見開かれる。
「……できるの?」
「できる」
公爵の顔が、浮かぶ。
――急がなくていい。
その言葉が、背中を押した。
数日後。
正式な書状を出した。
王都魔法庁へは、保留。
辺境伯家へは、猶予申請。
代わりに。
「共同研究・視察名目での短期外遊」
名目は、どうでもいい。
大事なのは。
二人で、選ぶこと。
出発前夜。
寮の屋上。
夜空に、星が散っている。
「れおん」
アルトが、隣で言う。
「もしさ」
「ぼくが、戦う道を選んでも」
「それでも……」
「そばにいる」
遮るように答える。
「形が違っても」
「立つ場所が違っても」
「選び続ける」
アルトは、しばらく黙ってから、笑った。
「……ずるいな」
「それ」
「安心する」
学院の灯りが、下で揺れている。
ここで育った。
ここで、並んだ。
でも、物語は――
外へ続いている。
試験の喧騒も、ざわめきもない。
ただ、結果を“受け取る”だけの日。
大講堂に、学年ごとに並ばされる。
名前が呼ばれ、評価が告げられ、進路が提示される。
淡々としているのに、重い。
俺の番が来た。
「レオン・クラウス」
一歩、前へ。
「総合評価――特級相当」
ざわ、と空気が揺れる。
「特記事項」
学院長が、紙から目を上げる。
「魔法構築における独自性と安定性」
「他者との連携能力」
「判断力」
短く、でもはっきり。
「――王都魔法庁、研究部門から正式招請」
完全な、予想通り。
でも。
「ただし」
学院長が続ける。
「強制ではない」
「受けるも、断るも、自由だ」
視線が、俺を見る。
俺は、一礼した。
「検討します」
それで、いい。
席に戻ると、アルトがじっと見てくる。
「……すごい」
「でも」
「れおん、行く?」
その声に、不安が滲む。
「まだ、決めてない」
正直に言う。
「アルトは?」
アルトの番も、すぐだった。
「アルト・グレン」
辺境伯家の名。
「前衛・統率評価――上位」
「卒業後、辺境伯領への帰還要請」
戦場に近い道。
アルトの耳が、少し伏せる。
評価が終わり、解散。
中庭の隅で、二人並ぶ。
言葉が、すぐに出てこない。
「……離れる?」
アルトが、ぽつり。
俺は、首を振る。
「選択肢が出ただけ」
「答えは、まだ」
しばらく沈黙。
風が、木々を揺らす。
「獣人はさ」
アルトが、ゆっくり言う。
「進路、家でほぼ決まる」
「役目があるから」
「でも」
拳を、ぎゅっと握る。
「ぼくは」
「れおんと並べる道がいい」
胸の奥が、きゅっと締まる。
「俺も」
「アルトと、並びたい」
だから――
「一度、外に出よう」
「え?」
「学院の外を、二人で見て」
「それから、決めたい」
アルトの目が、見開かれる。
「……できるの?」
「できる」
公爵の顔が、浮かぶ。
――急がなくていい。
その言葉が、背中を押した。
数日後。
正式な書状を出した。
王都魔法庁へは、保留。
辺境伯家へは、猶予申請。
代わりに。
「共同研究・視察名目での短期外遊」
名目は、どうでもいい。
大事なのは。
二人で、選ぶこと。
出発前夜。
寮の屋上。
夜空に、星が散っている。
「れおん」
アルトが、隣で言う。
「もしさ」
「ぼくが、戦う道を選んでも」
「それでも……」
「そばにいる」
遮るように答える。
「形が違っても」
「立つ場所が違っても」
「選び続ける」
アルトは、しばらく黙ってから、笑った。
「……ずるいな」
「それ」
「安心する」
学院の灯りが、下で揺れている。
ここで育った。
ここで、並んだ。
でも、物語は――
外へ続いている。
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