婚約破棄されましたが、元から好きではありませんでした

よっちゃん

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婚約破棄されましたが、元から好きではありませんでした

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 その婚約破棄は、王宮の舞踏会で盛大に行われた。
「セシリア・アルトネス! 君との婚約をここに破棄する!」
 王太子レオンハルトが高らかに宣言し、腕には艶やかな令嬢が絡みついている。

 周囲がざわめく中、私は――深く安堵のため息をついた。

(ああ、やっと終わった)

 そもそも私は彼のことが好きではなかった。尊大で、自分の都合がすべて正しいと思っている男。家の事情で婚約していただけで、恋情など一片もない。
 だから泣き崩れるどころか、笑いをこらえるのに必死だった。

「ずいぶん落ち着いているな。強がりか?」
 レオンハルトは勝ち誇ったように言う。

「いいえ。感謝しておりますわ」
「……は?」

「婚約者としての義務から解放してくださって。正直、息が詰まりそうでしたの」

 会場が静まり返る。
 彼の隣の令嬢が不安げに瞬きをした。

「それに――」
 私は扇を閉じ、にこやかに続けた。
「本日をもって、我がアルトネス家は王宮との専属契約をすべて打ち切らせていただきます。今後は南方諸国と取引を進めますので」

「な、何だと!?」
 レオンハルトの顔色が変わる。アルトネス家は国の財政を支える商会の中枢だ。

「ご安心を。これは婚約破棄とは“無関係”の判断ですわ」
 私は丁寧に一礼した。

 数日後。
 王太子は財政難と外交失敗の責任を問われ、離宮に幽閉されたと聞く。
 一方私は、南方からの招待を受け、新しい人生を楽しんでいた。

「ざまあ、ですわね」

 そう呟いた私の顔には、未練も涙もなかった。
 ただ、心からの笑顔があっただけだ。
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