緋色の月

八助のすけ

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緋色の月

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ジュブ……ジュブ……クチュ……





「はっ……あぁぁ……やっ」




電気の消えたダウンライトのみの薄暗い部屋の中に、艶のあるハイトーンの声と、ピチャピチャと何かを舐めるような水音、そして布が擦れる音が響いている。

「も、もうムリ……ああ!だめ……んっ!!」

折半詰まった声を出し、それが漏れないようにと左手の甲に噛みつき、何とか腰から駆け上がる快感をやり過ごそうと身を捩る。
その身体はスラリと長い手足とは対照に身体はアンバランスなほど華奢で、まだ発育途上である事を示していた。

「やっ!!もう、ほんとムリ……!!イキそ……だめっ!離して!!センセェー!」

背骨が反り返り、浮いた腰が限界を告げるようにガクガクと痙攣するが、まだ耐えようと右手で枕の端を爪が白くなるほど握りしめた。

「ああ!!!やだぁ!!
センセでるって!あぁ……はっああああ!」

だが、青年と呼ぶには早い少年と青年の狭間のような彼の必死の訴えも、開いた左右の足の間に顔を埋めた男には届いていない様で、ますます激しく若い彼のそそり立つモノを音を立てながら吸い立てて追い込んで行く。

「いいから、このまま出しなさい」

限界まで立ち上がりフルフルと震える彼のペニスは、射精したのでは無いかと思われるほどの透明な先走りを溢れさせていた。

「はっ……はっ……やだ、センセの口にあぁ……っ!ぐぅっ!!っ!」

センセと呼ばれた中年の男性は、そんな彼の反応が可愛くて、先の鈴口をキツくチュと吸い、そのまま喉の奥まで加え込む。
上顎の波打つざらつきに、敏感な亀頭を擦りつけるようにすると、若い彼の腰は跳ね上がり、ますますガクガクと太腿を痙攣させ、いよいよ限界が近い事を知らせていた。

まだ、手足の長さと頭と身体のバランスがバラバラと言う印象を受けるこの少年とは、出会って4ヶ月になる。
最初の出会はお互いにあまり印象が良いとは言えなかった、だが今ではこうして恋人同士となり一緒に暮らしている。

この快楽に弱い全身性感帯のような敏感な恋人は、自分が奉仕される事を極端に怖がるのだ。
それは彼がこれまで暮らしていた生活環境から言うと仕方の無い事で、彼の最大の精神的外傷が原因だ。
最近はようやく慣れて来たとはいえ、やはり前戯で他人に優しく扱われると、無意識に自分の身体を傷つけ、それをやり過ごそうとする。
今も左手の甲に力一杯噛み付いて限界を我慢していた。
センセと呼ばれた中年の男性は、少年の立ち上がり涙を流しているペニスから口を離し、少年の身体に覆い被さるようにして顔を近づけた。

「ほら緋夏、噛むのを止めなさい」

優しく額から頭へと何度も髪を梳いてやり、涙で赤く腫れた瞼に口づけを落としてやると、少年はようやくユックリと左手を口から離し、涙で濡れた眼を開けた。

「また傷が付いただろう...毎回注意してるのに、いけない子だ」

そう言って、歯型で鬱血した左手の甲をペロリと舐める。

「はっ...あ...」

少年はそれだけでも感じるらしく、薄く開いた口から甘い吐息が漏れた。

「君は何度言ったら解るのかな?」

センセと呼ばれた中年男性は少年を跨ぐように膝立ちになり、そのまま上体を起こした。

「だって……怖い」

少し不安そうな顔をして、自分から離れた男性を眼で追った。

「何が怖い?わたしがこうして一緒にいるのにかい?それとも、わたしに抱かれる事が怖いかい?緋夏」

ヒソカと言う名の少年は、弾かれたように上半身を起こした。

「ち!!違う!!センセは怖くない!
そうじゃなくて、オレだけが気持ち良くなるのが、なんだか取り残されたような感じがして怖いんだ……」

ヒソカは今年で18歳になる
だが、身体や話し方は同年代に比べ明らかに発達が遅れていて、せいぜい15歳くらいにしか見えない。

「緋夏、髪が伸びたね」

そう言って愛おしそうに大きな両手で少年の顔をすっぽりと覆い、そのまま伸びた色素の薄い前髪を何度も後ろに撫でつけている男は、目の前の少年を恋人と呼ぶには少し年齢が行っている。

彼は今年で40歳になり、3年前に15年連れそった妻と離婚をした。
仕事は大学の理工系の準教授をしており、ヒソカとは大学の小さな売店で出会ったのが最初だ。
親子ほども歳の離れたこの子供に恋をしてしまった。
自分が男色家だとは当時想像もしていなかったが、今となってはこの小さな恋人無しの生活は考えられないほど夢中になっている。

「前髪が鬱陶しそうだ、視力にも影響するから明日にでも切りに行って来なさい」

何度も何度も伸びた髪を梳いてやると、ヒソカは頭皮を指がなぞる感覚にゾクゾクとして全身が総毛立つほど感じて腰が動いてしまう。

「はぁ……ああぁ……」

「気持ちが良いのかい?」

「気持ちいい……センセに触られる場所みんな気持ち、んっ!!」

顎を上げ、露わになった白い首筋に唇を這わしてやると綺麗に背中がしなった。
その反動で後ろに倒れそうになるのを、慌てて両腕で抱え込み自分の胸に引き寄せてやる。
少年の身体は発熱しているかの様に火照り、白い肌はうっすらと赤みを帯びていた。
男の胸に額を擦りつけ、肩で息をし少し震えている所をみると、本当に限界なんだろう、その印に上から覗き込む様な型になった自分の位置から見える、彼の背中に彫られたタトゥが浮き上がって見える。

「ね、センセもう、もう入れて?オレ我慢できないセンセのほしいよ!」

無意識なのか故意なのか
彼の上目使いの黒目勝ちな瞳からはまたポロリと涙が一粒溢れ、むせかえるような色香を放っている少し薄い上唇をピンクの舌がサラリとなぞり、中年の男の唇を貪るように口づけをしながら、密着したお互いの腹の上で擦れ合う昂ったモノをユラユラと腰を動かしながらこすり合わせている。

「センセ、センセのこれ……入れて良い?」

「まだ、慣らしてないぞ?」

「ん、大丈夫、オレ慣れてるし」

そう言って笑う顔は益々幼い。
まだ18年しか生きて来ていない彼が、こう言った行為に慣れていると屈託無く言う姿を見て、こう言う生き方しか知らない彼を不備に思えて仕方がなかった。
センセと呼ばれた男は、今自分の上で男のいきり立ったモノを後窟へと当てがう若い恋人の両腰を掴み支えてやる。

グチュ、ズ……クプクプ

「はあ!!はっぁっ!あ……あああ!」

ヒソカはうっとりと虚空を見つめ、恍惚とした表情で自分の後窟へと男性のペニスを刺し込んで行く。
入り口がピリッと痛んだが、その痛みさえ脳が快感と判断し、反り返った白い首筋をヒクっと痙攣させた。

少年の腸内は中へ中へ奥へ奥へと蠕動運動し、どんどんと生き物の様にペニスを飲み込んで行く。
根元まで全て埋まる少し手前にコリっとしたシコリがあり、そこを亀頭のカリの部分が擦れた瞬間。

「あっ!!ああああああ!!!はっ!!くっ……あっ!!」

今まで我慢をし続けた身体を大きく跳ね上げ、呆気なく弾けた。
勢い良く飛ぶ白濁した体液が、重なっている二人の腹を汚し未だ痙攣の治らない下半身に擦られネチネチとした湿った音を出している。

「はっ、はっ、あぁあ!!」

自分が出した物を見て、ヒソカの顔がおののき一瞬怯えの色を出した。

「あ……うそ……オレ、イッちゃった?」

そう言って自分の左手首を強く噛んで目の前の男性の顔を見る。

「ご、ごめん、オレだけ……っちゃた」

少し泣きそうな顔をして自分の手首をキリキリと噛んでいる少年の顔を両手で包み込み、そのままゆっくりと背中をベッドへ寝かせ、座位から正常位へと体位を変え。

「緋夏、自分を傷つけるのを止めなさい、ひそか?」

少年は素直に口から手を離した。

「ごめんなさい」

「何度でも気持ち良くなっても良いから、もう君を縛る者はいないし
君を1人にもしない」

「捨てないで……オレを捨てないで
オレセンセに捨てられたら死んじゃいそう」

冗談みたいな言葉だが、少年の瞳は捨て犬の様に不安に震えて今にも涙が溢れ落ちそうになっている。

「君こそ、迷子になるんじゃないよ?」

「……うん」


その後、少年が意識を手放すまで何度も抱き合った。

















深く意識が沈んで行くのを感じながら、緋夏はセンセに愛される喜びと、この幸せな時間がいつか終わる日が来るのでは無いかと言う不安に慄いている。














どうか……オレを……捨てないで








……オレを……愛して









なんでも……するから。














オレがセンセと出会ったのは、偶然の中の偶然が重なった2週間と言う限られた時間の中。

あれがオレの最初で最後の奇跡

お互い第一印象は最悪だったけど
好きになるのに時間はかからなかったよ
それまでのオレは誰1人何1つ信じていなかった……
でも、センセは今までオレを飼っていた大人とは違ってた。


センセに出会うまでオレは生きながら死んでいたんだ……





今一番怖い事は





目が覚めた時、また路に捨てらてるんじゃないかって
だったら、どうかこのまま目が覚めませんように……。














オレは毎日そう祈りながら眠りにつく。














To be continued.


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