暴れん坊王女は女子高生!

蒼依スピカ

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序幕「暴れん坊王女!」

12話「案内係の二人」

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 先生がいなくなり、教室がちょっとした静けに包まれる。
 さっきの笑い声と比べて違和感があるけど……この静けさは何かしら?
 講義が始まるまでは口を開いてはいけないとか?

「神代さん」
『はい?』

 そう思ってたら、席まで案内してくれた女性が話しかけてきたわ。

「初めまして。私はたちばなりっ。よろしくね」
『よろしく』

 挨拶されたらしい。
 妾には「私」と「よろしく」しかわからないけど。
 私の後にいった単語がこの女性の名前かしら?
 
「私のことは立夏とでも呼んで」
『リッカ、さん?』
「ええ」

 この女性の名前は「リッカ」というらしい。
 ということは、妾にとっての「カミシロ」はこの女性の場合は「タチバナ」。
 タチバナ リッカ。
 それがこの女性の名前らしい。

「おお、結構通じるねー。リツも普通に話せてすごいじゃない。さすが優等生」
「ナナ」

 リッカと挨拶を交わしてると、リッカの後ろの席の女性が会話に入ってくる。

「初めましてでいいのかな? 私は。よろしくー」
『よろしく。えっと、ナナオ、さん?』
「そうそう。私、奈々緒。オーケー、オーケー」

 会話に入って来た女性は「ナナオ」というらしい。
 リッカとは逆の雰囲気の、すごく明るい感じの女性。
 二人を雰囲気だけで説明すると、リッカは騎士で、ナナオは大道芸人って感じ。
 すごくアンバランスな組み合わせだけど、二人はすごく仲良しのように見える。

「ナナは馴れ馴れしすぎ。理事長の孫ってこと、忘れてない?」
「リッチーは堅すぎだって。ミカちゃんも普通に優しくって言ってたじゃん」
「三荷神先生は少しアレなだけよ。普通はもっと――――」
「だから堅いって。頭揉んじゃる」
「ちょ、やめ、ナナ、ちょ――――」

 二人は妾を無視して急にじゃれつき始める。
 ナナオがリッカの頭を両手で押さえ、まるで洗髪マッサージするように手を動かす。
 ……これ、結構痛いんじゃないかしら?
 リッカは長い髪をまとめて一本のポニーテールにしてるから相当引っ張られてる。
 
「やめい! 怒るわよ!」
「はーい、止めまーす」
『……』
「ほら、そんな大声出すからひめっちがビックリしてんじゃん」
「あんたのせいでしょ。それにひめっちって、失礼過ぎ」
「大丈夫だって。ひめっちってこんなにお嬢様って感じなのにすごく面白いから。ねえ、ひめっち?」
『ヒメッチ?』

 妾を指さして「ヒメッチ」と言うことは、妾の名前のことを言ってる?
 ヒメしか合ってないけど……通称、あだ名みたいなものかしら?

「そうそう。朝の出来事のせいで私の中ではひめっちで確定してる」
「神代さんとなにかあったの?」
「いやー、今朝のバスの中でさ、ひめっちったら一人でガッツポーズ決めてたのよ」
「は?」
「乗ってる最中もすごい気迫だったし、着いたと思ったら世界大会優勝の渾身ポーズ。私は確信したよ。この人とは親友になれるってね」
「ナナと親友って、そんな……」
「心配しなさんな。親友一号はリツ。ひめっちは二号。そこは安心して――――」
「そんな心配してないわよ!」

 リッカ、見た感じは優等生っぽいのに結構な激情家ね。
 ナナオはすごく軽い感じなのに人のあしらい方に慣れてる感じ。
 まあ、うん。ある意味、息ぴったりな二人なのかしら?

「はぁ、ナナの相手してると疲れるわ。もういい」
「あれ? 嫌われちゃった?」
「今さら嫌いも好きもないわよ。今は優先順位が低いだけ。とりあえず授業に関しては私が神代さんのサポートするから、ナナは休み時間まで引っ込んでて」
「はいはーい、りょーかーい」
「ということで神代さん。一時限目は数学だけど……これ、持ってきてる?」

 ナナオの相手を終えたリッカが一冊の本を出して妾に見せてくる。
 確かそれ、お母様が妾の鞄に入れてた本の一つ、よね。
 たぶん教科書。
 昨日の夜、お母様が何かの表を見ながら妾の部屋で準備し、鞄に入れていた。 
 講義に使う本なのは予想してたけど、そのうちの一冊をこれから使うらしい。
 
『……これで、いい?』
「ええ、それよ。あとはノートと筆記具と――――」

 リッカが講義に必要そうな物を色々と見せてくれるので、妾も同じような物を取り出す。
 うーん、散々色々と見てきたけど、やっぱりニホン国ってすごいわね……。
 紙で出来た物、そのすべてがありえないほど品質が高い。
 記録紙なんかは真っ白で薄くて書きやすい。
 教科書は文字も絵も精巧ですごく見やすい。 
 王国では不可能な技術だし、出来たとしてもものすごいお金が掛かると思う。
 さらにすごいのが、それが大量に量産されていること。
 技術もすごくて物資も潤沢な裕福な国。
 それが妾の感じてるニホン国の印象の一つ。
 もしもニホン国が母国の大陸にあったら、間違いなく世界一の大国になってると思う。
 生活技術がこれだけ発展してるなら軍事技術もすごいだろうし、下手したら世界統一国家とかできるんじゃないかしら?

「ねぇー、リツー」
「なによ」
「せっせと準備してるとこに水差すようだけど、ひめっちって授業わかるの?」
「……あ」
「日本語不自由で友好関係うんぬんてミカちゃん言ってたし、事故で記憶もあやふやなんよね? 無理っしょ」
「えっと……神代さん、授業わかる?」
『はい』
「あははは、テンプレ回答頂きましたー、無理確定」
「普通に意思疎通できてるからうっかりしてたわ……」
「わかるー。ひめっちって日本語不自由なだけで普通に頭良いと思うんだよねー。事故で記憶がーとかいいながら振る舞いがお嬢様っぽいし、まるで日本に慣れてないだけのお姫様って感じ」
「まあ、確かに……」
「もしかして、ひめっちって異世界転生してきたお姫様だったりして」
「真剣に聞いた私が馬鹿だったわ。ナナは毒されすぎ」
「そう?」
「そうよ。いいわ。わからなくても授業は受けることに意味があるのよ。それに授業を受けてれば記憶が戻るかもしれないし、私は三荷神先生に言われたとおり、案内係をするだけよ」
「ま・じ・め☆」
「ナナも少しは真面目にやりなさい。同じ案内係なんだから」
「考えてる考えてる。友達になれる方法を。まずはお昼ご飯を一緒に食べてー」
「神代さん、この後の授業は――――」
「あ、無視された」

 この二人、きっと妾のことについて話してるのよね?
 ヒメッチとかいう妾のあだ名も何回か聞こえたし、チラチラこっち見てるし。
 なにか聞かれてつい「はい」って答えちゃったけど……問題ないわよね?
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