エロスを求めて、古本屋で小説を発掘してみた

君生きバード

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「ミイラ」吉本ばなな 感想

「ミイラ」あらすじ
顔見知りだった男にひょんなことからついて行き、なぜか監禁されることになってしまった主人公。身体を重ね、共に時を過ごす中でとある「ミイラ」を見せてもらう。男の思いと主人公の本性がうまく溶け合うとき、二人はそれぞれ別れへと進み、刹那の時を過ごすのであった。





吉本ばななの、数多の著作の中でも異色のやばい名作。短編集「体は全部知っている」に掲載。
素晴らしいスパイス。良い意味で作品が浮いてる。


男と主人公の、緩やかな監禁の流れ、ゆったりとした文体が崩れることなくエロさが滲み出ていて唸ってしまった。
一晩中好きなようにされるの最高にやばい。その言葉に隠れた情欲と背徳と、静かな交尾。
やってることがこれなのに陵辱感ゼロに感じるのが逆に好き。
違う誰かが書いたら、とんでもなく灰汁の強い作品になってた。


主人公が男の頭に土偶をぶち込んだ時に「そこで?」とは思うが、相手への愛を知る場面があってつらい。
本当になんというか…愛おしいという感覚はわかる人にしかわからない。独特な心の冷たさを持っていた主人公が、よくその愛という感情に気づいたなと。

男の方も、あっさりとした欲情かと思いきや、ミイラにしたいぐらい主人公を愛してしまうのほんと好き。異色の独占欲かな。結構な変態で好き。
ばななさんが書く男性は穏やかな人がすごく多い印象ですが、彼もまたその穏やかそうな男の類に入っておきながらこのレベルの変態なのはずるい。


ちなみに二人がお互いの名前を呼ぶ場面が一度もない。主人公に一切の名前表記がないし、未だに男の名前が覚えられない。それでも忘れられない物語のインパクト。


 結ばれることはなかったが、だからこそ、この話は誰にでも起こりうる様で、起こり得ることのない非現実と愛だ。
あの時あの人の手でミイラになっても、悪いこととどうしても思えないなら、素敵な愛の形だ。



個人的には普段バッドエンドとかお別れエンド好きじゃなかったんですが、そういう終わり方で納得できる内容もあるんだなと思いました。

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