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第十七章 風に舞う葉
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翌日、大工のウドを中心として、主に力のある男性組が中心になって、空き家をリフォームしたり、テーブルや椅子を作ったりする作業に取り掛かった。女性組は街に行って必要な物を買い揃えたり市場の様子を見に行ったりした。
そして、街から帰ってきた女性組は、仕入れてきた布を使って、レストランのユニフォームを作ることになった。
そんなことを何日も繰り返していると疲れてきたので、レストラン開始前の三日間は、それぞれ思い思いのことをして休むことになった。
休み初日の朝、顔を洗う水が水瓶からなくなっていたので、エリクとシリウスがまだ寝ているアースを起こさないように、静かに瓶を泉に持って行った。
泉に着くと、水を入れながらシリウスがエリクにこう言った。
「可愛いだろ、あいつの寝顔」
少し、真剣な顔だった。そんな顔で言うことだろうか。
エリクは疑問に思いながらも、少し困ったような気分でこう返した。
「可愛いです。でも、そう感じ始めたのは最近のことで」
「そうだろうな」
シリウスはそう言って、泉の先に広がる森を見た。起きたばかりで体が鈍り切っている。伸びをすると気持ちが良かった。
そんなシリウスを見て、エリクは変な気持ちになった。自分とアースの間に入ってきた、アースの親友であるシリウスに対して、どこかに劣等感のようなものがあったのだ。
それを見抜いたのか、シリウスはエリクの背中を軽く叩いた。
「エリクも、俺と同じなんだよ」
そう言って、不思議そうにこちらを見るエリクに笑いかけた。不思議とさきほどの劣等感は消えている。そのことに疑問を覚えながらも、エリクは水が溜まっていく瓶を見た。
「シリウスさんと同じなら、それでいいかも」
エリクは笑った。そして、シリウスと一緒に、水を貯めた瓶を持って、空き家に戻っていった。
すると、アースはもう起きていて、半分くらいふてくされた顔をして待っていた。
「お前ら、俺の悪口言ってただろ」
すると、そんなアースがすごくおかしくなってエリクとシリウスは大声で笑ってしまった。二人が腹を抱えて笑っていると、アースはバツの悪そうな顔をして引き下がった。
エリクは、シリウスと共にお腹を抱えて笑って初めて、彼とうまくやっていけるような気がした。彼らは地球の人だから、あとどれくらい一緒にいられるのかはわからないが、それでも仲良くなって、一緒に喜怒哀楽を共にすることにためらいは感じなかった。
アースが、ベッドの上に座ってため息をついた。なんだかその姿も滑稽で、エリクは気づいたら目の前のアースに向かって、こう言っていた。
「着替えて、行きましょう。あなたを待っている人がたくさんいます!」
そして、街から帰ってきた女性組は、仕入れてきた布を使って、レストランのユニフォームを作ることになった。
そんなことを何日も繰り返していると疲れてきたので、レストラン開始前の三日間は、それぞれ思い思いのことをして休むことになった。
休み初日の朝、顔を洗う水が水瓶からなくなっていたので、エリクとシリウスがまだ寝ているアースを起こさないように、静かに瓶を泉に持って行った。
泉に着くと、水を入れながらシリウスがエリクにこう言った。
「可愛いだろ、あいつの寝顔」
少し、真剣な顔だった。そんな顔で言うことだろうか。
エリクは疑問に思いながらも、少し困ったような気分でこう返した。
「可愛いです。でも、そう感じ始めたのは最近のことで」
「そうだろうな」
シリウスはそう言って、泉の先に広がる森を見た。起きたばかりで体が鈍り切っている。伸びをすると気持ちが良かった。
そんなシリウスを見て、エリクは変な気持ちになった。自分とアースの間に入ってきた、アースの親友であるシリウスに対して、どこかに劣等感のようなものがあったのだ。
それを見抜いたのか、シリウスはエリクの背中を軽く叩いた。
「エリクも、俺と同じなんだよ」
そう言って、不思議そうにこちらを見るエリクに笑いかけた。不思議とさきほどの劣等感は消えている。そのことに疑問を覚えながらも、エリクは水が溜まっていく瓶を見た。
「シリウスさんと同じなら、それでいいかも」
エリクは笑った。そして、シリウスと一緒に、水を貯めた瓶を持って、空き家に戻っていった。
すると、アースはもう起きていて、半分くらいふてくされた顔をして待っていた。
「お前ら、俺の悪口言ってただろ」
すると、そんなアースがすごくおかしくなってエリクとシリウスは大声で笑ってしまった。二人が腹を抱えて笑っていると、アースはバツの悪そうな顔をして引き下がった。
エリクは、シリウスと共にお腹を抱えて笑って初めて、彼とうまくやっていけるような気がした。彼らは地球の人だから、あとどれくらい一緒にいられるのかはわからないが、それでも仲良くなって、一緒に喜怒哀楽を共にすることにためらいは感じなかった。
アースが、ベッドの上に座ってため息をついた。なんだかその姿も滑稽で、エリクは気づいたら目の前のアースに向かって、こう言っていた。
「着替えて、行きましょう。あなたを待っている人がたくさんいます!」
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