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act7:伝わる気持ち
しおりを挟む撮影が終了してから、一週間が経った。
生活ががらりと変わるかと思いきや、まったくそんな気配はなく、私は学校。
白羽蓮は他の撮影に引っ張りだこであった。
学校では普通に会えるし……なんて思っていたけど、撮影の時の方がはるかに会えていて今、何してるんだろうとかちょっと気になったりもする。
『俺は役じゃなくて、寂しいと思ってる』
白羽蓮のあの言葉の意味を未だに聞けてないままだ。
あれだけ言って帰っていくなんて、本当にタチが悪いよ……っ。
すると突然、白羽蓮からメッセージが来た。
【今日、この後時間あったりする?】
なんだろう?
【学校終われば、大丈夫だよ】
【じゃあ今日俺の家来る?】
「えっ!」
思わず声を出してしまった私は慌てて周りに誰もいないことを確認した。
白羽蓮の家……!?
普通に白羽蓮の家に行けば確実にスクープになっちゃうって……!
そう思っていた時、彼から着信があった。
「おう」
なんだか白羽蓮の声が久しぶりな気がする。
「元木と赤坂も誘ってるから、来れるなら来いよ」
あ、なんだ……そういうことか!
みんなで遊ぶってことね!
勘違いした自分にちょっと恥ずかしくなりながらも返事をした。
「分かった!みんなで向かうよ」
私と元木くんとりんちゃんの三人は放課後、すぐに準備をして教えられた白羽蓮の家まで向かった。
彼が玄関のドアを開けてくれて家の中へ。
白羽蓮の部屋まで案内されると、元木くんはすぐにからかった。
「授業サボり~?」
「さっきまで仕事があったんだよ」
「蓮くん、お疲れ様~」
りんちゃんの言葉に「おう」と返事を返す白羽蓮。
そして彼は私に視線を向けた。
「お、おはよう……」
な、なんか緊張する……。
「もう夕方だけど?」
白羽蓮にはクランクアップで会った以来、顔を見ることもなかった。
その上今日、白羽蓮から言われたことを思い出しちゃって……なんだか恥ずかしい気持ちになってる。
「ちょっと待ってて」
白羽蓮は立ち上がると、飲み物とお菓子を用意してくれた。
「みんなでゲームでもようぜ」
「いいね~!最近全然遊べて無かったしね?」
りんちゃんが大賛成する。
「二人とも忙しかったろうから、ゆっくりしよう」
友達と一緒に放課後遊ぶなんて、私……初めてかも。
それから、私たちはチーム戦をしながらゲームを進めていった。
「あ、蓮……そこを狙うのはズルいぞ」
「花ちゃん弱い~」
「うう、まっすぐ進まないよ」
「おい、お前のせいで負けてるぞ」
みんなで笑いながら、楽しい時間だった。
家に帰るまで時間もあるということで最後はDVDを見ることになった。
とても居心地がいい。
仲のいい友達がいて、それからみんなで笑って。
前は学校が怖い場所だった。
でも今は安心できる。
ほっとしながらDVDを見ていると、なんだか眠くなってくる。
今はまだ寝ちゃダメだ……。
そう思えば思うほど視界はボヤけてきて……。
「ん……」
気づけば私は寝てしまっていた。
「う……」
まぶしくなって、ゆっくりと目をあけると、目の前には白羽蓮の姿があった。
「大丈夫か?」
「うわあ!ご、ごめん寝ちゃって……」
「別に。疲れてただろ?気にすんなよ」
いくら疲れてるとはいえ、まさか人の家で寝てしまうとは……。
そこで私は辺りを見渡す。
「あれ……りんちゃんと元木くんは?」
「先に帰ったぞ」
「えっ!」
ってことは今は、白羽蓮と二人きりってこと……?
「何顔赤くしてんだよ」
「し、してないし……!」
私は強く言い返した。
「も、もう帰るから」
私が動揺しながらも、カバンを持つと彼は私の手を掴んだ。
「待って」
──ドキン。
掴まれた手が熱い。
「な、なに……」
すると白羽蓮は静かに話し始めた。
「せっかくだし二人で話そうぜ」
2人でって……何を話したらいいか分からないよ。
戸惑っていると白羽蓮は困ったように頭をかいて言う。
「分かった。こういうのはキャラじゃねぇし、もうハッキリ言う。ずっとさ、撮影終わってから西野のこと考えてた。お前が広瀬と話してた日、イライラして……なんでこんなイライラするんだろうとか、撮影が終わって離れてからのこととか……」
ドキンドキンと心臓が鳴る。
これから蓮が何を言うのか、私は緊張して彼の顔を見ることが出来なかった。
「俺は西野のことが好きだ」
「なっ」
ーードキン。
「何言って……」
初めてされた告白。
それは作品の中でもなくて、役になりきっているわけでもない本当の告白。
信じられないと思う反面、白羽蓮のまっすぐな言葉に熱がこもる。
「終わってからもずっと……頭から西野のことが離れなかった」
ドク、ドク、と早く鼓動を打つ心臓。
いつまでも引かない熱はずっと、役を引きずってるからだって思うようにしてた。
でも今は違うんだって気づいてる。
『今この舞台の中でお前を支えるのはマネージャーじゃねーだろ』
真っ直ぐで。
『頼るなら俺のところに来い』
頼りがいがあって。
『告白の後の表情、すげえ引き込まれた』
一生懸命で。
それでいて……。
『俺は西野のことが好きだ』
私の心を奪う。
それは演者としても、プライベートの白羽蓮としても。
「俺たちはこういう仕事をしてる。返事はしなくていい……でも自分の気持ちには嘘をつきたくなかったから」
白羽蓮はそんな風に言って、この話を終わらせた。
だったら私だってそうだ。
嘘をついたまま、ドキドキしてるのは役のせいだって誤魔化したまま終わりにしたくない。
「私も……終わってからずっと白羽蓮のこと考えてた、よ」
すると彼は顔をあげた。
「今何してるのかな?とか……撮影終わったらあんまり会えないな、とか……私もきっと、白羽蓮のことか、好き……だと思う」
はずかしくて語尾が小さくなっていく。真っ赤な顔を隠すのに必死で、彼の顔を見る余裕なんてない。
初めて伝えた。
真剣に伝えてくれた告白を誤魔化してはいけないと思った。
「……なんだよ、それ。嬉しすぎだろ」
彼は顔を手で覆うように隠した。
「まさかそんな答えが返ってくるなんて思わなかった」
耳まで真っ赤にしながらそんなことを言う。
私だって初めてだよ。
初めて自覚した恋というもの。
自分の気持ちに嘘を付かないで、感じたその気持ちを大事にしていきたいと思ったの。
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