えきでん!~想いをつなげ~

cheeery

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はじめて出来た友達

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美術室から色ペンを借りて、教室で持ってきたおにぎりをひとりで食べながらチラシを書く。

この日は午前授業だけど、部活を見学する気満々だった私はお母さんの作ってくれたおにぎりを持って学校に来ていた。

部活は無かったけど……私が作ればいい!

【私と一緒に陸上部を作りませんか?未経験でも大歓迎。一緒に駅伝を出ましょう!】

柔らかい印象を出すために、イラストとか描いた方がいいのかな?

私は、駅伝でタスキを付けて走っている人のイラストを描いた。

「うーん……これ、何がなんだか分かるかな?」

絵は苦手だからあまり上手くないけど……大事なのは気持ちだよね!

華やかに見えるように色を塗っていく。一人で勧誘しないといけないのかと思うと不安になった。

入学する前は先輩がいて、先輩の背中を見て走るんだろうな、なんて想像していたけれど先輩はいない。
これから全部自分でやっていかないといけないんだ……。

不安になった時、誰もいない教室に一人の女の子が入って来た。

──ガラガラ。

「忘れ物、忘れ物っと」

キレイな金髪が目立つ彼女。
なぜか棒付きのアメをなめていて、あごくらいまで伸びたキレイな金髪がさらりと揺れる。

あの子は確か……今日の自己紹介で一番目立っていた人だ……!

『こんちは~美波(みなみ)果歩(かほ)でっす!両親どっちも外国人です。でもあーっしが生まれた場所は日本なので、英語は話せません。結構適当な性格です~それでも仲良くしてくれる人だけよろしく』

彼女の自己紹介を聞いて、周りはザワザワしていた。

そして先生が「その髪色は直しなさい!」と強く怒っていたのが、印象的だった。

「あっ、同じクラスの人じゃん?何やってるの?」

ふと彼女の方を見たら、目が合ってしまった。
彼女はなんだか面白いものを見る目で私の元にやってきた。

「何これ、すげぇ!」

「あっ、ちょ……」

勝手に私の机から紙を取り上げて眺める。

「えっと陸上部を作りたくて、チラシを作ってたの」
「へぇ~チラシの絵超、可愛いじゃん!」

「本当⁉このイラストなんだか分かるの!?」

「もーちっろんわかるよ!」

嬉しい……下手で伝わらなかったらどうしようって思ってたから。

「非常口のマークだろう?」
「へっ」

「ほら、あの緑のマーク。人間が逃げてるやつ」

ぜ、全然違う……。

「ち、違うよ……これは駅伝で走ってる人で……」

「駅弁?それって美味しいのか?」

「そ、そうじゃなくて駅伝って言う走る競技があって……」

「まっ、なんでもいいじゃん」

彼女はけろっとした顔をして頭に手をやった。

全然伝わって無かったんだ……書き直そうかな。

ショックを受けていると、彼女は私の前の席のイスをとって来て向かいに座りはじめた。

あれ、忘れ物はいいのかな?

「美波さんだよね?」
「おー、何で知ってんだ?」

「自己紹介の時、目立ってたから。ほら、金髪」
「あー……」

「キレイだよね!」
「えっ」

美波さんは驚いたような顔をした。

「こんなサラサラの金髪で目の前走られたら、追いかけたくなっちゃうなぁなんて」

美波さんが走ってる姿を想像してはっと我に返る。

美波さんの反応がない。
もしかして気持ち悪かった!?

そうだよね、突然追いかけたいなんて言ったら普通の人は嫌がるよね。
すると彼女はつぶやくように言った。

「……浮いてるとか思わねぇのか?」
「どうして?」

「みんなと違う、から……これ地毛なんだ、だから髪色変えろって言われるの嫌で」

「全然だよ。むしろ駅伝に出たら注目の的だよ!みんなが美波さんのこと応援したくなるかも」

「お前、変だな」

「そ、そうかな……」

私が頬をポリポリとかいた時、彼女が聞いてくる。

「駅伝っていうの?好きなの?」

「うん、大好き!だから駅伝に出られるようにまずは部員を集めないといけないんだ」

私の言葉に美波さんはへぇ、と溢した後言った。

「このチラシ、どうするの?」

「今日は学校の掲示板とかに張って、明日校門のところで勧誘するつもりなんだ」

「手伝おうか?」

「いいの!?」

「ああ、その代わり……友達になって」

さっきまでハキハキ話していたのに、急に小さな声になる美波さん。

「もちろんだよ!」

私は笑顔で答えた。

嬉しいな。
部活を復帰させることで一生懸命だったけど、ひょんなことから友達が出来ちゃった。

「これからよろしくね」

「そういえば、名前なに?」

「えっ」

もしかして私の名前を知らず友達になろうとしてた?

「だって聞いてなかったしぃ?」

ま、まぁそうだよね。
私の自己紹介は当たり障りない感じだったし、駅伝のことしか言ってなかったし……。

「私の名前は名取悠里だよ」

「じゃあ悠里って呼ぶ!私は果歩って呼んで」

「うん!」

お互いに呼び名を決めると、私たちはチラシを持って職員室に向かった。

迷ったけれど、イラストは直さないまま、先生にコピー機を借りてコピーをした。

よーし、これで……みんなを呼び込むぞ!

案外たくさん来ちゃったりして……。

そんなことを考えて、わくわくしながら果歩と私で半分に分けて学校の宣伝出来そうなところに貼っていく。

廊下に点々と置かれている掲示板と、各クラスの壁とかにも貼っておこう。
私たちは手分けして貼れるところにポスターを張りまくった。

「つ、疲れた……」

外はあっという間に夕方になっていた。

私たちはカバンを持って、一緒に校門を出る。

今日は疲れたけど、途中からちょっと楽しくなった。それは果歩がいてくれたお陰だ。

「こんな遅い時間までごめんね?」

「あー別に?暇だったしぃ?」

眩しく光る夕日の中、私はゆっくりと歩く。すると果歩が私に尋ねた。

「あのさ、駅伝って楽しいの?ワクワクする?」

「ワクワクするし、楽しいよ。みんなと競うだけじゃない、自分とも戦ってゴールするまで走り続けるの」

「ふぅん」

果歩はそれだけ言うと黙ってしまった。

私の説明、あんまり上手くなかったかな?

そんなことを考えていると、果歩は棒付きキャンディをガリっと噛んでから言った。

「悠里が言ったじゃん。あーっしが走ってる姿見てみたい的な?」
「うん」

「やってみてもいいかな~って」
「本当に!?」

私は立ち止まって果歩を見つめた。

「い、言っとくけど!運動とか得意じゃないし?走るとかダルい!でも逃げ足は速いからよぉ」
「じゃあ一緒に走ろう……!」

私は目を輝かせて言った。

「きっと楽しい景色がいっぱい見えるよ!走るのが楽しいって思えるよ」

私の言葉に果歩は照れくさそうに「ああ」と答えて顔をそむけた。

果歩が陸上部に入ってくれた。
一緒に走るって言ってくれた。

これで部員が二人だ!

「ありがとう、果歩」
「お~」

残りはあと三人。
頑張ればいけるかもしれない。

「ただいま~」

その日、夕方の五時半頃家に帰宅すると、お母さんが驚いた顔で出迎えた。

「随分遅かったじゃない!部活、体験させてもらえたの?」
「実はさ……」

 私は母親に今まであったことを全て話した。

「え~!お母さん去年陸上部があったからあるって勘違いしちゃった~」
「まさかだよね……」

「それでどうするの?悠里は運動神経がいいからバスケ部とかいいんじゃない?」
「駅伝じゃなきゃ意味ないんだよ~~!私は何があっても駅伝やるよ」

まっすぐに前を向いて答えた。

ずっとやりたかったこと、諦めるなんて出来ない。

「じゃあどうするの?」

「陸上部を作るの」

私の覚悟が伝わったのか、お母さんはそれを聞いて笑顔になった。

「そうね、やりたいって言ってたもんね。お母さんも応援するわ」
「うん!」

この日はお母さんが作った大好きなハンバーグを食べて、明日も頑張るぞ!と自分にカツを入れた。

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