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第7章:オーバーワーク
しおりを挟むあれから2週間。
生徒会の仕事は追いつかないくらいに忙しくなっていった。
「会長、この書類のチェック終わってます?」
「3組が出し物変更を依頼して来てます」
「吉永、予算オーバーの組がいくつかあるけどどうする?」
……マズい。
全然追いつかない。
今回はイレギュラーなことばかり起きていて、その対応に追われていた。
「その案件、一つやります」
宇佐美がやってくると、俺の仕事の一つを持っていく。
「あ……っ」
しかし、彼とはいまだに気まずいままだ。
『俺が欲しいのはあなただけです』
あの時の言葉の意味はなんだったのだろう?
生徒会長の座にしか興味がないということ?
やっぱり宇佐美も本当は……。
生徒会長になりたかったのかな。
それを俺は奪った。
奪っておいて、片手間でやっている宇佐美とは違う!と言って手を振り払ったんだ。
そりゃ怒るよな……。
俺はいつまでも自分勝手だ。
そして帰る間際、俺は宇佐美に宣言をされた。
『あなたが俺を頼れるようになるまで、俺は何もしません』
もう見放したってことだよな……。
とはいえ、なにもしないと言いながらも、俺に負担がかからないように仕事を完璧にこなしてくれるんだよな。
ただ仕事を終えると、彼は俺より先に帰っていくようになった。
「唯人先輩、これ片付けておきましたので帰ります。なにかやってほしいことがあったら言ってください」
激務の中、時間がくるのはあっという間だ。
まだ全然追いついていないから、今日も残らなくちゃな……。
「だ、大丈夫だ、俺がやるから」
「そう、ですか」
ありがとう、と伝える前に彼は背中を向けてしまった。
「あ……」
虚しく閉められた扉を見つめ、俺は深いため息をついた。
最近、宇佐美はこんな態度ばっかりだ……。
いつもなら強引にでも俺のやる仕事を奪いそうなものなのに、今はなんか……関心がないみたいでそっけない態度を取られている。
あの日のことを怒っているんだろう。
謝りたいとは思ってる。
でも……許してくれないよな。
「1人で頑張ろう……」
ひとり残された教室でポツリとつぶやく。
誰もいないというのは案外寂しいものだった。
結局今日の仕事が終わったのは夜8時頃。
薄暗い中、ひとりとぼとぼ帰っていると、珍しく家の電気がついていた。
母さんと父さん、どっちか帰ってる!?
俺は急いで玄関のドアを開けた。
「ただいま」
ドアを開けると、そこにいたのは忙しそうな母さんの姿だった。
久しぶりだ。
こんな時間に帰ってくるのは。
俺は急いでリビングに向かった。
そこにいたのは母さんだった。
「今日帰ってたんだ! 夕飯まだだから一緒に……」
そこまで言うと母さんは間髪入れずに言った。
「荷物を取りに来ただけよ。これから母さん、また仕事に向かうから。夕飯レンジでチンして食べて」
じゃあね、と言うとそそくさと出て行ってしまう。
ガチャンっとドアが閉まり、部屋には俺だけが残された。
「さみしい……」
また一人。
静まり返った部屋は苦手だ。
母さんも父さんも、俺に興味ないのかな。
俺がなにをしてようが関心がないんだろう。
いや、ダメだ。
そんなことを考えてはいけない。
ふたりは忙しいんだ。
だから仕方ない。
そう何度もいいきかせては虚しくなった。
俺はご飯を自分の部屋にもっていくと、ひとり食事をしてから、生徒会の仕事に取りかかった。
ご飯の味はよく覚えていない。
翌朝。
昨日作った書類を先生に提出しにいった。
これですんなり通れば問題ないんだが……。
授業を終え、クラスの方の出し物の準備をする。
生徒会ばかりに出ていてクラスの方をないがしろにすることは出来ない。
あくまでも両立だ。
クラスの出し物は、展示だ。
事前の準備は大変だけど、当日はやることが少ない。
当日は生徒会の方に集中出来るから、今頑張らないとな。
「会長、そこ青で塗ってくれる?」
「ああ分かった」
ペンキで色を塗る。
クラスのみんなも俺のことを会長と呼ぶ。
生徒会の時は嬉しかったけど……。
『唯人さん』
名前を呼んでくれるのは宇佐美だけなんだよな……。
きっと俺の名前ってみんな知らないよな。
それでもいいと最初は思ってた。
生徒会長と認知されているみたいで、そっちの方が嬉しかった。
でも卒業したら、誰か俺の名前を覚えててくれるだろうか。
宇佐美くらいかな。
……って、俺宇佐美のことばっかりじゃないか。
今は作業に集中しないといけないのに!
「かーいちょ!どうしたの?ボーッとしちゃって」
「えっ!」
するとクラスのバスケ部の女子2人が俺の隣に来て話しかけて来た。
「もしかして会長、恋?」
「会長の恋バナ聞きたーい!」
恋……!?
そ、そんなわけないだろ!
俺はただ宇佐美のこと考えていただけで……。
「恋なんかじゃ……!」
「可愛い~~顔真っ赤だよ」
「図星なんだ」
俺が慌てて否定すれば、過剰になってしまい逆に変な意味で取られてしまった。
「おい、お前ら会長からかうなよ~」
「だってめっちゃ可愛いんだもん」
目一杯否定しても、その後質問攻めされる始末。
つ、疲れた……。
こうして、なんとかクラスの仕事が終わり、俺はヘトヘトになりながらも、その足で生徒会室に向かった。
するともうみんな片付けをしている時間だった。
そっか、もう18時半か……。
思ったよりクラスの方の時間がかかっちゃったなあ。
「吉永、今来たのか?」
すると、学が俺の元にやってくる。
「うん、悪かったな。遅くなっちまって……」
「いや、俺も明日はクラスの方で生徒会出られないし全然いいよ。それよりなんか疲れてない?」
「えっ!全然そんなことないぞ!」
そう見えてしまったならしっかりしなければ!
「ならいいけど、無理しすぎるなよ」
「うん」
全然、まだまだいける。
少し疲れはあるけれど、これくらい寝てしまえば大丈夫だ。
一人生徒会室で作業を続けていると。
──ガチャ。
生徒会室の扉が開いた。
「あっ、」
中に入ってきたのは宇佐美だった。
「お疲れ様です。まだ残っていたんですね」
しかし、宇佐美と目が合わない。
「あ、ああ……今日はクラスの方に最初に行ってたからな。宇佐美は?」
「忘れ物を取りに」
そう言って机に置かれていたファイルを宇佐美は手に取った。
「では」
そう言ってすぐに背中を向けてしまう。
……帰るのか。
まるで俺を避けてるみたいだ。
やっぱり手を振り払ったこと、怒っているのか……。
「帰るのか?」
「えっ」
俺のポツリとつぶやいた言葉に、宇佐美は驚いたように顔を上げる。
「あっ、いや……その」
なに言ってるんだ。
口に出すつもりはなかったのに、とっさに出てしまった。
慌てて口をつぐむと、宇佐美は静かに伝える。
「なにかやらなきゃいけないことがあったら、やりますけど……」
やらなきゃいけないこと……。
探してみるが、宇佐美も疲れているだろうし……。
「そ、それはない!大丈夫だ!」
とっさに俺が言うと、一瞬宇佐美が寂しそうな顔をした。
「……そうですか、じゃあ帰ります。お疲れ様でした」
パタンと虚しくドアが閉まる。
シーンと静まり返る部屋。
……行ってしまった。
静かすぎる部屋がさみしさを増幅させる。
あの時、引き止められたら……。
でもなんて言ったらいいか、分からなかった。
俺、なんかダメダメだな。
しっかりしないと。
なんのためにみんなの代表になったんだよ。
俺は自分の頬をパシンと叩いた。
それから1週間が経った。
文化祭まで残すところ1週間となった。
休んでいないからか、体が重く少し熱っぽい。
でも今日さえ終われば明日は休みだ。
大丈夫、大丈夫。
俺は自分にそう言い聞かせた。
「会長、ひとりで大丈夫ですか?」
「ああ、全然平気だからクラスの方行っておいで」
仕事が増えていくけれど、人手はどんどん足りなくなっていく。
それだけじゃなかった。
「会長、大変です! また看板が壊されています!」
「えっ……」
多目的教室に行ってみると、俺たちがコスプレ喫茶をするために作った看板が壊されていた。
これは明らかに落ちて壊れたとかではない。
誰かがやっていることだった。
「どうしてこんなこと……」
3日前にも外装が壊されるようなことがあった。
……行ってしまった。
静かすぎる部屋がさみしさを増幅させる。
あの時、引き止められたら……。
でもなんて言ったらいいか、分からなかった。
俺、なんかダメダメだな。
しっかりしないと。
なんのためにみんなの代表になったんだよ。
俺は自分の頬をパシンと叩いた。
それから1週間が経った。
文化祭まで残すところ1週間となった。
休んでいないからか、体が重く少し熱っぽい。
でも今日さえ終われば明日は休みだ。
大丈夫、大丈夫。
俺は自分にそう言い聞かせた。
「会長、ひとりで大丈夫ですか?」
「ああ、全然平気だからクラスの方行っておいで」
仕事が増えていくけれど、人手はどんどん足りなくなっていく。
それだけじゃなかった。
「会長、大変です! また看板が壊されています!」
「えっ……」
多目的教室に行ってみると、俺たちがコスプレ喫茶をするために作った看板が壊されていた。
これは明らかに落ちて壊れたとかではない。
誰かがやっていることだった。
「どうしてこんなこと……」
3日前にも外装が壊されるようなことがあった。
きっと同じ犯人だろう。
「ヒドイな……」
学がつぶやく。
「他のものも一部破損してます」
見回りをしていた宇佐美も言った。
本当は犯人を探したいけれど、時間も無いし、みんなの士気が下がっていくのもよくないだろう。
「とにかくもう一度、作り直そう。仕事がある人はそっちを先に回して……ここは俺がやるから」
そう、指示を出した時。
「……っ」
ぐらりと視界が揺れたような気がした。
あれ、おかしいな。
足が動かない。
目の前にいる宇佐美がぐにゃぐにゃに歪んで見える。
なんでだろう。
なん、で……。
「唯人さん、唯人さん……!」
宇佐美の必死な声だけが聞こえる。
しかし、その声もだんだんと遠のいていき……その瞬間、目の前が真っ暗になった。
ーー。
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