バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery

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もう一度お付き合い

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嵐の夜から。
再びお付き合いをすることになった俺たち。

【おはよう。今日もバイト先で会えるのうれしい】

朝、届いたメッセージを見て、俺は口もとを覆った。
隼人から来たメッセージ。

……やばい。
絶対にニヤけてる。

バイト先へ向かう道。
俺は、駅に設置された鏡に映る自分の顔を何度も確認した。

ダメだ。口元が緩むのを止められない。
でも浮かれてる場合じゃないよな。

仕事は仕事だ!
俺はまだまだ覚えなくちゃいけないこともたくさんあるわけで、給料も発生してるんだからしっかり割り切ってやらないとな!

「……お、おはようございます」

バックヤードのドアを開けると、隼人はもう来ていた。

いる!
隼人と目が合う。

「はよ……」
「おう」

それだけで俺の心臓がドクンと跳ねる。
俺は、ドキドキするのを隠しながら自分のロッカーに向かった。

「広瀬くん、三上くん。この間はありがとうね!お礼にジュース買ってきたから持っていってよ」

「ありがとうございます!」

店長に頭を下げる俺たち。
まぁ、あの嵐の中帰るのは大変だった。

でもようやく両思いになり……。

『つ、付き合うってことでいいんだよな?』

と尋ねたが!!

『えっ、聞こえない!』

外はそう、大嵐……。
声は届くことはなく、当然手を繋ぐような甘いこともできずに、びしょ濡れになりながらお互いの家に帰る始末。

で、でもきっと付き合うことになったと思う。

「今日はレジとカウンターお願い。隼人くんはドリンクね」
「はい!」

ばちりと目が合うと、隼人は俺だけに見せる優しい笑顔を見せた。

う"……。
俺の彼氏、カッコいい……。

今日は服部さんがいないこともあってか、俺と隼人で売り場をまわすことになっていた。
レジを打ちながら、隼人が作ったドリンクを受け取りお客さんに渡す。

必死に笑顔を作り、注文をとっていった。
すると、背後に人の気配がした。

「……陽、これ、フラッペ先」
「うわっ!?」

俺の背後からそっとフラッペを出す隼人。
あいつの体が俺の背中にふわりと触れた。

──ドキン。

(……近い、近いって!)

俺は、客から受け取った千円札を握りしめたまま一瞬固まる。
しかしあいつはもう、ドリンクカウンターに戻っていた。

「次、ラテとコーヒー」 
「は、はい!」

レジを打ち終え、カウンターの上を布巾で拭く。
それとほぼ同時に隼人が二つのカップをカウンターに置いた。

「……あっ」

俺が拭いていた手と、あいつがカップを置いた手がカウンターの上で不意に触れ合う。

指先が熱くて……なんだか恥ずかしい気持ちになった。

「わっ……つ!」

俺は、変な声を出して大げさに手を引っ込める。
そんな俺を見て、隼人は不思議そうな顔を浮かべていた。

いやあ、なんか妙に研ぎ澄まされてしまうというか……意識しちまうというか……。

前付き合ってた時ってどんな顔してたっけ?
あの時はおためしみたいな感じで付き合ったのもあって、なんか今の方が緊張するんだが……!

「陽、次これね」
「……っ!」

客に聞こえないよう低い声で、俺の耳元に次のドリンクの順番を囁く。

──ドキ。
ち、近いって……。
なんか今日隼人の距離近くねぇか?

「お待たせしました!」

ドリンクを提供する。
俺は人がいなくなったタイミングで隼人に小声で言った。

「……お前、バレるって……!」 
「は?」

隼人は、よく分かってない顔で俺を見る。

「なにが?」

 (なにがって……!分かるだろう!俺たちのことだよ)

隼人と付き合ったのはいいが、男同士だ。
まだまだそういうのに寛容な人ばかりではないから、この付き合いは気づかれてはいけない!

そう絶対に!


それから人がどんどんまばらになっていって、暇な時間が増えてきた。
お客様さんが入ってくる時はベルが鳴るようになっているから、手が開いたらカップの補充をするようにって言われている。
カップを手に持ちながら作業をしていると、後から出勤してきた美咲さんに言われた。

「てか広瀬くんと三上くんって、仲良いよね。なんかふたりだけの特別な空気感があるっていうの?」
 
──ギクッ!
 
も、もしかして美咲さんにバレた!?
いや、そんなはずは……!

「え、あ、いや、そんな……!教育係、だしっていうのもあるんすかね?あはははは」

俺が必死に取り繕って顔を引きつらせていると、俺の斜め後ろから隼人があっさりと答えた。

 「はい。高校も同じだったんで」

おまっ……!さらっと!はいとか言うなよ!
付き合ってることバレたらどうすんだよ!

「へえー、そうなんだ!どうりで息ピッタリなわけだ」

美咲さんはうんうんと頷きながら聞いて目線を逸らした。

「あっ、そろそろ片付け準備か。私に行ってくるね」

美咲さんは、その場を去っていく。

「お前……さっきの危なかっただろ!」 
「……なにが」 

「仲良いよねって言われて、あんなとこではいとか……付き合ってるってバレるぞ!」
「はあ?」

隼人は意味わからないとでもいいたげな表情を浮かべた。

「仲良いねって言われたら普通にはいって言うだろ。違うんですって必死に否定する方が変だぞ」

ハッキリといい放たれ、考え直してみる。

「た、たしかに……」

冷静に考えると不自然なことしてるの俺だわ。
すると隼人は俺に耳を出すように言う。

??

俺は言われるがまま、隼人の方に耳を傾けると隼人は耳元で言った。

「意識しちゃった?」
「なっ……」 

かあっと顔が熱くなる俺。
それを見てにやりと笑う隼人。

これは隼人の方がやりすぎだろう!!!

バイトが終わりバックヤードで着替えていると、ドアが勢いよく開いた。

「ねねー!みんなこの後!シフト入ってたメンバーで飲みに行かない? 」

美咲さんが提案をすると、バックヤードに残っていた数人のバイトが「行きたーい!」と盛り上がる。

「広瀬くんはどう?」

そういえば前も行けなかったしな……。

「あ、はい! 行きます!」

明日はちょうど学校も休みだし、こういう時くらい行かないと。


「やった。……じゃあ、三上くんは?」

全員の視線が、黙ってカバンに荷物を詰めている隼人に集まる。
隼人って普段から大人数で集まるの、あんまり参加してるイメージないよな。

高校の時だって、クラスの打ち上げとか平気でスルーしてたし。

隼人はスマホをポケットにしまうと、チラリと俺を見て答えた。

「……俺も、行きます」
「やったー!!」
「三上くん来るの珍しい!」

こうして俺と隼人は飲み会に参加することになった。

バイト先のみんなで訪れたのは駅前の居酒屋だった。 
金曜の夜ということもあって店内は活気に満ちている。

店員に案内された座敷席へぞろぞろと上がっていくと、俺はどこに座るべきか迷って立ち尽くした。

端っこにしておこうかな……。
なんて思いながら視線を彷徨わせていると、ふいに手首を掴まれる。

「……陽はここ」

隼人は短くそう告げると、自分の隣の座布団をポンと叩いた。

「お、おう」

俺はヒヤヒヤしながら周りを見ていた。
隼人気を付けろよ。
俺たちが付き合ってるってバレたら色々面倒なことになるんだからな。

大人しくその隣に座る。 周囲を見渡すと美咲さんたちがニヤニヤとこちらを見ていた。 「ほんと仲良いよね~二人は」
冷やかされるような視線に俺は小さくなるしかない。

ほら、みろ。
美咲さんは勘が鋭いんだからな。

「とりあえず生の人ー!」
「はーい!」

ドリンクが運ばれてきて乾杯の声が響く。
みんな楽しそうに話していて、なんか……ちょっと感動した。

サークルはただの飲み会って感じだけど、バイト先の飲み会は頑張った仲間って感じでなんかいい!

料理が運ばれてくると各々みんな会話を楽しんでいた。
そして1時間ほどして先輩たちが出来上がってきた頃……。
美咲さんが悪酔いをしてきた。

「広瀬くんってさあ、ほんと肌綺麗だよね」 

向かいに座っていた美咲さんが、頬杖をつきながら身を乗り出してくる。

「え、そうですか? 男なんで気にしたことないですけど……」
「いやいや白いしモチモチしてそう! ちょっと触らせてよ~」

美咲さんがふらりと手を伸ばしてくる。 
その時。

「ダメですよ」

すっと入ってきた隼人の手が美咲さんを止めた。
そして隼人は俺の肩を自分の方に抱き寄せると静かに言い放った。

「陽の頬、触っていいのは俺だけなので」

俺はカッと顔が熱くなるのを感じた。

おまっ、なに言って……!
周りはシン、と一瞬だけ時が止まった気がした。

しかしすぐに黄色い声があがる。

「……きゃあああああ!!」
「ありあり!やばい尊い……! ごちそうさまです!」

美咲さんは手を口に当てて目を輝かせている。

「……っ、隼人!」

俺は真っ赤な顔で隼人を睨んだ。
こんな公衆の面前でなんてこと言うんだよ!
しかし隼人は、悪びれる様子もなく平然とグラスを傾けている。

「……本当のことだろ」

ボソリと呟かれたその言葉に、俺の心臓はまた大きく跳ねた。ああ、もうしらね!


飲み会は、盛り上がったままお開きになった店を出て夜風にあたると、酔ってもいないのにやけに頭がフワフワしていた。

「じゃあねー、広瀬くん、三上くん!」
「お疲れ様でーす!」

美咲さんたちと駅前で別れる。
ぞろぞろと散っていく他のバイトたちを見送り、俺と隼人だけが同じ方向に向かって歩き出した。
さっきまでの騒がしさがウソみたいに夜道は静かだった。

「つーか、なんだよ。あれ」
「ん?」
「陽の頬、触っていいのは俺だけなんでって……あんなこと言ったら俺たちが付き合ってるってバレるだろうが!」

しかし隼人は、特に気にする様子もなく涼しい顔で答えた。

「別にあれくらいで本気で付き合ってるなんて思われないって」
「いや、絶対みんな怪しんでたね!?」
「陽はちょっと気にしすぎ。男子大学生がわちゃわちゃしてるようにしか映らないって」

あっけらかんと言い放つ隼人に、俺は言葉を詰まらせる。

「……そ、そうなのか?」

確かにみんな「尊い」とか「過保護」とか盛り上がっていたけれど……付き合ってる?なんて聞いてきたりはしなかったしな……。

(俺が……気にしすぎなのか!?)

だってなんかめっちゃ意識しちまうんだよ!
隼人のこと。

「お前と付き合ってた時、どんな感じだったか分かんなくなってる……」

高校の頃は、じゃあ付き合ってみるかみたいなノリだったし……お互いにお試しで一緒に帰ってみたり、手を繋いでみたりしていたことが多かったからそこまで緊張はしなかった。

でも今は違う。
明らかに両想いになって、それも二度目のお付き合い。
そりゃどうしていいかわらかなくなるのも無理ないだろ!!

すると、隼人の隣の足音が止まる。
俺も足を止めて振り返ると、街灯の下、隼人が真剣な眼差しで俺を見つめていた。

「じゃあさ、デートしよう」
「……は?」
「慣れる練習しようよ」

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