無自覚よしよしプレイで第二王子の性癖を歪めてしまったみたいです

小実そしる

文字の大きさ
6 / 23

第二王子は気になるようです

しおりを挟む
 次にアーサーからの呼び出しがあったのは、それから一週間後のことだった。

「お待ちしておりましたよ、セス殿。アーサー殿下が癇癪を起こさぬ内に、さあどうぞこちらへ」
「あ、はいっ」

 王城に着くや否や、アーサーの側仕えであるカミールに慌ただしく出迎えられた。その勢いのままに、アーサーの待つ部屋へと通される。

「失礼いたします」

 室内へと足を踏み入れたところで、セスは思わず息を呑んだ。

「っ……」

 部屋の中央に置かれた天蓋付きベッド。そこに腰掛けるアーサーの周囲に、黒い霧のようなものが立ち込めていた。ように見えたのは、あくまでも比喩表現だ。しかし、それが誇張とは言い切れない程には、彼の纏う雰囲気は剣呑としていた。

「あ、あの……殿下、その……」

 おどおどと視線を彷徨わせるセスをじっと見据え、アーサーは苦々しげに口を開いた。

「何故、一週間も僕のもとを訪ねてこなかった」

 何故か、と聞かれれば答えは明瞭だ。
 アーサーからの呼び出しであればいつでも馳せ参じる所存だが、平民のセスが自らの意思で王族を訪ねるなど、不敬以外の何者でもない。
 言葉選びを間違わぬよう、セスは慎重に弁明した。

「ぼ、私のような身分の者が、殿下の貴重なお時間を頂戴するなど、そのような恐れ多いことは」
「そのようなことを聞いているのではない」

 セスの言葉を遮り、アーサーは苛立たしげに足を組み替えた。

「そもそも君は、魔力供給が目的で僕のもとに来たのだろう? ならば、一週間も間隔を空けるなど非効率だ。第一、君の主治医の話では、君は充分な魔力を生成できないばかりか、僅かばかりの魔力を留めておくことすらできないのだろう。見たところ、先日僕が渡した分の魔力も既に底をついているようだしな」
「そ、それは……」

 セスが言い淀んでいる間にも、アーサーの纏う空気はますます剣呑なものになっていく。

「僕の魔力を分けてやったというのに、君はそれすら無駄にするつもりなのか」
「も、申し訳ございません。決してそのようなことは……ただ」
「……なんだ、言いたいことがあるなら臆さず言ってみろ」

 口籠るセスに先を促すように、アーサーが僅かに首を傾げる。その仕草は年相応にあどけないものだったけれど、彼の纏う空気の刺々しさは変わらない。
 こくりと喉を鳴らし、セスは乾いた喉から掠れた声を絞り出した。

「た、ただの平民である私が、殿下のお時間を頂戴するなどと恐れ多いと……そう、思ったのです。殿下のお心遣いを無下にする結果になってしまい、大変申し訳ございません」

 深々と頭を下げてから数秒。沈黙に耐え切れずに顔を上げれば、アーサーが表情の読めない顔でセスを見下ろしていた。

「殿下、あの……」
「あい分かった」

 感情の窺えない声音で相槌を打ち、アーサーは徐に立ち上がった。
 鷹揚な足取りでセスの元へと歩み寄ると、その顎を掴んで上向かせた。

「っ……あ、アーサー殿下?」
「では、ルールを決める。君はこれから二日おきに僕のもとを訪れ、魔力供給を行うんだ。もし魔力が枯渇したなら、それよりも短いスパンでも構わない」

 有無を言わさぬ口調で言われれば、セスには頷く以外の選択肢はない。

「……かしこまり、ました」

 戸惑いながらも大人しく首を縦に振れば、アーサーは満足げに頷いてセスの手を引いた。

「立ち話もなんだ、座れ」
「は、い。失礼、いたします」

 アーサーに促されるまま、寝台へと腰掛けた彼の隣へと腰を下ろす。すぐさま体を寄せられて、セスの肩にアーサーの頭が乗せられた。

「少し寝かせろ。起きたら、好きなだけ魔力を注いでやる」
「あ、はい。ありがとうございます」
「僕の為でもあるんだ。礼には及ばない」
「はい、ありが……承知しました」

 会話と呼ぶには拙すぎるやり取りを重ね、アーサーは間もなくして安らかな寝息をたて始めた。

「殿下……おやすみなさいませ」

 そっと囁きかけ、セスも静かに瞼を下ろした。


────

「ん……」

 次にセスの意識が浮上したのは、それから数時間後のことだ。
 いつのまにか、体を寝台に横たえられており、肩の重みは消えていた。その代わりのように、ツンツン、と頬を突かれている。

(殿下……?)

 薄目を開くと、セスの隣で添い寝をするアーサーの姿が視界に映った。頰をつつく指はアーサーのもので、ぷにぷにと感触を楽しんでいるようだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

脱落モブ男が人気アイドルに愛されるわけがない

綿毛ぽぽ
BL
 アイドルを夢見るも、デビューできずオーディション番組に出演しても脱落ばかりの地味男、亀谷日翔はついに夢を諦めた。そしてひょんなことから事務所にあるカフェで働き始めると、かつて出演していた番組のデビューメンバーと再会する。テレビでも引っ張りだこで相変わらずビジュアルが強い二人は何故か俺に対して距離が近い。 ━━━━━━━━━━━ 現役人気アイドル×脱落モブ男 表紙はくま様からお借りしました https://www.pixiv.net/artworks/84182395

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

【完結】異世界から来た鬼っ子を育てたら、ガッチリ男前に育って食べられた(性的に)

てんつぶ
BL
ある日、僕の住んでいるユノスの森に子供が一人で泣いていた。 言葉の通じないこのちいさな子と始まった共同生活。力の弱い僕を助けてくれる優しい子供はどんどん大きく育ち――― 大柄な鬼っ子(男前)×育ての親(平凡) 20201216 ランキング1位&応援ありがとうごございました!

給餌行為が求愛行動だってなんで誰も教えてくれなかったんだ!

永川さき
BL
 魔術教師で平民のマテウス・アージェルは、元教え子で現同僚のアイザック・ウェルズリー子爵と毎日食堂で昼食をともにしている。  ただ、その食事風景は特殊なもので……。  元教え子のスパダリ魔術教師×未亡人で成人した子持ちのおっさん魔術教師  まー様企画の「おっさん受けBL企画」参加作品です。  他サイトにも掲載しています。

異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる

ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。 アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。 異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。 【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。 αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。 負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。 「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。 庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。 ※Rシーンには♡マークをつけます。

処理中です...