異世界ワープしたら王様に求婚されました。

ふわパカ

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1.忘れられない人が居るから

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俺は棗 遙(なつめ はるか)高校2年。

成績は大体3~5。5がつくのは国語や英語の文系の教科。秀でて勉強やスポーツが出来るわけでもなければ手が器用なわけでも無い。家も特別貧乏でもお金持ちでも無い。至って極普通の男子高校生である。

部活には所属していない。入りたいと思う部活が無かったのである。部活はやっていないが友人に勧められて近所のスーパーでレジ打ちをしている。そして部活をやっていない分他の事で頑張ろうと委員会には所属していた。所属している委員会は保健委員である。

本当に、俺は極普通の生活を送っている。あの災難に遭うまでは。


これはある日の放課後に起きた出来事である。

保健委員の俺は1年の後輩と一緒に保健室の掃除や備品の点検を行っていた。

「棗先輩は付き合ってる人とか居るんですか?」いきなり後輩が尋ねてきた。

「え…居ないよ。でも、急にどうして?」急な質問に少し驚くも俺は答えを述べた。ちなみに俺は誰とも付き合った事はないのだ。

「そうなんですね。良かった…」後輩は安堵の溜息を吐いた。

「…?良かった?」後輩の言葉の意味が分からず俺は後輩を見つめる。

「あ…俺、実は…棗先輩の事が好きで…」

後輩から告げられた言葉の理解をするまでに少し時間を要した。男が男に告白を?

しかし驚いたのは一瞬だった。実は昔からよく告白されるのだ。女にも男にも。だからいつも俺はこう返すのだ。

「…気持ちは嬉しいけど、ごめんな。俺はその気持ちは受け取れない。君には他に良い人が居るよ」

「先輩が良いんです」後輩は真っ直ぐに俺を見つめてくる。

今みたいな返答を受ける事は何度もあった。だからいつものように俺は答える。

「ごめんね、君の気持ちは嬉しいよ。でも俺は君を愛せない」はっきりと彼に告げる。

「何で、ですか」彼は今にも泣き出しそうで、少し言い過ぎたかと後悔した。

「…忘れられない人が居るから」俺はそう答えた。そう、俺には忘れられない人が居る。

「…先輩の忘れられない人がどんなに素晴らしい人かは知りませんが、その人を忘れるくらい先輩を幸せにします」彼の言葉には熱が篭っていて、真剣な事は伝わってきた。

「無理なんだ、ごめん」それでもやはり俺はあの人を忘れる事は出来ない。

「無理って決めつけないでください!酷いです…」後輩の怒りと悲しみが満ちた表情、声色。彼の瞳には涙が浮かんでいた。そして彼は走り去って行った。

ああ、俺はまた傷付けてしまった。あの時のように。
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