異世界ワープしたら王様に求婚されました。

ふわパカ

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5.嫌です

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俺たちは屋上に場所を変えた。

「で、そこの2年坊主。あの録音消せ」男が翔先輩の肩を掴む。翔先輩は嫌そうな表情になると男の手を振り払った。

「嫌ですね。あんな事したお前らが悪い」翔先輩は男3人を睨む。凄い目つきだ。

「なら仕方ねーな。力尽くで彼奴のスマホ奪え」男1人の声かけで他の2人の男が翔先輩を取り囲む。

「待って!乱暴な事はやめてください」俺が止めようとすると翔先輩に目で"来るな"と合図された。

「俺のスマホ奪ったところで何も出来ないと思いますけどね。ロックかけてるんで」余裕めいた表情で翔先輩は男3人を見やる。男3人は悔しそうに唇を噛んでいる。

すると急に男1人が俺の方へ走り寄り俺を羽交い締めにした。そして首筋にヒヤリとした感触が伝う。どうやらカッターナイフを首に当てがわれているようだ。

「この1年がどうなっても良いってのか2年坊主。さっさと録音消すんだな」

「くそ、卑怯な奴等だな。消せば良いんだろ」翔先輩はスマホを取り出すと男たちに見えるように録音を削除して見せた。

「これで証拠は消せたな。さて、あの時お預け食らっちまったし今からその1年を可愛がるとするかね」俺を羽交い締めにしている男がカッターナイフをしまうと俺のネクタイを解いていく。

「な、何して…やめろ!」俺が抵抗しようとすると他の男2人が俺を押さえる。

「あー、今度は動画にしときますね」翔先輩は鋭い目を男たちに向けながらスマホを操作し始めた。

「生意気な奴だな貴様。痛い目に遭わせてやらねーと駄目みてーだな」男たちが一旦俺を解放するとそれぞれカッターナイフを取り出す。何でこいつらカッター持ち歩いてんだよ。

「やめて、ください….!」俺が男の1人の腕を掴むと「黙って見てろ。後でたっぷり可愛がってやるから」と突き放されてしまった。

男3人と翔先輩が対峙する。緊張感が漂う張り詰めた空気。とても居心地が悪い。先生を呼ぶべきだ。でもここを離れて大丈夫だろうかと迷った。

男3人が一斉に翔先輩に襲いかかる。やばい。相手は凶器を持っている。翔先輩が危ない。

しかし俺の心配は無意味だった。男3人よりも素早い動きで翔先輩が3人を殴り倒していく。強い。

「くそっ」男1人が殴られた腹を摩りながら翔先輩を睨む。そして俺に視線を向けると俺めがけて走ってきた。

俺は後退りをする。しかし屋上の端まで追い詰められてしまい逃げ場がなくなってしまった。このまま下がれば下に落ちてしまう。

「こんなことになったのは、全部お前のせいだ。傷付けてやる」俺を追い詰めた男が俺にカッターを振りかざす。

「やめろ。はるを傷付けたら許さねぇ」翔先輩が男の手を掴む。俺は間一髪で助かった。

「何でそこまでするんだお前は」腕を掴まれたままの男は翔先輩に尋ねた。

「はるが好きだから」翔先輩から告げられたその言葉が心に刺さる。どきどきする。

「男が男を?馬鹿なのか。1年、こんな奴に好かれても迷惑だろ」呆れたような目で翔先輩を見つめながら男が俺に問いかけてくる。

「…!俺は……」俺は直ぐに言葉が出なかった。凄く嬉しい。俺も翔先輩を慕っていたから。でも今ここで言う気にはなれなくて口をつぐんだ。

「ほら、迷惑だってよ」男がニヤリと口角を上げる。違う、そういうわけじゃない。

「……そうか….」翔先輩は酷く悲しい目をしていた。先輩、違う。本当は俺も好き。

「違います….!先輩のこと、俺…」好きだ、と告げようとした時、翔先輩は目の前でぐらついた。他の男2人が翔先輩の背中を勢いよく押したのだ。突然の事で翔先輩は踏ん張れず体が傾く。このままでは下に落ちる。

「……!先輩…!」落ちそうになる先輩のズボンの裾を掴む。でも俺よりも身長も高く筋肉もついている先輩は重く支えきれない。手を離せば完全に下に落ちる。

「先輩方!見てないで手伝って!このままじゃ翔先輩が落ちます…!」俺は男3人に助けを求めた。しかし男3人は手を貸そうとしない。どんどん腕の力が抜けズボンの裾から手が離れてしまった。しかしすぐに足首を掴む。掴めたのは片足のみ。落ちてしまうのではないかと冷や汗が伝う。

「違う、俺らは悪くない。悪くないからな」そう言うと男3人は去って行く。

「…離せ、はる。このままじゃお前まで落ちる」苦しそうに翔先輩が告げる。俺は嫌だと首を横に振る。

「嫌です」力一杯に翔先輩を引っ張ろうと試みるがもう俺の腕には限界がきていた。

「良いから離せ。これで良い。好きだった、はる。ごめんな」翔先輩は俺が掴んでいない方の足で俺の手を踵で踏みつけた。それでも俺は痛みに耐えながら掴む。

暫く攻防が続いた。遂に先輩が俺の顔を足で蹴ってきた。驚きと手に限界が来ていたのも相まって俺は先輩の足首から手を離してしまった。

「先輩….!!」俺は下を覗く。先輩が真っ逆さまに落ちて行く。見ていられなくて俺はぎゅっと目を瞑った。

俺は、先輩を離してしまった。何で離してしまったんだろう。俺は、人殺しだ。

想いも告げられず先輩の命を奪った。なんて最悪な人なんだろう俺は。
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