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24.安心してください
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「とりあえず遙様、其の傷の手当てをしなくては。痛みますか?」カレンに腕を引かれ椅子に座らされると、心配そうに見つめてくる。王様の傷を治した俺なら此の傷も治せるかもしれない。
「大丈夫です。自分で治せるかやってみます」彼を安心させようと力強く頷いてみせると、彼も頷き返してくれた。
神経を集中させ、此の噛み跡が治るイメージをする。噫、此の感じ。温かいエネルギーがみなぎる此の感じ。きっと上手くいく。
「…!遙様、傷が癒えております!」彼が嬉しそうに告げる。
確かにずっとヒリヒリしていたのが何も感じなくなっている。彼が持って来てくれた手鏡で見てみると、首筋には傷一つ残っていなかった。
「本当に、出来た」傷を癒すのは此れで2度目。本当に自らの力で癒してしまったのだ。
「素晴らしい力です。本当に傷が残らなくて良かった…綺麗な肌に傷が残ってたら私はあの方に何をしでかすか…」ぽつりと彼が呟く様に告げた。
此の人の真顔マジで怖い。此の人なら本当に何かしでかしそうだ。そうならなくて良かった。
「傷が癒えて一先ず安心ですが…あの人に穢された身体、清めなくてはいけませんね。至急、湯浴みを致しましょう。直ぐに用意させますのでお待ちください」いそいそと彼が去って行く。何か色々迷惑掛けちゃって申し訳ない。
暫くすると扉をノックする音がした。どうぞ、と伝えると扉が開かれ、現れたのは王様だった。思いもよらぬ来客に慌て、先程脱がされてしまったマントを拾い上げると直ぐに羽織った。待ってる間にさっき外された服のボタン閉めておいて良かった…
「いきなりすまぬ。其の衣、とても似合っている。腕輪も身に付けてくれたか。して、シャインには何もされなかったか?」王様は上から下まで俺を見遣ると、満足気に頷いた。そして直ぐに心配そうに見つめてくる。俺は動揺を見せぬよう笑顔を浮かべて見せた。
「素敵なお部屋に洋服やアクセサリーまで有難う御座います。大切に使わせて頂きます。シャインさんは私にバリア魔法を教えてくださいました。特に何も無かったので安心してください。王様が俺に求婚している事は皆ご存知なので、簡単に手を出して来たりはしないかと思われます」穏やかに告げると彼は何度も頷き安堵の溜息を洩らした。
「其方が無事で何よりだ。バリア魔法、早速見せて貰えるか?」どうやら疑われてないみたい。王様の要望に応えるべく小さく頷くと、俺は彼にバリア魔法を掛けて見せた。
「此れは素晴らしい。シャインでさえ1つのバリアしか張れぬのに其方は何重にも張れるのだな」彼は自らを囲うバリアを見ては嬉しそうに笑みを浮かべた。
「上手くいって良かったです。此のバリアの効果や作用時間など未だ詳しくは分かってませんので、今後シャインさんから学んでいけたらと思います」彼の笑みに釣られる様に此方も笑みを溢すと、彼が此方へ歩み寄りそして腕を伸ばしたかと思えばぎゅっと抱き締められた。
「其方が無事で良かった。シャインの元へ其方を行かせてからというもの不安で仕方が無くてな。しかし…随分とシャインの匂いがする」首筋をスン、と嗅がれると嗅覚の鋭さに思わずぎくりとする。何なの?こっちの世界の人たち鼻良過ぎ。
「長い時間一緒に居たからかと…其れに挨拶した時に魔法を掛けてくださったでしょう?其れも原因かもしれません」後者の言い訳は結構上手くいけた気がする。
「ふむ、其れは一理あるやもしれん。となると私は其方にバリア魔法を掛けて貰ったから其方の香りがするやもしれぬな?」くすりと笑う彼は何処か嬉しそうで、此方もくすりと笑うと彼は俺をぎゅっと強く抱き締めた。
「噫、こうやってずっと共に居たいが…」彼は少し寂しげに呟く。
そういうの反則。何か母性みたいな何かが溢れてくる感じ。母性本能擽られるってこんな感じなのだろうか。
「王様、俺は貴方の側近。何時でもお傍にお仕え致します」優しく抱き締め返すと彼は俺の首筋に軽く口付けた。
「噫、そうだな。いつか妃として傍に仕えて欲しい…というのが本音だがな」頭を優しく撫でられ、俺は微かに笑みを浮かべた。
「其れは…王様次第で御座います」小さく答えると彼は自信に満ちた笑みを向けた。
「噫、其方の心は私が貰ってみせる。さ、どうやらカレンが外で待っているようだな。私は任務に戻るとする」彼はちらりと扉の方を見遣ると、俺の額に口付けてから去って行った。
彼が去るとカレンさんが入って来て、湯浴みの準備が整ったと告げた。俺たちは浴場へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、またもや煌びやかな浴場へ足を踏み入れる。1日に2度も入浴するなんて。
髪や身体を洗い、ふと鏡を見ると胸元に吸啜の、仄かに紅い痕が見える。シャインに言われた事やされた事が鮮明に蘇り身震いする。そんな事今は忘れてしまおうとふるふると首を横に振り、鏡を見ない様に背を向けた状態で入湯する。
湯加減がとても心地良く、ラベンダーの様なお香の香りが漂い心が安らかになる。
湯の中で瞳を閉じ暖かさに包まれていると、カラカラと戸が開く音がした。其処にはある男性が立っていた。
「大丈夫です。自分で治せるかやってみます」彼を安心させようと力強く頷いてみせると、彼も頷き返してくれた。
神経を集中させ、此の噛み跡が治るイメージをする。噫、此の感じ。温かいエネルギーがみなぎる此の感じ。きっと上手くいく。
「…!遙様、傷が癒えております!」彼が嬉しそうに告げる。
確かにずっとヒリヒリしていたのが何も感じなくなっている。彼が持って来てくれた手鏡で見てみると、首筋には傷一つ残っていなかった。
「本当に、出来た」傷を癒すのは此れで2度目。本当に自らの力で癒してしまったのだ。
「素晴らしい力です。本当に傷が残らなくて良かった…綺麗な肌に傷が残ってたら私はあの方に何をしでかすか…」ぽつりと彼が呟く様に告げた。
此の人の真顔マジで怖い。此の人なら本当に何かしでかしそうだ。そうならなくて良かった。
「傷が癒えて一先ず安心ですが…あの人に穢された身体、清めなくてはいけませんね。至急、湯浴みを致しましょう。直ぐに用意させますのでお待ちください」いそいそと彼が去って行く。何か色々迷惑掛けちゃって申し訳ない。
暫くすると扉をノックする音がした。どうぞ、と伝えると扉が開かれ、現れたのは王様だった。思いもよらぬ来客に慌て、先程脱がされてしまったマントを拾い上げると直ぐに羽織った。待ってる間にさっき外された服のボタン閉めておいて良かった…
「いきなりすまぬ。其の衣、とても似合っている。腕輪も身に付けてくれたか。して、シャインには何もされなかったか?」王様は上から下まで俺を見遣ると、満足気に頷いた。そして直ぐに心配そうに見つめてくる。俺は動揺を見せぬよう笑顔を浮かべて見せた。
「素敵なお部屋に洋服やアクセサリーまで有難う御座います。大切に使わせて頂きます。シャインさんは私にバリア魔法を教えてくださいました。特に何も無かったので安心してください。王様が俺に求婚している事は皆ご存知なので、簡単に手を出して来たりはしないかと思われます」穏やかに告げると彼は何度も頷き安堵の溜息を洩らした。
「其方が無事で何よりだ。バリア魔法、早速見せて貰えるか?」どうやら疑われてないみたい。王様の要望に応えるべく小さく頷くと、俺は彼にバリア魔法を掛けて見せた。
「此れは素晴らしい。シャインでさえ1つのバリアしか張れぬのに其方は何重にも張れるのだな」彼は自らを囲うバリアを見ては嬉しそうに笑みを浮かべた。
「上手くいって良かったです。此のバリアの効果や作用時間など未だ詳しくは分かってませんので、今後シャインさんから学んでいけたらと思います」彼の笑みに釣られる様に此方も笑みを溢すと、彼が此方へ歩み寄りそして腕を伸ばしたかと思えばぎゅっと抱き締められた。
「其方が無事で良かった。シャインの元へ其方を行かせてからというもの不安で仕方が無くてな。しかし…随分とシャインの匂いがする」首筋をスン、と嗅がれると嗅覚の鋭さに思わずぎくりとする。何なの?こっちの世界の人たち鼻良過ぎ。
「長い時間一緒に居たからかと…其れに挨拶した時に魔法を掛けてくださったでしょう?其れも原因かもしれません」後者の言い訳は結構上手くいけた気がする。
「ふむ、其れは一理あるやもしれん。となると私は其方にバリア魔法を掛けて貰ったから其方の香りがするやもしれぬな?」くすりと笑う彼は何処か嬉しそうで、此方もくすりと笑うと彼は俺をぎゅっと強く抱き締めた。
「噫、こうやってずっと共に居たいが…」彼は少し寂しげに呟く。
そういうの反則。何か母性みたいな何かが溢れてくる感じ。母性本能擽られるってこんな感じなのだろうか。
「王様、俺は貴方の側近。何時でもお傍にお仕え致します」優しく抱き締め返すと彼は俺の首筋に軽く口付けた。
「噫、そうだな。いつか妃として傍に仕えて欲しい…というのが本音だがな」頭を優しく撫でられ、俺は微かに笑みを浮かべた。
「其れは…王様次第で御座います」小さく答えると彼は自信に満ちた笑みを向けた。
「噫、其方の心は私が貰ってみせる。さ、どうやらカレンが外で待っているようだな。私は任務に戻るとする」彼はちらりと扉の方を見遣ると、俺の額に口付けてから去って行った。
彼が去るとカレンさんが入って来て、湯浴みの準備が整ったと告げた。俺たちは浴場へと向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、またもや煌びやかな浴場へ足を踏み入れる。1日に2度も入浴するなんて。
髪や身体を洗い、ふと鏡を見ると胸元に吸啜の、仄かに紅い痕が見える。シャインに言われた事やされた事が鮮明に蘇り身震いする。そんな事今は忘れてしまおうとふるふると首を横に振り、鏡を見ない様に背を向けた状態で入湯する。
湯加減がとても心地良く、ラベンダーの様なお香の香りが漂い心が安らかになる。
湯の中で瞳を閉じ暖かさに包まれていると、カラカラと戸が開く音がした。其処にはある男性が立っていた。
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