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37.お待たせしました
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外に控えるカレンに、王から湯浴みを共にするよう誘われた経緯を説明した。すると彼はくすくすと笑い始める。もう、笑い事じゃないってば。
「ふふ、王様は少しでも長く遙様との時間を過ごしたいんですね。愛されてる証拠でございます」くすくすと笑いながら、彼が俺の手を優しく握った。何故握られたかは分からないが、反射的に彼の手を握ると、また彼はくすくすと笑った。
「そうだとしても俺の答えも聞かずに、"支度してくるように、待ってる"…って言って部屋を出ちゃうんですよ?」王の口調を真似ながら再現して見せると、カレンは再びくすくすと笑い出す。
「ふふ、では早く行かなければいけませんね。着替えの衣装は遙様の湯浴み中に私が用意致しますので、早く参りましょう。王様をお待たせし過ぎて、長湯させてしまうのも良くありませんから」成る程ね、湯浴みしないっていう選択肢は無いのね。カレンさんも意外と強引な人だな。
半ばカレンに引っ張られながら脱衣所へと辿り着いた。すると浴室から話し声が聞こえる。王様だけじゃない…?此処に入れるのは他にフレイアしか居ないから…湯浴みの時間が被ったのだろうか。
服を脱ぎながら耳を傾けるも、何を話しているのか内容までは分からない。兄弟で何を話すんだろうか…ちょっと、いやかなり気になる。
「あの…お待たせしました、遙です」服を脱ぎ終え、控え目に浴室の扉をノックした。すると、中へ入るよう声が掛かる。
浴室にいたのは背中を流しているフレイアと、既に風呂に浸かっている王だった。やっぱ此の二人だったのか。
「遙、遅かったな。来ないのかと思ったぞ」王がじっと俺を見つめている。何だか視線が痛い。
「おはよ、遙。ってお前…昨日は随分兄貴に愛されたみてぇだな?」俺の身体をまじまじと見つめるフレイアが、とんでもない発言をする。其の言葉に思わず俺はむせ込んだ。
「何だフレイア、ヤキモチか。幾ら弟の御前でも遙はやれん」王がフレイアを揶揄うと、フレイアは盛大な溜息を吐く。
「何言ってんだよ兄貴。未だ兄貴のモンになった訳じゃねーだろ。強引な男は嫌われんぜ?」フレイアの返しに王がムッとなる。兄弟喧嘩はやめてくれ、俺も居るんだぞ。
「遙、前座れよ。背中流してやる」そう言うとフレイアは自分の前に椅子を置き、椅子に座るよう顎で示す。此れは如何するべき?
「じ、自分で洗えますよ」俺が答えると、フレイアは明らかにご機嫌斜めになってしまう。何だよ此の兄弟、変な所が似てる!
「良いから座れって。特別に頭も洗ってやるから」フレイアは立ち上がると俺の腕を引き、強引に椅子に座らせた。ちらりと王を見ると、其れが面白いのか楽しそうに様子を眺めている。
全く強引な兄弟だな。誰に似たの?親??
「自分で洗えますから…」やんわりと断るも、相手には耳が無いのかお構いなしにお湯を掛けられる。
「ほら頭洗うから」そう言うと、フレイアは俺の頭を洗い始めた。意外と手つきが優しくて、心地が良い。
「フレイアさん意外と頭洗うのお上手ですね…?」頭を洗ってもらいながら俺が言うと、いつの間にやらお風呂から出た王が俺の目の前に立つ。あれ?何で?さっき迄お湯に浸かってたのに。
「意外と上手いだろ?水の怖いカレンの頭をよく洗ってやってたからよ。餓鬼の頃だけど」え?カレンさんが水苦手?想像がつかない…
「遙、私は身体を洗おう」言いながら王は、既にもこもこと石鹸を泡立てている。此れ絶対拒否出来ないやつじゃん。
「オウサマ直々に身体を洗うとは。湯に浸かってりゃ良いのに」揶揄う様にフレイアが告げる。
「御前だけ遙に触れているのが気に食わんだけだ」王は俺の腕を取ると、優しく洗い始める。何か泡で滑りが良くて擽ったい。
「兄貴こそ妬いてんじゃねーか」再び揶揄う様にフレイアが告げる。
何やってんの此の兄弟。如何して俺は王子に頭を洗われ、王様に身体を洗われているのか…
「ふふ、王様は少しでも長く遙様との時間を過ごしたいんですね。愛されてる証拠でございます」くすくすと笑いながら、彼が俺の手を優しく握った。何故握られたかは分からないが、反射的に彼の手を握ると、また彼はくすくすと笑った。
「そうだとしても俺の答えも聞かずに、"支度してくるように、待ってる"…って言って部屋を出ちゃうんですよ?」王の口調を真似ながら再現して見せると、カレンは再びくすくすと笑い出す。
「ふふ、では早く行かなければいけませんね。着替えの衣装は遙様の湯浴み中に私が用意致しますので、早く参りましょう。王様をお待たせし過ぎて、長湯させてしまうのも良くありませんから」成る程ね、湯浴みしないっていう選択肢は無いのね。カレンさんも意外と強引な人だな。
半ばカレンに引っ張られながら脱衣所へと辿り着いた。すると浴室から話し声が聞こえる。王様だけじゃない…?此処に入れるのは他にフレイアしか居ないから…湯浴みの時間が被ったのだろうか。
服を脱ぎながら耳を傾けるも、何を話しているのか内容までは分からない。兄弟で何を話すんだろうか…ちょっと、いやかなり気になる。
「あの…お待たせしました、遙です」服を脱ぎ終え、控え目に浴室の扉をノックした。すると、中へ入るよう声が掛かる。
浴室にいたのは背中を流しているフレイアと、既に風呂に浸かっている王だった。やっぱ此の二人だったのか。
「遙、遅かったな。来ないのかと思ったぞ」王がじっと俺を見つめている。何だか視線が痛い。
「おはよ、遙。ってお前…昨日は随分兄貴に愛されたみてぇだな?」俺の身体をまじまじと見つめるフレイアが、とんでもない発言をする。其の言葉に思わず俺はむせ込んだ。
「何だフレイア、ヤキモチか。幾ら弟の御前でも遙はやれん」王がフレイアを揶揄うと、フレイアは盛大な溜息を吐く。
「何言ってんだよ兄貴。未だ兄貴のモンになった訳じゃねーだろ。強引な男は嫌われんぜ?」フレイアの返しに王がムッとなる。兄弟喧嘩はやめてくれ、俺も居るんだぞ。
「遙、前座れよ。背中流してやる」そう言うとフレイアは自分の前に椅子を置き、椅子に座るよう顎で示す。此れは如何するべき?
「じ、自分で洗えますよ」俺が答えると、フレイアは明らかにご機嫌斜めになってしまう。何だよ此の兄弟、変な所が似てる!
「良いから座れって。特別に頭も洗ってやるから」フレイアは立ち上がると俺の腕を引き、強引に椅子に座らせた。ちらりと王を見ると、其れが面白いのか楽しそうに様子を眺めている。
全く強引な兄弟だな。誰に似たの?親??
「自分で洗えますから…」やんわりと断るも、相手には耳が無いのかお構いなしにお湯を掛けられる。
「ほら頭洗うから」そう言うと、フレイアは俺の頭を洗い始めた。意外と手つきが優しくて、心地が良い。
「フレイアさん意外と頭洗うのお上手ですね…?」頭を洗ってもらいながら俺が言うと、いつの間にやらお風呂から出た王が俺の目の前に立つ。あれ?何で?さっき迄お湯に浸かってたのに。
「意外と上手いだろ?水の怖いカレンの頭をよく洗ってやってたからよ。餓鬼の頃だけど」え?カレンさんが水苦手?想像がつかない…
「遙、私は身体を洗おう」言いながら王は、既にもこもこと石鹸を泡立てている。此れ絶対拒否出来ないやつじゃん。
「オウサマ直々に身体を洗うとは。湯に浸かってりゃ良いのに」揶揄う様にフレイアが告げる。
「御前だけ遙に触れているのが気に食わんだけだ」王は俺の腕を取ると、優しく洗い始める。何か泡で滑りが良くて擽ったい。
「兄貴こそ妬いてんじゃねーか」再び揶揄う様にフレイアが告げる。
何やってんの此の兄弟。如何して俺は王子に頭を洗われ、王様に身体を洗われているのか…
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