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第25話 鬼教官レオナ
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黒幕による闇の極大魔法が発動されてしまった。空に浮かぶ邪悪な魔法陣は自己増殖を繰り返し、半年後には魔界とのゲートが開かれてしまう。悠長にしている暇はない。
王国上層部も事態を重く見て、対処法を探り始めた。だが、無意味だった。
自己増殖を繰り返す魔法陣を根源から止める手段はなく、封印すら不可能と判明したのだ。王国の宮廷魔術師たちは連日、膨大な魔力を消費して解析を試みたが、解決の糸口すら見つけられず、次々と倒れていった。
このままでは、半年後に訪れるのは確実な破滅。
――そして、一週間後。
「ほら、そこ! たるんでいるわよ!!」
レオナの叱咤が鍛錬場に響く。
炎天下のもと、数十人の訓練生が汗まみれになりながら剣を振るっていた。彼らは王国の騎士だけではない。各地の道場から弟子入りを志願した武芸者、傭兵、さらには民間から志願してきた者たちもいた。
魔界の門が開くまで半年――それまでに、可能な限りの戦力を整えなければならない。
レオナは、ライナーやカガリと手分けしながら指導にあたっていた。
「ぜぇ、ぜぇ……!」
訓練生の一人が膝をつく。
だが、レオナは容赦しない。
「情けないわね、アレクシス! それでも一国の王太子なの!?」
荒れた息を吐きながら、アレクシス王太子は悔しそうに顔を歪める。かつては時期国王として、将来を嘱望された存在だった。自信満々で他者に対して強気に接する正確だった。しかし、今は違う。
あの日、レオナは本気でアレクシスを殺すつもりで殴り飛ばした。彼は黒幕の洗脳魔法によって多少の肉体強化が施されていたため、かろうじて命を取り留めた。衝撃で気絶していたところを王宮の回復魔法使いによって治療された。
意識を取り戻したアレクシスが目にしたのは、鬼の形相で腕を組むレオナだった。
――その瞬間、彼は本能的に悟った。
(あ、俺……死ぬかもしれない)
心臓が跳ね上がる。喉が渇く。呼吸が浅くなる。
レオナは無表情のまま、アレクシスを見下ろしていた。
彼の記憶には、洗脳されていた間の出来事が朧げに残っていた。自分が黒幕の傀儡となり、レオナを追い詰めたことも――。
それを思い出すたびに、彼の中でさまざまな感情が入り乱れる。一割の非難感情と、四割の恐怖感情。そして、残り五割を占めるのは、名状しがたい謎の感情だった。
一方のレオナはというと、アレクシスに対して特別な感情はほとんど抱いていなかった。10000回のループの中で、100回ほどは彼と良い関係になったこともある。だが、それ以上に2000回は彼のせいで破滅した。
――総合的にはマイナス寄り。
ただし、彼を殺すつもりで殴り飛ばしたことで、悪感情はすっかり消失した。もはや怒る気力すらない。
アレクシスだけでなく、レオナの両親であるグラハム侯爵とエレノア侯爵夫人もまた命を取り留めたが、レオナは彼らに対しても同様だった。愛憎もなく、ただの過去の残骸。
そもそも、レオナを取り巻く陰謀の全ては、黒幕の手のひらの上にあったのだ。歴史の特異点であるレオナを排除するため、黒幕があらゆる手を使って彼女を追い詰めていた。
……詳細はまだ分からない。だが、そんなことを考えている暇はない。
過去のループにおける個々人に対する恨みつらみは放置して、レオナは、今このループでできることをやっていくつもりだった。
「そ、そうは言うがな、レオナ……さすがに懸垂100回は無茶だぞ……」
アレクシスが腕を震わせながら、なんとか言葉を絞り出す。
「50回で限界だ……」
苦しげに息を吐き、額の汗が滴り落ちる。彼は鉄棒にぶら下がったまま、動きを止めていた。ただ静止するだけでも、相当な筋力を必要とする姿勢だ。一週間前の彼なら、そもそもこの体勢すら保てなかっただろう。
この短期間の強制トレーニングで、確かにアレクシスの身体能力は向上している。普通なら称賛に値する成長だ――しかし、レオナはそんな甘い言葉をかけるつもりは毛頭なかった。
「言い訳無用!」
レオナの鋭い声が訓練場に響き渡る。
「他のみんなは、それぞれの限界に挑み続けているわよ!!」
彼女の言葉に、訓練に励む者たちは一斉に背筋を伸ばした。
王都に用意された広大な訓練場には、道場師範や騎士だけでなく、貴族であるグラハムやエレノアの姿もあった。かつて自領の屋敷や王宮でふんぞり返っていた彼らも、今や汗にまみれ、必死に鍛錬を続けている。
それは彼らなりの贖罪なのかもしれない。レオナの身に降りかかった数々の陰謀、それを見過ごしてきた過去。それらを振り払い、少しでも戦える力を身につけようとしているのだ。
とはいえ、全員が順調というわけではなかった。中には、すでに音を上げそうになっている者たちも少なくない。過酷な鍛錬に耐えきれず、膝をつく者、荒い息を吐いて動きを止める者――。
だが、誰もが口を噤んでいた。
なぜなら、レオナ、ライナー、カガリ――この訓練を指導する三人があまりにも規格外だったからだ。彼らの圧倒的な筋力、持久力、そして精神力の前では、「つらい」「苦しい」などという言葉はあまりにも情けない響きを持ってしまう。
そんな中、未だ鉄棒にぶら下がったままのアレクシス王太子は、虚ろな目で天を仰いでいた。腕が悲鳴を上げている。肩が燃えるように痛む。体の重さが容赦なくのしかかる。
(限界だ……)
そう思った瞬間、鋭い声が再び飛んだ。
「規範となるべき王太子が情けないと、他のみんなの士気にも関わるのよ!? しっかりしなさい!」
レオナの言葉に、アレクシスの顔が引きつる。周囲の視線が自分に向けられるのを感じた。
先日の一件に対する処分は、保留となっている。洗脳されていたことを考えると無罪放免だが、本当に洗脳魔法なるものが存在するのか、国王を始めとした王国上層部には判断がつかないからだ。
半年後に開かれてしまう魔界ゲートへの対処、それに向けて鍛錬に取り組む姿勢……。そういった要素によって、アレクシス王太子の未来は大きく変化するだろう。
「……っ!」
喉が詰まりそうになる。本当に、もう無理だ。
だが――レオナは容赦しない。
「やる気がないなら、強制的に引き出してあげるわ!」
バキンッ!!
次の瞬間、衝撃が走った。
「……あ゛っ!?」
アレクシスの視界がぐるりと回る。何が起きたのか理解する間もなく、彼の体は鉄棒から引き剥がされ、気づけばレオナの肩に担ぎ上げられていた。
「お、おい!? 何を――!?」
彼の抗議を無視し、レオナはそのまま大股で歩き出す。しかも、驚くほどの軽やかさだ。
(こ、この女……! 俺をまるで羽毛のように扱いやがる……!)
アレクシスは慌てて身をよじろうとするが、レオナの腕は鋼のように硬く、一切の逃げ道を許さない。
「お前ッ! 俺をどこへ連れて行くつもりだ!?」
「決まってるでしょ」
レオナは素っ気なく言い放つ。
「もっと鍛錬に身が入る場所よ」
「鍛錬に身が入る場所……? いったいどこのことだ……?」
そう問いかけた瞬間、アレクシスは気づいた。周囲の風景が徐々に変わっている。地面が遠ざかっていく――。
「ま、まさか……」
アレクシスの血の気が引いた。
レオナが向かっているのは、訓練場近郊にそびえ立つ巨大な柱――
【試練の塔】
騎士たちの訓練用に作られた、数十メートルもの高さを誇る塔。階段の上り下りで体力を鍛え、頂上付近からはロープを使った降下訓練を行う。まさに、肉体と精神を極限まで追い込む施設だ。
「レ、レオナ!? 冗談だろ!?」
「うるさいわね」
レオナは軽やかに階段を駆け上がる。まるで跳躍しているかのような速さだ。
「うわああああああ!!??」
アレクシスの絶叫が塔に響く。
レオナは塔の内壁を蹴り、手すりを掴み、まるで獣のように駆け登っていく。
(こいつ……本当に人間か……!?)
そんな疑問すら浮かぶほどの動き。
隙間窓から外が見える。地上がみるみる遠のいていく。やがて最上階に到達した。王都の街並みも訓練場も、まるでミニチュアのようだ。
「ちょ、ちょっと待て! 高い! 高すぎる!!」
アレクシスの顔は真っ青になっていた。
「怖いの? おしっこちびりそう?」
「ち、違う! ただ、あまりにも――」
「適度に怖いぐらい? それなら大丈夫ね」
「え?」
――ドンッ!
レオナは迷いなくアレクシスを塔の最上階から放り投げた。
「――――ッ!!」
アレクシスの体が宙を舞う。
風が耳元を切り裂く。一瞬、重力が消えたような感覚に襲われる。
(終わった――!!)
その瞬間、視界に棒が飛び込んだ。
本能的に掴む。
「いい反応ね。鍛えた甲斐があったわ」
レオナが塔の縁に腰掛け、余裕の笑みを浮かべている。
アレクシスは震える手で自分の状態を確認した。
(落ちてない……? いや、ここは……)
視線を巡らせる。自分は塔の最上階、せり出すように設置された一本の棒を掴んでいる。もし離せば、真っ逆さまだ。
「はぁ……はぁ……!」
荒い息を吐きながら、アレクシスはレオナを睨んだ。
「で、何を……やらせる気だ……?」
レオナは腕を組み、冷たく言い放つ。
「決まってるじゃない」
「そこで懸垂の続きをやるのよ」
「お前、鬼か!?!?」
アレクシスの叫びは、青空へと吸い込まれていった。
王国上層部も事態を重く見て、対処法を探り始めた。だが、無意味だった。
自己増殖を繰り返す魔法陣を根源から止める手段はなく、封印すら不可能と判明したのだ。王国の宮廷魔術師たちは連日、膨大な魔力を消費して解析を試みたが、解決の糸口すら見つけられず、次々と倒れていった。
このままでは、半年後に訪れるのは確実な破滅。
――そして、一週間後。
「ほら、そこ! たるんでいるわよ!!」
レオナの叱咤が鍛錬場に響く。
炎天下のもと、数十人の訓練生が汗まみれになりながら剣を振るっていた。彼らは王国の騎士だけではない。各地の道場から弟子入りを志願した武芸者、傭兵、さらには民間から志願してきた者たちもいた。
魔界の門が開くまで半年――それまでに、可能な限りの戦力を整えなければならない。
レオナは、ライナーやカガリと手分けしながら指導にあたっていた。
「ぜぇ、ぜぇ……!」
訓練生の一人が膝をつく。
だが、レオナは容赦しない。
「情けないわね、アレクシス! それでも一国の王太子なの!?」
荒れた息を吐きながら、アレクシス王太子は悔しそうに顔を歪める。かつては時期国王として、将来を嘱望された存在だった。自信満々で他者に対して強気に接する正確だった。しかし、今は違う。
あの日、レオナは本気でアレクシスを殺すつもりで殴り飛ばした。彼は黒幕の洗脳魔法によって多少の肉体強化が施されていたため、かろうじて命を取り留めた。衝撃で気絶していたところを王宮の回復魔法使いによって治療された。
意識を取り戻したアレクシスが目にしたのは、鬼の形相で腕を組むレオナだった。
――その瞬間、彼は本能的に悟った。
(あ、俺……死ぬかもしれない)
心臓が跳ね上がる。喉が渇く。呼吸が浅くなる。
レオナは無表情のまま、アレクシスを見下ろしていた。
彼の記憶には、洗脳されていた間の出来事が朧げに残っていた。自分が黒幕の傀儡となり、レオナを追い詰めたことも――。
それを思い出すたびに、彼の中でさまざまな感情が入り乱れる。一割の非難感情と、四割の恐怖感情。そして、残り五割を占めるのは、名状しがたい謎の感情だった。
一方のレオナはというと、アレクシスに対して特別な感情はほとんど抱いていなかった。10000回のループの中で、100回ほどは彼と良い関係になったこともある。だが、それ以上に2000回は彼のせいで破滅した。
――総合的にはマイナス寄り。
ただし、彼を殺すつもりで殴り飛ばしたことで、悪感情はすっかり消失した。もはや怒る気力すらない。
アレクシスだけでなく、レオナの両親であるグラハム侯爵とエレノア侯爵夫人もまた命を取り留めたが、レオナは彼らに対しても同様だった。愛憎もなく、ただの過去の残骸。
そもそも、レオナを取り巻く陰謀の全ては、黒幕の手のひらの上にあったのだ。歴史の特異点であるレオナを排除するため、黒幕があらゆる手を使って彼女を追い詰めていた。
……詳細はまだ分からない。だが、そんなことを考えている暇はない。
過去のループにおける個々人に対する恨みつらみは放置して、レオナは、今このループでできることをやっていくつもりだった。
「そ、そうは言うがな、レオナ……さすがに懸垂100回は無茶だぞ……」
アレクシスが腕を震わせながら、なんとか言葉を絞り出す。
「50回で限界だ……」
苦しげに息を吐き、額の汗が滴り落ちる。彼は鉄棒にぶら下がったまま、動きを止めていた。ただ静止するだけでも、相当な筋力を必要とする姿勢だ。一週間前の彼なら、そもそもこの体勢すら保てなかっただろう。
この短期間の強制トレーニングで、確かにアレクシスの身体能力は向上している。普通なら称賛に値する成長だ――しかし、レオナはそんな甘い言葉をかけるつもりは毛頭なかった。
「言い訳無用!」
レオナの鋭い声が訓練場に響き渡る。
「他のみんなは、それぞれの限界に挑み続けているわよ!!」
彼女の言葉に、訓練に励む者たちは一斉に背筋を伸ばした。
王都に用意された広大な訓練場には、道場師範や騎士だけでなく、貴族であるグラハムやエレノアの姿もあった。かつて自領の屋敷や王宮でふんぞり返っていた彼らも、今や汗にまみれ、必死に鍛錬を続けている。
それは彼らなりの贖罪なのかもしれない。レオナの身に降りかかった数々の陰謀、それを見過ごしてきた過去。それらを振り払い、少しでも戦える力を身につけようとしているのだ。
とはいえ、全員が順調というわけではなかった。中には、すでに音を上げそうになっている者たちも少なくない。過酷な鍛錬に耐えきれず、膝をつく者、荒い息を吐いて動きを止める者――。
だが、誰もが口を噤んでいた。
なぜなら、レオナ、ライナー、カガリ――この訓練を指導する三人があまりにも規格外だったからだ。彼らの圧倒的な筋力、持久力、そして精神力の前では、「つらい」「苦しい」などという言葉はあまりにも情けない響きを持ってしまう。
そんな中、未だ鉄棒にぶら下がったままのアレクシス王太子は、虚ろな目で天を仰いでいた。腕が悲鳴を上げている。肩が燃えるように痛む。体の重さが容赦なくのしかかる。
(限界だ……)
そう思った瞬間、鋭い声が再び飛んだ。
「規範となるべき王太子が情けないと、他のみんなの士気にも関わるのよ!? しっかりしなさい!」
レオナの言葉に、アレクシスの顔が引きつる。周囲の視線が自分に向けられるのを感じた。
先日の一件に対する処分は、保留となっている。洗脳されていたことを考えると無罪放免だが、本当に洗脳魔法なるものが存在するのか、国王を始めとした王国上層部には判断がつかないからだ。
半年後に開かれてしまう魔界ゲートへの対処、それに向けて鍛錬に取り組む姿勢……。そういった要素によって、アレクシス王太子の未来は大きく変化するだろう。
「……っ!」
喉が詰まりそうになる。本当に、もう無理だ。
だが――レオナは容赦しない。
「やる気がないなら、強制的に引き出してあげるわ!」
バキンッ!!
次の瞬間、衝撃が走った。
「……あ゛っ!?」
アレクシスの視界がぐるりと回る。何が起きたのか理解する間もなく、彼の体は鉄棒から引き剥がされ、気づけばレオナの肩に担ぎ上げられていた。
「お、おい!? 何を――!?」
彼の抗議を無視し、レオナはそのまま大股で歩き出す。しかも、驚くほどの軽やかさだ。
(こ、この女……! 俺をまるで羽毛のように扱いやがる……!)
アレクシスは慌てて身をよじろうとするが、レオナの腕は鋼のように硬く、一切の逃げ道を許さない。
「お前ッ! 俺をどこへ連れて行くつもりだ!?」
「決まってるでしょ」
レオナは素っ気なく言い放つ。
「もっと鍛錬に身が入る場所よ」
「鍛錬に身が入る場所……? いったいどこのことだ……?」
そう問いかけた瞬間、アレクシスは気づいた。周囲の風景が徐々に変わっている。地面が遠ざかっていく――。
「ま、まさか……」
アレクシスの血の気が引いた。
レオナが向かっているのは、訓練場近郊にそびえ立つ巨大な柱――
【試練の塔】
騎士たちの訓練用に作られた、数十メートルもの高さを誇る塔。階段の上り下りで体力を鍛え、頂上付近からはロープを使った降下訓練を行う。まさに、肉体と精神を極限まで追い込む施設だ。
「レ、レオナ!? 冗談だろ!?」
「うるさいわね」
レオナは軽やかに階段を駆け上がる。まるで跳躍しているかのような速さだ。
「うわああああああ!!??」
アレクシスの絶叫が塔に響く。
レオナは塔の内壁を蹴り、手すりを掴み、まるで獣のように駆け登っていく。
(こいつ……本当に人間か……!?)
そんな疑問すら浮かぶほどの動き。
隙間窓から外が見える。地上がみるみる遠のいていく。やがて最上階に到達した。王都の街並みも訓練場も、まるでミニチュアのようだ。
「ちょ、ちょっと待て! 高い! 高すぎる!!」
アレクシスの顔は真っ青になっていた。
「怖いの? おしっこちびりそう?」
「ち、違う! ただ、あまりにも――」
「適度に怖いぐらい? それなら大丈夫ね」
「え?」
――ドンッ!
レオナは迷いなくアレクシスを塔の最上階から放り投げた。
「――――ッ!!」
アレクシスの体が宙を舞う。
風が耳元を切り裂く。一瞬、重力が消えたような感覚に襲われる。
(終わった――!!)
その瞬間、視界に棒が飛び込んだ。
本能的に掴む。
「いい反応ね。鍛えた甲斐があったわ」
レオナが塔の縁に腰掛け、余裕の笑みを浮かべている。
アレクシスは震える手で自分の状態を確認した。
(落ちてない……? いや、ここは……)
視線を巡らせる。自分は塔の最上階、せり出すように設置された一本の棒を掴んでいる。もし離せば、真っ逆さまだ。
「はぁ……はぁ……!」
荒い息を吐きながら、アレクシスはレオナを睨んだ。
「で、何を……やらせる気だ……?」
レオナは腕を組み、冷たく言い放つ。
「決まってるじゃない」
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