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14話 次なる冒険
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自身の顔が朗らかになっているのに気付いたのか、咳払いをして勇者は話題を転換させた。
「呪いの解呪についての調査もそうだが、そういや宿の賠償金とかどうとか言ってなかったか? あれ大丈夫なのかよ」
宿の賠償金というのは、トウマが抜き身の剣を出しっぱなしで生活していた結果、何でも切れる性質のためか宿の部屋の壁やベッドに傷をつけてしまった事についての賠償金の事である。宿代を含めて部屋のクリーニング代ともなると高くつくらしく、その額を聞いた時にはトウマは肩をがっくりと落としていた。
しかしそれよりも更に気分を下げ、トウマは苦虫を噛み潰した渋面で左手に掴む重々しい袋をテーブルの上に出した。その目には涙が溢れていた。
「それがね、払えるんだけどさ……受付嬢が……のびのびスライムを倒した報奨金だって……ぐすん」
「おお、そりゃまぁ、大事に使おうな」
勇者は困ったように眉を寄せ、口元にわずかな笑みを浮かべた。
呪いの話題が出た事でトウマは洞窟で出会った彼について思い出した。潤んだ目を袖で拭うと、ジト目で口を開いた。
「呪いと言えば、勇者言ってたよね、この剣なんでも切れるって。けどあの亀の盾切れなかったよね? これは知らないとは言わせないよ」
「あー、それな」頭をガシガシとかいた。のびのびスライムとの関係を聞かれた時以上の嫌な顔をするが、観念して暴露した。
「あの盾は俺の仲間の武器なんだ、俺の剣が何でも切れる剣なら、あの盾は何でも守れる盾なのさ。だから防がれた」
「仲間の……それって生前の仲間ってこと?」
勇者は表情を硬く、難しくした。受付嬢のリアクションを見て鼻の下を伸ばしていた時とは別人のようだった。
「ああ、あの盾に俺は幾度となく助けられたよ。まさかあんな形で見ることになるとは思わなかったけどな」
ギルド内で飲み食いする喧噪がトウマの頭に響く。ここだけ切り取れば格好いいことを言っているように見え、木に食わなくて空気を壊す質問をした。
「ちなみにそのお仲間はどうやって盾を持ってたの?」
的外れな質問に、触れる物がないのに勇者はずっこけた。そして苦笑いを浮かべる。そしてテーブルに立てかけられてあるメニュー表の左右を両手で掴んだ。掴むと言ってもトウマ以外を触れないので持った振りなのだが。
「ああ、両手で盾をひょいとな」
「うっわ~、それは、きついね」
何がきついって、両手が使えないのが相当きつい。トウマは左手を見て、自分の境遇がまだマシなんだと少し安堵する。
「しかもあいつめっちゃ食うからよ、皿に顔突っ込んで飯食うのがマジ面白れぇの」
「止めてあげて? 剣の刃をちょん持ちしてる奴の方が相当面白いから」
トウマは溜飲を下げたのか、改めて本題の聞きたいことを口にした。
「じゃなくて。盾の人もそうだけど、この武器の呪いってどうして発生したの? 呪いってだけじゃどうにも調べようがなくてさ」
呪いを調べるにしても、情報が少なすぎた。モトツヨ洞窟に行くまでの数日間、ギルドで情報収集という聞き込みを行っていたのだが、剣が危なっかしくて全然話を聞いてもらえなかったのだ。勇者は自分の剣のことしか知らないと思い込んでいたが、他にも呪いの武器について知っているのならば、呪いそのものについて何かきっかけを知ってるのではないかと思ったのだ。
「分かってたら最初に言ってるぜ」
勇者は呆れ混じりにそう言った。言われてみればその通りかと再びアプローチ方法を考えると、勇者は逆説の言葉を発した。
「と言いたいところだが、モトツヨ洞窟の戦いを見て思い直したよ。どうやらマザコンを発症した時だけならトウマはその剣の力を出せるらしいし」
「マザコン」という言葉にトウマは眉を吊り上げたが、勇者は真剣なまなざしでトウマに言った。強さを引き合いに出すあたり、おいそれと素人が足を踏み入れることができない場所だろうと予測して、トウマは生唾を飲み込んだ。そして勇者を告げる、次なる目的地を。
「行くぞ、魔王城に」
呪いを解く鍵はそこにある。勇者は表情を緩めずにそう告げた。
トウマは右手を握りしめる。剣を覆うサーヤがプルプルと揺れていた。
「呪いの解呪についての調査もそうだが、そういや宿の賠償金とかどうとか言ってなかったか? あれ大丈夫なのかよ」
宿の賠償金というのは、トウマが抜き身の剣を出しっぱなしで生活していた結果、何でも切れる性質のためか宿の部屋の壁やベッドに傷をつけてしまった事についての賠償金の事である。宿代を含めて部屋のクリーニング代ともなると高くつくらしく、その額を聞いた時にはトウマは肩をがっくりと落としていた。
しかしそれよりも更に気分を下げ、トウマは苦虫を噛み潰した渋面で左手に掴む重々しい袋をテーブルの上に出した。その目には涙が溢れていた。
「それがね、払えるんだけどさ……受付嬢が……のびのびスライムを倒した報奨金だって……ぐすん」
「おお、そりゃまぁ、大事に使おうな」
勇者は困ったように眉を寄せ、口元にわずかな笑みを浮かべた。
呪いの話題が出た事でトウマは洞窟で出会った彼について思い出した。潤んだ目を袖で拭うと、ジト目で口を開いた。
「呪いと言えば、勇者言ってたよね、この剣なんでも切れるって。けどあの亀の盾切れなかったよね? これは知らないとは言わせないよ」
「あー、それな」頭をガシガシとかいた。のびのびスライムとの関係を聞かれた時以上の嫌な顔をするが、観念して暴露した。
「あの盾は俺の仲間の武器なんだ、俺の剣が何でも切れる剣なら、あの盾は何でも守れる盾なのさ。だから防がれた」
「仲間の……それって生前の仲間ってこと?」
勇者は表情を硬く、難しくした。受付嬢のリアクションを見て鼻の下を伸ばしていた時とは別人のようだった。
「ああ、あの盾に俺は幾度となく助けられたよ。まさかあんな形で見ることになるとは思わなかったけどな」
ギルド内で飲み食いする喧噪がトウマの頭に響く。ここだけ切り取れば格好いいことを言っているように見え、木に食わなくて空気を壊す質問をした。
「ちなみにそのお仲間はどうやって盾を持ってたの?」
的外れな質問に、触れる物がないのに勇者はずっこけた。そして苦笑いを浮かべる。そしてテーブルに立てかけられてあるメニュー表の左右を両手で掴んだ。掴むと言ってもトウマ以外を触れないので持った振りなのだが。
「ああ、両手で盾をひょいとな」
「うっわ~、それは、きついね」
何がきついって、両手が使えないのが相当きつい。トウマは左手を見て、自分の境遇がまだマシなんだと少し安堵する。
「しかもあいつめっちゃ食うからよ、皿に顔突っ込んで飯食うのがマジ面白れぇの」
「止めてあげて? 剣の刃をちょん持ちしてる奴の方が相当面白いから」
トウマは溜飲を下げたのか、改めて本題の聞きたいことを口にした。
「じゃなくて。盾の人もそうだけど、この武器の呪いってどうして発生したの? 呪いってだけじゃどうにも調べようがなくてさ」
呪いを調べるにしても、情報が少なすぎた。モトツヨ洞窟に行くまでの数日間、ギルドで情報収集という聞き込みを行っていたのだが、剣が危なっかしくて全然話を聞いてもらえなかったのだ。勇者は自分の剣のことしか知らないと思い込んでいたが、他にも呪いの武器について知っているのならば、呪いそのものについて何かきっかけを知ってるのではないかと思ったのだ。
「分かってたら最初に言ってるぜ」
勇者は呆れ混じりにそう言った。言われてみればその通りかと再びアプローチ方法を考えると、勇者は逆説の言葉を発した。
「と言いたいところだが、モトツヨ洞窟の戦いを見て思い直したよ。どうやらマザコンを発症した時だけならトウマはその剣の力を出せるらしいし」
「マザコン」という言葉にトウマは眉を吊り上げたが、勇者は真剣なまなざしでトウマに言った。強さを引き合いに出すあたり、おいそれと素人が足を踏み入れることができない場所だろうと予測して、トウマは生唾を飲み込んだ。そして勇者を告げる、次なる目的地を。
「行くぞ、魔王城に」
呪いを解く鍵はそこにある。勇者は表情を緩めずにそう告げた。
トウマは右手を握りしめる。剣を覆うサーヤがプルプルと揺れていた。
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