召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

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<五章:信じよ>

緊急脱出

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 俺と魔王が、カラオケボックスの一室をクールに去ろうとした神官の女子に続こうとした時の事。後ろから「ちょっとまって!」と、ケンジの呼び止める声が聞こえた。その声に神官の女子は「はぁ、いつまでも誰かに頼ってないで、そろそろ自分で羽ばたくことを覚えなさいよ」と、オフモードの気だるげに振り向く。俺も魔王も振り向くと、彼は俺達三人を見てはいなかった。さらにその表情は気まずそうな、やっちまったというような。

 俺達を見ていないなら、何故俺達を呼び止めたのだろうか? それは彼が見ている杖に表示してあるディスプレーの内容が物語っていた。薄暗い部屋の壁に、杖先を向ける。そこには、異世界文字でこう書かれていた。


『やっば! ハーモニーメドウ〇〇支店のカラオケにメアリーさんが撮影してんだけど! 尊すぎ! 声聞くだけで耳がとろけるんだが!?』


 え、なにこれ? と一瞬考えたが、あ、SNSかと気づく。いや、SNSが異世界にあるって、とうとう現代染みてきたな。あ、SNSかって、違和感がないことに違和感を禁じ得ない。これもペタブヨウのサービスなのだろうか?
 しかし問題はそれではない。

「まさかこれって、俺達の居場所バレたってこと?」

「そのようね、先に店員にも口封じしとくんだったわね」

「それを言うなら口止めだろ。口封じだと殺すニュアンスがあるわ。今のお前が言うとボケに聞こえねぇよ」

 そんな夫婦漫才(自分で言いたくないけど偽装家族的にそんな感じなのだ)にも空気が朗らかになることはなく、ケンジは肩をすくませてた。

「今出るとバズりを狙ってる奴等がくるかもしれません。すみません俺が脅したばっかりにこんなことに……」

 脅した、という言葉を使う辺りまだ申し訳なさがあるだけましか。まぁばれてしまったのは仕方がない。そういう時もあるだろうよ。

「ま、つってもこいつの追っかけだろ? 大丈夫だって、どうせ地下アイドルにガチ恋してる残念な奴等だろうし壁にもならねぇよ」

「あんたねえ、一応私の登録者は女の子が中心なのよ? そういう偏見止めて頂戴。過激な人もいるっちゃいるけど、結構投げ銭くれるのよ? ……まぁそれくらいだけど」

「投げ銭しか見てねぇじゃねぇか」

 だが、一抹の不安はある。さっきのライブの内容的にも、客層は女の子が中心なのだろうが、過激な奴は相当過激で、なにより目立つ。SNSの炎上案件というのはの極少数の過激なアンチが引き起こすというけれど、母数が多ければ一部と言えどかなりの人数になるかもしれな。

「仕方がない、確かここビルだったよな。ならエスカレーター……は密室で危険だから、非常階段で上に昇ろう」

「上? 大丈夫か?」

 魔王が小首をかしげる。だが大丈夫だ。

「この町は様々なビルが乱立しているんだ、そのビルの天井を飛び移って中心のビルを目指す」

「忍者みたいなことを考えるのぉ、お前は行けるじゃろうが、わしらは跳べんぞ?」

「二人の重さくらい誤差だ」

 そういうと、ケンジが神官の女子の耳に小さく聞いた。ちゃんと聞こえてるぞ?

「旦那さん、何者なんすか?」

 俺のことはお構いなしに、自慢げに笑って胸を張った。

「私の自慢の男よ」

「お前のじゃねぇよ」

 * * *

 階段までの道中、すでに他のお客が杖カメラを構えていたのでさっさと走る。その瞬間、視界にガラスでできた自動ドアを垣間見た。人の山だった。

 非常階段の空間に行くと、そこについてきた大量のファンか何かで扉が吹っ飛ばされそうになる。それをケンジが踏ん張って押さえていた。

「俺のことは良いんで! 今の内逃げてください!」

「最初からつもりだけどな」

 ガクッと一瞬力負けしそうになる。一瞬扉が開いたが、再度踏ん張った。悲しそうな顔を向ける。

「酷いじゃないっすかぁ旦那」

 俺は階段を見上げた。と言うのもこの階段、四角く高い直方体を駆け巡る螺旋階段の形をしていたのだ。そしてなぜそういう見方をしたかというと。階段から伸びる杖。やはり出待ちがちらほらいた。結構人気だなこいつ。魔王を腕で抱えつつ、そいつの胴周りをもう一方の腕で掴み上げる。「きゃ!」という明るい声はともかくとして。

「旦那じゃねぇけどな。ま、今のお前は最高にバズってるぜ。超格好いいよ」

 そう言いつつ、膝を極限まで曲げる。そして愛用している靴に感覚を研ぎ澄ませた。


「その本質は、人を前へと歩ませる、地面を蹴る靴となる」

 
 特別武具スペシャライズウェポン


爆っっっっっ足ばくそく!!!」

 その両足に履かれた靴は金色に光り、コンクリートでできた地面にぼっかりとヒビを入れる。螺旋階段の中心は空洞となっており、その空洞を俺は一直線にすっ飛ばした。
 否、すっ跳ばした!

 モモの移動速度ほどではないが、乗ってきた寝台列車よりは速い自信があった。そのスピードのままで、螺旋階段の景色がぐるぐると目まぐるしく渦を巻く。一瞬杖カメラが当たった気がしたが、そのままぶっ飛ばす。

 そして屋上の扉を無視し、天井を突き破った。

 そこには清々しい青空が、どこまでも続くように澄み渡っていた。下を見下ろすと、キラキラと陽の光を反射しているビルが、ギラギラと光り、まるで墓石のように群れているようだった。

 そして。

「んな、何だ、あれは」

 中心のビルを三角形の中点とするように、強い圧力を放つ三人が、遠くに立ち、それでも確かに俺達を見据えていた。
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