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<五章:信じよ>
プロフェッショナル、配信者の流儀
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「はぁ、んで? 何すんの?」
カラオケボックスの一室。ピザやコーラ等ジャンクな食べ物を頼みに頼んで薄暗い空間で、俺の心は曲が入れられることがないモニターの宣伝映像が頼りだった。
そうでしょう兄さん改め、ケンジ君は引きつり過ぎて引きちぎれるんじゃないかというほどの笑顔をしながら、だらっだらの冷や汗をかいて愛嬌を振りまく。
「あ、あははは、メアリーさん怒らないでくださいよぉ」
「いやそういうのいいから」
水の入ったコップを煽ったあと、小気味よく指で机をトントントンと三連打して「コ・ラ・ボ。するんでしょ? 何すんのって聞いてんの」と言った。まるで別人。目元を薄くしケンジ君を睨む剣幕は、とてもじゃないがピザを食べられる気分にはなれない。ピザの前に肝が冷えた。
「そ、そうですね。ええと」
キョロキョロと目をウォーターボーイズさせていると、ピトっと一瞬、カラオケのコントローラが充電されているところにあるマイクに視線が止まった。そして口を開こうとする。が。
「まさかカラオケで一緒に歌おうとか、そんなこと言わないわよね? 私のチャンネル見てるんなら」
「あ、あははは、そんなこと、ねぇ?」
気まずそうな視線をこちらに向けた。こっちを見るな、せめてこの場を逃げ出さずに居座ってやってるだけでもありがたいと思え。
神官の女子のこんな豹変は俺も初めてなんだよ。あれか? テレビでは超天真爛漫な女の子なのに、楽屋裏では表情一つ変えないオンオフ激しい系女子か?
「ならさっさと決めてくんない? それと、私ジャンクフード食べないの。ピザなんて可愛くともなんともないし、撮る価値ある?」
全国(俺のいた世界も含めて)のピザ屋さんに謝れ。次元を超えて謝れ。とは言えない。ジャンクフードはおろか、可愛いからってタピオカカップ抹茶フラペチーノサンドイッチを撮ってたのにそれも食べてないじゃねーか、とも言えない。「まぁ、体には悪いよな」と言うのが関の山だった。
「ならゲームなんて――――」
「ゲーム!?」
「!?」という符号をもちいると、あたかも斜め上な言葉が投げかけられて驚かされている風な印象を与えるだろうが、その実はそうでなく。「こいつマジでそんなバカな事言ってんの?」という意思が込められていた。
「あんた、マジで私のチャンネル見てないの? どうせ私達脅してコラボするんなら、もっと私を活かすような企画にしなさいよね。でないとコラボしてもあんたのチャンネルに何の恩恵も無いのよ? 分かってんの?」
飽くまで相手の事を慮っている内容だけに、反論しづらい。憶測したところ、どうせ知名度の高い人と一緒になれば自分の名前も売れるだろうと考えていたのだろう。それしか考えていなかったばっかりに、それまでの工程を考えていなかったのだ。高級な牛肉が半額だから購入したけど、調理法に迷っているって感じだった。ちなみにメアリーチャンネルを一瞬覗いたことがあるのだが(俺の醜い姿を一秒でも早く消す必要があったので)、メイクアップのお手軽方法とか、美容に関するライフハック的な動画が散見されていた。
そんなこんな時間がしばらく続き、やっとのことで企画が固まった。
『ケンジ、メイクアップしてみた』
場所は変わらずカラオケボックス、しかも生放送の一発撮りという事らしかった。プロフェッショナルならスタジオとかの環境にも配慮するんじゃないのか? と不躾なことを聞いたら「プロはどんな場所でも成果を出すのがプロなのよ」と、ちょっと元の性格に戻してそう言った。至言だった。
ちなみに俺と魔王はカメラとレフ板係である。薄暗い空間の光を効率よく集め、カメラが回る。杖だけど。
「颯爽登場? そうでしょうとも! ケンチャンネルのケンちゃんです!」
元気よいところ申し訳ないが、挨拶がだせぇ。だが日々続けているのか、そんなダサい挨拶に何の迷いもなかったことに、少しだけ彼の積み重ねの片鱗を見た。
「今日は! ななななんと! なななんと! 偶然にもこのお方とコラボさせて頂くことになりました! ではどうぞ!」
「どうもどうも! 神も仏もメイクアップ! 女子に耳よりあなたの画面にメアリーです!」
ぺかーっと笑顔で手でハートを作り画面に向けた。きゃぴるーん! とまるで星やハートが周囲に出てきたんじゃないかというような、そんな挨拶だった。……いや違うマジで星やハートを出している。まさか魔法か? そうでなくとも、挨拶だけでわかる。一瞬で画面に取り込まれるこのスター性。
「今日はケンちゃんさんを超絶カッコいいイケ男にメイクアップしちゃいます! 女子にも使えるメイクテクを使うので、是非最後まで楽しんでいってね!」
しゅばばばばばー! っとあっという間にメイク。しかもメイクの技術の要点を超わかりやすく解説し、少なくとも一つの技術は必ず今すぐにでも実践できるようなやり易さだった。メイク技術といっても魔法込みなので、魔法をよく知らない俺では分からないだろうと思っていたのだが。これなら簡単。しかも効果絶大。いかにもチャラチャラしてウザいだけが取り柄の、垢ぬけたというより馬鹿で間の抜けた見た目だった姿が一変。超絶美青年に変貌していた。
「これが、俺ぇ!?」
内心マジで驚いているだけに、良いリアクションだ。そして「さよなら~チャンネル登録よろしくね~」っと配信を終える。あっという間の時間だった。
「あんた見た目にもっと気を遣えば、もっと人増やせるわよ。清潔感と情報量少ない容姿。それさえ守ってればある程度稼げるはずだから」
スッとオフモードに戻った神官の女子は、最後にケンジにそうアドバイスした。そして小さく「行こ」とだけ俺達に言い、カラオケボックスを出たのだった。イケメン過ぎた。
カラオケボックスの一室。ピザやコーラ等ジャンクな食べ物を頼みに頼んで薄暗い空間で、俺の心は曲が入れられることがないモニターの宣伝映像が頼りだった。
そうでしょう兄さん改め、ケンジ君は引きつり過ぎて引きちぎれるんじゃないかというほどの笑顔をしながら、だらっだらの冷や汗をかいて愛嬌を振りまく。
「あ、あははは、メアリーさん怒らないでくださいよぉ」
「いやそういうのいいから」
水の入ったコップを煽ったあと、小気味よく指で机をトントントンと三連打して「コ・ラ・ボ。するんでしょ? 何すんのって聞いてんの」と言った。まるで別人。目元を薄くしケンジ君を睨む剣幕は、とてもじゃないがピザを食べられる気分にはなれない。ピザの前に肝が冷えた。
「そ、そうですね。ええと」
キョロキョロと目をウォーターボーイズさせていると、ピトっと一瞬、カラオケのコントローラが充電されているところにあるマイクに視線が止まった。そして口を開こうとする。が。
「まさかカラオケで一緒に歌おうとか、そんなこと言わないわよね? 私のチャンネル見てるんなら」
「あ、あははは、そんなこと、ねぇ?」
気まずそうな視線をこちらに向けた。こっちを見るな、せめてこの場を逃げ出さずに居座ってやってるだけでもありがたいと思え。
神官の女子のこんな豹変は俺も初めてなんだよ。あれか? テレビでは超天真爛漫な女の子なのに、楽屋裏では表情一つ変えないオンオフ激しい系女子か?
「ならさっさと決めてくんない? それと、私ジャンクフード食べないの。ピザなんて可愛くともなんともないし、撮る価値ある?」
全国(俺のいた世界も含めて)のピザ屋さんに謝れ。次元を超えて謝れ。とは言えない。ジャンクフードはおろか、可愛いからってタピオカカップ抹茶フラペチーノサンドイッチを撮ってたのにそれも食べてないじゃねーか、とも言えない。「まぁ、体には悪いよな」と言うのが関の山だった。
「ならゲームなんて――――」
「ゲーム!?」
「!?」という符号をもちいると、あたかも斜め上な言葉が投げかけられて驚かされている風な印象を与えるだろうが、その実はそうでなく。「こいつマジでそんなバカな事言ってんの?」という意思が込められていた。
「あんた、マジで私のチャンネル見てないの? どうせ私達脅してコラボするんなら、もっと私を活かすような企画にしなさいよね。でないとコラボしてもあんたのチャンネルに何の恩恵も無いのよ? 分かってんの?」
飽くまで相手の事を慮っている内容だけに、反論しづらい。憶測したところ、どうせ知名度の高い人と一緒になれば自分の名前も売れるだろうと考えていたのだろう。それしか考えていなかったばっかりに、それまでの工程を考えていなかったのだ。高級な牛肉が半額だから購入したけど、調理法に迷っているって感じだった。ちなみにメアリーチャンネルを一瞬覗いたことがあるのだが(俺の醜い姿を一秒でも早く消す必要があったので)、メイクアップのお手軽方法とか、美容に関するライフハック的な動画が散見されていた。
そんなこんな時間がしばらく続き、やっとのことで企画が固まった。
『ケンジ、メイクアップしてみた』
場所は変わらずカラオケボックス、しかも生放送の一発撮りという事らしかった。プロフェッショナルならスタジオとかの環境にも配慮するんじゃないのか? と不躾なことを聞いたら「プロはどんな場所でも成果を出すのがプロなのよ」と、ちょっと元の性格に戻してそう言った。至言だった。
ちなみに俺と魔王はカメラとレフ板係である。薄暗い空間の光を効率よく集め、カメラが回る。杖だけど。
「颯爽登場? そうでしょうとも! ケンチャンネルのケンちゃんです!」
元気よいところ申し訳ないが、挨拶がだせぇ。だが日々続けているのか、そんなダサい挨拶に何の迷いもなかったことに、少しだけ彼の積み重ねの片鱗を見た。
「今日は! ななななんと! なななんと! 偶然にもこのお方とコラボさせて頂くことになりました! ではどうぞ!」
「どうもどうも! 神も仏もメイクアップ! 女子に耳よりあなたの画面にメアリーです!」
ぺかーっと笑顔で手でハートを作り画面に向けた。きゃぴるーん! とまるで星やハートが周囲に出てきたんじゃないかというような、そんな挨拶だった。……いや違うマジで星やハートを出している。まさか魔法か? そうでなくとも、挨拶だけでわかる。一瞬で画面に取り込まれるこのスター性。
「今日はケンちゃんさんを超絶カッコいいイケ男にメイクアップしちゃいます! 女子にも使えるメイクテクを使うので、是非最後まで楽しんでいってね!」
しゅばばばばばー! っとあっという間にメイク。しかもメイクの技術の要点を超わかりやすく解説し、少なくとも一つの技術は必ず今すぐにでも実践できるようなやり易さだった。メイク技術といっても魔法込みなので、魔法をよく知らない俺では分からないだろうと思っていたのだが。これなら簡単。しかも効果絶大。いかにもチャラチャラしてウザいだけが取り柄の、垢ぬけたというより馬鹿で間の抜けた見た目だった姿が一変。超絶美青年に変貌していた。
「これが、俺ぇ!?」
内心マジで驚いているだけに、良いリアクションだ。そして「さよなら~チャンネル登録よろしくね~」っと配信を終える。あっという間の時間だった。
「あんた見た目にもっと気を遣えば、もっと人増やせるわよ。清潔感と情報量少ない容姿。それさえ守ってればある程度稼げるはずだから」
スッとオフモードに戻った神官の女子は、最後にケンジにそうアドバイスした。そして小さく「行こ」とだけ俺達に言い、カラオケボックスを出たのだった。イケメン過ぎた。
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