召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

文字の大きさ
84 / 87
<最終章:己が世界を支配せよ>

最強の魔族VSただの人間

しおりを挟む
 高笑いをする魔王。その高笑いは静かなこのドーム状の空間にはとても空空しく響いていた。なんとも空しく、なんとも不気味で、相容れないような気配を感じさせる。それは異種族間に隔たれた、無意識の壁。いくら言葉を交わそうとも、いくら寝食を共にしようとも、それはただ連れ添っているだけで、分かり合えない。そう突きつけられるみたいだった。

「よく来たな勇者よ、貴様はわしが直々に葬ってやる!」

「ひ、人違いじゃあないのか?」

 俺は目を逸らしてそうとぼけてみせた。そうしないと、こいつとの関係が壊れそうになると思ったからだ。関係を壊すことが嫌なのか? そうだ。俺はこいつとの関係を壊したくない。自分の運命に抗ってみせた魔王を守ることは、俺の心、つまり自分の道は自分で決めるというスタンスを守ることとイコールだからだ。こいつを、魔王という肩書に殺させてくなかった。

「人違い? いやいや、人が違えど勇ましければ勇者じゃよ、わしの前に現れていることそのものがその証拠じゃ、わしの前に立っているただそれだけで、貴様は勇者なんじゃ。魔王の立ち向かう人間は勇者だと相場で決まっておる」

「その相場を決めたのは、お前じゃないだろ。物語に感化されるのも良い加減にしろよ、ドラゴンボール愛読者でもかめはめ波が使えないことくらい理解してるぜ」

「その人は人じゃろう? わしは魔王じゃ、魔族を統べる王。人間に仇なす一族の王。それだけで貴様を殺す理由には十分じゃ」

 戻っている。かつて勇者に殺されることを当然と思っていた魔王という肩書が、心の底にまで根付いてしまっていた。深層心理が染まっている。

「魔族の王だからって、人間と対立しなくてもいいだろうが、魔族と人間は相容れることができる。他種族でも同盟や条約といった約束事をすれば、俺達は共存できるんだ」

「約束事? 同盟? 条約? そんな紙切れ一枚がエビデンスの契約に何の意味がある? わしには力があり、人間には力がない。あっても少しばかり工夫が効くだけじゃ。圧倒的魔力には誰にも叶わん。わしら魔族はそういう一族なんじゃ。力ある者が力なき者を従わせることに、何の違和感を抱くっ必要がある?」

 駄目だ、話を聞いていない。話にならない。常識が塗り替えられている。否、常識を迷いなく信じ、自分の行動指針が明確になっているんだ。それがたとえ、自分の望まざる未来に繋がっていたとしても。これもミナのレコメンドによるものの影響なのか? 心の行動指針をミナにレコメンドされることで、魔王としての役割に忠実になる。
 迷いを無くすことは確かに良いことだ。しかし、自分の行いが、自分の望んだ未来に繋がっていることが前提だ。
 お前は、そうじゃないだろ。魔族であろうと人間であろうと慮れる、レアアイテムは好きだけど、人の作った物語に直ぐに感化されるような、そういう心が豊かな奴だったはずだ。少なくとも、迷いなく人間を滅ぼす選択ができる奴では、なかったはずだ。

「思い出せ! 魔王だろうと副業を認め、福利厚生に充実した魔族業を生業としていたお前自身を!」

「副業? 何、そんな本業をおろそかにするようなことをしている者がわしの部下におると言うのか? それは聞き捨てならんのぉ、残業なんて当たり前、タイムカードを切ってからが本番じゃろうに」

 マジの魔王だった。タイムカードって言葉、今の人分かるかな、この異世界でも多分採用してるところなさそうに思うんだけど。

「まぁそれは貴様を葬ってから抜き打ち検査するとしようかのぉ、そのためにも」

 まずは貸しているものを返してもらわんとな。
 そう言って魔王は右手を前に出した。すると、俺の腰に縛り付けていた魔王の剣が、一人でに動き出した。カタカタと。まさかと思い、魔王の剣の柄をしっかりと掴む。だがその力を振り払うほどの力で、魔王の剣はクルクルと回転し、魔王の元へ飛んで行った。
 その剣を、ブーメランをナイスキャッチするようにがっしり掴む。相棒の如く。

「ちっ、まぁもともとその剣はお前のだったしな、だがその剣があったからなんだってんだよ、弱体化したお前が俺に敵うと思うのか?」

 煽ってみたのだが、煽るべきじゃなかっただろう。完全に負け役のセリフを吐いてしまった。流れはまだ魔王にある。ケラケラと笑い、あざけった。

「そんなわけないじゃろ、まだ貸しているもんもあるしのぉ」

 ん? まだ借りてたものって、あったっけ? ピンとこないと思っていたが、魔王が左手を前に出し、謎の風が背中から感じられる気がしたとき、直感した。そうだ、あった。魔王からの借り物というより、からの借り物が。

 吸い取られる。謎の脱力感が体中を襲う。俺の中の何かが、消えてなくなるような、そんな感じ。と言っても元々俺には備わっていなかったそれは、元のさやに納まるだけなのだ。魔王の貸した魔力は、魔王の元へ。

 闇色の魔力は魔王の体を包みこみ、その姿は見えなくなる。地下の密閉空間であるにも関わらずその風は勢いを増し、俺は腕で顔を覆った。

 視界が遮られ、より魔王の姿は見えなくなる。そして風が止むと、闇色の魔力は薄くなった。代わりに。俺は嫌気がさすように笑った。

「それが、お前の本当の姿ってわけだ」

「いかにも」

 見れば。目の前にいるのは見目麗しい黒髪ロングの角付き女性。シックな漆黒なドレスは夜空のようにキラキラと黒々しく輝き、美人なその容姿をより際立たせている。

「じゃが本来の姿に戻ろうとも、貴様を倒すのは骨が折れよう。なので、キャピタルゲインはしっかりと頂いておるよ」

 キャピタルゲイン? 確か、株とかを売却した時に得られる、購入額との差額の利益のことを言うんだっけ?

「さぁとくと味わえ、この魔王の剣のを」

 本質。その言葉を聞いて、一気に背筋が凍りつく。
 恐ろしい笑顔を浮かべて、魔王は呟く。剣を持ち上げて。天にも届くように高らかに。


「その本質は、己の無力と非力と弱さを知らしめる、心を壊す闇と化す」


 特別武具スペシャライズウェポン


恐血赤剣ドレッドブラッドレッドソード

                    |
                    |
                    |
                    |
                    |
                    |
                    |
                    |
                    |
                    |
                    |
                    斬
                    !
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...