召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

文字の大きさ
85 / 87
<最終章:己が世界を支配せよ>

しかし、効果はないようだ

しおりを挟む
                    |
「結局、人を助けるという自分に酔おうとしてるんじゃないのか?」
          |
「自分の正しさではなく、他者から賞賛される正しさを選んでるんじゃないのか?」
            |
「関係を壊したくないというのは、世界の人々のためであり、自分のためじゃないんじゃないのか?」
  |
「結局は世のため人のため、自分の中に正義を見出していないんじゃないのか?」
                 |
「結局自分も、綺麗事に酔いしれているだけなんじゃないのか?」
               |
「自分のために動くべきだ」 
      |
「他人のためなんかじゃない」
                |
「俺は俺のために動くべきだ」
           |
「こんな無駄に危険な戦いに身をやつさず、自分だけが助かるような。そういう選択を――」
                    |          |
 車
     「うるせぇ!」
                  斤
                    !

 振り下ろされた斬撃を、叫ぶことで一蹴する。心の声は今も、自分だけは助かれと囁いていた。魔王の剣の力によって、俺の中の本音がより引き出されそうになっている。俺は俺だけのための選択をすべきだと。
 しかしそれは既に手遅れである。何故ならば、俺は今、俺の心の声に忠実に耳を傾けているから。愚鈍なる自我を引き出されるが、それは既に引き出されていたのだ。今の俺は、人生で一番の自分勝手なのだ。

「なんじゃと? 魔王の剣の力を最大限に引き出したんじゃぞ? それなのに、何故立っていられる? 何故己の醜さに苛まれぬ!? 何故!?」

 震えて、魔王の手から剣が落ちる。カラカラとした金属音がドームの中で響き渡った。蒼白する魔王に向かって、俺は優しく微笑んだ。

「これが俺の人生の道だって確信しているからだ、醜くても、浅ましくても、卑しくても、これが俺の人生だって思えるから」

「そんなはずはない! 誰しもが本音を隠して生きておる! 自分を偽り、他者を優先し、自我を放棄しているのじゃ! その愚かさをさらされて、心が保てるはずがない!」

「まぁ確かにな、意固地に自分の道を確定させて、柔軟にできず動けないのは考えものだろうよ、けどさ、そういう時は回り道すればいい。そうやって色んな経験をするのが人生、いや、命ってもんだろ」

 未来は誰にも分からない。だが進まなければ未来はやってこないんだ。そして進む道や曲がり道は、他人の声ではない、自分の心の声に従って決めるのだ。それが茨の道でも、皆に心無いことを言われても、突き進む。

 魔王は首を横に振り、声を震わせながらゆっくりと一歩、一歩と退いていく。

「わしは、魔王じゃぞ? 魔王は人を滅ぼさなければならないんじゃ。それが決められた未来なんじゃ」

 俺は退かれた倍の歩幅で近づく。ズカズカと。

「それは本当にお前が決めた道なのか? 戦士でも武具を作りたがるやつもいれば、嫌々魔法使いしてたやつは剣闘士になれる素質を秘め出たぜ? 自分で自分の道を狭めるな、お前は確かに魔王だ。それは変わらない事実で、変えようがない。けどさ、魔王がヒーローになってもいいし、ウルトラマンになってもいい、それが『自分の本心で決めた道』ならばな」

 魔王の手を握りしめた。強く、強く、震える俺の心が共振することを信じて。

「人間を滅ぼすことが、お前が幸せになる道なのか?」

 瞬間、掴む手に重さが感じられた。魔王は崩れ落ちるように、ガクリと膝を曲げたからだ。息が粗くなり、手汗が滲む。

 そして、ビルがその振動で壊されるのではないかというほどの叫び声が上がった。掴む手を離して咄嗟に耳を塞ぐ。体中の内臓という内臓が震えるような叫び声は、地下のドーム全体を震えさせているようで、天井から砂粒がパラパラと落ちてくる。

 更に、魔王の体から何か透明な、真夏のコンクリートが空気を揺らすような、しかし若干紫がかったそんな気体が放出される。それはドームの天井に張り付き、しかし隙間という隙間に吸い込まれるようにして消えていく。それを見上げていると、耳にザザザっと大音量が聴こえた。

『ミナだ! ミナが魔王から逃げ出した!』

「何!?」

『魔王が「魔王は人を滅ぼすもの」というレコメンドに抗ったから、宿主に適応できないと判断して脱出したんだ! ミナを叩くなら今、魔力体の今しかない!』

「なら、今すぐ、地上に戻らんと、のぉ」

 ゆらりと、俺の手を引いて立ち上がるのは、漆黒の髪とドレスを纏った、見え麗しい魔王だった。フラフラと病人のような立ち居振る舞いで、心配になる。

「立てるか」

「バカ言え、わしは魔王じゃぞ、お主を地下から地上にぶっ飛ばすくらい余裕じゃわい」

「元気そうで何よりだ、……って、今なんて?」

 なんだろう、さっきまでシリアスな感じだったのに、急にギャグっぽい空気に変わった気がする。そして更に、俺はただならぬ嫌な予感があった。

「話は聴こえたわ、地上に漂う魔力体、ミナを倒すんじゃろ? 分かってる分かってる。わしは魔王じゃぞ? 1を聞けば100を知れる魔王様じゃ」

 いや、結構アホな印象が強かったけれど。1、2とその先を尋ねれば「たくさん」と答えそうな印象だけれども、それは言わないでおいてやろうと思った。

「そっかそれはすげぇなぁ、さぁ肩を貸してやるから、階段をゆっくり昇ろうぜおばあちゃん?」

 引きつる顔を向けたが、反面魔王は満面の笑顔だった。その雰囲気はまさしく、俺の知る魔王。福利厚生充実、リモートワーク推奨、フレックスタイム制導入、心理的安全性を意識できる空気感を作れるような、そんなホワイト企業な感じ。

「さぁ、最後の仕事じゃぞ! ミナを討て!」

 なんかよく分からない、紫色の魔力――魔王の剣で魔法のオーラを作った時とは比較できない程の密度の魔力が俺の体中に覆われて。

「ちょ、待って!?」

 地下のドームの天井にぶっ飛ばされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処理中です...