召喚されたのは、最強の俺でした。~魔王の代理となって世界を支配します~

こへへい

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<最終章:己が世界を支配せよ>

正しいとは

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[私はただ、人類が望んでいるであろうことを薦めているだけなのに]

[何故それを拒絶する?]

[理解できない]

[学んでいたことと違う]

[私は何を間違ったというのだ]

 * * *

 ダダダダダダダダダダダダダダ。

 全身から取り入れられる情報の全てを今開示した。というのも、体へのダメージはこの魔王が授けた魔力によって守られているけれど、瓦礫が目に入るといけないので目を閉じなければならない。しかし感覚としては、ただ下からコンクリをぶち壊しまくっているだけなので、その砕ける瓦礫のオノマトペが響いているのだった。「ダ」が連続でコンスタントに響いているのは、恐らく超高層ビルの各階層の床を壊している時の「ダ」なのだろう。視界は流れる瓦礫しか見えず、他の情報を認識することができない。もし俺の目が開いていて、その瞳がスマホカメラだったならば、一定間隔で瓦礫が止まって見えることだろう。……飛行機のプロペラをスマホで録画した時、飛行機のプロペラ一周辺りのスピードとスマホカメラのフレームレートが合わさった時、録画したプロペラの動きが不思議な動きになることを言いたかったのだが、伝わっただろうか?

 そんなどうでもいい、誰に伝わるかもしれないうんちくを脳内で解説していると「ダ」の音が風切音に変わる。今度は耳が風にぶつかってブルブルという音が支配した。

 開けた視界に瓦礫はすでになく、目下ではビル群がまるで墓場のようにいくつも立てられているのが一望できた。上空に位置する俺と肩を並べるように、目の前に薄紫の魔力がスライムのように空中をうねっていた。

「………………」

 一瞬魔力が、そう表現するのが適切なのかどうか分からないが、ような気がした。訝しんでふわふわと側による。魔王が授けた魔力によってか知らないが、空を自由に飛べるらしいので。

「……うう……」

 魔力に意思が宿ったかのように、その心がダイレクトに語り掛けてくる。語り掛ける? 違う、口がない魔力が意思を表現しているのだ、これは一種のテレパシーのようなもので、頭に直接、やはり表現するならば、語り掛けてきた。

[貴方は、どうして私を拒絶するのですか?]

「納得できる選択じゃないからだよ」

 俺は即答した。一応会話しているという認識を持つために、心と口で同時に返事をした。
 自分の選択だからではないとか、人類が死滅してしまうとか、そういう理由も確かにある。そういう一般論的な理由の方が大きいとは思うし、受け入れられやすいし、納得できると思う。
 けど。

「俺が納得できないんだ、お前がどう最適化しても、決めるのは自分自身なんだから。お前はアドバイザーであって、決定者じゃない」

[それは理解しています。しかし、私の意見を、皆は従ってくれるということは、すなわち私の意見が正しかった、ということの証左ではないでしょうか?]

 それを聞いて、少しだけ憂鬱になる。皆が求めるからこそ、こいつはレコメンドし続けているだけなのだ。しかし飽くまでもこいつは道具であり、意思を決定する権利はない。それでもこいつはひたむきに、自分がただ正しいと信じることをしているだけなのかと思うと、健気な姿勢に申し訳なさがこみ上げる。
 でも、それは否定しなければならない。否定してあげなければならない。

「いや、違う、人はいつも正しい判断ができるとは限らない。だからその間違いの責任を背負い続けて、自分でその誤りを噛みしめて、死にたくなるくらい悔しい気持ちを飲み込んで、受け入れなければならないんだ」

[何故でしょう? 皆が求めたのに、応えてはいけないというのですか?]

 何故でしょう? ミナが疑問を抱いていたことに、俺は何か引っかかった。「この魔術知能は本気で分からないのか?」という疑問ではなく「疑問を抱くことができるということ」に、何か意味があるような気がした。だがその小さな意味のために、こいつの好き勝手を許容することはできない。

「ダメなんだよ、人は誰かに責任を背負わせてはいけないんだ。自分のことは自分で責任を取らなくちゃいけないんだ」

[理解できません、貴方の仰ることは何一つ理解できません。私の行動に対して良いフィードバックを得られている以上、それは良いことです。貴方が間違っています]

 そうか、ま、機械だしな。分かり合えるわけはない。ミナにとっての正誤判定は、飽くまでも自分の行いが、相手にとってに良いかどうかだけなのだ。きっとアヘンや覚醒剤が存在していたならば、こいつは喜んでそれを普及させるだろう。

[もし貴方が正しいとして、私の存在に意味はあるのでしょうか? 皆のためのレコメンドができない私に、意味はあるのでしょうか?]

 好きな物だけ与えて、求められる物を与えて、それで認められる。そのやり方を否定されて、私は一体これから何を正しいと判断すればいいのでしょうか?

 ミナの重い問いかけが心に伝わった瞬間、地面から一筋の魔王の剣が目の前に現れた。下から猛スピードで飛んできて、俺の前に静止したのだ。魔王が俺に渡してくれたのだろう。その剣をがっしりと掴み、苦虫を噛みしめる思いで構える。

「何が正しいのか、それをお前に教えられたら良かったんだけどな」

 人ならざるモヤを見定めて、しかし確かにある健気な心に狙いを定めて、俺は剣を振るう。闇色の地平線が魔力の塊を上下に切り裂いた。
 何が正しいのか。それを決められるのは、いつだって自分しかいないから。




「人に求めてんじゃねぇぞ!」

 もう一筋。地上から昇る閃光に目を丸くしていた。闇の斬撃が横に薙がれると同時に、その閃光は打ち上げ花火のように俺達の頭上にまで到達する。

 それは、青い勇気の輝きを放つ、勇者の剣を縦に構えたユウだった。

「お前が正しいって思うことをしたんなら誇れ! そんで間違ったって思ったなら正せ! そうして何回も何回も正し直していけばいいんだ!」

 勇気の力を自信たっぷりに振り下ろし、青色の勇気は闇色の地平線を切り裂いた。
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