37 / 40
終戦
しおりを挟む
上空でカレンの箒に乗っている。箒の後ろに乗ったのだが、バランスが崩れるとか変な所触るかもとかで、俺はまたもや箒の下で箒を掴んだ状態になっていた。まぁ正直、初めて箒にしがみついた辺りからその方が楽だなとは思ってました。
上空から地上を観察していると、大勢の鎧達が立ち尽くし、一人の少し金色がかった鎧と、ちんまりと膝をつくオウグが見えた。
やはり視線を戦況は見た感じとは真逆だった。遠くから見た感じだとオウグが一人で多勢な鎧を吹き飛ばす○○無双さながらだったのだが、近くで見るとご覧の通り。
何故幻を見せていたかは分からないが、とりあえず戦うとなれば、この多勢はゼロ・ハピネスで大量に運気を吸い取れるチャンスだ。
「カレン、そろそろ降りようか」
「ok」
カレンは器用に箒の先を下にして舵を切り、身を隠していたフードを揺らしながら降下していく。
初心者の俺にはまず無理だろうな、箒で空を飛ぶというのは。やっぱり慣れた人に乗せてもらうのが一番だ。俺が乗ってたら、急降下で突風が来たらコントロールが効かずに落ちちゃうし
...あ、
「カレンストップ!」
「え?何?」
「今行くと風がっブフォア!」
横から急に突風が発生。しかもピンポイントで、俺にだけ風が吹いて来やがった!まぁこんなの良くあることだけど、こんなピンポイントってあり得るのか!?って
今はそれどころじゃなーーーーい!
「落ちる落ちる落ちる落ちるぅーーーーー!!!」
空気が体表を滑っていく!スルスルと地上に近づいていく!
ちらりと上を見たが、カレンは咄嗟のことで追い付くには難しそうだ。
くそ、やるしかない!不幸で吹き飛ばされたなら、その不幸を吹き飛ばす!
まずは手始めに、敵陣の運気を頂くぞ!
「発動!ゼロ・ハピネス!」
スカ。
...。
...え、嘘、マジ?1日一回?
「制限付きかよ!」
急落下!急転直下とはこの事か!
落ちる...もういいか、面倒くさくなってきた。
つーかあの時、学校に行くときに電車に轢かれて本来死んでた命なんだよな、諦めよう。神、お前の勝ちだよ。はぁ、結局再度会うこともなかったか。
体を重力に任せる。すると、身体は腰くるりと回り、腰を下にしてVの字に落ちていく。
「ふん!」
身体が砕けると思っていた。だが、その身体はすっぽりと誰かの腕に抱かれていた。背中と膝裏に腕があるのを感じる。痛みが無いことに驚き、腕の主を見る。オウグだ。
「...大、丈夫かい?」
「オウグ!」
疲弊しきっている身体なのに、それでもオウグは俺を離さなかった。ゆっくりと地面に降ろした。敵の攻撃に寄るものなのか、はたまたあの力の反動なのか、ゆっくりと崩れ倒れた。
「オウグしっかりしろ!無茶するなよなお前!」
「ヒール!」
カレンがすかさずヒールをオウグに。身体中に痛みが走ってもおかしくないのに、身体が動かない。そうとう疲弊していたようだ。能力の代償だろうか?
「小賢しい真似を...!」
野太い声が遠くから聞こえた。クォート(多分)がじっとこちらを見つめながら仁王立ちしている後ろから、黒いフードの者がこちらを睨んでいる。雷魔法を仕掛けてきた。
だが、それをジニアが瞬時に降りて、難なく杖を光らせ振るい弾き飛ばす。もう片手にはトウカが抱えられていた。
「お前だな?私を陥れた魔法使いは」
後ろの黒フードを杖で指す。姿をゆっくりと表すと、カレンがあー!と更に重ねて指をさした。
「城でマントを配ってた黒ローブ!あんただったのね!」
「だったらどうした!恨むか?恨んどけよ!だが我に後悔はないぞ!国の為なら何だってやってやる!」
オウグがゆっくりと立ち上がり、ふらふらしながら呟いた。
「させ...ない...」
「お前は一人で頑張りすぎだ!」
そうだ、そうやって一人で頑張れるのは天才くらいだ、人間誰でも頑張って頑張って頑張れば願いが叶うわけではない。そんなの一握りに過ぎない。だけど、
「周りを見ろ、王様を慕う奴等がこんなにいるんだ!一人でしょいこむんじゃねーよ!」
オウグが振り返った。そこには彼の国民を思う気持ちに応えるべく、大勢の騎士達や魔法使い達が集っていた。
「そうだ!俺達がついてるぞ!」
「王様は困ったときいつも助けて貰ってんだ!今度は俺達が助ける番だ!」
確かに転移者の記憶を奪ったかもしれないが、その記憶をちゃんとディネクスの国民に還元している。現に焼きそばや卵ラーメンは旨かった。
そして初心者冒険者(仮)には研修制度を設けたり、バクメーア討伐の時にも迅速なリターンを与えるなどの支援も欠かさなかった。彼の国に対する行動は、ちゃんと国民の心に響いていた!
「...皆、ありがとう」
剣を支えに、良い顔をしたオウグが立ち上がる。
だが、そんな良い雰囲気にカレンが水を差した。
「...いや、あんたさっきその満身創痍の王様に担がれてたでしょ、何格好つけてんのよ」
「...それは言わないで...」
やめて!あえて忘れてたのに!空気に浸らせろ!
「...こいつらぁ!」
のんきな雰囲気をしている俺たちに対して腹を立てたのか、黒ローブの男がまた杖を空に掲げた。だがそれをクォートが止める。
「セミ・クォートもういい!我らの負けだ」
金色鎧の鉄仮面は、後ろのセミ・クォートと呼ばれた黒ローブを制止させた。セミ・クォート?兄弟か何かか?顔も似てるし。
「兄者!何故止めるのです!」
あ、ご兄弟か。
「我らが最も警戒していたジニアが戻った以上、我らに奴を止める術はない。計画は破綻した、敗けたんだよ我らは」
「へっ!ジニアなんて一人で十分だ!」
そういうと、セミ・クォートは杖を天にかざした。みるみるうちに、杖の上に太陽さながらな真ん丸の炎が形成されていく!
「見ろ!これはディネクスで盗み見た書物から生まれた魔法だ!母国由来の魔法で滅ぶなら本望だろう!
我が魔力よ、限界を越えて全てを燃やし尽くす紅蓮の炎と化せ!」
その炎を見ても、ジニアは動じなかった。トウカをカレンに預け、杖を構えて集中する。
ディネクスの書物から生まれた魔法と言ったか?それにこの真ん丸な炎の塊、どこかで見たことがある。もし予想が正しければ、色んな意味でヤバいんじゃ...
「食らえ!メラz...」
「マヒャドデス!」
セミ・クォートが魔力を集中させて、やっと放ったメラ○○マに、ジニアの繰り出した氷魔法「マヒャドデス」がぶつかり合い相殺、ならまだ良かったのだが、ジニアの方が力が勝っており、セミ・クォートの炎を杖を持つ手ごと凍らせてしまった。
それと...名前少し違うんだよなぁ、まぁそこはいいか。
「手が!手が冷たい!痛いぃ!」
セミ・クォートは凍った手を見て、悲痛の叫びを上げていた。「メラメラメラメラメラメラ!」と、杖を凝視して言い続ける。徐々に氷が溶け始めていた。
「今のでだいたい分かった。大方『ドライブクエスチョン』を読んでいて、そこからその炎の魔法や幻惑魔法の着想を得たんだろう。あれは魔法に必要なイメージ力を養ってくれるからな。
ま、私はスピンオフ含めて20回は読んでいるがな。お前とは質が違う」
ジニアの顔が更に怖くなっているのが見えた。陥れた恨みもそうだが、何だろうか、にわか知識をさらしている人にもの申したい感じが窺える。
それと、イメージの力が魔法に左右されやすい、か。そういえばそうだな、炎を連想する時にガスコンロを考えると容易に発動できたし、そもそも一日だけカレンとしていた練習でも、各属性を発動するのに苦はなかった。
「セミ、諦めよう。これ以上の犠牲を出してまで戦い助かったところで本末転倒だ。きっと誇りを持つ国民達も分かってくれる」
クォートは剣を鞘に納めると、やっと腕の氷を溶かした弟の肩を掴みなだめる。とても悔しそうに。それを見た弟は、見損なったように驚嘆し、泣き崩れた。
そんな中、俺はクォートの言葉から気になることがあった。
「ちょっと聞きたいんだけど、助かるとか犠牲とかって、何の話なんだ?確かにディネクスの兵士を間接的に殺したのは許されるべきじゃないけど、おたくにも何か事情があるのか?」
「あぁ、ある。あれは数ヵ月前の話だ」
クォートのしかめっ面は、圧し殺された悲しみが僅かに漏れていた。
──────────────────────────────
あれは今から数ヵ月前のこと、我らの国に突如─────
──────────────────────────────
「ちょっと待った!」
空気を読まずに、カレンが掌を向けてクォートの話を止めた。そしていくつか質問する。
「その前に聞かせて、もう戦わないって方向で良いのね?」
「え...そ、うだな、もうどっちにしても同じことだし、戦うだけ無駄だからな」
「OKOK、で、その話って...長い?」
「...えーと、そこまでは長くないかもしれんが、数分は立ち話になるやもしれん」
「わかった、なら別の場所で話しましょう!うん!ここで立ち話もあれだし!」
手を広げて、この場所をアピールした。広い大地に大勢の人達が会するなか、確かに積もる話はしんどい。
今度カレンは、ストリンの大勢の人に向けて言った。
「あんたらもしんどいだろうけど、争わないならもう帰る!それかお腹空いたならうちの城に来なさい、腕利きの料理人がいるから作ってもらうから」
振り返り、今度はディネクスの騎士達にも話した。
「あんたらも帰る!後ろで怪我人一人いたでしょ?まずはその手当て優先!それに今からこの人達はお客さんになるんだからおもてなしすること!」
「はぁ!?ふざけんな!誰がこんなやつらをディネクスに入れるかよ!」
「これは弔い合戦なんだ!死んでった仲間のためにも──」
「うるさいわボケ!仲間の事思うなら尚更間違い繰り返す訳にはいかにいでしょ!」
静寂が数秒流れた後、ディネクス側の人間がまだ小さく文句を垂れた。
「...でも」
「あぁん?」
ヒィ!と睨むカレンに怯えた後、また静寂が訪れた。
返す言葉もなかった。一人の魔女が、いやお母さんがこの場をいさめた。誰も声を上げようとはしなかった。何か言おうものならまた怒られるかもしれない。そういう、DNAレベルで刻まれたお母さんへの畏怖が、この戦を止めてしまった。
「はい!戦争終わり!」
パン!という手の鳴る音だけが静かに聞こえた。
上空から地上を観察していると、大勢の鎧達が立ち尽くし、一人の少し金色がかった鎧と、ちんまりと膝をつくオウグが見えた。
やはり視線を戦況は見た感じとは真逆だった。遠くから見た感じだとオウグが一人で多勢な鎧を吹き飛ばす○○無双さながらだったのだが、近くで見るとご覧の通り。
何故幻を見せていたかは分からないが、とりあえず戦うとなれば、この多勢はゼロ・ハピネスで大量に運気を吸い取れるチャンスだ。
「カレン、そろそろ降りようか」
「ok」
カレンは器用に箒の先を下にして舵を切り、身を隠していたフードを揺らしながら降下していく。
初心者の俺にはまず無理だろうな、箒で空を飛ぶというのは。やっぱり慣れた人に乗せてもらうのが一番だ。俺が乗ってたら、急降下で突風が来たらコントロールが効かずに落ちちゃうし
...あ、
「カレンストップ!」
「え?何?」
「今行くと風がっブフォア!」
横から急に突風が発生。しかもピンポイントで、俺にだけ風が吹いて来やがった!まぁこんなの良くあることだけど、こんなピンポイントってあり得るのか!?って
今はそれどころじゃなーーーーい!
「落ちる落ちる落ちる落ちるぅーーーーー!!!」
空気が体表を滑っていく!スルスルと地上に近づいていく!
ちらりと上を見たが、カレンは咄嗟のことで追い付くには難しそうだ。
くそ、やるしかない!不幸で吹き飛ばされたなら、その不幸を吹き飛ばす!
まずは手始めに、敵陣の運気を頂くぞ!
「発動!ゼロ・ハピネス!」
スカ。
...。
...え、嘘、マジ?1日一回?
「制限付きかよ!」
急落下!急転直下とはこの事か!
落ちる...もういいか、面倒くさくなってきた。
つーかあの時、学校に行くときに電車に轢かれて本来死んでた命なんだよな、諦めよう。神、お前の勝ちだよ。はぁ、結局再度会うこともなかったか。
体を重力に任せる。すると、身体は腰くるりと回り、腰を下にしてVの字に落ちていく。
「ふん!」
身体が砕けると思っていた。だが、その身体はすっぽりと誰かの腕に抱かれていた。背中と膝裏に腕があるのを感じる。痛みが無いことに驚き、腕の主を見る。オウグだ。
「...大、丈夫かい?」
「オウグ!」
疲弊しきっている身体なのに、それでもオウグは俺を離さなかった。ゆっくりと地面に降ろした。敵の攻撃に寄るものなのか、はたまたあの力の反動なのか、ゆっくりと崩れ倒れた。
「オウグしっかりしろ!無茶するなよなお前!」
「ヒール!」
カレンがすかさずヒールをオウグに。身体中に痛みが走ってもおかしくないのに、身体が動かない。そうとう疲弊していたようだ。能力の代償だろうか?
「小賢しい真似を...!」
野太い声が遠くから聞こえた。クォート(多分)がじっとこちらを見つめながら仁王立ちしている後ろから、黒いフードの者がこちらを睨んでいる。雷魔法を仕掛けてきた。
だが、それをジニアが瞬時に降りて、難なく杖を光らせ振るい弾き飛ばす。もう片手にはトウカが抱えられていた。
「お前だな?私を陥れた魔法使いは」
後ろの黒フードを杖で指す。姿をゆっくりと表すと、カレンがあー!と更に重ねて指をさした。
「城でマントを配ってた黒ローブ!あんただったのね!」
「だったらどうした!恨むか?恨んどけよ!だが我に後悔はないぞ!国の為なら何だってやってやる!」
オウグがゆっくりと立ち上がり、ふらふらしながら呟いた。
「させ...ない...」
「お前は一人で頑張りすぎだ!」
そうだ、そうやって一人で頑張れるのは天才くらいだ、人間誰でも頑張って頑張って頑張れば願いが叶うわけではない。そんなの一握りに過ぎない。だけど、
「周りを見ろ、王様を慕う奴等がこんなにいるんだ!一人でしょいこむんじゃねーよ!」
オウグが振り返った。そこには彼の国民を思う気持ちに応えるべく、大勢の騎士達や魔法使い達が集っていた。
「そうだ!俺達がついてるぞ!」
「王様は困ったときいつも助けて貰ってんだ!今度は俺達が助ける番だ!」
確かに転移者の記憶を奪ったかもしれないが、その記憶をちゃんとディネクスの国民に還元している。現に焼きそばや卵ラーメンは旨かった。
そして初心者冒険者(仮)には研修制度を設けたり、バクメーア討伐の時にも迅速なリターンを与えるなどの支援も欠かさなかった。彼の国に対する行動は、ちゃんと国民の心に響いていた!
「...皆、ありがとう」
剣を支えに、良い顔をしたオウグが立ち上がる。
だが、そんな良い雰囲気にカレンが水を差した。
「...いや、あんたさっきその満身創痍の王様に担がれてたでしょ、何格好つけてんのよ」
「...それは言わないで...」
やめて!あえて忘れてたのに!空気に浸らせろ!
「...こいつらぁ!」
のんきな雰囲気をしている俺たちに対して腹を立てたのか、黒ローブの男がまた杖を空に掲げた。だがそれをクォートが止める。
「セミ・クォートもういい!我らの負けだ」
金色鎧の鉄仮面は、後ろのセミ・クォートと呼ばれた黒ローブを制止させた。セミ・クォート?兄弟か何かか?顔も似てるし。
「兄者!何故止めるのです!」
あ、ご兄弟か。
「我らが最も警戒していたジニアが戻った以上、我らに奴を止める術はない。計画は破綻した、敗けたんだよ我らは」
「へっ!ジニアなんて一人で十分だ!」
そういうと、セミ・クォートは杖を天にかざした。みるみるうちに、杖の上に太陽さながらな真ん丸の炎が形成されていく!
「見ろ!これはディネクスで盗み見た書物から生まれた魔法だ!母国由来の魔法で滅ぶなら本望だろう!
我が魔力よ、限界を越えて全てを燃やし尽くす紅蓮の炎と化せ!」
その炎を見ても、ジニアは動じなかった。トウカをカレンに預け、杖を構えて集中する。
ディネクスの書物から生まれた魔法と言ったか?それにこの真ん丸な炎の塊、どこかで見たことがある。もし予想が正しければ、色んな意味でヤバいんじゃ...
「食らえ!メラz...」
「マヒャドデス!」
セミ・クォートが魔力を集中させて、やっと放ったメラ○○マに、ジニアの繰り出した氷魔法「マヒャドデス」がぶつかり合い相殺、ならまだ良かったのだが、ジニアの方が力が勝っており、セミ・クォートの炎を杖を持つ手ごと凍らせてしまった。
それと...名前少し違うんだよなぁ、まぁそこはいいか。
「手が!手が冷たい!痛いぃ!」
セミ・クォートは凍った手を見て、悲痛の叫びを上げていた。「メラメラメラメラメラメラ!」と、杖を凝視して言い続ける。徐々に氷が溶け始めていた。
「今のでだいたい分かった。大方『ドライブクエスチョン』を読んでいて、そこからその炎の魔法や幻惑魔法の着想を得たんだろう。あれは魔法に必要なイメージ力を養ってくれるからな。
ま、私はスピンオフ含めて20回は読んでいるがな。お前とは質が違う」
ジニアの顔が更に怖くなっているのが見えた。陥れた恨みもそうだが、何だろうか、にわか知識をさらしている人にもの申したい感じが窺える。
それと、イメージの力が魔法に左右されやすい、か。そういえばそうだな、炎を連想する時にガスコンロを考えると容易に発動できたし、そもそも一日だけカレンとしていた練習でも、各属性を発動するのに苦はなかった。
「セミ、諦めよう。これ以上の犠牲を出してまで戦い助かったところで本末転倒だ。きっと誇りを持つ国民達も分かってくれる」
クォートは剣を鞘に納めると、やっと腕の氷を溶かした弟の肩を掴みなだめる。とても悔しそうに。それを見た弟は、見損なったように驚嘆し、泣き崩れた。
そんな中、俺はクォートの言葉から気になることがあった。
「ちょっと聞きたいんだけど、助かるとか犠牲とかって、何の話なんだ?確かにディネクスの兵士を間接的に殺したのは許されるべきじゃないけど、おたくにも何か事情があるのか?」
「あぁ、ある。あれは数ヵ月前の話だ」
クォートのしかめっ面は、圧し殺された悲しみが僅かに漏れていた。
──────────────────────────────
あれは今から数ヵ月前のこと、我らの国に突如─────
──────────────────────────────
「ちょっと待った!」
空気を読まずに、カレンが掌を向けてクォートの話を止めた。そしていくつか質問する。
「その前に聞かせて、もう戦わないって方向で良いのね?」
「え...そ、うだな、もうどっちにしても同じことだし、戦うだけ無駄だからな」
「OKOK、で、その話って...長い?」
「...えーと、そこまでは長くないかもしれんが、数分は立ち話になるやもしれん」
「わかった、なら別の場所で話しましょう!うん!ここで立ち話もあれだし!」
手を広げて、この場所をアピールした。広い大地に大勢の人達が会するなか、確かに積もる話はしんどい。
今度カレンは、ストリンの大勢の人に向けて言った。
「あんたらもしんどいだろうけど、争わないならもう帰る!それかお腹空いたならうちの城に来なさい、腕利きの料理人がいるから作ってもらうから」
振り返り、今度はディネクスの騎士達にも話した。
「あんたらも帰る!後ろで怪我人一人いたでしょ?まずはその手当て優先!それに今からこの人達はお客さんになるんだからおもてなしすること!」
「はぁ!?ふざけんな!誰がこんなやつらをディネクスに入れるかよ!」
「これは弔い合戦なんだ!死んでった仲間のためにも──」
「うるさいわボケ!仲間の事思うなら尚更間違い繰り返す訳にはいかにいでしょ!」
静寂が数秒流れた後、ディネクス側の人間がまだ小さく文句を垂れた。
「...でも」
「あぁん?」
ヒィ!と睨むカレンに怯えた後、また静寂が訪れた。
返す言葉もなかった。一人の魔女が、いやお母さんがこの場をいさめた。誰も声を上げようとはしなかった。何か言おうものならまた怒られるかもしれない。そういう、DNAレベルで刻まれたお母さんへの畏怖が、この戦を止めてしまった。
「はい!戦争終わり!」
パン!という手の鳴る音だけが静かに聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる