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第23話 本当によく泣くわね……
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「で、出ない……」
開始から六時間。
バフも集中力も切れて流石にしんどくなってきたが、お目当ての魔石の回収は未だ叶わず。
昼食を作る元気もなく、残っていたパンやお肉、乾燥野菜をまとめて火にかけ、最後に塩で整えたおかゆみたいなものを口に運ぶ。
「しょうがないわ。本来なら一か月くらいかけなきゃいけない確率だもの」
「まだ……あと一回は行ける!」
体力の前借には限界がきているが、アレの効果は一日ある。時間ギリギリまで粘るべきだ。
心配する茉莉花を説得して、後一セットだけチャレンジすることになった。
最後の挑戦。手足は結構限界が近いが、集中力は切らさないように気合を入れる。
今までの戦闘や、茉莉花の指導を思い出しながら動くと、昨日の朝の自分がいかに酷かったかが良く分かる。
あんなに危険に感じていた矢は、もう後ろを向いていなくても怖くない。モンスターに背後を取られても、すかさず援護してくれるこれ以上ない味方だ。
先輩もずっとサポートしてくれている。力まずに攻撃を避けられるようになったことで、次の動作もスムーズに行える。
「楽しい」
へとへとだけど、一歩間違えれば死んでしまうけど、戦いながら楽しいと思ったのは初めてだ。
後二体! 感電して動きが鈍くなった二体に向かって行ったその時。
バシャッ
あろうことか、二体の目の前で転んでしまった。
足の力が突然抜けたのだ。怪我をしたわけではない。おそらく過労によるものだろう。
大丈夫、すぐ立て直せる。
「太陽!!」
力を入れ直し立ち上がろうとした時、目の前に巨大な角が迫ってきていた。
避けられない。
背負った盾を構える隙も無く目をつむると同時に、ドーンと目の前に衝撃が走った。
「!? 茉莉花!!」
「早く!!」
目の前にいた鉱物大鹿は倒れており、茉莉花は僕のすぐそばにいた。
「うおおおおおっ」
何が起こったの分からないが、茉莉花が助けてくれたことは確かだ。
最後の力を振り絞り、起き上がりそうな鉱物大鹿の首をたたき切る。次に、剣をそのまま振り上げてもう一体の首めがけて降り下ろした。
ドシャーンッ
勢いが足らなかったのか落とし切れていなかったが、幸いにも倒せたようだ。
「もう、無理……」
バシャン
モンスターの血がにじむ水たまりの中に大の字に倒れこんでしまった。完全に電池切れだ。
「大丈夫!?」
「ぴぴぃっ」
心配してのぞき込んでくれる二人に、ひらひらと手を振って見せる。
「大丈夫。茉莉花のおかげで助かった……」
「突然倒れるから飛び出しちゃったわよ……」
どうやら、僕がこけた瞬間に、木を蹴りその反動で鉱物大鹿に飛び蹴りをしたそうだ。
「天堂さんなら仕留められているんだろうけど……」
「陽葵は別格だから……」
陽葵と同じように出来るなら、そもそも僕は用無しだろう。
「それより、早く素材確認しなきゃ! 僕は手伝えないけど……」
もうしばらく起き上がれそうにない。
「そうね!」
死体が消えてしまわないうちに、倒した順から解体していく。
僕は作業の様子を横目で見ながら、昼の暖かい日差しが誘う眠気に抵抗する。
気を抜けば今すぐ意識が飛んでいきそうだ。
「これで最後……」
ものの数十分で他の解体を終えた茉莉花が、僕の横に戻ってきた。残念ながら今のところ入手は出来ていないようだ。
最後の二体を手際よく解体していく。
どうか。効果がありますように。
心の中で、今朝飲んだ高級アイテムに祈りをささげながら、先輩と二人で見守る。
「あ……っ」
カシャン……と持っていたナイフを落とし、肩を震わせている。
「あったぁぁああああ!!」
歓喜の叫びと共に天に何かを掲げた。丁度お天道様と重なりまぶしくて見えないが、きらきらと反射しているのは分かる。
「あった! あったよ太陽!!」
普通の女子中学生のように、胸に大事そうに抱えて飛び跳ねている。
「嘘みたい……! 今年も無理だと思っていたのに……!!」
今年も、という事は毎年挑戦していたのか。
「おめでとう!」
一緒に飛び跳ねることは出来ないが、何とか腕を上げて親指を立てた。
「ありがとう!! 太陽のおかげだわ!! 二日で見つけられるなんて信じられない……去年二週間粘っても駄目だったのに……何かしてくれたの!? ノームの加護!? ギルド長にもお礼を言った方が良いかしら!?」
興奮が収まらないようで、僕の顔と透明な魔石を交互に見ながら矢継ぎ早にしゃべっている。
瞳には涙がにじんで、本当に喜んでくれているのだと伝わってくる。
良かった。
……いや、本当に良かった!! 効果があって……良かったぁぁぁあ!!
ドロップ率アップ(最高級)のアイテム、ドリアン。ドロップ率関係のアイテムで一番効果も価格も食べる難易度も高かった……!
価格はなんと六万コイン。
もちろん手持ちでは足りなくて、茉莉花に預けていなかったダイヤモンドを交換した。一個で十万チョムの価値があるので、一個一万コイン、合わせて丁度六万コインになる。
ドロップ率が上がることによって、今日の討伐で再び五個入手できると信じての賭けだったが、今日の成果はどうだったろう。
魔石に集中しすぎて確認していなかった。きっと大丈夫だ……よね?
「あの、ちなみに、ダイヤモンドってどのくらい採れた?」
「ダイヤモンドも! びっくりしちゃう数なの! なんと三十個!!」
「三十!?」
まさかの昨日の五倍だ。昨日よりも討伐数は格段に多いので比較はできないが、予想以上の成果である。
「良かった……」
依頼が無事に達成できた喜びと今後の資金が潤沢になる安堵もあるが、何よりも今朝の苦しみが報われた。
気が付けば、両目から涙がこぼれている。
「あなた……本当によく泣くわね……」
ドロドロで倒れた状態の男が涙まで流しているのに引いたのか、茉莉花は落ち着きを取り戻したようだ。
「やっぱり何かしたんでしょ?」
まぁ、ここまで明らかな差があったのでは分かるよね。
「……内緒」
昨夜の茉莉花と同じセリフで返すと、茉莉花も僕の真似をして「えー」と口をとがらせる。
開始から六時間。
バフも集中力も切れて流石にしんどくなってきたが、お目当ての魔石の回収は未だ叶わず。
昼食を作る元気もなく、残っていたパンやお肉、乾燥野菜をまとめて火にかけ、最後に塩で整えたおかゆみたいなものを口に運ぶ。
「しょうがないわ。本来なら一か月くらいかけなきゃいけない確率だもの」
「まだ……あと一回は行ける!」
体力の前借には限界がきているが、アレの効果は一日ある。時間ギリギリまで粘るべきだ。
心配する茉莉花を説得して、後一セットだけチャレンジすることになった。
最後の挑戦。手足は結構限界が近いが、集中力は切らさないように気合を入れる。
今までの戦闘や、茉莉花の指導を思い出しながら動くと、昨日の朝の自分がいかに酷かったかが良く分かる。
あんなに危険に感じていた矢は、もう後ろを向いていなくても怖くない。モンスターに背後を取られても、すかさず援護してくれるこれ以上ない味方だ。
先輩もずっとサポートしてくれている。力まずに攻撃を避けられるようになったことで、次の動作もスムーズに行える。
「楽しい」
へとへとだけど、一歩間違えれば死んでしまうけど、戦いながら楽しいと思ったのは初めてだ。
後二体! 感電して動きが鈍くなった二体に向かって行ったその時。
バシャッ
あろうことか、二体の目の前で転んでしまった。
足の力が突然抜けたのだ。怪我をしたわけではない。おそらく過労によるものだろう。
大丈夫、すぐ立て直せる。
「太陽!!」
力を入れ直し立ち上がろうとした時、目の前に巨大な角が迫ってきていた。
避けられない。
背負った盾を構える隙も無く目をつむると同時に、ドーンと目の前に衝撃が走った。
「!? 茉莉花!!」
「早く!!」
目の前にいた鉱物大鹿は倒れており、茉莉花は僕のすぐそばにいた。
「うおおおおおっ」
何が起こったの分からないが、茉莉花が助けてくれたことは確かだ。
最後の力を振り絞り、起き上がりそうな鉱物大鹿の首をたたき切る。次に、剣をそのまま振り上げてもう一体の首めがけて降り下ろした。
ドシャーンッ
勢いが足らなかったのか落とし切れていなかったが、幸いにも倒せたようだ。
「もう、無理……」
バシャン
モンスターの血がにじむ水たまりの中に大の字に倒れこんでしまった。完全に電池切れだ。
「大丈夫!?」
「ぴぴぃっ」
心配してのぞき込んでくれる二人に、ひらひらと手を振って見せる。
「大丈夫。茉莉花のおかげで助かった……」
「突然倒れるから飛び出しちゃったわよ……」
どうやら、僕がこけた瞬間に、木を蹴りその反動で鉱物大鹿に飛び蹴りをしたそうだ。
「天堂さんなら仕留められているんだろうけど……」
「陽葵は別格だから……」
陽葵と同じように出来るなら、そもそも僕は用無しだろう。
「それより、早く素材確認しなきゃ! 僕は手伝えないけど……」
もうしばらく起き上がれそうにない。
「そうね!」
死体が消えてしまわないうちに、倒した順から解体していく。
僕は作業の様子を横目で見ながら、昼の暖かい日差しが誘う眠気に抵抗する。
気を抜けば今すぐ意識が飛んでいきそうだ。
「これで最後……」
ものの数十分で他の解体を終えた茉莉花が、僕の横に戻ってきた。残念ながら今のところ入手は出来ていないようだ。
最後の二体を手際よく解体していく。
どうか。効果がありますように。
心の中で、今朝飲んだ高級アイテムに祈りをささげながら、先輩と二人で見守る。
「あ……っ」
カシャン……と持っていたナイフを落とし、肩を震わせている。
「あったぁぁああああ!!」
歓喜の叫びと共に天に何かを掲げた。丁度お天道様と重なりまぶしくて見えないが、きらきらと反射しているのは分かる。
「あった! あったよ太陽!!」
普通の女子中学生のように、胸に大事そうに抱えて飛び跳ねている。
「嘘みたい……! 今年も無理だと思っていたのに……!!」
今年も、という事は毎年挑戦していたのか。
「おめでとう!」
一緒に飛び跳ねることは出来ないが、何とか腕を上げて親指を立てた。
「ありがとう!! 太陽のおかげだわ!! 二日で見つけられるなんて信じられない……去年二週間粘っても駄目だったのに……何かしてくれたの!? ノームの加護!? ギルド長にもお礼を言った方が良いかしら!?」
興奮が収まらないようで、僕の顔と透明な魔石を交互に見ながら矢継ぎ早にしゃべっている。
瞳には涙がにじんで、本当に喜んでくれているのだと伝わってくる。
良かった。
……いや、本当に良かった!! 効果があって……良かったぁぁぁあ!!
ドロップ率アップ(最高級)のアイテム、ドリアン。ドロップ率関係のアイテムで一番効果も価格も食べる難易度も高かった……!
価格はなんと六万コイン。
もちろん手持ちでは足りなくて、茉莉花に預けていなかったダイヤモンドを交換した。一個で十万チョムの価値があるので、一個一万コイン、合わせて丁度六万コインになる。
ドロップ率が上がることによって、今日の討伐で再び五個入手できると信じての賭けだったが、今日の成果はどうだったろう。
魔石に集中しすぎて確認していなかった。きっと大丈夫だ……よね?
「あの、ちなみに、ダイヤモンドってどのくらい採れた?」
「ダイヤモンドも! びっくりしちゃう数なの! なんと三十個!!」
「三十!?」
まさかの昨日の五倍だ。昨日よりも討伐数は格段に多いので比較はできないが、予想以上の成果である。
「良かった……」
依頼が無事に達成できた喜びと今後の資金が潤沢になる安堵もあるが、何よりも今朝の苦しみが報われた。
気が付けば、両目から涙がこぼれている。
「あなた……本当によく泣くわね……」
ドロドロで倒れた状態の男が涙まで流しているのに引いたのか、茉莉花は落ち着きを取り戻したようだ。
「やっぱり何かしたんでしょ?」
まぁ、ここまで明らかな差があったのでは分かるよね。
「……内緒」
昨夜の茉莉花と同じセリフで返すと、茉莉花も僕の真似をして「えー」と口をとがらせる。
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