盛り塩一丁! ~風紀委員長×霊感もち高校生~

猫村やなぎ

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第二章

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 魚沼、と呼び止められて振り返る。頭上で漂っていたマーサは声の主にあ、と声を漏らす。

「千堂から呼び出しあったぞ。まーた制服着ろって怒られに行くのか?」
「えー、萩丘はぎおか先生ひっどいなー。俺のこれは毎日着てるんだからもはや制服ですよ」
「はいはい、とにかくHRの後で風紀室に行けよ。伝えたからな」

 ったく、千堂の奴も人使いが荒い。
 冗談めかして文句を言う先生に苦笑する。どうやら風紀の顧問であるのをいいことにセンパイに遣いっぱしりにされたようである。HRするぞー、と着席を促す先生の後をマーサはつける。アキヒロ、と先生の名前を呼ぶマーサを見ていられなくて、俺は机の上に突っ伏した。後ろの席の奴に寝るな、と頭を叩かれる。

 いてぇ、と顔を上げると、教卓の上に座り込むマーサの姿が見えた。目の前にいるにもかかわらず、マーサと先生の視線は交わることがなかった。





 HRも終わり、教室を出て行こうとする俺に、もうちょっと側にいるとマーサは先生についていった。そう、と返事をし風紀室へと廊下を歩く。側から見ればいつもと同じ廊下の幅は、その実彼がいない分だけ少し広かった。

 トントントンとノックをし、風紀室の扉を開ける。風紀室に呼んだ張本人は、俺の姿を見ると意外そうな顔をした。

「魚沼か。ノックするとはどういう心境の変化だ?」
「優等生はじめましたって感じですね」
「なら制服着てこい」
「ヤですよだっさいし。逆に聞きたいんですけどそんな制服着ててよく街を歩けますね?」
「お前自分が私服だからってなかなか辛辣だな?」

 センパイは俺の言い方が気に障ったのか、デスクから風紀検査表を取り出し俺の欄に赤チェックを入れる。あと四回で校内清掃な、と楽しそうに言われげんなりとする。あと四回って、そんなスパンで掃除しなくちゃいけねぇのか、俺は。なら制服を着れば、という結論になるのだろうがそれはそれで無理な話だ。何曜日が清掃日になるのかと指折り数える俺に、センパイは呆れたような声を零した。

「お前、そういうとこ真面目だよな」

 地が出てるっていうの?
 その真面目さで制服も着ていたらいいのに、というセンパイの苦言をはいはいと聞き流す。それで、と話を切り出すとセンパイはやけに神妙な顔になった。

「資源ポストに入ってた請願書だ」
「資源ポストってもう呼び方決定なんですね」
「体育館横の救護室に、幽霊が出ます。怖くて逢引も満足にできません。なんとかしてください」
「放置で」

 いいじゃん、逢引(笑)しなきゃ。なんだよ、するにしてももうちょい場所があるだろう。保健室じゃなくて救護室選ぶあたり人気のなさが狙い目なのにとか思ってそうで嫌だ。一番気に食わないのは、下手に請願書の体裁が整っている以上俺が動かなきゃいけないっていうところだ。何で俺が逢引の場を整えなくちゃいけないんだよ。

「不満は分かるが、働いてもらうぞ、魚沼」
「報酬多めで」
「分かった、ペットボトル二本な」
「割りに合わねー」

 随分と安い報酬に文句を垂れつつ立ち上がる。行こうか、と右肩に目を向け、マーサがそこにいないことを思い出した。 固まった俺の表情に、センパイは足を止め肩視線を投げる。

「? どうした、魚沼」
「……いえ、別に」
「ふーん? なぁマーサ、こいつどうしたんだ? やけにしおらしいんだが」

 見当違いなところを見るセンパイに、いませんよと教える。

「あれ、こっちじゃなかったか。じゃあどこだ」
「いません。今、俺の傍にあいつはいません」

 いつも一緒にいるのかと思った。驚いた顔で呟くセンパイに肩を揺らして笑う。

「俺も、また思い違いしてました」

 やだなーセンパイとお揃いなんて。先んじて歩を進める俺を、センパイは慌てて追いかける。俺の言動に違和感を覚えたのか、その顔はやけに強張っていた。俺の腕を掴み、無理やり引き留めたセンパイは、噛みつくかのような口調で俺に聞く。

「マーサは、お前に憑いてるんじゃないのかッ!?」
「違いますよ」

 何度も思い知ったにも拘わらず、また思い違いをしていた自分が恥ずかしくて。ふは、と馬鹿な自分を嘲り答える。マーサはずっと、それこそ彼が幽霊になる前から、ただ一人に縛られている。

「マーサは、萩丘先生に憑いてるんです」

 先生はあいつが見えないのに。
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