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愛莉は失恋した日から食欲がなくなり、なにもやる気がおきなくなった。
会社で仕事中にぼんやりすることが多くなり、上司にしかられたりした。
会社の同じ部署の先輩、倉田江茉が心配して声をかけてくれて、いっしょにランチをすることになった。
江茉は28歳の愛莉よりも一回り年齢が上で、さっぱりした性格の、世話焼きタイプの女性だ。
江茉がランチのスープを一口すすってから言った。
「嘉川さん、なにかあった? 最近、やせたでしょう」
愛莉がサンドウィッチを口に運ぶ手をとめてこたえた。
「失恋しちゃって、あんまり食べられなくて」
「それはたいへんね。仕事も集中できてないんじゃない?」
「運命の人だと思ってた人に、ふられちゃったから、気が動転していて」
「でも、むりしてでも食べなきゃ。やってけないわよ」
愛莉はサンドウィッチを目の前の皿に戻してうつむいた。
「今回はもう、一生立ち直れないような気がするんですよね」
江茉は少し考えてから前かがみになって小声で言った。
「大きな声じゃ言えないけど、それだったら、おすすめのものがあるわよ」
「なんですか、おすすめのものって」
愛莉は顔をあげた。
「運命の人を発見できる腕時計があるの。通称、ラブ・ウォッチって言ってね、その腕時計をして運命の人に会うと、腕時計のアラームが鳴るの」
愛莉は驚いたような顔をした。
「初めて聞きました」
「わたしもなかなか結婚できなくて、悩んでいた時期があって、おばにおしえてもらったの。銀座の〈Y‘s shop〉っていうお店で売ってるわよって」
「倉田さん、買ったんですか」
「うん。買ったわよ」
「それで鳴ったんですか、そのラブ・ウオッチ。運命の人に出逢ったときに」
「鳴ったの。それがきっかけで、その男性とつきあうようになって。その男性が今のだんなよ」
「すごーい」
愛莉は大きく目を見開いた。
「胡散臭いって思われるから誰にも言ったことがなかったんだけど、嘉川さん、ほんとに辛そうだから、言っちゃった。ねぇ、試すだけでも、使ってみたら」
愛莉の暗闇だった心に一筋の光が見えてきた。
「ラブ・ウォッチ、売ってる店、教えてもらえますか!」
愛莉は力強く言った。
愛莉はもう失恋するのはごめんだった。
江茉の言うように試すだけでも使ってみたい。いえ、絶対に運命の相手に今度こそ出逢いたい。
運命の人だと思っていた人にふられた直後に、「近いうちに運命の人に会える」と未華に言われ、今こうして「運命の人を発見できるラブ・ウォッチ」の話しがタイミングよく出てきた。
ということは、愛莉は未華の占いを信じてもよいような気がしてきた。
愛莉は祈る気持ちで、江茉がおしえてくれたラブ・ウォッチを売っている店〈Y‘s shop〉へ仕事が休みの日、さっそく赴いた。
会社で仕事中にぼんやりすることが多くなり、上司にしかられたりした。
会社の同じ部署の先輩、倉田江茉が心配して声をかけてくれて、いっしょにランチをすることになった。
江茉は28歳の愛莉よりも一回り年齢が上で、さっぱりした性格の、世話焼きタイプの女性だ。
江茉がランチのスープを一口すすってから言った。
「嘉川さん、なにかあった? 最近、やせたでしょう」
愛莉がサンドウィッチを口に運ぶ手をとめてこたえた。
「失恋しちゃって、あんまり食べられなくて」
「それはたいへんね。仕事も集中できてないんじゃない?」
「運命の人だと思ってた人に、ふられちゃったから、気が動転していて」
「でも、むりしてでも食べなきゃ。やってけないわよ」
愛莉はサンドウィッチを目の前の皿に戻してうつむいた。
「今回はもう、一生立ち直れないような気がするんですよね」
江茉は少し考えてから前かがみになって小声で言った。
「大きな声じゃ言えないけど、それだったら、おすすめのものがあるわよ」
「なんですか、おすすめのものって」
愛莉は顔をあげた。
「運命の人を発見できる腕時計があるの。通称、ラブ・ウォッチって言ってね、その腕時計をして運命の人に会うと、腕時計のアラームが鳴るの」
愛莉は驚いたような顔をした。
「初めて聞きました」
「わたしもなかなか結婚できなくて、悩んでいた時期があって、おばにおしえてもらったの。銀座の〈Y‘s shop〉っていうお店で売ってるわよって」
「倉田さん、買ったんですか」
「うん。買ったわよ」
「それで鳴ったんですか、そのラブ・ウオッチ。運命の人に出逢ったときに」
「鳴ったの。それがきっかけで、その男性とつきあうようになって。その男性が今のだんなよ」
「すごーい」
愛莉は大きく目を見開いた。
「胡散臭いって思われるから誰にも言ったことがなかったんだけど、嘉川さん、ほんとに辛そうだから、言っちゃった。ねぇ、試すだけでも、使ってみたら」
愛莉の暗闇だった心に一筋の光が見えてきた。
「ラブ・ウォッチ、売ってる店、教えてもらえますか!」
愛莉は力強く言った。
愛莉はもう失恋するのはごめんだった。
江茉の言うように試すだけでも使ってみたい。いえ、絶対に運命の相手に今度こそ出逢いたい。
運命の人だと思っていた人にふられた直後に、「近いうちに運命の人に会える」と未華に言われ、今こうして「運命の人を発見できるラブ・ウォッチ」の話しがタイミングよく出てきた。
ということは、愛莉は未華の占いを信じてもよいような気がしてきた。
愛莉は祈る気持ちで、江茉がおしえてくれたラブ・ウォッチを売っている店〈Y‘s shop〉へ仕事が休みの日、さっそく赴いた。
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