ラブ・ウォッチ

ミユー

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愛莉はラブ・ウォッチを買うと、その場で今までしていた腕時計をはずし、ラブ・ウォッチに変えた。
〈Y’s shop〉の店員に言われたとおり、その日から、お風呂に入るときと寝るとき以外は、手首にラブ・ウォッチをして一日中過ごした。
けれど、職場でも街でも合コンへ行っても、どんな男性を目の前にしても、ラブ・ウォッチのアラームは鳴ることなく一か月が過ぎた。

未華は「近いうち」に運命の人と会えると言っていたけれど、それは間違いなのだろうか。
ラブ・ウォッチって本当に運命の人を発見できるのかな。
愛莉が疑いの念を持ち始めたちょうどその頃、高校生のときの同級生、柊木冴絵ひいらぎさえから愛莉に連絡が来た。

「紅葉の時期だし、山にある温泉に車で行かない?」

ということだった。

冴絵は愛莉が失恋したことを知っている友達のひとりで、愛莉のことをとても心配してくれている。
冴絵は彼氏がとぎれたことがない恋愛体質の女性で、愛莉が失恋したことを電話で告げたときも、

「失恋したら、むりしてでも、好きな人を作らなきゃだめよ~。恋愛してないと、毎日が楽しくないじゃない!」

と言って、愛莉を元気づけた。

冴絵にはラブ・ウォッチのことは言っていない。
江茉にも〈Y’s shop〉の店員からも、神秘性がなくなるから、できれば誰にもラブ・ウォッチのことは言わないほうがいいと言われているからだ。

冴絵は車の運転ができるのでドライブができるし、気分転換もしたかったので、愛莉はすぐに冴絵の誘いにのった。
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