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聖女

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神殿へのお祈りの儀式が終わると、私はキーファに手を取られ、キーファの部屋へと連れて行かれる。

「キーファ、またするの?」
「当たり前でしょ? これも、聖女の一つの仕事だからね」

私は先ほど、聖女らしい白のローブを着て、神殿の真ん中にある、魂の泉で祈った。
泉は光輝き、周りで見守っていた他の聖職達がどよめいていた。

「素晴らしい!」
「なんと、神々しい光なんだ」
「アリス様をアルファード殿下に渡すのはやめましょう」
「そうだな。もったいない」
「しかし、少し前のアリス様はこんなに光輝いてませんでしたのに」
「きっと、キーファ様と」
「なるほど!」

なるほど!じゃねー。
納得するんじゃないっ。

「アリス様、どうかキーファ様との御子を授かって下さい」
「えぇ、それは、ちょっと……」
「キーファ様の何が嫌なんですか? 権力、地位、名誉、金、容姿、全てあるじゃありませんか」
「ですね。でも、好きな人は殿下なんです。ごめんなさい」

私は皆の前で正直にこたえた。

「アリス様を困らせるな。殿下と結婚しても構わない。ただ、こちらにも協力してほしいだけだ」

キーファが私を見る。
目が「承諾しろ」と訴える。

「わかりました。協力します」

私がそう言うなり、キーファは私を祭壇に連れて行く。
他の神官達が私とキーファの手を赤いリボンでグルグル巻にして、聖書に手を置かせる。

え?
ちょっと、これは何なのよっ?
まるで、これは……。

「大神官キーファ、汝はアリスを妻にすると誓いますか?」
「誓います」

や、やっぱり!
今、私は結婚式してるよね?!

私はあまりの展開に唖然としていた。

「聖女アリス、汝はキーファを夫にすると誓いますか?」

誓うわけないだろっ!
何だよ、このトンデモ展開は!?

「アリス、誓いますって言って」
キーファが私を小突く。

「私は協力するとは言ったけど、結婚するなんて言ってないわよ」
「結婚しないと子どもが可哀想だろ?」

ウッ、確かに。
で、でも心の準備が……。

「誓いますって。さっさと次いって」
「ちょっ、キーファ! ンンッ」
私はキーファに強引にキスをされると、結婚指輪を薬指にグリグリ入れられる。

「殿下の婚約指輪もしてるけど、まぁ、いいよね」
「いや、訳わかんないよ。これって重婚だよね? 法律違反じゃん」
「ジュウコン? 何それ? 多妻多夫だよ。好きな人となら何人でも結婚出来るよ」


マジかっ?!

「私はキーファの何番目の妻なのよ!」
「三人目だよ」

それを先に教えてよ。

「でも、アリスが嫌なら二人と離婚する」
「しなくていいよ」
「いや、アリスの顔が嫌そうにしてるから、離婚して、妻は君だけにする」
「だから、いいってば…ちょっ」
キーファは私の手首を掴むと、キーファの部屋に連れて行かれる。

部屋につくなり、ソファに手をつかされ後ろからキーファが入ってくる。

「アーーーッ、キーファ! ちょっ、アアアアッ、ま、待って、イイッ」
「夫婦になったから初夜だよ。エロイーズ、愛してる」

初めてでもなければ、夜でもない。
まるで盛りがついた思春期の子どもみたいだ。

「キーファ、あなたをいくつなのぉ、アアアアッ、ハァハァ、アッ」
「18だよ。アアッ、イキそう」

キーファは中に射精をする。

あ、うん。
めちゃくちゃやりたい年頃だね。

「けど、俺、愛のある家庭がほしい。もう、仕事で好きでもない女を抱くなんて嫌だ!」
「キ、キーファ?」

急に子どもっぽくなる。
その態度に私は戸惑う。

キーファは私を抱きかかえるとベッドに寝かせた。

「エロイーズ、頼むから俺のそばにいて。助けてよ。もう、大神官なんてやりたくない」

キーファが泣きながら、私に抱きつく。
体が震えていた。
そこには普通の18歳の青年しかいなかった。

「キーファ、辛かったね」
成人してるとはいえ、18はまだまだ未熟だ。



「エロイーズ、さっきは強がって、殿下と結婚していいって言ったけど、本当はしてほしくない。お願いだから、俺とずっといて」


バンッ!


いきなりドアが勢いよく開く。
勢いありすぎて、扉全体がバタンと倒れる。

そこには白髪でドス黒い目をしたアルファードがいた。

「ふざけんなっ! 誰がテメェにエロイーズをやるかよっ」

アルファードが何か呪文らしきモノを唱えると、黒いモヤが私にまとわりつく。

「はぁあ。あとちょっとでエロイーズが手に入れるところだったのに。殿下、邪魔しないで下さいよ」
キーファが黒いモヤに手をかざすと、手から光が輝き、モヤが消えていく。

キーファはそのままアルファードに光の玊を投げつける。

「ぎゃああああああ」
アルファードが全身光に焼かれ悶え苦しんでいた。

「アルファード!」
私はアルファードのところに行こうとすると、体が動かなくなった。

「酷いなぁ。さっき、結婚したばかりなのに、もう浮気するんだ。さっきも言ったろ? 俺はエロイーズしかいないって。離れるなんて許さない」

キーファはさらにアルファードに光の玊を投げた。
アルファードは痛みでのたうち回る。

「キーファ、やめてっ! わかったから、私、あなたとずっといるから、アルファードを苦しめないでっ」
「ホント?」
「ほ、ホントだから!」
「じゃあさ、その婚約指輪外して、アルファードに婚約破棄したいって言えよ!」
「わかった。でも、この婚約指輪はアリスのよ?」
「いいから。俺に誠意を見せて」

私は頷くと、指輪を倒れているアルファードの手に渡す。

「エ、エロイーズ、俺は…」

「アルファード、ごめんなさい。あなたと結婚出来ない。エロイーズのお腹の中にいる子ども、頼みます」

私は泣きながらアルファードに唇にキスをする。
耳元で「あなただけ愛してる」と囁く。
アルファードの目が見開く。 

私は頷くと、キーファの元に行く。

「エロイーズ、アルファードになんて言ったんだ?」

「さよならって告げたわ。ねぇ、約束は守ってよ?」

キーファは頷くと、パチンと指をならす。
アルファードが消えた。

「王宮に帰したよ。さぁ、さっきの続きをしようね」
キーファの声にゾッとした。
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