上 下
14 / 27

しおりを挟む
コイツはエロイーズじゃない!
中身はアリスだ。

コノヤロー、エロイーズと魂の交換の術を使いやがった。

「てめぇ、エロイーズはどこだっ!!」
「あらぁ、目の前にいるじゃない、ダーリン。目が腐った?」
「お前は、魂が腐りきってるよな! さっさと、エロイーズと魂の交換をしろっ」
「嫌よ。あんたさぁ、私の魂の炎、消したろ?」

!!?
な、なぜ知ってる?!

「何で知ってる?って顔だね。あたしは、異世界から来たんだよ? 何でも知ってる」
エロイーズの姿をしたアリスが勝ち誇るような顔をする。
同じエロイーズの体なのに、振る舞い一つで別人のようだ。

以前のエロイーズがこんな感じだった。
だから、俺は婚約破棄をした。
中身がアリスなら、また婚約破棄するだろう。

「そうそう。婚約破棄なんて考えないことね。お腹の中にあんたの子どもがいるからね」

!?!?

な、なんだって?
俺の子どもが?

「心当たりあるでしょ? 父親になるんだから、エロイーズの体、傷つけちゃダメだよ?」
アリスがニタリと笑う。

「今すぐ、エロイーズと入れ替われ!」

魂の交換は術をかけた本人しか戻れない厄介な呪文だ。

エロイーズの体が死んだ場合、エロイーズの魂は戻れなくなる。
だが、アリスの魂はアリスの体に戻れる。

エロイーズの魂は追い出され、消滅してしまう。

だから、俺はエロイーズの体を傷つけられない。

子どもを妊娠しているとなると、なおさらのことだ。

「はぁああ? あんたさ、今、この状況わかってる?」
アリスは窓を開けると、身を乗り出した。
俺の部屋は三階にある。
落ちたらただじゃすまない。

「おいっ! やめろっ!! ふざけんなっ!」
俺はエロイーズの体をしがみつく。

「あー、面白い」
アリスはお腹を抱え笑い出した。

一時でも、こんな女に惹かれた自分を殴りたい。

エロイーズを抱きしめる。
違う。
コイツはアリスだ。

「ねぇ、アルファード様ぁ、キスしたいですぅ」

エロイーズの上目遣いに思わずキスしたくなる。
けど、エロイーズほど惹かれない。
体は同じなのに、別人を抱いているようだ。


「つまんない。アリスのときはキスしてくれたのにねぇ」

今では黒歴史になりつつある。
アリスになぜ惹かれたのかさえ、わからない。

「頼むから、エロイーズと入れ替わってくれ」

「じゃあさ、まずは私の体の呪いを解いて」

「わかった」

「それから、エロイーズと婚約破棄して」
「……」

「しないなら、エロイーズの体がどうなってもいいの?」

「…わかった。婚約破棄する」 



エロイーズ、ごめん。
でも、君と子どもさえ無事ならいい。

俺は、書斎の引き出しから婚約破棄の処分書を破棄した。 


「呪いを解くから、エロイーズの部屋に戻れ。おかしなことしたらアリスの体を殺すからなっ!」

「オー、怖いパパでちゅねぇ」

アリスはエロイーズのお腹を撫でる。

お前が触るんじゃねぇ! 
 
「お腹空いたから、メイドに食べ物を用意させて」
「わかった」

クソッ。
アリスの行動一つ一つがムカつく。

さっさとやることをやって、エロイーズに逢おう。  


俺は再び門をくぐり、中に入り、アリスの魂のロウソクを呼び出す。 


!!!!!!?!

な、なんだ、これは?!

ロウソクの炎は通常、青だ。
魂の色が青だからだ。 
赤色は寿命がつきかけている。

しかし、アリスのロウソクには光輝く炎が灯されていた。
キラキラ光っていて、吸い込まれそうだった。

もしかして…。
俺はエロイーズのロウソクも呼び出す。

エロイーズのロウソクの炎も同じように光に包まれていた。

初めて見る光景に俺は戸惑った。
けれども、不思議と怖くない。 
むしろ、ずっと見ていたい。

エロイーズは魂が清らかで綺麗なんだろう。
たぶん、俺の闇の力さえ吹き飛ばせるくらいの聖の魔力が高いのだろう。

エロイーズがアリスでないのが不思議でなら…な…い。

俺は慌てて地獄から戻る。

大神官なら、とっくに気づいているはずだ。
アリスよりエロイーズの魂の方が綺麗で聖の力が強いことを。

大神官の役目の一つに、異世界からの聖女との子どもを産むことだ。
キーファは気にいった女がいたら、見境なくする奴だ。
しかも、飽きたら捨てるクズ野郎だ。

エロイーズが俺の婚約者なんて関係ない。
妙な胸騒ぎがする。

エロイーズ、頼むからキーファに惑わされないでくれ。
俺は、王宮の庭にある馬小屋に行き、一番速く走る馬を小屋から出すと神殿に向かった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

離縁の脅威、恐怖の日々

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:271

異世界の《最強》ポリスウーマン

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

悪魔と天使は結ばれない

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

男は音楽に合わせて新たな主の元へと運ばれる

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

模範的ラーメンファン

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

僕は僕に恋をする。

ホラー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:0

処理中です...