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愛と狂気
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「魔王。どうか世界を滅ぼすのはやめてくれ」
目の前の勇者は、私を見てそう言ったのだ。
勇者……。コイツはとても美しい男だった。少し癖のあるプラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳。
彫りが深く、鼻筋が通っている。形の良い唇に程良く筋肉のついた肉体。すっと伸ばされた背筋。
きっと、世の中の女はコイツを見て全員もれなく股を濡らすだろう。それほどの色男だったのだ。
馬鹿なことを言うなと一笑してやろうと思ったが、コイツがあまりにも美しいので、私は笑うのをやめた。
ここは魔王城で、私は魔族を総べる王、魔王だ。
人間界を魔獣に襲わせたのが半年前。
人間は慌てふためき、世界を救うために勇者を探した。そうして選ばれたのがこの男だ。
部下の情報によると、この男はもの凄く強いらしい。一撃でドラゴンを討てるとか。
そんな強者が仲間も集めず一人で魔王城にやって来て、私に懇願したのだ。
戦うのでもなくなじるのでもなく、懇願だ。
正直、変わった男だな思った。
私は玉座に座り、ふむ……と唸った。
「お前……。私にそんな戯言を申すためにここに来たのか?」
「そうだ」
「戦って勝利し、人間を救おうとは思わぬのか? お前、勇者だろう?」
勇者はまっすぐな瞳で私を見つめてから、フルフルと首を振った。
「戦いは、なにも生まない。それより俺は、あなたと話がしたい。人種が違えども俺たちには言葉がある。言葉があれば、分かり合えると俺は信じている」
戦うことを生きる目的とする勇者とは思えぬ言葉だな。私は驚きのあまり目を見開いた。
コイツは……。馬鹿だ。
だが、なんという澄み切った瞳とまっすぐな心を持った男なのだ。
私はその言葉を聞いて、勇者のことが気に入った。
だから、勇者の考えに乗ってやることにした。
「分かった。では、私の要求に応えられれば人間界は襲わないでやろう」
途端に勇者の顔がぱっと明るくなった。
「ありがとう、魔王! お前なら分かってくれると思っていたのだ。さぁ、要求を言え! この命か? ならば、すぐに自決しよう」
人間界を救うためなら、自分の命すら絶つのか。いさぎよい男だ。ますます気に入った。
私はニンマリと微笑んでから口を開いた。
「ふふ……。自決などしなくていい。要求とはな、お前の身体が欲しい」
「身体?」
「そうだ。その美しい身体だ。その身体で私の部下たちを癒してくれ」
「つまり……?」
私は笑い出したくなるのを必死にこらえた。
「私の部下全員と、交わりをしてもらう。部下は百人ではないぞ? 何千人もいる。そいつら全員に犯されろ。そうしたら、人間界は襲わないでやろう」
ふざけるなっ! と怒鳴るかと思ったが、勇者は黙り込んだ。そして逡巡したのち、またあの澄んだ目で私を見つめた。
「分かった。それで人間を襲わないと約束してくれるなら安いものだ。その要求、受け入れよう」
途端に、周りを取り囲んでいた部下たちが騒ぎ出した。みな、美しい肉を抱けると興奮しているのだ。
部屋の中は、異様な熱気に包まれた。
肝の据わった勇者だ。怖くはないのだろうか? と思ってよく観察したら、少しだけ右手が震えていた。
ふふ……。本当は怖いのだな?
だが、それでも人間を守るため、必死に平静を装っているのだろう。
素晴らしい……。それこそ勇者だ。
私はまたこの勇者への好感度が上がった。
それから舌舐めずりをしている部下たちに、勇者を地下の牢屋へ連れてゆくよう命じた。
そして、牢屋に入れたら好きなだけ犯していいとも。
部下たちは歓喜の雄叫びをあげながら、勇者を連行した。
ふふ……。あとで見に行ってみよう。
言葉で世界を救えると吐かした甘ちゃんが、どんな表情をするのか楽しみだ。
※※※※
「……っ! ……ふっ」
それから数刻後、私は地下の牢屋に向かった。
そこでは部下たちに押さえ付けられ、息も絶え絶えに犯されている勇者がいた。
今犯しているのはゴブリンの群れか。
勇者の鎧は剥ぎ取られ、全裸にされていた。
四つん這いにされ、口淫をさせられている。更に、後孔には二匹のゴブリンが競い合って男性器を突き刺していた。二輪挿と言うやつだな。初日にこれはキツイだろうなと苦笑してしまった。
勇者の尻は裂けて血が滲んでいる。快感など微塵も感じていないだろう。可哀想になぁ……。
私は同情しつつも笑いが止まらなかった。
あまりにも気分が良かったので、その日は夜になるまでこの悪趣味な強姦を見学した。
「夜は寝かせてやれ。死んだら困るからな」
私の言葉を聞いて部下たちはうなずき、牢屋を出て行った。
熱気に包まれていた牢屋が、部下たちがいなくなったことでひんやりとした空気になった。
私は懐に仕舞っていたナイフを、疲れ切って死んだように倒れ込んでいる勇者のそばに置いた。
辛いなら、自決してもいいぞ? と言う私の優しさだ。何も言わずともきっと勇者には伝わっただろう。だが、尻から血を流し苦痛の表情を浮かべていた勇者は、ナイフを手に取ろうとしなかった。
私は満足げに微笑み、牢屋を出て見張りの部下へ勇者に食事を与えるよう指示を出したのだった。
※※※※
それからも、強姦は続いた。
勇者は毎日変わるがわる私の部下たちに犯されている。
途中、あまりの痛みに泣き出すことがあった。もしくは、あまりの快感に悔しそうに喘ぐこともあった。
だが、勇者はナイフを取らなかった。
いつも必死に痛みや快感に耐え、歯を食いしばっているのだ。
私は飽きもせず、そんな勇者を毎日観察していた。
そして、夜になるとこう囁くのだ。
「お前、辛いんじゃないか? そろそろ死にたくなってきたのではないか?」
勇者は痩せこけた顔でフルフルと首を振る。
「俺が死んだら人間は滅ぶ。大丈夫だ。俺はまだやれる。この命はみんなのためにあるのだ」
「……」
なんだろう?
最初はその言葉を聞くと楽しくてたまらなかった。
だけど、最近はイライラする。これほどのことをしているのに、なぜ私を恨まんのだ?
なぜ、ここにいない者のことばかり考える?
お前をこんな目に合わせているのは私なのだぞ? お前は人間でなく、私に注意を向けるべきなのだ。
ムカムカして、私は勇者の頭を踏み付けた。
「人間ではなく、私を見ろ! 私に許しを乞え!」
勇者は澄んだ目で私を見つめた。
「許しを乞えば、人間を助けてくれるのか? ならば、いくらでも頭を下げよう」
「……!」
そのとき、私は怒りのあまりコイツの頭を踏み潰しそうになってしまった。
私は気が付いたのだ。
――コイツは、私を見ていない。それどころか、ここにいない人間のことばかり考えている……と。
こんな屈辱は初めてだった。
悔しくて苦しくて、息が止まりそうだった。
なんとか呼吸を整えて、牢屋を出る。
だが、頭の中は勇者のことでいっぱいだった。
どうしたら私のことを見る……! どうしたら……。
苛立ちからガリガリと爪を噛み、肉が切れて流血した。それでもこの腹立たしさはおさまらない。
どうしたら……どうしたら……!
そこでふ……とある考えがよぎった。
「そうか……。そうすれば良かったのだ……」
私はニヤリと微笑んだ。
※※※※
あくる日。
私は再び牢屋に向かった。
牢屋の中は、すえたような臭いがする。それと、部下たちの強烈な性臭。
勇者は、今日も部下たちに犯されていた。
私はそんな部下たちをちらりと見やる。
「お前ら、退け」
部下たちはすぐに私の言葉に従った。
取り残された勇者は、フーフー苦しそうな息を吐きながら私を見た。
「どう……したのだ? 魔王」
「少し話がしたくてな」
私は倒れ込んでいる勇者の前で膝をついた。それから優しく頭を撫でてやる。
「勇者よ。今までよく頑張ったな」
「え?」
「もうこんなことはしなくて良いのだぞ」
その言葉に、勇者の目が大きく見開かれた。
許された……と思ったのだろう。
私が勇者の姿に心を動かされて、人間界を滅ぼすのをやめたと思ったのだろう。
勇者は今までの辛く苦しい日々を思い出し、ポロポロ涙をこぼした。
「ありがとう……! ありがとう、魔王! これで世界は救われた!」
そんな幸せそうな勇者を見ていたら、私は性的に興奮してきた。
こんな嬉しそうな勇者が、失意のどん底に落ちたらどんな表情をするのか想像したら、たまらない気持ちになってきたのだ。
私はニッコリ微笑み、最悪な言葉を口にした。
「もう人間界は滅ぼしたから、こんなことをしても意味はないぞ?」
「え?」
勇者は私の言葉の意味が分からなかったのか、キョトンと目を瞬かせている。
私はもう一度、今度はゆっくり話して聞かせた。
「だから、人間界はもう滅んだと言っている」
「ど、どうして……? だって魔王は、俺が犠牲になれば人間界には手を出さないと……」
私はニンマリと笑い、勇者の頰を撫でた。
「お前が悪いのだ……。二言目には人間人間言いおって……。お前の目の前にいるのは誰だ? 人間ではなく、この私だ。お前は私だけ見ていれば良かったのだ……」
「……」
人は絶望すると、泣くのでもなく怒るのでもなく、無表情になるのだな、と、このとき初めて知った。
私はなおも優しく勇者の頰を撫でる。
「残念だったな、勇者。お前が命をかけて守ろうとしたものは、もう無い。私が滅ぼした」
私たちの言葉を聞いていた部下たちは、我慢できなかったようで楽しそうに哄笑した。
その笑い声を聞いても、勇者は無表情だった。
私は立ち上がり、部下たちに声をかける。
「行くぞ。勇者を一人にしてやれ」
部下たちはうなずき、私と一緒に牢屋を出たのだった。
※※※※
それから数刻後。
牢屋を見に行ったが、中はもぬけの殻だった。
最初に渡したナイフはそのまま牢屋の中に置いてあった。
勇者め。
逃げたな。
私は興奮のため、ブルブルと身震いした。
勇者よ。
次に会うとき、お前は私を殺そうとするだろう。
それでいいのだ。
お前の殺意に染まった瞳は、もう私しか映していないのだから。
私はお前の特別になりたかったのだ。
人間を滅ぼすことでそれは叶った。
ああ、次に会うときが待ち遠しい。
私はな、次に会ったときこそお前を抱こうと思うのだ。
人間を滅ぼした私に抱かれて、お前はどんな反応をするのだろう?
今から楽しみでたまらんよ。
目の前の勇者は、私を見てそう言ったのだ。
勇者……。コイツはとても美しい男だった。少し癖のあるプラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳。
彫りが深く、鼻筋が通っている。形の良い唇に程良く筋肉のついた肉体。すっと伸ばされた背筋。
きっと、世の中の女はコイツを見て全員もれなく股を濡らすだろう。それほどの色男だったのだ。
馬鹿なことを言うなと一笑してやろうと思ったが、コイツがあまりにも美しいので、私は笑うのをやめた。
ここは魔王城で、私は魔族を総べる王、魔王だ。
人間界を魔獣に襲わせたのが半年前。
人間は慌てふためき、世界を救うために勇者を探した。そうして選ばれたのがこの男だ。
部下の情報によると、この男はもの凄く強いらしい。一撃でドラゴンを討てるとか。
そんな強者が仲間も集めず一人で魔王城にやって来て、私に懇願したのだ。
戦うのでもなくなじるのでもなく、懇願だ。
正直、変わった男だな思った。
私は玉座に座り、ふむ……と唸った。
「お前……。私にそんな戯言を申すためにここに来たのか?」
「そうだ」
「戦って勝利し、人間を救おうとは思わぬのか? お前、勇者だろう?」
勇者はまっすぐな瞳で私を見つめてから、フルフルと首を振った。
「戦いは、なにも生まない。それより俺は、あなたと話がしたい。人種が違えども俺たちには言葉がある。言葉があれば、分かり合えると俺は信じている」
戦うことを生きる目的とする勇者とは思えぬ言葉だな。私は驚きのあまり目を見開いた。
コイツは……。馬鹿だ。
だが、なんという澄み切った瞳とまっすぐな心を持った男なのだ。
私はその言葉を聞いて、勇者のことが気に入った。
だから、勇者の考えに乗ってやることにした。
「分かった。では、私の要求に応えられれば人間界は襲わないでやろう」
途端に勇者の顔がぱっと明るくなった。
「ありがとう、魔王! お前なら分かってくれると思っていたのだ。さぁ、要求を言え! この命か? ならば、すぐに自決しよう」
人間界を救うためなら、自分の命すら絶つのか。いさぎよい男だ。ますます気に入った。
私はニンマリと微笑んでから口を開いた。
「ふふ……。自決などしなくていい。要求とはな、お前の身体が欲しい」
「身体?」
「そうだ。その美しい身体だ。その身体で私の部下たちを癒してくれ」
「つまり……?」
私は笑い出したくなるのを必死にこらえた。
「私の部下全員と、交わりをしてもらう。部下は百人ではないぞ? 何千人もいる。そいつら全員に犯されろ。そうしたら、人間界は襲わないでやろう」
ふざけるなっ! と怒鳴るかと思ったが、勇者は黙り込んだ。そして逡巡したのち、またあの澄んだ目で私を見つめた。
「分かった。それで人間を襲わないと約束してくれるなら安いものだ。その要求、受け入れよう」
途端に、周りを取り囲んでいた部下たちが騒ぎ出した。みな、美しい肉を抱けると興奮しているのだ。
部屋の中は、異様な熱気に包まれた。
肝の据わった勇者だ。怖くはないのだろうか? と思ってよく観察したら、少しだけ右手が震えていた。
ふふ……。本当は怖いのだな?
だが、それでも人間を守るため、必死に平静を装っているのだろう。
素晴らしい……。それこそ勇者だ。
私はまたこの勇者への好感度が上がった。
それから舌舐めずりをしている部下たちに、勇者を地下の牢屋へ連れてゆくよう命じた。
そして、牢屋に入れたら好きなだけ犯していいとも。
部下たちは歓喜の雄叫びをあげながら、勇者を連行した。
ふふ……。あとで見に行ってみよう。
言葉で世界を救えると吐かした甘ちゃんが、どんな表情をするのか楽しみだ。
※※※※
「……っ! ……ふっ」
それから数刻後、私は地下の牢屋に向かった。
そこでは部下たちに押さえ付けられ、息も絶え絶えに犯されている勇者がいた。
今犯しているのはゴブリンの群れか。
勇者の鎧は剥ぎ取られ、全裸にされていた。
四つん這いにされ、口淫をさせられている。更に、後孔には二匹のゴブリンが競い合って男性器を突き刺していた。二輪挿と言うやつだな。初日にこれはキツイだろうなと苦笑してしまった。
勇者の尻は裂けて血が滲んでいる。快感など微塵も感じていないだろう。可哀想になぁ……。
私は同情しつつも笑いが止まらなかった。
あまりにも気分が良かったので、その日は夜になるまでこの悪趣味な強姦を見学した。
「夜は寝かせてやれ。死んだら困るからな」
私の言葉を聞いて部下たちはうなずき、牢屋を出て行った。
熱気に包まれていた牢屋が、部下たちがいなくなったことでひんやりとした空気になった。
私は懐に仕舞っていたナイフを、疲れ切って死んだように倒れ込んでいる勇者のそばに置いた。
辛いなら、自決してもいいぞ? と言う私の優しさだ。何も言わずともきっと勇者には伝わっただろう。だが、尻から血を流し苦痛の表情を浮かべていた勇者は、ナイフを手に取ろうとしなかった。
私は満足げに微笑み、牢屋を出て見張りの部下へ勇者に食事を与えるよう指示を出したのだった。
※※※※
それからも、強姦は続いた。
勇者は毎日変わるがわる私の部下たちに犯されている。
途中、あまりの痛みに泣き出すことがあった。もしくは、あまりの快感に悔しそうに喘ぐこともあった。
だが、勇者はナイフを取らなかった。
いつも必死に痛みや快感に耐え、歯を食いしばっているのだ。
私は飽きもせず、そんな勇者を毎日観察していた。
そして、夜になるとこう囁くのだ。
「お前、辛いんじゃないか? そろそろ死にたくなってきたのではないか?」
勇者は痩せこけた顔でフルフルと首を振る。
「俺が死んだら人間は滅ぶ。大丈夫だ。俺はまだやれる。この命はみんなのためにあるのだ」
「……」
なんだろう?
最初はその言葉を聞くと楽しくてたまらなかった。
だけど、最近はイライラする。これほどのことをしているのに、なぜ私を恨まんのだ?
なぜ、ここにいない者のことばかり考える?
お前をこんな目に合わせているのは私なのだぞ? お前は人間でなく、私に注意を向けるべきなのだ。
ムカムカして、私は勇者の頭を踏み付けた。
「人間ではなく、私を見ろ! 私に許しを乞え!」
勇者は澄んだ目で私を見つめた。
「許しを乞えば、人間を助けてくれるのか? ならば、いくらでも頭を下げよう」
「……!」
そのとき、私は怒りのあまりコイツの頭を踏み潰しそうになってしまった。
私は気が付いたのだ。
――コイツは、私を見ていない。それどころか、ここにいない人間のことばかり考えている……と。
こんな屈辱は初めてだった。
悔しくて苦しくて、息が止まりそうだった。
なんとか呼吸を整えて、牢屋を出る。
だが、頭の中は勇者のことでいっぱいだった。
どうしたら私のことを見る……! どうしたら……。
苛立ちからガリガリと爪を噛み、肉が切れて流血した。それでもこの腹立たしさはおさまらない。
どうしたら……どうしたら……!
そこでふ……とある考えがよぎった。
「そうか……。そうすれば良かったのだ……」
私はニヤリと微笑んだ。
※※※※
あくる日。
私は再び牢屋に向かった。
牢屋の中は、すえたような臭いがする。それと、部下たちの強烈な性臭。
勇者は、今日も部下たちに犯されていた。
私はそんな部下たちをちらりと見やる。
「お前ら、退け」
部下たちはすぐに私の言葉に従った。
取り残された勇者は、フーフー苦しそうな息を吐きながら私を見た。
「どう……したのだ? 魔王」
「少し話がしたくてな」
私は倒れ込んでいる勇者の前で膝をついた。それから優しく頭を撫でてやる。
「勇者よ。今までよく頑張ったな」
「え?」
「もうこんなことはしなくて良いのだぞ」
その言葉に、勇者の目が大きく見開かれた。
許された……と思ったのだろう。
私が勇者の姿に心を動かされて、人間界を滅ぼすのをやめたと思ったのだろう。
勇者は今までの辛く苦しい日々を思い出し、ポロポロ涙をこぼした。
「ありがとう……! ありがとう、魔王! これで世界は救われた!」
そんな幸せそうな勇者を見ていたら、私は性的に興奮してきた。
こんな嬉しそうな勇者が、失意のどん底に落ちたらどんな表情をするのか想像したら、たまらない気持ちになってきたのだ。
私はニッコリ微笑み、最悪な言葉を口にした。
「もう人間界は滅ぼしたから、こんなことをしても意味はないぞ?」
「え?」
勇者は私の言葉の意味が分からなかったのか、キョトンと目を瞬かせている。
私はもう一度、今度はゆっくり話して聞かせた。
「だから、人間界はもう滅んだと言っている」
「ど、どうして……? だって魔王は、俺が犠牲になれば人間界には手を出さないと……」
私はニンマリと笑い、勇者の頰を撫でた。
「お前が悪いのだ……。二言目には人間人間言いおって……。お前の目の前にいるのは誰だ? 人間ではなく、この私だ。お前は私だけ見ていれば良かったのだ……」
「……」
人は絶望すると、泣くのでもなく怒るのでもなく、無表情になるのだな、と、このとき初めて知った。
私はなおも優しく勇者の頰を撫でる。
「残念だったな、勇者。お前が命をかけて守ろうとしたものは、もう無い。私が滅ぼした」
私たちの言葉を聞いていた部下たちは、我慢できなかったようで楽しそうに哄笑した。
その笑い声を聞いても、勇者は無表情だった。
私は立ち上がり、部下たちに声をかける。
「行くぞ。勇者を一人にしてやれ」
部下たちはうなずき、私と一緒に牢屋を出たのだった。
※※※※
それから数刻後。
牢屋を見に行ったが、中はもぬけの殻だった。
最初に渡したナイフはそのまま牢屋の中に置いてあった。
勇者め。
逃げたな。
私は興奮のため、ブルブルと身震いした。
勇者よ。
次に会うとき、お前は私を殺そうとするだろう。
それでいいのだ。
お前の殺意に染まった瞳は、もう私しか映していないのだから。
私はお前の特別になりたかったのだ。
人間を滅ぼすことでそれは叶った。
ああ、次に会うときが待ち遠しい。
私はな、次に会ったときこそお前を抱こうと思うのだ。
人間を滅ぼした私に抱かれて、お前はどんな反応をするのだろう?
今から楽しみでたまらんよ。
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