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第三話 これからについて
「マーガルよ……。邪魔なんじゃが……」
ワシはハァーっとため息をつき、手に持っていた包丁をまな板に置いた。
オムライスを作ろうと台所に向かった。そこまではいいのじゃが、なぜかそこにマーガルも着いてきた。
それからワシを背後から抱きしめ、ずっと調理の邪魔をしておるのじゃ。
包丁を持っているので危ない。椅子に座って待ってなさいと言っても、マーガルは聞く耳を持たない。
「お師匠さまを抱き締められるなんて夢みたいだ……」
そう言ってうっとりとワシの後頭部に顔を埋めている。
なにが夢みたいなのかさっぱりじゃが、ワシは昔を思い出して苦笑した。
昔もこやつはよく、ワシの邪魔をしていた。あの頃のマーガルは小さかったので、台所に立つワシの腰にぴったりとくっ付いていたのじゃ。
あの頃から甘えん坊じゃなと思っていたが、それは大人になった今も変わらないらしい。
邪魔くさいが、ワシが気を付ければ良いことか……と考え直し、そのまま料理を続けた。
それにしても、体が軽いのぉ。
ジジイになってからは台所に立つのが億劫でレトルト食品ばかり食べていたが、これからは自炊を再開しよう。シチューにステーキ。それにトマトをたっぷり使ったパスタ。食べたいものはたくさんあるのじゃ。
ワシはこれからの食生活にウキウキと胸を踊らせ、上機嫌でオムライスを作ったのじゃった。
※※※※
「美味しいです! お師匠さま!」
出来上がったオムライスを、マーガルは喜んで食べてくれた。
ワシはマーガルの対面に座り、子供のようにがっつく姿をニコニコと眺めていた。
「それにしても、お師匠さまは百歳でも二十歳でも可愛らしいですね」
マーガルの発言に、ワシはずっこけそうになってしまった。
百歳のときはどこからどう見てもただのジジイじゃったし、今は成人した男じゃ。
可愛くないし、可愛いと言われて喜ぶ男などそうそう居ない。
ワシはゴホンと咳払いしてからマーガルを諌めた。
「男に可愛いなどと言うな。失礼じゃぞ」
「だって本当に可愛いんです。百歳のときはシワシワ可愛いし、今は女の子みたいに可愛いです」
むぅ……。確かにワシは、若い頃おなごに間違えられたことが何度もある。いくらトレーニングをしても筋肉がつかないし、小柄なのでよく大柄な男から声を掛けられていたのじゃ。
腹が立つが、マーガルから見たらおなごのように見えても仕方がない。
何故ならマーガルは、長身で男らしい、立派な体躯をしているからの。
しかもびっくりするぐらい顔が整っておる。
この顔と体に、強さまで備わっているのだ。モテない訳がない。
噂では、マーガルにはファンクラブのようなものがあるらしい。若い娘から巨額の富を持った御婦人など、そのメンバーは多岐にわたるそうじゃ。
それを聞いたとき、さすがはマーガルじゃな! と嬉しく思ったものじゃ。
でも、やっぱり可愛いなどとは言われたくない!
弟子の前では、いつまでもカッコいい師匠でいたいのじゃ。
ワシはギロリとマーガルを睨むと、一喝した。
「ワシを可愛いと言うのは禁止じゃ! ワシはカッコいいのじゃ!」
「えー? カッコよくはないですよー。小さくてきゃわわ! って感じですよ」
そう言ってケラケラ笑い出したので、ワシは本気で憤慨したのじゃった。
※※※※
それからしばらくして、マーガルとこれからのことについて話し合った。
まず、ワシの若返りについて。
人に話したら興味を持たれるし、どうやったら若返るのか必死に聞き出そうとするじゃろう。
簡単に若返るのなら方法を教えても良いが、実際は難しい。薬を作るために、もの凄い労力が掛かるのじゃ。
ならば、余計なことは言わないほうが吉じゃろう。
「じゃあ、お師匠さまが若返ったのは、私たちだけの秘密にしましょう」
「そうじゃの」
「あとは、お師匠さまはどこにお住まいになるか……ですね」
「ここに住めばよかろう?」
「ダメですよ。もし誰かがこの家を訪ねてきたら、おじいちゃんのお師匠さまはどこにいるのか尋ねますよ? そのときお師匠さまは納得のいく説明が出来ますか?」
出来ない……。
家に行ったら、年老いた老人ではなく若者が出てきたのだ。絶対不審に思われる。
「うーむ。どうしようかのぉ……」
「私としては、お師匠さまにはこの家を出ていただき、私の家に住むのがベストだと思います」
マーガルの家か……。
確か、王都にある庭付きの豪邸だと聞いたことがある。
大きな家はどうも気が休まらんが、一から物件を探すのも手間じゃしのぉ……。
マーガルが良いと言うのなら、その厚意に甘えてみるのも手じゃな。
「マーガルはそれで良いのか?」
「もちろんです! お師匠さまが家に来てくださったら、あんなことやこんなこともし放題ですからねっ」
なにがし放題なんじゃろう……?
少しだけ不安になったが、それよりもマーガルの優しさが有難い。
本当に、ワシはなんという出来た弟子を持ったのじゃろう。マーガルには感謝してもしきれない。
ワシは感動で目を潤ませながら、マーガルに頭を下げた。
「礼を言うぞマーガル。では、これからよろしく頼む」
「よし!! お師匠さまと同棲出来る!! よぉーし!!」
マーガルはなぜかふんふんと鼻息が荒い。
そんなにワシと暮らすのが嬉しいのかのぉ?
可愛い子じゃなぁ。
ワシはニッコリ微笑んだのじゃった。
ワシはハァーっとため息をつき、手に持っていた包丁をまな板に置いた。
オムライスを作ろうと台所に向かった。そこまではいいのじゃが、なぜかそこにマーガルも着いてきた。
それからワシを背後から抱きしめ、ずっと調理の邪魔をしておるのじゃ。
包丁を持っているので危ない。椅子に座って待ってなさいと言っても、マーガルは聞く耳を持たない。
「お師匠さまを抱き締められるなんて夢みたいだ……」
そう言ってうっとりとワシの後頭部に顔を埋めている。
なにが夢みたいなのかさっぱりじゃが、ワシは昔を思い出して苦笑した。
昔もこやつはよく、ワシの邪魔をしていた。あの頃のマーガルは小さかったので、台所に立つワシの腰にぴったりとくっ付いていたのじゃ。
あの頃から甘えん坊じゃなと思っていたが、それは大人になった今も変わらないらしい。
邪魔くさいが、ワシが気を付ければ良いことか……と考え直し、そのまま料理を続けた。
それにしても、体が軽いのぉ。
ジジイになってからは台所に立つのが億劫でレトルト食品ばかり食べていたが、これからは自炊を再開しよう。シチューにステーキ。それにトマトをたっぷり使ったパスタ。食べたいものはたくさんあるのじゃ。
ワシはこれからの食生活にウキウキと胸を踊らせ、上機嫌でオムライスを作ったのじゃった。
※※※※
「美味しいです! お師匠さま!」
出来上がったオムライスを、マーガルは喜んで食べてくれた。
ワシはマーガルの対面に座り、子供のようにがっつく姿をニコニコと眺めていた。
「それにしても、お師匠さまは百歳でも二十歳でも可愛らしいですね」
マーガルの発言に、ワシはずっこけそうになってしまった。
百歳のときはどこからどう見てもただのジジイじゃったし、今は成人した男じゃ。
可愛くないし、可愛いと言われて喜ぶ男などそうそう居ない。
ワシはゴホンと咳払いしてからマーガルを諌めた。
「男に可愛いなどと言うな。失礼じゃぞ」
「だって本当に可愛いんです。百歳のときはシワシワ可愛いし、今は女の子みたいに可愛いです」
むぅ……。確かにワシは、若い頃おなごに間違えられたことが何度もある。いくらトレーニングをしても筋肉がつかないし、小柄なのでよく大柄な男から声を掛けられていたのじゃ。
腹が立つが、マーガルから見たらおなごのように見えても仕方がない。
何故ならマーガルは、長身で男らしい、立派な体躯をしているからの。
しかもびっくりするぐらい顔が整っておる。
この顔と体に、強さまで備わっているのだ。モテない訳がない。
噂では、マーガルにはファンクラブのようなものがあるらしい。若い娘から巨額の富を持った御婦人など、そのメンバーは多岐にわたるそうじゃ。
それを聞いたとき、さすがはマーガルじゃな! と嬉しく思ったものじゃ。
でも、やっぱり可愛いなどとは言われたくない!
弟子の前では、いつまでもカッコいい師匠でいたいのじゃ。
ワシはギロリとマーガルを睨むと、一喝した。
「ワシを可愛いと言うのは禁止じゃ! ワシはカッコいいのじゃ!」
「えー? カッコよくはないですよー。小さくてきゃわわ! って感じですよ」
そう言ってケラケラ笑い出したので、ワシは本気で憤慨したのじゃった。
※※※※
それからしばらくして、マーガルとこれからのことについて話し合った。
まず、ワシの若返りについて。
人に話したら興味を持たれるし、どうやったら若返るのか必死に聞き出そうとするじゃろう。
簡単に若返るのなら方法を教えても良いが、実際は難しい。薬を作るために、もの凄い労力が掛かるのじゃ。
ならば、余計なことは言わないほうが吉じゃろう。
「じゃあ、お師匠さまが若返ったのは、私たちだけの秘密にしましょう」
「そうじゃの」
「あとは、お師匠さまはどこにお住まいになるか……ですね」
「ここに住めばよかろう?」
「ダメですよ。もし誰かがこの家を訪ねてきたら、おじいちゃんのお師匠さまはどこにいるのか尋ねますよ? そのときお師匠さまは納得のいく説明が出来ますか?」
出来ない……。
家に行ったら、年老いた老人ではなく若者が出てきたのだ。絶対不審に思われる。
「うーむ。どうしようかのぉ……」
「私としては、お師匠さまにはこの家を出ていただき、私の家に住むのがベストだと思います」
マーガルの家か……。
確か、王都にある庭付きの豪邸だと聞いたことがある。
大きな家はどうも気が休まらんが、一から物件を探すのも手間じゃしのぉ……。
マーガルが良いと言うのなら、その厚意に甘えてみるのも手じゃな。
「マーガルはそれで良いのか?」
「もちろんです! お師匠さまが家に来てくださったら、あんなことやこんなこともし放題ですからねっ」
なにがし放題なんじゃろう……?
少しだけ不安になったが、それよりもマーガルの優しさが有難い。
本当に、ワシはなんという出来た弟子を持ったのじゃろう。マーガルには感謝してもしきれない。
ワシは感動で目を潤ませながら、マーガルに頭を下げた。
「礼を言うぞマーガル。では、これからよろしく頼む」
「よし!! お師匠さまと同棲出来る!! よぉーし!!」
マーガルはなぜかふんふんと鼻息が荒い。
そんなにワシと暮らすのが嬉しいのかのぉ?
可愛い子じゃなぁ。
ワシはニッコリ微笑んだのじゃった。
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