【完結】うーむ……。ワシの弟子が天才過ぎて困る

チョロケロ

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第四話 大きい家じゃのう……

 マーガルと一緒に住むことが決まった。
 都会で暮らす不安もあるが、同時に期待感もある。
 王都に行くのは数十年ぶりじゃ。外観はかなり変化していることじゃろうな。
 そんなことを考えながら、ワシはワクワクと荷造りに取り掛かった。
 すると、マーガルも手伝おうとする。

「一人で出来るから大丈夫じゃよ」
「いいえ。一刻も早く一緒に住みたいんです! 急いで荷造りして、今夜中にこの家を出ましょう!」
 
 一日で荷物の整理など出来る訳がない。
 ワシは苦笑しながら『落ち着け』とマーガルをなだめ、とりあえずその日は帰ってもらった。
 
 それから一週間後、準備が整ったワシの家に、マーガルが再びやって来た。
 身軽なワシを見て、マーガルは意外そうな表情をする。

「荷物はそれだけなのですか?」
「うむ。大事な魔道具などは置いていくことにした」

 別にこの家を取り壊すわけではないのだ。
 これからこの家はワシのコレクションなどを収納する別宅として活用していくことにする。
 それを説明すると、マーガルも優しく微笑んでくれた。

「そうですね。私もたまにこの家に帰って来たいときがあるのです。生まれ育った大切な家ですからね」
「そうじゃろう? ワシもこの家が大好きなんじゃ」

 ワシらは思い出のいっぱい詰まった家を見上げた。
 赤い屋根は黒ずみ、壁もところどころ傷があるが、ワシとマーガルの大切な場所じゃった。
 ワシは壁に手を当てて、そっと感謝の気持ちを述べた。

「今までありがとうのぉ……」

 マーガルも家に向かってペコリと頭を下げた。
 しばらくしんみりと思い出に浸ってから、ワシらはその場を後にした。
 
 さぁ……家とのお別れも済んだことじゃし、新しい人生の始まりじゃ!

※※※※

 移動には杖を使った。
 本当は移動魔法を使えば一瞬で目的地に辿り着くのじゃが、若返って体力が戻ったので、のんびりと空の旅を楽しみたかったのじゃ。

 それぞれの杖に乗り、大空をふよふよ飛んでいたら、マーガルが苦笑した。

「この調子じゃ王都まで二日掛かりますよ?」
「いいじゃないか。ゆっくり行こう」
「まぁいいですけど……。でも、たまにはお師匠さまの本気も見たいです」
「?」
「その気になれば、ハヤブサよりも速く飛べるんでしょう?」
「ふふん。余裕じゃ!」

 ワシは得意げに胸を張った。
 自慢じゃが、ワシは空を飛ぶのは得意じゃ。
 若い頃は『神速のルーちゃん』と呼ばれていたくらいじゃからの。

「お師匠さまの超スピードが見たいです」
「ほぉ……良いじゃろう! マーガルよ、ワシのスピードに着いて来れるかな!?」
「頑張ります」

 早く家に着きたいマーガルに乗せられたような気がするが、まぁ良い!
 ワシは魔力を解放し、全速力で王都に向かったのじゃった。

※※※※

 スピード勝負はワシの勝ちじゃった。
 ワシが王都に着いてから十分後に、マーガルが到着したのじゃ。

「どうじゃマーガル!」
「おみそれしました。さすがはお師匠さま」
「若いもんにはまだまだ負けんぞっ」

 もの凄い上機嫌なワシをクスクス笑いながら、マーガルは自宅に案内してくれた。

 マーガルの家は、ちょっと引くほど大きかった。
 立派な門を抜けた先にあり、白を基調とした豪邸で、堂々とした佇まいじゃった。

「なんじゃこれは……。貴族の家か?」
「大した家じゃありませんよ」

 謙遜するマーガルを横目に中に入る。
 すると、ずらっと一列に整列した使用人に頭を下げられた。

「お帰りなさいませ。マーガル様」

 うわぁ……。なんじゃこれ……。
 さすがは世界一の大魔法使いじゃなぁ。
 想像以上の豪邸で驚いたが、更に度肝を抜かれた。まさか使用人までおるとは。

 ワシはさっきお別れしてきたこじんまりした家が恋しくなってきた。
 ぐすんと鼻を啜りそうになっておったら、マーガルが使用人の一人に声を掛ける。

「ダイア。この方が前に話した私の師匠だ。失礼のないように頼む」
「はい。かしこまりました」

 ダイアと呼ばれた男がこちらに近付いてくる。
 そして、ワシの前で綺麗に一礼した。

「ルーレシア様。マーガル様よりお話は伺っております。私はあなたの専属使用人となります。これからご用はなんなりとお申し付けください」
「こ、こちらこそ宜しくお願いしますのじゃっ」

 ワシは慌てて頭を下げた。
 なんじゃよ、ワシに専属の使用人などおるのか!?
 想像と違う!
 もっと庶民的な生活を送れると思ったのに、これでは気が休まらん!

 年甲斐もなく萎縮してしまったワシは、子供のようにマーガルの服の袖をクイクイ引っ張った。

「ワシ……。こんな家嫌じゃ。元の家に戻りたい……」
「分かりました。リフォームをします。お師匠さまのお家を再現できるよう努力します!」
「!」

 マーガルの瞳が真剣じゃったので、ワシは慌てた。
 マーガルはちょっと変わった子なのじゃ。
 やると言ったら必ずやり通す精神を持っておる。
 このままじゃ本当にリフォームしそうな勢いじゃったので、ワシはガハハと笑って誤魔化した。

「嘘じゃ! この家、大きくて気に入った! これからの生活が楽しみじゃのう!」

 ワシの言葉に、マーガルはホッと胸を撫で下ろしたのが分かった。

「良かった……。本当に良かった……。お師匠さまが嫌がる家など、壊してしまいそうになりました……」
「や、やめとくれ。そんなこと……」

 マーガルなら、やりかねない。
 だって、マーガルじゃもの。

「では、お師匠さまのお部屋にご案内します」
「うむ」

 どこもかしこも広過ぎて居心地が悪いが、慣れれば大丈夫じゃろう。
 ワシは気を取り直してマーガルの後に続いたのじゃった。
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