7 / 7
最終話 恋の道……。極めてみるのも面白そうじゃの
マーガルはびくびくとワシの顔色を窺っておる。
そんな反応をされると許しそうになってしまうが、心を鬼にせねばならん。
ワシは冷たい声色で弟子に問いかけた。
「なんでこんなことをしたんじゃ?」
「お師匠さまが大好きだからです」
「ワシもお前が大好きじゃ。じゃが――」
『好きだからってなにをしても許される訳ではない』と言おうとしたら、途中でさえぎられた。
「お師匠さまの好きと、私の好きは違います!」
「ほぉ。なにが違うんじゃ?」
「お師匠さまの好きは、慈愛です。ですが私の好きは、体を繋げたくなるほどの激しい愛です」
「!?」
マーガルの熱のこもった告白を聞き、ワシに衝撃が走る。
え!? マーガルってワシのことそんな風に思っとったの!? ワシジジイなんですけど……。
なんでジジイなんかに惚れとるんですか!? いつからですか!? などと色々問い詰めたいことはあったが、今はそれどころではない。
ワシは動揺を悟られぬよう、表情を引き締めながら口を開いた。
「じゃ、じゃが……、相手の了承も取らずに行為に及ぶのは、悪いことじゃ」
「だって了承を取ったら、絶対に嫌だと言われるじゃ無いですか……」
「ま、まぁの……」
悪びれもせずに言うな! と怒鳴りつけたかったが、事実なので怒るに怒れない……。
なにか言わねばと考えていたら、マーガルが先に口を開いた。
「でも私は、お師匠さまと一線を越えたかったんです!」
マーガルは反発するようにワシの顔を睨むと、訥々と語り始めた。
「幼い頃より私はずっとお師匠さまが大好きだった。だが、年が経つにつれその気持ちに情欲が混ざり始めた。でも、お師匠さまはご高齢だったから、諦めていたんです……」
えぇ……!? ワシ、こやつに初めて会ったとき、八十五歳じゃぞ……?
それから情欲が混ざり始めたって……ジジイ趣味にも程があるじゃろう……。
呆れるワシを尻目に、マーガルは拳を握りしめて熱弁した。
「ですが! 今回私の秘薬により、お師匠さまは若返った! きゃわわなお師匠さまを見て、私の下半身が制御不能になっても仕方のないことなんです! だって私は……! 十数年もお師匠さまに片想いをしていたのですから……」
そう言ってマーガルはしょんぼりとうなだれた。
いや……制御せいよ、いい大人なんじゃから……と言いたかったが、それよりも十数年も片想いをしていたことに胸が痛む。
こんなジジイに恋をしたばかりに、ずっと気持ちをひた隠しにしとったんじゃな……。
「……そ、そうか。それは辛い思いをさせてすまんかったのぉ」
「本当ですよ」
マーガルは確実に開き直っている。じゃが、なぜかそんなマーガルに押され気味になってしまった。
だってワシ……男に犯されそうになったのは何回もあるが、告白されたのとか初めてなんじゃもん。胸が高鳴ってしまい、いつもの調子が出ないのじゃ。
「じゃ、じゃが……歳の差があり過ぎる。それに、ワシらは師弟関係じゃろう?」
「歳の差は問題ありません! 今のお師匠さまは私と同世代です! それに、師弟関係でも恋人同士になっている方々はたくさんおります!」
「じゃが……じゃが……」
ダメじゃと諭そうとすると反論され、ワシは言葉に詰まってしまった。
マーガルは天才なので、頭も切れるのじゃ。マーガルと言い合いをしても勝てそうにない……。
ワシが弱気になりかけていることに気付いたのか、マーガルが一気に畳み掛ける。
「お師匠さま! せっかく新しい人生をスタートしたのですから、今度は魔導の道だけでなく、恋の道を極めてみては!? お師匠さま、私とセックスする前は童貞処女だったでしょう!?」
な、なんでワシが童貞処女であることを知っとるんじゃ!? 調べたのか!? 恐ろしい弟子じゃのう……。
じゃが……マーガルの言うことも一理ある。
確かにワシは若い頃から魔導に夢中で、恋愛には全く興味を示さなかったのじゃ。
それを恥ずかしいと思ったときはもうジジイで、今更恋愛などと諦めていた。
じゃが、こうして若返り、マーガルにチャンスをもらったのならば、これからは青春を謳歌してもいいんじゃないか……?
ワシは、目の前の景色が明るく色付いていくような気がした。
「さすがはマーガルじゃ! マーガルは、ワシに新しい人生の生き方を教えてくれた!」
ワシの言葉に、マーガルは目を輝かせてうんうんうなずいた。
「そうでしょう!? では、手始めにまずは私と恋人同士になってみましょう!」
そう言ってマーガルは立ち上がると、ワシに手を差し伸べた。
「……」
マーガルと恋をする……? 出来るじゃろうか? 歳の差は問題無いとしても、師弟関係じゃぞ……?
かなり悩んだが、恋をしてみたい欲求には逆らえない。それに、こんなワシを好きだと言ってくれるマーガルの気持ちに応えたいと思ったのじゃ。
「では……宜しく頼む……」
結局ワシは、マーガルの手を取った。
マーガルはそれはもう嬉しそうに『はいっ』とうなずいたのじゃった。
※※※※
そのときのワシは、マーガルがどれだけワシに執着しているのか分からなかった。
そのうち飽きて、ワシのことなど手放すと思っていたのじゃ。
じゃが、予想に反してマーガルはいつまで経ってもワシを手放さなかった。
四六時中愛を囁かれ、ドロドロに抱かれる日々を繰り返すうちに、十年の歳月が経過していた。
今夜も二人で遅くまで愛し合い、疲れてうとうとしかけた頃、マーガルがワシに問いかけてきた。
「どうです? 恋の道を極めるのも、結構楽しいでしょう?」
得意げなマーガルに心の中で苦笑しつつ、ワシは素っ気なく返した。
「まだ極めたとは言えん。なんせワシはマーガルしか愛したことがないからの。これからもたくさんの恋をして、恋の道がどんなものか模索して行こうと思うのじゃ」
ワシの言葉に、マーガルはギョッとした。
それから捨てられた子犬のようにしょんぼりとうなだれた。
「そ、それは……浮気宣言でしょうか?」
ワシはクスリと笑い、マーガルの頭をよしよしと撫でてやった。
「嘘じゃ! ワシはもうお前以外愛せない。お前が最初で最後の男じゃよ!」
ワシの言葉が本当に嬉しかったようで、マーガルは
『えへ……えへ……』と独特な笑い方をした。
こやつは本当に昔から変わらんのうと微笑ましい気持ちになり、ワシはクスクスと笑ったのじゃった。
そんな反応をされると許しそうになってしまうが、心を鬼にせねばならん。
ワシは冷たい声色で弟子に問いかけた。
「なんでこんなことをしたんじゃ?」
「お師匠さまが大好きだからです」
「ワシもお前が大好きじゃ。じゃが――」
『好きだからってなにをしても許される訳ではない』と言おうとしたら、途中でさえぎられた。
「お師匠さまの好きと、私の好きは違います!」
「ほぉ。なにが違うんじゃ?」
「お師匠さまの好きは、慈愛です。ですが私の好きは、体を繋げたくなるほどの激しい愛です」
「!?」
マーガルの熱のこもった告白を聞き、ワシに衝撃が走る。
え!? マーガルってワシのことそんな風に思っとったの!? ワシジジイなんですけど……。
なんでジジイなんかに惚れとるんですか!? いつからですか!? などと色々問い詰めたいことはあったが、今はそれどころではない。
ワシは動揺を悟られぬよう、表情を引き締めながら口を開いた。
「じゃ、じゃが……、相手の了承も取らずに行為に及ぶのは、悪いことじゃ」
「だって了承を取ったら、絶対に嫌だと言われるじゃ無いですか……」
「ま、まぁの……」
悪びれもせずに言うな! と怒鳴りつけたかったが、事実なので怒るに怒れない……。
なにか言わねばと考えていたら、マーガルが先に口を開いた。
「でも私は、お師匠さまと一線を越えたかったんです!」
マーガルは反発するようにワシの顔を睨むと、訥々と語り始めた。
「幼い頃より私はずっとお師匠さまが大好きだった。だが、年が経つにつれその気持ちに情欲が混ざり始めた。でも、お師匠さまはご高齢だったから、諦めていたんです……」
えぇ……!? ワシ、こやつに初めて会ったとき、八十五歳じゃぞ……?
それから情欲が混ざり始めたって……ジジイ趣味にも程があるじゃろう……。
呆れるワシを尻目に、マーガルは拳を握りしめて熱弁した。
「ですが! 今回私の秘薬により、お師匠さまは若返った! きゃわわなお師匠さまを見て、私の下半身が制御不能になっても仕方のないことなんです! だって私は……! 十数年もお師匠さまに片想いをしていたのですから……」
そう言ってマーガルはしょんぼりとうなだれた。
いや……制御せいよ、いい大人なんじゃから……と言いたかったが、それよりも十数年も片想いをしていたことに胸が痛む。
こんなジジイに恋をしたばかりに、ずっと気持ちをひた隠しにしとったんじゃな……。
「……そ、そうか。それは辛い思いをさせてすまんかったのぉ」
「本当ですよ」
マーガルは確実に開き直っている。じゃが、なぜかそんなマーガルに押され気味になってしまった。
だってワシ……男に犯されそうになったのは何回もあるが、告白されたのとか初めてなんじゃもん。胸が高鳴ってしまい、いつもの調子が出ないのじゃ。
「じゃ、じゃが……歳の差があり過ぎる。それに、ワシらは師弟関係じゃろう?」
「歳の差は問題ありません! 今のお師匠さまは私と同世代です! それに、師弟関係でも恋人同士になっている方々はたくさんおります!」
「じゃが……じゃが……」
ダメじゃと諭そうとすると反論され、ワシは言葉に詰まってしまった。
マーガルは天才なので、頭も切れるのじゃ。マーガルと言い合いをしても勝てそうにない……。
ワシが弱気になりかけていることに気付いたのか、マーガルが一気に畳み掛ける。
「お師匠さま! せっかく新しい人生をスタートしたのですから、今度は魔導の道だけでなく、恋の道を極めてみては!? お師匠さま、私とセックスする前は童貞処女だったでしょう!?」
な、なんでワシが童貞処女であることを知っとるんじゃ!? 調べたのか!? 恐ろしい弟子じゃのう……。
じゃが……マーガルの言うことも一理ある。
確かにワシは若い頃から魔導に夢中で、恋愛には全く興味を示さなかったのじゃ。
それを恥ずかしいと思ったときはもうジジイで、今更恋愛などと諦めていた。
じゃが、こうして若返り、マーガルにチャンスをもらったのならば、これからは青春を謳歌してもいいんじゃないか……?
ワシは、目の前の景色が明るく色付いていくような気がした。
「さすがはマーガルじゃ! マーガルは、ワシに新しい人生の生き方を教えてくれた!」
ワシの言葉に、マーガルは目を輝かせてうんうんうなずいた。
「そうでしょう!? では、手始めにまずは私と恋人同士になってみましょう!」
そう言ってマーガルは立ち上がると、ワシに手を差し伸べた。
「……」
マーガルと恋をする……? 出来るじゃろうか? 歳の差は問題無いとしても、師弟関係じゃぞ……?
かなり悩んだが、恋をしてみたい欲求には逆らえない。それに、こんなワシを好きだと言ってくれるマーガルの気持ちに応えたいと思ったのじゃ。
「では……宜しく頼む……」
結局ワシは、マーガルの手を取った。
マーガルはそれはもう嬉しそうに『はいっ』とうなずいたのじゃった。
※※※※
そのときのワシは、マーガルがどれだけワシに執着しているのか分からなかった。
そのうち飽きて、ワシのことなど手放すと思っていたのじゃ。
じゃが、予想に反してマーガルはいつまで経ってもワシを手放さなかった。
四六時中愛を囁かれ、ドロドロに抱かれる日々を繰り返すうちに、十年の歳月が経過していた。
今夜も二人で遅くまで愛し合い、疲れてうとうとしかけた頃、マーガルがワシに問いかけてきた。
「どうです? 恋の道を極めるのも、結構楽しいでしょう?」
得意げなマーガルに心の中で苦笑しつつ、ワシは素っ気なく返した。
「まだ極めたとは言えん。なんせワシはマーガルしか愛したことがないからの。これからもたくさんの恋をして、恋の道がどんなものか模索して行こうと思うのじゃ」
ワシの言葉に、マーガルはギョッとした。
それから捨てられた子犬のようにしょんぼりとうなだれた。
「そ、それは……浮気宣言でしょうか?」
ワシはクスリと笑い、マーガルの頭をよしよしと撫でてやった。
「嘘じゃ! ワシはもうお前以外愛せない。お前が最初で最後の男じゃよ!」
ワシの言葉が本当に嬉しかったようで、マーガルは
『えへ……えへ……』と独特な笑い方をした。
こやつは本当に昔から変わらんのうと微笑ましい気持ちになり、ワシはクスクスと笑ったのじゃった。
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
【完結】神童と呼ばれた後輩に懐かれた。それはいいんだけど、ちょっと懐きすぎじゃない!?
チョロケロ
BL
魔法省で働くロレンスの元に、新入社員がやってきた。その名はキーランと言う。十八歳で子供の頃は神童と呼ばれていた少年だ。
だが、幼い頃から周りにちやほやされていたらしく、もの凄く生意気な少年だった。
そんな少年の教育係になってしまったロレンス。
嫌々指導していたのだが、あることをきっかけにもの凄く懐かれてしまった。ロレンスの家で一緒に夕飯を食べるくらい仲良くなり、キーランのことを少し可愛いと思うようになっていた。そんなある日に、二人の間にある出来事が起こったのだった。
※ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。
※よろしくお願いします。
押しても押してもダメそうなので引くことにします
Riley
BL
俺(凪)には愛して止まない幼馴染(紫苑)がいる。
押しても押してもビクともしない余裕の態度に心が折れた。
引いたらダメだと思っても燃え尽きてしまった…。
ちょっと休憩…。会えないと寂しいけど、引くと言ったからには自分からいけない…
悪役のはずだった二人の十年間
海野璃音
BL
第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。
破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
生まれ変わったら知ってるモブだった
マロン
BL
僕はとある田舎に小さな領地を持つ貧乏男爵の3男として生まれた。
貧乏だけど一応貴族で本来なら王都の学園へ進学するんだけど、とある理由で進学していない。
毎日領民のお仕事のお手伝いをして平民の困り事を聞いて回るのが僕のしごとだ。
この日も牧場のお手伝いに向かっていたんだ。
その時そばに立っていた大きな樹に雷が落ちた。ビックリして転んで頭を打った。
その瞬間に思い出したんだ。
僕の前世のことを・・・この世界は僕の奥さんが描いてたBL漫画の世界でモーブル・テスカはその中に出てきたモブだったということを。
異世界転生したと思ったら、悪役令嬢(男)だった
カイリ
BL
16年間公爵令息として何不自由ない生活を送ってきたヴィンセント。
ある日突然、前世の記憶がよみがえってきて、ここがゲームの世界であると知る。
俺、いつ死んだの?!
死んだことにも驚きが隠せないが、何より自分が転生してしまったのは悪役令嬢だった。
男なのに悪役令嬢ってどういうこと?
乙女げーのキャラクターが男女逆転してしまった世界の話です。
ゆっくり更新していく予定です。
設定等甘いかもしれませんがご容赦ください。
幼馴染に俺の推し活が全力で邪魔されている件について
伊織
BL
アルシェリウム学園に通うカーヴェリス公爵家の末息子・ルカ(16)には、誰にも譲れない趣味がある。
それは――エルディア王国の第一王子、アレクシス・ヴァルクレスト殿下(19)を“推す”こと。
学園生活は、殿下の凛々しい姿を眺め、心の中で歓声を上げる、至福の時間のはずだった。
しかし、その平穏は幼馴染のレオン・モントクロワ(19)によって崩される。
「ルカ、殿下はやめておけ」
勘違いしたレオンの妨害は日に日にエスカレート。
しかも殿下まで何やら距離を詰めてきて――。
推し活と恋愛の狭間で揺れる、王国学園ラブコメディ。
※誤字脱字など、修正中です。
11/2~ゆっくり更新です。
冒険者の幼馴染と、ずっとその隣にいたい男の話
くろねこや
BL
お前の隣で、一緒に歳をとって生きていくんだと思ってた。
例えお前が誰かと結婚しても、子どもが生まれても。
◇
15歳になると神様から魔法が与えられる世界で、たった一人魔法が使えないイスト。
火魔法と氷魔法を授かった幼馴染は冒険者になった。
オレにあるのは畑や動物たちをちょこっと元気にする力だけ…。
ところが、そこへ謎の老婆が現れて…。
え? オレも冒険者になれるの?
“古代種様”って何?!
※『横書き』方向に設定してお読みください。
※『設定 こぼれ話』は情報を追加・修正することがあります。