6 / 20
第六話 来客
しおりを挟む
昨日のユートとの情事も激しかった。
思い出すだけで身体が熱くなってしまう。あぁ……ユートは本当にカッコいいな……。
そんなことをうっとりと考えていたら、私の横に待機している側近のミストが眉を吊り上げた。
「魔王様! ボーっとしてないで真面目に仕事をしてください!」
「うっ……。分かっている」
ここは執務室。私の仕事場だ。
私の仕事は国民の要望書や意見書などに目を通し、決済するかしないか決めること。他には国の予算や条例の見直し、政策の実施など多岐にわたる。
各国の王と会議をすることもあるが、今日の仕事はデスクワークだ。書類に目を通し、国民の要望に対して承認か否かを決断している。
ミストは補佐だ。私の隣に立ち、事務仕事や助言などをしてくれる。
今は私が書類も手に取らずボーっとしていたので、厳しく注意したのだ。
ユートのことばかり考えてしまうが、私も一応魔王なのだ。余計な雑念は払い、仕事に専念せねば……と思い、それ以降は真面目に仕事をした。
夕方になり、書類の山がなくなりかけた頃、その者は突然やってきた。
「魔王! いるかー!?」
執務室の扉が勢い良く開き、筋肉隆々の大男が入って来たのだ。
「……! おぉ、イワルゴスではないか」
イワルゴスは、龍国を治める王だ。
龍国は国民の全てが龍族だ。気性が荒く、身体の大きな者が多いのが特徴だ。
イワルゴスも身体が大きい。歳は400歳を超えていると聞く。赤い髪と黄金の瞳を持った壮年の男だ。
イワルゴスと会うのは久しぶりだな、などと思っていたら、イワルゴスがドスドス足音を鳴らしながら近付いてきた。
私の前に立ち、ジィッと顔を見つめる。それから大きな声で笑い始めた。
「こりゃ驚いた!! 噂は本当じゃったのか!! 世界一のブ男が、世界一の美男子になっておる!!」
「……」
……そうか。イワルゴスに人型の姿を見せるのは初めてだな。と、言うか魔王城に住む者以外にこの姿を見せたのは初めてだ。
だって人型になったからと言って、各国の王を集め、自分の姿をわざわざお披露目するなんて変な話だろう?
だから私は、人型になってもそれを外に話したりしなかったのだ。
だが、噂と言うのはすぐに広まるもの。恐らく魔王城の使用人かなにかが外で私のことを話し、それが龍国まで伝わったのだろう。
「イワルゴス。ブ男などと言うな。傷付くだろう?」
「だって本当にみにくかったではないか! みにく過ぎて見るたびに吐き気がしたぞ!?」
失礼なことを言う。
だが、私はこの男のことがそんなに嫌いではなかった。
イワルゴスは面と向かって物事をハッキリ言うが、陰口などは大嫌いなのだ。
以前、私の陰口を言っていた他国の王を怒鳴りつけていたのを知っている。
口は悪いが、根は悪いやつではないのだ。
「イワルゴス。それで、何の用だ? 私の人型を見るためだけに龍国から来たのではあるまいな?」
「いいや! お前の顔を見るためだけにわざわざ来んじゃ!!」
そ、そんな理由で来たのか……。
私は呆れてしまった。
そんな私を見ながら、イワルゴスはとんでもないことを言い放つ。
「こんな美男なら、ワシの一人娘の婿にしてやってもいい!! お前は顔以外は完璧な魔王じゃからな!!」
「……。冗談はよしてくれ。レイナが私と夫婦になりたいなどと思うわけないだろう?」
レイナとは、イワルゴスの一人娘のことだ。
龍族には珍しく、華奢で内気な少女だ。そして、母親譲りの美しい顔をしている。
そんなたおやかな娘が、私を好きになるなんてあり得ない。
だが、イワルゴスは乗り気のようで、どんどん話を進めようとする。
「いいや! 分からんぞ!? 今のお前を見れば好きになるかもしれん!!」
「ならないよ」
「とにかく、今度レイナをここに連れて来る! そのとき一緒に街へ出掛けてみろ!!」
「嫌だよ」
「元ブ男は消極的でいかん!! もっとガツガツせい!!」
「……」
「では、また来るからの!!」
そう言ってイワルゴスはドスドス足音を鳴らしながら帰っていった。
嵐のような男だ。突然来て、突然去っていった……。
私はどっと疲れが押し寄せてきて、机に突っ伏した。
「なんなのだイワルゴスは……」
私たちのやり取りを黙って見ていたミストは、フフッと笑った。
「いいじゃないですか。レイナ様は龍国一の美女です。魔王様とお似合いですよ?」
「お前までそんな冗談を言うのか?」
確かにレイナは美しく性格も良い。妻にするなら理想の女だろう。
だが、私は今結婚など考えていない。
私の頭の中は、ユートのことでいっぱいなのだ。
まぁ、イワルゴスも本気で言ったのではないだろうと思い、今日のことはすぐに忘れてしまったのだった。
思い出すだけで身体が熱くなってしまう。あぁ……ユートは本当にカッコいいな……。
そんなことをうっとりと考えていたら、私の横に待機している側近のミストが眉を吊り上げた。
「魔王様! ボーっとしてないで真面目に仕事をしてください!」
「うっ……。分かっている」
ここは執務室。私の仕事場だ。
私の仕事は国民の要望書や意見書などに目を通し、決済するかしないか決めること。他には国の予算や条例の見直し、政策の実施など多岐にわたる。
各国の王と会議をすることもあるが、今日の仕事はデスクワークだ。書類に目を通し、国民の要望に対して承認か否かを決断している。
ミストは補佐だ。私の隣に立ち、事務仕事や助言などをしてくれる。
今は私が書類も手に取らずボーっとしていたので、厳しく注意したのだ。
ユートのことばかり考えてしまうが、私も一応魔王なのだ。余計な雑念は払い、仕事に専念せねば……と思い、それ以降は真面目に仕事をした。
夕方になり、書類の山がなくなりかけた頃、その者は突然やってきた。
「魔王! いるかー!?」
執務室の扉が勢い良く開き、筋肉隆々の大男が入って来たのだ。
「……! おぉ、イワルゴスではないか」
イワルゴスは、龍国を治める王だ。
龍国は国民の全てが龍族だ。気性が荒く、身体の大きな者が多いのが特徴だ。
イワルゴスも身体が大きい。歳は400歳を超えていると聞く。赤い髪と黄金の瞳を持った壮年の男だ。
イワルゴスと会うのは久しぶりだな、などと思っていたら、イワルゴスがドスドス足音を鳴らしながら近付いてきた。
私の前に立ち、ジィッと顔を見つめる。それから大きな声で笑い始めた。
「こりゃ驚いた!! 噂は本当じゃったのか!! 世界一のブ男が、世界一の美男子になっておる!!」
「……」
……そうか。イワルゴスに人型の姿を見せるのは初めてだな。と、言うか魔王城に住む者以外にこの姿を見せたのは初めてだ。
だって人型になったからと言って、各国の王を集め、自分の姿をわざわざお披露目するなんて変な話だろう?
だから私は、人型になってもそれを外に話したりしなかったのだ。
だが、噂と言うのはすぐに広まるもの。恐らく魔王城の使用人かなにかが外で私のことを話し、それが龍国まで伝わったのだろう。
「イワルゴス。ブ男などと言うな。傷付くだろう?」
「だって本当にみにくかったではないか! みにく過ぎて見るたびに吐き気がしたぞ!?」
失礼なことを言う。
だが、私はこの男のことがそんなに嫌いではなかった。
イワルゴスは面と向かって物事をハッキリ言うが、陰口などは大嫌いなのだ。
以前、私の陰口を言っていた他国の王を怒鳴りつけていたのを知っている。
口は悪いが、根は悪いやつではないのだ。
「イワルゴス。それで、何の用だ? 私の人型を見るためだけに龍国から来たのではあるまいな?」
「いいや! お前の顔を見るためだけにわざわざ来んじゃ!!」
そ、そんな理由で来たのか……。
私は呆れてしまった。
そんな私を見ながら、イワルゴスはとんでもないことを言い放つ。
「こんな美男なら、ワシの一人娘の婿にしてやってもいい!! お前は顔以外は完璧な魔王じゃからな!!」
「……。冗談はよしてくれ。レイナが私と夫婦になりたいなどと思うわけないだろう?」
レイナとは、イワルゴスの一人娘のことだ。
龍族には珍しく、華奢で内気な少女だ。そして、母親譲りの美しい顔をしている。
そんなたおやかな娘が、私を好きになるなんてあり得ない。
だが、イワルゴスは乗り気のようで、どんどん話を進めようとする。
「いいや! 分からんぞ!? 今のお前を見れば好きになるかもしれん!!」
「ならないよ」
「とにかく、今度レイナをここに連れて来る! そのとき一緒に街へ出掛けてみろ!!」
「嫌だよ」
「元ブ男は消極的でいかん!! もっとガツガツせい!!」
「……」
「では、また来るからの!!」
そう言ってイワルゴスはドスドス足音を鳴らしながら帰っていった。
嵐のような男だ。突然来て、突然去っていった……。
私はどっと疲れが押し寄せてきて、机に突っ伏した。
「なんなのだイワルゴスは……」
私たちのやり取りを黙って見ていたミストは、フフッと笑った。
「いいじゃないですか。レイナ様は龍国一の美女です。魔王様とお似合いですよ?」
「お前までそんな冗談を言うのか?」
確かにレイナは美しく性格も良い。妻にするなら理想の女だろう。
だが、私は今結婚など考えていない。
私の頭の中は、ユートのことでいっぱいなのだ。
まぁ、イワルゴスも本気で言ったのではないだろうと思い、今日のことはすぐに忘れてしまったのだった。
13
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は?
最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか?
人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。
よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。
ハッピーエンド確定
※は性的描写あり
【完結】2021/10/31
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ
2021/10/03 エブリスタ、BLカテゴリー 1位
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる