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第五話 ユートは特別だからな
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今日はユートとの一週間に一度の逢瀬の日だ。
ユートと出会って三週間が経過した。つまり、今日で三度目の逢瀬だ。
私はワクワクしながらその日の仕事を終え、魔王の間でユートの訪問を待っていた。
側近のミストが呪文を唱え、重厚な扉が出現する。
約束の時間は十五時だ。
時間ぴったりに扉が開き、笑顔満面のユートがやって来た。
「こんにちはー!」
「ユート!」
私は王座から飛び出し、ユートに駆け寄った。
今日のユートはちゃんと服を着ている。パンツ一丁でもカッコよかったが、服を着るとその男ぶりが上がる。
私は惚れ惚れしながらユートに抱き付いた。
「よく来てくれた。嬉しいぞ!」
ユートははしゃぐ私を落ち着かせるように背中をポンポン撫でてくれた。
そんな私たちを微笑ましいものを見るような表情でミストが見ている。
「ユート様。今日も来てくださりありがとうございます」
「うん。早速エッチする?」
私はユートの胸から顔を上げ、フルフルと首を振った。
「いや、せっかくだから性行為の前にお茶でも飲まないか? 準備をしているのだ」
「お茶?」
「あぁ! 私はユートとお喋りがしたいのだ!」
「いいよー」
ユートがニコニコと了承してくれたので、私たち三人は応接間に向かった。
部屋に入ると、テーブルの上に紅茶と三段トレイにのせられたオヤツが目に留まった。
オヤツは一段目にミニケーキなどのスイーツ。二段目にスコーン。三段目にサンドイッチがのっている。
椅子に座りながらユートの好みを確認しておく。
「ユートの好みが分からないので適当に用意したのだが、甘いものは好きか?」
「うーん……。あんま食わねーなぁ」
「そうなのか? すまない。すぐ下げさせる」
「いや、いいよ。サンドイッチ貰うから」
「……そうか?」
そんな会話をしながら、心のメモに「ユートは甘いものはあまり食べないらしい」と書き留めた。
それから楽しいお茶会が始まったのだった。
※※※※
ユートは甘いものは食べないと言ったが、甘さ控えめのスコーンなら食べられるらしく、美味い美味いと言ってたくさん食べてくれた。
よし、次のお茶会はスコーンをたくさん用意しよう。私は心のメモに書き留めた。
会話の主導権は、主にユートが握っている。
ユートはパチンコという娯楽にハマっているらしく、昨日は五千円勝った、一昨日は七千円負けたなど、面白おかしく勝敗を話してくれた。
「へぇ。パチンコとは楽しそうな遊びだな。私もやってみたい」
「ダメダメ。パチンカスになっちゃうよ?」
「パチンカスとはなんだ?」と聞いてまた会話が盛り上がる。魔界と人間界の文化について語れば、話題が途切れることはない。
しばらくパチンコの話題で盛り上がり、一息ついたので紅茶をすする。
すると、またユートが口を開いた。
「そう言えば魔王さんって、名前なんて言うの?」
「私はアレルヤと言う」
「ふーん。じゃあアレルヤさんって呼んでいい?」
「!」
ユートが私を名前で呼んでくれる! 嬉しくてすぐにうなずこうとしたら、私の隣に待機していたミストが「ダメです!」と叫んだ。
「魔王様は高貴なお方なのです。高貴なお方は、名前で呼んではいけないのです。威厳が損なわれてしまう」
「へー。そうなんだ」
私はぷりぷりと頰を膨らませた。
「硬いことを言うな。――ユート、私を名前で呼んでおくれ。私は君に名前で呼ばれたい」
「えー? いいの?」
「いいのだ。ユートは特別だからな。ちなみに『さん付け』もいらないぞ。呼び捨てで呼んでおくれ」
私はミストをひと睨みして、余計なことは言うなよ? と圧をかける。ミストはなにか言いたそうだったが、私が睨んだので口を閉ざした。
「じゃあ、今からアレルヤって呼ぶね」
私はユートに呼び捨てにされて、くすぐったい気持ちになった。喜びを隠せずにニコニコ笑う。
あぁ! ユートと名前で呼び合える仲になった! 親密度が増したようで嬉しい!
「アレルヤ。今日も人型だけど、何日ぐらい生気食べないと獣型に戻っちゃうの?」
「そうだなぁ……。試したことがないから分からんが、十日ほどではないか?」
「十日かぁ。じゃあ、一週間に一度会うくらいがちょうどいいんだね」
「そうだな」
本当は毎日でも会いたいけど。――と言う言葉は心にしまった。さすがにそんなことを言ったらユートに迷惑だ。
ユートはサンドイッチをガツガツ食べたあと、ソースが付いていたのか、ペロリと指を舐めた。別になにも考えずに舐めただけだろうけど、赤い舌が妙に色っぽくて、私は少しだけ欲情した。
そろそろユートが欲しい……。あの程よく筋肉がついた胸板に飛び込み、甘いキスがしたい……。そんなことを考えていたら、ユートも同じことを考えていたのか椅子から勢いよく立ち上がった。
「じゃあ、そろそろエッチしねー? 俺、さっきからムラムラしてんだわ」
ユートのこういうハッキリ言ってくれるところが大好きだ。
私だったら恥ずかしくていつまでもモジモジして言えなかっただろう。
私も椅子から立ち上がり、照れ隠しに髪を耳にかけた。
「そ、そうだな。では、今日もよろしく頼む」
「おう!」
そう言って二人で寝室に向かい、今日も熱い時間を過ごしたのだった。
ユートと出会って三週間が経過した。つまり、今日で三度目の逢瀬だ。
私はワクワクしながらその日の仕事を終え、魔王の間でユートの訪問を待っていた。
側近のミストが呪文を唱え、重厚な扉が出現する。
約束の時間は十五時だ。
時間ぴったりに扉が開き、笑顔満面のユートがやって来た。
「こんにちはー!」
「ユート!」
私は王座から飛び出し、ユートに駆け寄った。
今日のユートはちゃんと服を着ている。パンツ一丁でもカッコよかったが、服を着るとその男ぶりが上がる。
私は惚れ惚れしながらユートに抱き付いた。
「よく来てくれた。嬉しいぞ!」
ユートははしゃぐ私を落ち着かせるように背中をポンポン撫でてくれた。
そんな私たちを微笑ましいものを見るような表情でミストが見ている。
「ユート様。今日も来てくださりありがとうございます」
「うん。早速エッチする?」
私はユートの胸から顔を上げ、フルフルと首を振った。
「いや、せっかくだから性行為の前にお茶でも飲まないか? 準備をしているのだ」
「お茶?」
「あぁ! 私はユートとお喋りがしたいのだ!」
「いいよー」
ユートがニコニコと了承してくれたので、私たち三人は応接間に向かった。
部屋に入ると、テーブルの上に紅茶と三段トレイにのせられたオヤツが目に留まった。
オヤツは一段目にミニケーキなどのスイーツ。二段目にスコーン。三段目にサンドイッチがのっている。
椅子に座りながらユートの好みを確認しておく。
「ユートの好みが分からないので適当に用意したのだが、甘いものは好きか?」
「うーん……。あんま食わねーなぁ」
「そうなのか? すまない。すぐ下げさせる」
「いや、いいよ。サンドイッチ貰うから」
「……そうか?」
そんな会話をしながら、心のメモに「ユートは甘いものはあまり食べないらしい」と書き留めた。
それから楽しいお茶会が始まったのだった。
※※※※
ユートは甘いものは食べないと言ったが、甘さ控えめのスコーンなら食べられるらしく、美味い美味いと言ってたくさん食べてくれた。
よし、次のお茶会はスコーンをたくさん用意しよう。私は心のメモに書き留めた。
会話の主導権は、主にユートが握っている。
ユートはパチンコという娯楽にハマっているらしく、昨日は五千円勝った、一昨日は七千円負けたなど、面白おかしく勝敗を話してくれた。
「へぇ。パチンコとは楽しそうな遊びだな。私もやってみたい」
「ダメダメ。パチンカスになっちゃうよ?」
「パチンカスとはなんだ?」と聞いてまた会話が盛り上がる。魔界と人間界の文化について語れば、話題が途切れることはない。
しばらくパチンコの話題で盛り上がり、一息ついたので紅茶をすする。
すると、またユートが口を開いた。
「そう言えば魔王さんって、名前なんて言うの?」
「私はアレルヤと言う」
「ふーん。じゃあアレルヤさんって呼んでいい?」
「!」
ユートが私を名前で呼んでくれる! 嬉しくてすぐにうなずこうとしたら、私の隣に待機していたミストが「ダメです!」と叫んだ。
「魔王様は高貴なお方なのです。高貴なお方は、名前で呼んではいけないのです。威厳が損なわれてしまう」
「へー。そうなんだ」
私はぷりぷりと頰を膨らませた。
「硬いことを言うな。――ユート、私を名前で呼んでおくれ。私は君に名前で呼ばれたい」
「えー? いいの?」
「いいのだ。ユートは特別だからな。ちなみに『さん付け』もいらないぞ。呼び捨てで呼んでおくれ」
私はミストをひと睨みして、余計なことは言うなよ? と圧をかける。ミストはなにか言いたそうだったが、私が睨んだので口を閉ざした。
「じゃあ、今からアレルヤって呼ぶね」
私はユートに呼び捨てにされて、くすぐったい気持ちになった。喜びを隠せずにニコニコ笑う。
あぁ! ユートと名前で呼び合える仲になった! 親密度が増したようで嬉しい!
「アレルヤ。今日も人型だけど、何日ぐらい生気食べないと獣型に戻っちゃうの?」
「そうだなぁ……。試したことがないから分からんが、十日ほどではないか?」
「十日かぁ。じゃあ、一週間に一度会うくらいがちょうどいいんだね」
「そうだな」
本当は毎日でも会いたいけど。――と言う言葉は心にしまった。さすがにそんなことを言ったらユートに迷惑だ。
ユートはサンドイッチをガツガツ食べたあと、ソースが付いていたのか、ペロリと指を舐めた。別になにも考えずに舐めただけだろうけど、赤い舌が妙に色っぽくて、私は少しだけ欲情した。
そろそろユートが欲しい……。あの程よく筋肉がついた胸板に飛び込み、甘いキスがしたい……。そんなことを考えていたら、ユートも同じことを考えていたのか椅子から勢いよく立ち上がった。
「じゃあ、そろそろエッチしねー? 俺、さっきからムラムラしてんだわ」
ユートのこういうハッキリ言ってくれるところが大好きだ。
私だったら恥ずかしくていつまでもモジモジして言えなかっただろう。
私も椅子から立ち上がり、照れ隠しに髪を耳にかけた。
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「おう!」
そう言って二人で寝室に向かい、今日も熱い時間を過ごしたのだった。
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