【完結】みにくい魔王は恋をする〜パンツ一丁で召喚されたダメ男は、魔王の救世主だった〜

チョロケロ

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第十五話 父の願い

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 魔王城に戻ると、イワルゴスとミストは応接間に移動していた。ミストは苦手なイワルゴスと二人きりにされて、憔悴しょうすいしていた。きっと、イワルゴスがあの大きな声でガンガンミストに絡んでいたのだろう。

「お! 二人とも戻ったか!! どうじゃ? 愛情は芽生えたか!?」
「あぁ。おかげさまでね」

 私が答えると、イワルゴスは「お?」という表情をした後、本当に嬉しそうに笑った。

「そうかそうか。良かった……。本当に良かった……」

 その表情があまりにも優しそうだったので、やはりイワルゴスも親なのだなとしみじみ思った。

「イワルゴス。レイナと結婚しよう。今日レイナと話し、その穏やかさと優しさに惹かれた。有り難いことに、レイナも同じ気持ちになってくれたそうだ。式はなるべく早めに行う。これから準備など忙しくなると思うが、無理はするなよ?」
「ガハハ!! そうか!! 大丈夫じゃ!! ワシは頑丈なのだけが取り柄じゃからな!!」
「……」

『嘘をつけ。不治の病のくせに』ともう少しで口走りそうになったが、なんとかこらえた。
 レイナに病気のことは知らないフリをしてくれと頼まれたのだ。イワルゴスは誰かに弱みを見せるのが嫌いらしく、病気のことも家族にしか話していないらしい。
 だから私は暗い顔になるのを必死にこらえ、幸せそうな表情を作った。
 それを見て安心したイワルゴスは、勢いよく椅子から立ち上がった。

「じゃあレイナ! そろそろ帰るか!」
「はい。お父様」
「じゃあの、魔王!」
「あぁ」

 こうして私とミストの見守るなか、二人は魔王城を去ったのだった。

※※※※

 二人が帰ったあと、私はことの次第をミストに伝えた。イワルゴスが病気だと知って、ミストもシュンとうなだれてしまった。

「あれほど元気なイワルゴス様がご病気とは。お気の毒です」
「そうだな。もうあまり時間がないらしい。だから、結婚式を早急に挙げるぞ」
「かしこまりました。式は親族だけ集めた小規模なものにしましょう」

 本来なら魔王と龍国の姫の結婚式ならば、国をあげて大々的に行わなければいけない。だが、今回は時間もないし、深刻な事情があるのだ。
 小さな式になったとしても、イワルゴスは納得してくれるだろう。
 
「そうだな。ミストにも苦労をかけるが、よろしく頼む」
「御意」

 それから私は仕事に戻った。
 だが、気分が晴れず、暗い気持ちで過ごしたのだった。

※※※※

 数日後。
 今日はユートが魔界に来てくれる。
 いつもならウキウキとユートの到着を待つのに、今日はなんだか落ち込んでいる。イワルゴスのことが尾を引いているのだ。
 だが、ユートはそんな事情を知らない。ユートの前で元気のない姿を見せたら心配するかもしれない。
 だから、せめてユートの前では明るく接そうと思った。
 すると、人間界へと続く扉が開いた。
 中からいつも通りに明るいユートがやって来た。

「こんにちはー」
「ユート……」

 私は王座から立ち上がり、ユートの元に向かった。
 ユートの前に立ち、ニッコリ笑う。

「よく来てくれた。待ち侘びたぞ」
「アレルヤ?」

 ユートはそっと私の頰に触れた。

「どうしたの? なんか元気ないね。なにかあったの?」
「!」

 驚いた。さすがはユートだ。すぐに私の沈んだ気持ちに気付いてくれた。きっとユートは、ちょっとした表情の変化や声のトーンなどで、人の気持ちを察するのが得意なのだろう。素晴らしい特技だ。心が優しいのだな。
 そんなことを思いながら、私はニコリと微笑んだ。

「大丈夫だ。心配してくれてありがとう。それより話したいことがあるのだ。また私と応接間に来てくれるか?」
「いいけど……。本当に大丈夫?」
「あぁ。では、行こう。ミストも着いてくるのだ」
「はっ! かしこまりました」

 こうして三人で、いつも通り応接間に向かった。
 席についたところで、ユートが心配そうに口を開いた。

「それでアレルヤ。話ってなに?」
「あぁ、話と言うのはな――」

 ユートはごくりと唾を飲み込んだ。
 私は深く息を呑んだ。

「このたび、結婚することになったのだ」
「え……?」

 ユートは私の言葉を呆然と聞いていた。

「誰と……誰が?」
「私と、龍国という国に住む龍族の女だ」
「……」

 一応ユートにも言っておこうと思ったのだ。
 なぜなら、結婚したらしばらくはレイナも魔王城に住むことになる。
 ユートと偶然顔を合わす機会もあるかもしれない。
 そのとき、突然私の妻だと紹介されたらびっくりすると思ったのだ。

 ユートはうつむいてしまった。
 なぜうつむくのだろう? 少し気になったが、話を続ける。

「だが、ユートと私の関係はなにも変わらない。ユートには前と同じよう、一週間に一度私に会いに来てほしい」
「……嫌だ」
「え?」

 ユートがあまりにも小さな声で話すので、よく聞き取れなかった。私が聞き返すとユートが顔を上げた。
 なぜかもの凄い怒った表情をしていて、私は少したじろいだ。ユートは立ち上がると、テーブルをバンっと叩いた。

「嫌だって言ってるだろ!!」

 ユートのあまりの剣幕に、私とミストは顔を見合わせて困惑したのだった。
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